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寿綾乃という女 第4部  作者: トモサン


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40/225

寿綾乃という女 第4部 40

 しかしながら、


 漫才=穏やか


 でもある。


 この場を流れる空気が、この会話で、一気に、和やかになった…


 この場を仕切る空気が、当初の緊張した雰囲気から、一気に、穏やかになった…


 そして、それは、当事者のハルカのみならず、全員そう…


 この場にいる、全員が、そうだった…


 伸明を筆頭に、西家夫妻も、そうだった…


 が、


 例外が、いた…


 いわずと知れた、マミさんだった…


 伸明の妹のマミさんだった…


 この伸明のやり取りで、笑っては、いたが、どこか、表情が、ぎこちないというか…


 心の底から、笑っていないのは、明らかだった…


 それは、やはり、この縁談が、成功したら、西家の力が、増すから…


 五井一族の中で、西家の影響力が、増すから…


 それが、理由だろう…


 妹として、伸明の見合い=結婚が、成功するのは、嬉しいかも、しれないが、それと、これは、別…


 ハルカの人柄も、別…


 伸明が、これを機に、結婚するのは、嬉しいだろうが、その結果、五井家内で、西家が、力を持つことで、五井家内のパワーバランスが、崩れることを、恐れたのだろう…


 当たり前のことだ…


 だから、笑えない…


 心の底から、笑えない…


 そういうことだ…


 そして、それと、真逆なのが、長谷川センセイ…


 妹のハルカが、伸明に気に入られたのが、嬉しいのだろう…


 終始、顔が、ほころんでいた…


 いや、


 ほころんでいたというより、嬉しそうだった…


 誰の目にも、嬉しそうだった…


 そして、仲人の西家夫妻はというと、


 …上機嫌…


 と、いう言葉が、正解だった…


 …上機嫌…


 なのは、わかる…


 自分たちが、紹介したハルカを伸明が、気に入ってくれたのが、嬉しいからだ…


 そして、もう一人の当時者のハルカはと言うと、これも、また、嬉しそうだった…


 思ったよりも、伸明が、カッコよく、それでいて、偉ぶらないのが、気に入ったのだろう…


 なにしろ、伸明は、五井家当主…


 40歳の若さだが、五井家当主だからだ…


 だから、十歳以上、年下のハルカから、見れば、偉ぶったオヤジが、やって来ると、思ったのかも、しれない…


 なにしろ、伸明の顔は、写真では、わかるかも、しれないが、実際は、どんな人間か、わからないからだ…


 伸明は、有名人だから、ネットで探せば、外見=写真やインタビューに応じた姿を、見られるかも、しれない…


 だが、それだけでは、本当の人柄が、わからない…


 本当の人柄が、わかるのは、いっしょにいる人間…


 学校や、会社等で、近くで、接する人間だ…


 さもないと、どういう人間か、わからない…


 当たり前だ…


 だから、それを、考えれば、今は、ただ単に、伸明は、ハルカに合わせたに過ぎないのかも、しれない…


 が、


 それとも、その考えは、うがち過ぎ…


 考え過ぎかも、しれない…


 考えれば、考えるほど、答えは、出ない…


 だから、考え過ぎては、いけない…


 何事も、考え過ぎては、いけない…


 そして、そんなことを、考えていると、ふと、思った…


 これは、まるで、合コン…


 大人の合コンと、似ていると、思った…


 もちろん、この中で、見合いのセッティングは、このハルカと、伸明だけだが、集団で、会うのは、合コンと似ている…


 やはり、最初は、二人だけは、気まずい…


 初めて会うのに、二人だけは、気まずい…


 だから、集団で、会う…


 例えば、男女が、三対三の六人で、会う…


 それから、気が合えば、今度は、その中の気に入った者同士が、連絡先を交換して、会う…


 そうすれば、今度は、二度目だし、相手のことが、少しは、わかったからだ…


 だから、気まずくない…


 最初、会ったときと、比べれば、気まずくない…


 それと、同じだ…


 それゆえ、今回は、出会い…


 これから、交際に発展するのだろうか?


 この伸明とハルカの交際に発展するのだろうか?


