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寿綾乃という女 第4部  作者: トモサン


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221/225

寿綾乃という女 第4部 221

 長谷川センセイの完敗だった…


 別に、昭子と、長谷川センセイが、勝負しているわけでも、なんでもなかったが、昭子の圧勝だった…


 この勝負、昭子の圧勝だった…


 が、


 これだけでは、終わらなかった…


 昭子の追及は、終わらなかった…


 昭子は、さらに、言った…


 「…長谷川センセイは、今、五井一族として、認められたと、言いましたが、そもそも、その前提は、長谷川センセイの妹さんが、五井一族だと言うことが、前提でしょ?…伸明の見合い相手として、西家の当主に、紹介するのだから…」


 と、長谷川センセイに、問いかけた…


 長谷川センセイは、


 「…」


 と、無言だった…


 答えられなかった…


 「…ですが、そもそも、その前提が、崩れている以上、長谷川センセイを五井一族として、認められないんじゃ…」


 と、昭子が言った…

 伸明を、見て、言った…


 私は、それを、聞いて、


 …それが、狙いか!…


 と、悟った…


 …それが、目的だったか!…


 と、悟った…


 なぜ、わざわざ、この昭子が、長谷川センセイに、ハルカの話題を持ち出したか、わかった…


 長谷川センセイは、絶句した…


 絶句して、言葉が、出なかった…


 が、


 すぐに、気を取り直して、


 「…でも、ボクには、五井の血が流れています…」


 と、訴えた…


 自らの正統性を訴えた…


 が、


 その言葉は、昭子には、届かなかった…


 「…それは、知っています…」


 と、にべもなかった…


 「…それよりも、アナタのウソ…」


 「…ボクのウソ?…」


 「…五井の血が流れていない妹さんを、伸明の見合い相手として、紹介した、ウソ…」


 と、昭子は、長谷川センセイに詰めよった…


 「…そんなウソを言う人間を信じられますか? そんな大切なことを、ウソを言う人間を、五井一族として、認めることができますか?…」


 と、昭子は、激しく、長谷川センセイをなじった…


 「…どうですか?…」


 と、長谷川センセイに、詰め寄る…


 しかし、長谷川センセイは、


 「…」


 と、なにも、言えなかった…


 「…」


 と、黙ったままだった…


 次に、昭子は、伸明に聞いた…


 「…伸明、アナタは、どう、思う?…」


 と、聞いた…


 伸明はあっさりと、


 「…そんな人間は、信用できませんね…」


 と、答えた…


 昭子は、さらに、


 「…だったら、五井一族としては、どう? 認められる?…」


 と、聞いた…


 伸明は、無言で、首を横に振った…


 それを、見た、長谷川センセイは、その場に崩れ落ちんばかりに、落ち込んだ…


 「…そんな…」


 と、言って、落ち込んだ…


 「…そんな、バカな…」


 と、言って、その場に、へたりこみそうに、なった…


 「…ボクは、ただ…」


 「…ただ、なんですか?…」


 昭子の質問に、長谷川センセイは、黙った…


 「…」


 と、黙った…


 昭子は、それを、見て、


 「…妹さんを、伸明に紹介したのは、アナタの提案ですか?…」


 と、聞いた…


 長谷川センセイに、直球で、聞いた…


 これもまた、長谷川センセイは、答えられなかった…


 「…」


 と、黙ったままだった…


 それを、見た、昭子は、


 「…案外、誰かの入れ知恵かしら?…」


 と、言った…


 まるで、鎌をかけるように、言った…


 その問いかけに、明らかに、長谷川センセイは、動揺した…


 ピクリと、カラダを動かした…


 そして、昭子は、続けた…


 「…まさか、女?…」


 と、続けた…


 まるで、長谷川センセイを、からかうかのように、続けた…


 長谷川センセイは、なにも、言わなかったが、伸明が、昭子に、


 「…どうして、女なんですか?…」


 と、聞いた…


 不思議そうに、聞いた…


 昭子は、間髪入れずに、


 「…だって、犯罪の陰に女ありって、昔から、言うでしょ?…」


 と、答えた…


 それを、聞いて、ますます、長谷川センセイは、動揺した…


 「…そうでしょ? 藤原さん…」


 と、今度は、昭子は、ナオキに、語りかけた…


 それで、ようやく、わかった…


 ようやく、ピンと来た…


 それゆえ、すぐに、言った…


 間髪入れずに、すぐに、


