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寿綾乃という女 第4部  作者: トモサン


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寿綾乃という女 第4部 47

 が、


 戻った私は、驚いた…


 部屋に戻ると、誰もいないのが、当たり前なのに、誰かが、いたから、驚いた…


 そして、その誰かというのは、顔を見る前から、わかっていた…


 ナオキだ…


 私のパートナーのナオキだ…


 FK興産社長の藤原ナオキだ…


 今は、いっしょに、住んでいない、私の事実上のパートナーだ…


 「…綾乃さん…お帰り…」


 と、予想通りに、言って、ナオキは、私を出迎えた…


 私をまっすぐに、見て、出迎えた…


 「…どうしたの? ナオキ? どうして、ここにいるの?…」


 私は、とっさに、聞いたが、実は、聞く前から、答えはわかっていた…


 おそらく、今日、ナオキは、私が、あの諏訪野のお屋敷に行くことを、伸明から、聞いていたのだろう…


 それゆえ、伸明が、私の体調を心配して、事前に、ナオキに、知らせて、いたのだろう…


 二人は、友人…


 仲の良い、友人だ…


 だから、そんな連絡が、あっても、おかしくはない…


 それゆえ、


 「…誰に、聞いたの?…」


 と、ナオキに聞いた…


 「…聞いた? どういうこと?…」


 「…しらばっくれないで!…今日、私が、諏訪野のお屋敷に行くことを、伸明さんから、聞いたんでしょ?…」


 私が、言うと、


 「…ブー…」


 と、ナオキが、おちゃらけて、否定した…


 「…違います…」


 ナオキが、笑って否定する…


 「…違う? ウソ?…」


 「…ホント…」


 「…じゃ、誰が?…」


 「…マミさん…」


 「…えっ?…」


 「…彼女が、寿さん、大変だから、傍で、面倒をみてくれと、ボクに、連絡があった…」


 …そういうことか!…


 私は、思った…


 たしかに、今日、私が、あの諏訪野のお屋敷に行くのを知っていたのは、伸明と、マミさん、しか、知らない…


 だから、伸明でなければ、マミさん…


 彼女が、ナオキに教えたに違いなかった…


 ひどく、当たり前のことだった…


 そして、そんなことを、考えていると、


 「…マミさん、随分、綾乃さんのことを、心配していたよ…」


 と、ナオキが、言った…


 「…心配? どうして、心配なの?…」


 「…綾乃さんは、気付かなかったかも、しれないけれども、綾乃さんの顔色が、悪かったと言っていた…」


 「…えっ? 私の顔色が?…」


 驚いた…


 まさか、私の顔色が、そんなに、悪いとは、思わなかった…


 だからかも、しれない…


 そう言えば、マミさんは、終始、不機嫌そうだった…


 私は、マミさんの不機嫌の原因は、あの西家夫妻と、長谷川センセイの妹のせいだと、考えていたが、違ったのかも、しれない…


 マミさんは、たぶん、心配していたのだ…


 私の体調を心配していたのだ…


 そして、それを、私が、誤解した…


 ただ、マミさんは、西家夫妻と、あの長谷川センセイの妹に、不満を募らせていたと、思ったが、同時に、私を、半ば、強引に、あの場に連れて来た、自責の念も、あったのだろう…