 考えた…


 が、


 当然、答えは、出ない…


 ただ、私は、その後、黙って、二人のやりとりを、聞いていた…


 二人の傍らで、聞いていた…


 なにしろ、私の立場がある…


 私の立場は、ゲスト…


 伸明と、ハルカが、気まずくならないように、するためのゲストだからだ…


 だから、でしゃばらないように、聞いていた…


 が、


 そんな私に、突然、ハルカが、聞いてきた…


 突然、


 「…失礼ですが、ご結婚されているんですか?…」


 と、聞いてきた…


 これには、驚いた…


 なぜなら、私は、今日の主賓ではない…


 あくまで、数合わせの要員…


 食事で、言えば、メインディッシュではない…


 前菜程度の扱いだからだ…


 だから、このハルカの突然の質問に、戸惑っていると、


 「…こら、ハルカ!…」


 と、長谷川センセイが、叱った…


 「…寿さんに、失礼だぞ!…」


 と、叱った…


 私は、それを、見て、


 「…別に、いいんですよ…」


 と、私は、長谷川センセイに言った…


 「…よく、聞かれることです…」


 と、続けた…


 「…で、ご結婚しているんですか?…」


 と、ハルカ。


 「…いえ、まだ…」


 と、私。


 その答えを、聞いた、ハルカが、


 「…だったら、お兄ちゃんにも、チャンスがあるね…」


 と、長谷川センセイに、笑いかけた…


 それを、聞いた長谷川センセイが、慌てた…


 慌てた表情で、


 「…バカ、寿さんには、立派な相手が、いるよ!…」


 と、ハルカに、言った…


 「…ただ、まだ、ご結婚されてないだけだ…」


 長谷川センセイの言葉を聞いたハルカが、


 「…なーんだ…」


 と、落胆した…


 「…当たり前だろ!…」


 と、長谷川センセイ。


 が、


 その意見にハルカは、与しなかった…


 「…全然、当たり前じゃないよ、お兄ちゃん…」


 と、言った…


 「…なに? 当たり前じゃない?…どうしてだ?…」


 「…美人って、案外、モテないんだよ…」


 と、ハルカ。


 「…なに、モテない?…どうしてだ?…」


 「…高嶺の花というか…たしかに、キレイなんだけれども、話しかけづらい雰囲気を持っていたりするから…」


 ハルカが、解説する…


 私は、それを、聞いて、さもありなん、と、思った…


 これは、私自身も、経験がある…


 いくら、キレイでも、話しかけづらい、女性は、モテない(苦笑)…


 これは、断言できる…


 要するに、誘いづらいからだ…


 だから、モテない…


 だから、この私も、ホントは、それほど、モテない(苦笑)…


 自分で、言うのも、なんだが、外見は、いいが、話しかけづらい(爆笑)…


 だから、モテない…


 そして、それを、思えば、このハルカも、そう…


 そうだ!


 私と同じだ…


 そして、このハルカと、似ている、以前、一度だけ、会った、彼女も、そう…


 高見ちづるも、そうだ…


 同じだ…


 美人だけれども、話しかけづらい…


 それが、共通している(爆笑)…


 だから、世間のひとが、思うほど、モテない…


 そういうことだ…


 そして、そんな私たちの会話を伸明は、面白そうに、見ていた…


 実に、楽しそうに、見ていた…


 一方、西家夫妻は、というと、この会話に入って、来れなかった…


 自分たちの、息子や、娘の世代の会話に入って来れなかった…


 だから、口を出せなかった…


 そして、もう一人の出席者のマミさんは、というと、終始、憂鬱な表情だった…


 私たちの会話を、聞いて、笑うことは、あったが、終始、憂鬱な表情をしていた…


 それは、やはり、この長谷川センセイと、ハルカが、もし、うまくいったら、西家の勢力が、伸びるから…


 それゆえ、五井内のパワーバランスが、崩れるから…


 それを、恐れて、このマミさんは、憂鬱な表情をしている…


 そう、思った…


 そう、思ったのだ…


 

 結局、それから、二時間ぐらいだろうか?


 普通に、おしゃべりをして、食事をしてから、帰ることになった…


 食事といっても、驚いたのは、寿司だったが、わざわざ、職人が、やって来て、目の前で、寿司を握ってくれたからだ…


 これには、仰天した…


 こんな贅沢は、あまり、なかった…


 FK興産時代も、会社のパーティー等では、あった…


 イタリア料理でも、フランス料理でも、専門の料理人が来て、料理を作ることは、あった…


 が、


 家庭では、ない…


 プライベートでは、ない…


 それが、当たり前だった…


 そして、そんな光景に驚きながらも、一方で、こんな贅沢な生活に、馴染んじゃ、ダメ!…


 という、声が、した…


 心の声が、した…


 もう一人の、私の声が、した…


 あまり、裕福でない、子供時代を過ごした私に、してみれば、ありえない贅沢…


 こんな大きな家に住み、職人を、自宅に、呼んで、寿司を振る舞うなど、ありえない贅沢…


 そんな、ありえない贅沢を拒否する、私が、いた…


 これは、やはり、私の生い立ちが、影響しているのだろう…


 シングルマザーの母親といっしょに、過ごした、15歳までの、生活が、影響しているのだろう…


 私自身は、FK興産の社長秘書として、過ごし、億ションに住んでいる…


 世間から、見れば、成功者…


 まぎれもない、成功者だ…


 にもかかわらず、心の中で、


 「…綾子…そんな生活に、慣れちゃ、ダメよ!…」


 「…綾子…世の中は、厳しいの…生きることって、大変なの…それを、肝に銘じて、生きていきなさい!…」


 と、そんな声が、聞こえてきた…


 母の声が、聞こえてきた…


 それゆえ、出された、お寿司は、美味しくて、文句のつけようもなかったが、私の心は沈んでいた…


 見事なまでに、沈んでいた(涙)…


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