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寿綾乃という女 第4部  作者: トモサン


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32/225

寿綾乃という女 第4部 32

 時間は、あっと言う間に過ぎた…


 時間というのは、伸明の見合いの日までの時間…


 光陰矢の如し(苦笑)…


 それこそ、あっと言う間に、やって来た…


 そして、それまでに、私の体調も、だいぶ、回復した…


 だいぶ、良くなった…


 ひとえに、これは、時間が経ったから…


 時間が、経って、体力が、回復したからに、他ならない…


 いくら、今の最新の医療でも、一番、大切なのは、時間…


 時間に、他ならない…


 今回、私がなった、軽い脳梗塞も、時間が大切…


 自分が、倒れたら、急いで、救急車を、呼んで、病院に駆け込むのが、大切…


 早めに、治療できるからだ…


 これは、癌でも、なんでも、同じ…


 どんな病気でも、早めに発見して、病院で、治療してもらうことが、大切…


 そして、今度は、治る時間…


 病気が、治癒する時間…


 これも、大切…


 風邪を、例に取れば、わかるが、風邪にかかるのは、一日でかかるが、治るのは、最低でも、三日は、かかる…


 つまり、病気になるより、病気を治す時間の方が、はるかに、かかるということだ…


 もちろん、私も同じ…


 私も、例外では、ない…


 私の場合は、軽い脳梗塞だったが、やはり、回復するのに、時間が、かかった…


 幸い、私は、まだ32歳…


 十分、若い(苦笑)…


 だから、たいした後遺症もなかった…


 これが、高齢なら、話は、別…


 巨人軍の長嶋茂雄終身名誉監督ではないが、高齢で、脳梗塞で、倒れると、最悪、死だ…


 そして、死ぬことが、なくても、後遺症が、残ることが、大半…


 右半身や左半身が、動かなくなったり、口が、きけなくなったりする…


 つまりは、脳梗塞の名前の通り、脳が、ダメージを受けることにより、それが、肉体に及ぶ…


 肉体は、なんのダメージが、起きていなくても、肉体に指示を与える脳がダメージを負うことで、肉体を、動かせなくなるからだ…


 私の場合は、幸い、若かったから、ダメージがなかった…


 しかしながら、これが、六十代、七十代となれば、私もダメージを負うだろう…


 もしかしたら、松葉杖をついたりすることになるかも、しれないし、車いすに乗ることもあるかも、しれない…


 だから、運が、よかった…


 今回は、運が、よかった…


 が、


 この先は、気をつけねば、ならない…


 食生活から、改善しなければ、ならない…


 運動も、しなければ、ならない…


 いや、


 運動は、しなくて、いいかも、しれない…


 自宅から、徒歩で、会社通勤をしていれば、歩くことが、運動になるからだ…


 いや、今は、私は、会社勤めをしていない…


 無職…


 働いていない…


 ナオキが、私をFK興産の非常勤の取締役にしてくれたから、ホントは、無職では、ないが、事実上の無職…


 だから、今、家にいる…


 家から、一歩も、出ないで、いる…


 にもかかわらず、お金に困っていない…


 FK興産の非常勤の取締役ゆえに、毎月、私の口座に、お金が、振り込まれるからだ…


 だから、私は、今、事実上の無職に限らず、生活ができる…


 生きて行ける…


 私は、そんなことを、考えた…


 私は、そんなことを、思った…


 そして、そんなことを、思うと、先日、スパーで、ユリコと会ったとき、ユリコが、言った言葉…


 「…寿さんって、まるで、病気のデパートみたいね…」


 と、言われた言葉が、痛い…


 実に、痛い…


 なぜなら、的を得ているから…


 実に、的を得ていて、反論できないからだ…


 私自身は、運命…


 これも、運命と諦めている…


 いくら、泣いても、嘆いても、仕方がないからだ…


 それゆえ、運命と諦めている…


 そして、そんなことを、考えていると、マミさんが、やって来た…


 私を迎えに、やって来た…


 私を伸明の見合いの席に、呼んだのだ…


 マミさんは、伸明の妹…


 血は繋がってないが、妹だ…


 それゆえ、妹として、伸明の見合いの席に、いっしょに、いることが、できる…


 伸明の親族として、出席できる…


 しかしながら、その席に、私も、マミさんの友人として、出席して、欲しいと、マミさんに、頼まれた…


 伸明には、今は、このマミさんしか、身近な親族がいない…


 それゆえ、マミさんは、心細いのだろう…


 だから、私を呼んだ…


 父の建造は、亡くなり、産みの母の昭子は、いるが、五井とたもとを分かった…


 五井を出た…


 双子の妹の和子と、たもとを分かった…


 それゆえ、今は、伸明に母はいない…


 だから、今は、和子が、母替わり…


 四十を過ぎた男の母親代わりというと、おかしいが、それでも、まだ四十は、若い…


 一族の中で、若い…