 「…まさか、ユリコさん…」


 と、私は、口にした…


 たしかに、以前、この長谷川センセイとユリコさんが、二人で、仲睦まじく、スーパーで、買い物をしている姿を見たことがある…


 しかし、さすがに、ユリコが、そこまで、やるとは、思わなかった…


 いや、


 そもそもの発端が、ユリコだとは、思わなかった…


 まさか、思わなかった…


 まさか、考えも、しなかった…


 それから、昭子は、ナオキを見た…


 藤原ナオキを見た…


 そして、言った…


 真剣な表情で、言った…


 「…藤原さん、女選びは、大切ですよ…」


 と、昭子は、子供に言うように、言った…


 「…藤原さんは、経営者…一代で、FK興産を立ち上げた、立派な経営者…でも、そのFK興産が、今、五井グループに飲み込まれるか、否かの、瀬戸際…それゆえ、誰かを頼るのは、わかる…誰かに、経営の相談をしたくなるのは、わかる…」


 と、昭子は、諭すように、続けた…


 「…でも、さすがに、前の奥様では、それが、よくないんじゃ…」


 昭子の指摘に、ナオキは、困惑した…


 長谷川センセイ同様、顔色が変わった…


 「…藤原さんには、失礼な物言いですが、藤原さんには、ここに、良いパートナーの方が、いらっしゃるでしょ?…」


 昭子は、私を言った…


 明らかに、私のことを、言った…


 が、


 それを、聞いたナオキが、ポツリと漏らした…


 「…綾乃さんに、会社の経営のことを、相談しても…」


 と、漏らした…


 当たり前のことを、漏らした…


 たしかに、私に会社の経営の相談をされても、答えようがない…


 会社の経営に関しては、素人…


 素人そのものだからだ…


 まして、私は、高卒…


 頭も、良くない…


 ナオキや、ユリコのように、難関大を卒業したわけでも、なんでもない…


 だから、とても、相談相手には、なれない…


 ナオキの会社の経営に対する相談相手には、なれない…


 いかに、ナオキと、十五年、FK興産に、関わっていても、できない…


 私は、ナオキの秘書…


 単なる社長秘書に、過ぎないからだ…


 それに、比べ、ユリコは、パートナー…


 ナオキの経営のパートナーだった…


 だから、十分に、ナオキは、ユリコに、相談できる…


 ユリコは、会社の経営の相談をするには、打ってつけの相手…


 それだけの技量がある…


 それだけの知識がある…


 しかしながら、まさか、ユリコとは?


 まさか、ユリコが、ナオキの相談相手として、ナオキと接していたとは?


 夢にも、思わなかった…


 考えもしなかった…


 いや、


 前兆はあった…


 予感は、あった…


 私は、それを、見過ごしただけ…


 私は、それに、気付かなかっただけだ…


 その予感とは、以前、ナオキに、ユリコについて、聞いたとき…


 「…ユリコさんを嫌い?…」


 と、聞いたとき…


 「…嫌いじゃない!…」


 と、ナオキは、ハッキリと、答えた…


 私は、ナオキに、


 「…どうして、嫌いじゃないの? ナオキ、アナタは、ジュン君を、自分の息子だと、ユリコさんに騙されて、育てた…自分の息子でもない、ジュン君を、自分の息子と、思って育てた…それなのに、どうして、嫌いじゃないの?…」


 と、聞いた…


 ナオキの答えは、


 「…好きでも、嫌いでもない…」


 だった…


 そして、そう、考えれば、わかる…


 そもそも、嫌いならば、結婚など、しない…


 好きだから、結婚する…


 当たり前のことだ…


 そして、ナオキが、ユリコに騙されていても、嫌いになれないのは、そもそも、二人の相性が合うのだろう…


 そうでなければ、受け入れられない…


 自分を騙した女を、受け入れるはずがないからだ…


 つまりは、窮地に陥ったナオキは、かつての女房に相談した…


 相談相手として、選んだということだ…


 その結果、私の情報は、ダダ洩れ…


 いや、


 私だけじゃない、私を通じて、ナオキに話した五井の情報は、ユリコにダダ洩れだった…


 そして、ユリコは、それを逆手に取ったわけだ…


 あの和子…


 五井の女帝が、倒れたことを、契機に、和子という後ろ盾を失った、伸明に、この長谷川センセイを通じて、お見合いを迫り、あわよくば、成功させる…


 自分の息のかかった娘を、伸明の妻にする…


 そして、あの和子に復讐する…


 自分に恥をかかせた和子に。復讐する…


 そういう手筈だったのだろう…


 私は、思った…


 私は、考えた…


 そして、今さらながら、ユリコの執念深さを思った…


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