↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
寿綾乃という女 第4部  作者: トモサン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
44/225

寿綾乃という女 第4部 44

 そして、それは、マミさんも、同じだったようだ…


 私と同じだったようだ…


 「…伸明さんの気持ちは、わかる…」


 と、マミさんが、伸明に、声をかけた…


 「…でも、だからと言って、お酒を飲むのは、正しくないわ…お酒を、飲むのは、楽しくなくちゃ…」


 マミさんが、優しく、声をかける…


 「…だから、伸明さん、それ以上、飲まないで…」


 伸明は、なにも、言わなかった…


 なにも、言わず、ハイボールの缶を口に運んだ…


 「…ねっ、お願い…」


 マミさんが、伸明に、懇願する…


 さすがに、伸明も、マミさんの言葉を無視できないと、悟ったのか、


 「…これが、最後…まさか、途中で、飲まずに、捨てるような真似は、できない…」


 と、言って、一気に、残りを、飲み干した…


 「…これで、終わり…」


 伸明は、笑って言う…


 それを、聞いて、マミさんは、ホッとした表情になった…


 明らかに、マミさんの表情が、和らいだ…


 そして、それは、伸明も、気付いたようだ…


 「…マミさん…」


 と、すばやく、声をかけた…


 「…なに? 伸明さん?…」


 「…こんなことで、へこたれて、いられないよ…」


 「…」


 「…こんなことで、いつまでも、このハイボールの缶を、5本も、10本も、飲んでたんじゃ、この先、どうなるか、わからない…」


 「…」


 「…いや、どうなるか、わからないんじゃない…わかる…」


 「…わかる? どうなるの?…」


 「…立派なアルコール依存症になる…」


 伸明が、言って、笑った…


 実に、楽しそうに、笑った…


 が、


 その笑いは、寂しそうでも、あった…


 実に、寂しそうでも、あった…


 それから、伸明は、私の方を、向き、


 「…寿さん…」


 と、私に、声をかけた…


 「…ハイ…なんでしょうか?…」


 「…どうして、そんなに、強いんですか?…」


 「…えっ?…」


 「…寿さんを、見ていると、いつも、堂々としている…」


 「…」


 「…病院に、見舞いに、行った時も、そう…ベッドで、寝ているのに、なぜか、堂々としている…」


 「…」


 「…寿さんは、生まれつき、強かったんですか?…」


 「…」


 「…教えて、下さい…」


 伸明が、聞く…


 真顔で、聞く…


 それを、見た、マミさんが、


 「…ちょっと、伸明さん、飲みすぎ…」


 と、言って、伸明を制した…


 それから、私に、向かって、


 「…ごめんなさい…寿さん…」


 と、私に謝った…


 そして、


 「…今日は、もうこの辺で…」


 と、暗に私に帰るように、促した…


 が、


 伸明は、収まらなかった…


 「…どうして、寿さんは、そんなに、強いんですか?…」


 と、繰り返した…


 それを、見て、マミさんが、


 「…伸明さん、いい加減にして…」


 と、伸明を叱った…


 「…寿さん、迷惑よ…」


 マミさんが、言う…


 が、


 そんなマミさんを、私が、制した…


 「…全然、迷惑なんかじゃ、ありませんよ…」


 と、言って、制した…


 それから、続けて、


 「…全然、強くなんか、ありませんよ…


 と、ぶっちゃけた…


 「…たぶん、強く見えるだけです…」


 と、ぶっちゃけた…


 「…強く、見えるだけ?…」


 「…そうです…」


 「…」


 「…たぶん、みんな同じです…」


 「…同じ…」


 と、マミさん。


 「…そう、同じです…」


 「…どう、同じなんですか?…」


 と、伸明。


 「…ただ、強く見えるだけ…」


 「…」


 「…この歳になって、気付いたことがあります…」


 「…なにに、気付いたんですか?…」


 と、伸明。


 「…ほら、学校でも、会社でも、集団の中で、リーダシップを取るひとって、いるでしょ?…」


 「…」


 「…あれは、一体、なんでか、考えたんです…」


 「…」


 「…要するに、頼れると、他の人たちから、思われるから…だから、リーダーシップを取れる…」


 「…」


 「…ぶっちゃけ、そのひとの生まれ持った才能です…」


 「…才能?…」


 と、伸明。


 「…そう、才能です…」


 「…」


 「…ですが、それと、そのひとが、頭が、いいとか、仕事ができるかとは、あまり、関係が、ない…」


 「…」


 「…ただ、頼れて見えるだけ…それだけです…」


 「…つまり、寿さんも、それと、同じだと?…」


 と、伸明。


 が、


 私は、それには、答えず、


 「…案外、そのひとの持つ、能力と、そのひとが、夢見ることって、違うと、思いました…」


 と、言った…


 「…どういうことですか?…」


 と、伸明。


 「…誰が、見ても、イケメンなのに、女には、さほど、興味がなかったり、真逆に、イケメンでも、なんでもないのに、美人ばかり、狙ったり…会社で言えば、いい大学を出ているにも、かかわらず、出世志向というか、上昇志向がなかったり、真逆に、学歴も、ないのに、ただ、上昇志向が、高かったり、要するに、本人の実力と、本人が、思い描く未来と、なんの関係がないと、思ったんです…」