 一族の中では、年長者が、たくさんいるからだ…


 いくら当主といっても、伸明が、子供の頃から、知っている、伸明の親と同じ世代の人間に、伸明が、デカい態度を取れるわけが、ない…


 それゆえ、和子が、必要になる…


 和子という後ろ盾が、必要になる…


 そういうことだ…


 私は、そんなことを、思いながら、当日、マミさんを迎えた…


 マミさんは、当然のことながら、おしゃれをしていた…


 派手さはないが、落ち着いた感じで、全体をまとめていた…


 マミさんも、たしか、35歳…


 いかに、マミさんが、小柄で、若く、見えても、実際に、若いわけでは、ない(苦笑)…


 それに、血が繋がっていないとはいえ、兄の見合いの席で、派手な服装は、できない…


 もしかしたら、伸明の見合い相手よりも、目立ってしまいかねないからだ…


 だから、できない…


 そして、私はといえば、やはり、あまり、目立たない感じの服装だった…


 地味目な、感じのワンピースだった…


 だから、下手をすると、幼稚園の入園式の母親の格好…


 シックにまとめているが、地味…


 地味だ…


 なにしろ、幼稚園の入園式だ…


 例えば、まだ母親が、若く、ミニスカを、普段は、履いていても、ミニスカで、子供の入園式に行く親はいない(爆笑)…


 そういうことだ…


 マミさんは、私を見て、


 「…寿さん、きれい…」


 と、私を褒めた…


 私は、なんだか、恥ずかしくなった…


 まったくの他人に言われるのなら、まだいい…


 しかしながら、普段、親しくしている、身近な友人に言われるのは、恥ずかしい…


 なんだか、嫌…


 いや、


 これが、マミさんだから、いいが、仲が悪い友人、知人なら、その言葉の意味通りにとらない…


 額面通りにとらない…


 例えば、これが、ユリコなら、


 「…あら、なに、寿さん、そんな気合を入れた格好をして? もしかしたら、伸明さんの見合い相手と、張り合うつもり? 相変わらず、どんな場所でも、目立ちたいのね?…」


 と、でも、言われそう…


 そして、そう言われたら、言い返せない…


 反論できない…


 ユリコの言葉を反論できない…


 ユリコが今言った言葉を、言い返せない…


 それは、なぜか?

 

 それは、図星だからだ…


 まさに、図星…


 私自身は、そこまで、考えてなかったが、図星…


 きっと、私の心のどこかで、伸明の見合い相手に、対抗心を抱いている…


 それを、見抜かれた…


 そう思うからだ…


 自分自身、意図していなかった感情を指摘された…


 それが、恥ずかしい…


 実に、恥ずかしい…


 自分自身、意識はしていないが、今日、これから会う伸明の見合い相手が、どんな女なのか、気になる…


 実に、気になる(苦笑)…


 だから、無意識に、対抗心を燃やす…


 まだ、見ぬ相手に対抗心を燃やす…


 そういうことだ…


 が、


 目の前のマミさんは、そんな私の気持ちに気付いただろうか?


 いや、


 マミさんは、たとえ、私のそんな気持ちに気付いたとしても、なにも、言わない…


 決して、言葉にしない…


 思っていても、胸の中にしまっておく…


 だから、信頼できる…


 このマミさんは、信頼できる…


 信用できる…


 あらためて、そう、思った…


 そう、思ったのだ…


 そして、そう思っている間に、


 「…さあ、寿さん、行こう…」


 と、私の手を握り、歩き出した…


 マミさんは、せっかち…


 挨拶も、早々に、すぐに、階下に、降りて、出発しようとする…


 私は、苦笑したが、それが、マミさんだと、思った…


 いつものマミさんだと、思った…


 しかしながら、歩く速度が速い…


 それゆえ、私は、つい、


 「…マミさん、そんな早く歩かなくても…」


 と、マンションの共用通路で、文句を言った…


 すると、マミさんが、私に謝った…


 「…ごめん、寿さん…つい、緊張して…」


 と、謝った…


 「…今日、どんな相手が、やって来るのかと、思うと、緊張して…」


 「…」


 「…それで、無意識に、歩くのが、早くなっちゃって…」


 マミさんが、詫びる…


 が、


 この言葉を聞いて、むしろ、私は、ホッとした…


 なぜなら、このマミさんが、緊張しているのが、わかったからだ…


 伸明の親族のマミさんが、緊張しているのが、わかったからだ…


 それゆえ、安心した…


 なぜなら、私も緊張していたからだ…


 第三者の私も緊張していたからだ…


 伸明が、どんな女と見合いをするのか?


 伸明の恋人でも、なんでもない、私が、緊張していたからだ…


 伸明の友人、知人に、過ぎない、私が、緊張していたからだ…


 もしかしたら、私は、まだ伸明に未練がある?


 もしかしたら、私は、まだ伸明と結婚したいと、思っている?


 自分自身に、問うた…


 自分自身の気持ちに、気付いた…


 今さらながら、気付いた…


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