 私は、元々、体調に不安を、抱えている…


 先日、脳梗塞で、入院した五井記念病院から、退院したばかり…


 そんな私を半ば、強引に誘って、その私の体調が、悪いと、思ったから、余計に、マミさんは、自分自身を責めたのだろう…


 それが、あの表情になった…


 そういうことだろう…


 私自身は、自分の体調が、悪かったとは、これっぽちも、思わなかったが、マミさんの目から、見れば、そうでは、なかったのだろう…


 違ったのだろう…


 私の体調が、悪く、見えたのだろう…


 そう、思った…


 「…マミさん、綾乃さんに、ごめんと、謝っていたよ…」


 ナオキが、続ける…


 「…体調が、悪いにも、かかわらず、連れ出して、申し訳ないと、謝っていたよ…」


 …そんなことは、ない!…


 …断じて、そんなことは、ない!…


 そう、言いたかった…


 心の底から、言いたかった…


 しかし、それを、今、ナオキに言っても、しょうがない…


 目の前のナオキに、言っても、しょうがない…


 だからといって、今、いきなり、マミさんに連絡しても、しょうがない…


 子供では、ないのだから、さすがに、そんなことは、できるわけは、なかった…


 そして、私が、そんなことを、考えていると、ナオキが、


 「…綾乃さん、愛されているね…」


 と、いきなり、言った…


 実に、思いがけない言葉…


 予想もしない言葉だった…


 それゆえ、つい、


 「…えっ?…」


 と、言ってしまった…


 「…私が、愛されている?…」


 と、言ってしまった…


 「…だって、愛されてなかったら、マミさんは、ボクに、こんな連絡は、しないだろ?…」


 ナオキの言葉に、なにも、言えなかった…


 たしかに、その通り…


 その通りだからだ…


 「…好きなひとじゃ、なければ、わざわざ、ボクに、連絡はしないよ…」


 ナオキが、断言する…


 「…綾乃さん、マミさんに、好かれているんだよ…」


 「…それは、たまたま、マミさんとは、気があって…」


 「…それは、わかる…でも、普通、ここまでは、しないよ…」


 「…ここまでって?…」


 「…わざわざ、ボクに、連絡すること…」


 そう、言われると、言葉もなかった…


 たしかに、ここまで、してくれるひとは、あまりいない…


 マミさんだから、かも、しれない…


 マミさんだから、ここまで、してくれるのかも、しれない…


 それゆえ、


 「…マミさん、だからよ…」


 と、言った…


 「…マミさんだから、ここまで、してくれるのよ…」


 「…いや、違う…」


 「…なにが、違うの?…」


 「…ボクだって、そう…」


 「…どういう意味?…」


 「…綾乃さんだから、今日、ここに来た…」


 「…私だから、来た?…」


 「…そう…」


 「…ウソ、おっしゃい!…私より、若くて、キレイな女から、誘われれば、私をほって、その女のところへ、行くでしょ?…」


 「…それは…」


 「…さあ、認めなさい!…」


 私が、言うと、ナオキが、両手を挙げて、


 「…ハイ、認めます!…」


 と、言った…


 おどけて、言った…


 だから、私も、おどけて、


 「…よろしい!…」


 と、答えた…


 ナオキの道化に、合わせたのだ…


 しかし、そんなことより、今日、それほど、私の顔色が悪かったとは、思わなかった…


 まさか、マミさんが、心配するほど、悪かったとは、思わなかった…


 自分のことは、わからない…


 その典型だった…


 まさに、まさか、だ…


 そんなことを、考えていると、


 「…さあ、綾乃さん、座って…」


 ナオキが、言った…


 「…いつまでも、立ち話も、なんだから…」


 ナオキの言葉通り、ソファに、座った…


 たしかに、今日は、疲れた…


 予想外の展開で、予想以上に、疲れた…


 あの西家夫妻は、想像以上の、ごり押し夫婦だったし、あのハルカという娘も、予想以上の美人だったが、芯が強いと言うか、これもまた、一筋縄では、いかなそうな娘だった(苦笑)…


 だから、それを、思うと、疲れた…


 予想以上に、疲れた…


 それゆえ、ナオキが、いてくれて、よかった…


 いまさらながら、思った…


 これが、一人だったら、落ち込む…


 ひどく、落ち込む…


 そう、思ったのだ…


 そして、すぐに、伸明を思った…


 さきほどまで、会っていた五井の当主を思った…


 なにしろ、当事者…


 今日の見合いの当事者だ…


 あのマミさんが、残って、伸明の面倒を見ていたから、よかったが、これが、一人だったら、伸明は、落ち込むだろう…


 そう、思ったのだ…


 私でさえ、落ち込んだ…


 あの西家夫妻と、ハルカに、落ち込んだ…


 それゆえ、当事者の伸明は、私とは、比較にならないほど、落ち込んだだろう…


 あらためて、そう、思ったのだ…


 伸明から見れば、ハルカは、初対面だが、西家夫妻は、昔ながらの顔なじみ…


 しかし、あの夫妻は、キャラクターが、強烈過ぎる…


 キャラクターが、立ち過ぎている(爆笑)…


 だから、もしかしたら、私が、考えるほど、落ち込まなかったかも、しれないが、さすがに、伸明を、見ていれば、そうでなかったことが、わかる…


 落ち込んでいたのが、わかる…


 誰の目にも、わかる…


 まあ、伸明も、人間…


 それを、思えば、私と、同じ、人間…


 そう、考えれば、安心する…


 実に、安心する…


 そう、思った…


 そう、思ったのだ…


 私と同じように、考え、同じように、行動する…


 だから、安心する…


 が、


 真逆に、世の中には、わけのわからない人間が、いる(爆笑)…


 男女とも、いる…


 わけが、わからないというのは、大抵は、絶対、できないことを、簡単にできると、いう人間…


 簡単に、できると、断言する人間だ…


 伸明を例に取れば、


 「…いかに、大金持ちでも、私と付き合えば、なんとかして、見せる…」

 とか、

 

 「…絶対、落として見せる…」


 と、豪語する女が、いる…


 その豪語する、女を見ても、なにもない…


 美人でも、なければ、かわいくもない…


 頭もよくなければ、性格も、良くない…


 それでも、伸明と知り合えば、落として見せると、豪語する…


 はっきり言って、頭がおかしいんじゃと、言いたくなるが、それでも、その手の女は、必ず、いる(爆笑)…


 男も、また、同じ…


 絶対にできないことを、できると、簡単に、断言するものが、必ず、いる…


 会社で言えば、出世だったり、結婚で言えば、美人と結婚することだったり…


 できないことを、できると、断言するものが、必ずいる(爆笑)…


 そして、断言するものは、平凡なひと、あるいは、平凡以下のひと(苦笑)…


 要するに、頭が、よくなかったり、顔がよくなかったりするが、ひたすら、上昇志向が、強い人間だ…


 そういう人間は、苦手…


 っていうか、受け入れられない…


 今日、会った、あの西家夫妻と、長谷川センセイの妹のハルカも、自己主張の強い人間に見えたが、その自己主張の強い理由も、納得する…


 西家夫妻は、五井一族だから、お金持ち…


 だから、自己主張が、強くても、納得する…


 そして、あのハルカも、また美人だから、納得する…


 また、ハルカの兄の長谷川センセイも、五井記念病院に勤務する外科医だから、生まれもまた、良いのだろう…


 そんな環境に生まれたハルカだから、少々、気が強くても、納得する…


 だから、あの西家夫妻とハルカという女性と会って、厄介だなと、たぶん、私もだが、あの伸明も、思ったに違いないが、納得する…


 彼らの個性の源がわかるからだ…


 なぜ、プライドが、高いのか、わかるからだ…


 だから、言葉を変えれば、平凡な人間…


 平凡=普通の人間だ…


 それゆえ、対処の仕方がある…


 対抗の仕方がある…


 そう、思った…


 そう、思ったのだ…


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