 私が、言うと、伸明は、なにも、言わなかった…


 マミさんも、同じだった…


 が、


 しばらくして、伸明が、


 「…辛辣だな…」


 と、ポツリと、言った…


 「…辛辣でしょうか?…」


 と、私。


 「…それは、辛辣だよ…寿さん…」


 まあ、それを、聞いて、内心、私も、言い過ぎたと、思った…


 さすがに、言い過ぎたと、思った…


 が、


 マミさんが、


 「…それは、わかる…」


 と、私を擁護した…


 「…寿さんの言うことは、わかる…私も小さいながらも、会社を経営しているから、わかる…」


 と、言って、養護した…


 「…自分が、できないことを、平然と口にするひとも、数は、少ないけれど、いる…だから、寿さんの言うことは、わかる…」


 「…わかりますか?…」


 「…わかる…」


 私とマミさんの、そんなやりとりを聞いて、伸明が、


 「…女は、辛辣だな…」


 と、一言。


 そう、言って、実に、愉快そうに、笑った…


 「…男は、そこまでは、言わない…思っていても、言わない…」


 と、言って、笑った…


 が、


 その辛辣な言葉で、この場の空気も、少しは、柔らかく、なった…


 さっきから、比べれば、柔らかくなった…


 そして、私が、そんなふうに、思っていると、


 「…だから、結婚は、怖い…」


 と、ポツリと、伸明が、漏らした…


 私は、内心、


 …えっ?…


 と、思ったが、さすがに、口にしなかった…


 さすがに、まずいと思ったからだ…


 が、


 私が、そんなことを、思っていると、伸明が、さらに、


 「…この歳だ…子供じゃない…だから、余計に、結婚が、怖くなる…」


 と、続けた…


 それを、見たマミさんが、


 「…伸明さん…飲みすぎ…しゃべり過ぎ…」


 と、言って、伸明を制した…


 が、


 伸明は、止まらなかった…


 「…だから、もう自分では、選べなくなる…」


 伸明が、仰天の言葉を言った…


 「…選べなくなるって?…」


 と、私。


 「…要するに、アレコレ、考え過ぎる…相手のルックス、性格、家柄…アレコレ、考え過ぎる…」


 「…」


 「…だから、できなくなる…結婚が、できなくなる…」


 「…」


 「…誰もが、ある程度、歳を取った人たちは、結婚は、勢いと言うけれども、ボクには、もう、その勢いもない…」


 「…」


 「…だから、ホントは、今回のように、半ば、強引な形で、結婚すれば、いいのかも、しれないけれど、それで、結婚すれば、今度は、西家の力が、強まる…だから、それも、難しい…」


 伸明が、苦笑する…


 「…ボクの気持ち…ボクの立場、相手の立場など、考えることが、あり過ぎる…だから、寿さんと、結婚したかった…」


 「…えっ?…」


 「…寿さんと、結婚すれば、そんなこと、悩まなくて、すむ…」


 「…ウソ?…」


 「…ホントです…それに…」


 「…それに、なんですか?…」


 「…寿さんは、頼れる…だから、いっしょに、五井家の運営を相談しながら、やっていけると、思った…」


 伸明が、仰天の告白をした…


 私は、呆気に取られたが、驚きは、なかった…


 なぜか、なかった…


 そして、それは、どうしてか、考えた…


 答えは、すぐに、見つかった…


 ナオキだ…


 藤原ナオキだ…


 私のパートナーである、藤原ナオキだ…


 FK興産社長の藤原ナオキだ…


 ナオキと、いっしょ…


 ナオキが、よく、私に言うセリフだったからだ…


 そして、それを、聞いて、あらためて、


 …似ている…


 と、思った…


 この五井家当主、諏訪野伸明と、藤原ナオキは、似ていると、思った…


 たぶん、人間の種類が、同じ…


 ルックスも、長身のイケメンで、似ているが、性格も、似ている…


 基本的には、おとなしい…


 だから、気が合う…


 二人とも、気が合うのだろう…


 あらためて、思った…


 思ったのだ…


 が、


 私が、そんなことを、考えて、伸明を見ていると、マミさんが、私を見ていることに、気付いた…


 私を、ジッと、見ていることに、気付いた…


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。