↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
寿綾乃という女 第4部  作者: トモサン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
21/225

寿綾乃という女 第4部 21

 結局、私は、マミさんに、半ば、強引に、自宅マンションから、出ていかされた(苦笑)…


 こう言えば、マミさんを、非難しているように、聞こえるが、まったくもって、そうではない…


 マミさんは、たしかに、強引だが、相手の嫌がることは、しない…


 私によかれと、思って、している…


 だから、嫌われない…


 おそらく、周囲の人間に嫌われない…


 強引と言っても、それは、相手のことを、思って行動しているから…


 ただ、自分勝手に、強引に、行動しているのでは、ない…


 なにより、自分勝手に、行動していれば、他人に嫌われる…


 が、


 私は、マミさんと、いっしょにいて、嫌な気持ちになったことは、一度もない…


 つまり、マミさんは、決して、自分勝手ではないと、いうことだ…


 まして、マミさんは、会社の社長…


 亡くなった前五井家当主、建造の娘であり、建造が、外に作った愛人との間に、できたマミさんは、会社勤めが、苦手…


 自分で、会社を作りたいクチだ…


 それゆえ、建造から、金を借りて、小さいながらも、自分の会社を立ち上げた…


 そんな会社の社長が、自分勝手で、他人の気持ちを思いやれないようでは、社員も、ついていかないだろう…


 それゆえ、マミさんは、自分勝手ではない…


 他人の気持ちを思いやることが、できる…


 私は、思った…


 私は、あらためて、思った…


 すると、今も、


 「…寿さん、ごめんね…」


 と、マミさんが、言ってきた…


 私は、なにが、


 「…ごめん…」


 なのか、わからなかった…


 だから、


 「…なにが、ごめんなんですか?…」


 と、聞いた…


 「…寿さんを、強引に連れ出したこと…」


 「…それは…」


 「…でも、寿さん、私が、いっしょに、いれば、買い物も楽でしょ?…


 …なるほど…


 …そういうことか?…


 マミさんは、自分が、私といっしょに、いれば、私が、買い物をするのが、楽だと、思ったんだと、気付いた…


 なにしろ、昨日、退院したばかりだ…


 まさかとは、思うが、スーパーやコンビニに行って、倒れでも、したら、目も当てられない…


 マミさんは、それを、予想して、だったら、自分が、傍にいれば、安心と、思ったのだ…


 私は、つくづく、このマミさんは、優しいと、思った…


 心の底から、思った…



 私は、マミさんのサポートを得て、近くのスーパーに行き、アレコレ、買ってきた…


 自分の腕だけでは、持てないほど、たくさんのものを、買ってきた…


 いや、


 自分だけではない…


 マミさんにも、持って、もらった…


 スーパーの袋をいくつか、持って、もらった…


 ホントは、こんなに、たくさん、ものを、買ったので、どこかで、お茶していこうと、思って、それを、マミさんに伝えたんだが、マミさんは、首を横に振った…


 「…どうしてですか?…」


 訝しがる私に、マミさんが、


 「…寿さん、休憩しちゃうと、気が緩んじゃうよ…きついけれど、このまま、自宅に戻った方がいい…」


 と、言った…


 私は、なるほど、一理あると、思った…


 たしかに、休憩は、体力を回復するには、よいが、それでは、張り詰めていた糸が、緩んでしまいかねない…


 途中で、休むことは、そんな危険がある…


 それゆえ、休みを取らず、家に帰る方が、いい…


 マミさんは、そう、思ったのだ…


 そして、そんなことを、言われると、いかにも、その考えは、マミさんらしいと、思った…


 例えれば、山に登るとき、一目散に山に登るひとと、小さな休憩を、何度もするひとが、いる…


 これは、どちらが、いいか、悪いか、言っているわけではない…


 そのひとの体力や、性格に、基づいて、そういう行動を取るのだろう…


 体力がなければ、頻繁に休憩を取るのは、当たり前だが、体力があっても、頻繁に休憩をとるものも、多い…


 それは、たぶん、性格…


 のんびりと、歩むのが、好きなのだろう…


 が、


 当然、そんなことは、嫌なものを、いる…


 体力があるのだから、一気に頂上に行きたいものも、いる…


 マミさんは、そのタイプ…


 体力があるのだから、一気に、頂上を目指すタイプ…


 ちなみに、それは、私も同じ…


 マミさんと、同じタイプ…


 体力があるのに、休憩ばかりして、グズグズしているのは、嫌…


 まどろっこしいのは、嫌…


 だから、気が合う…


 マミさんと、気が合う…


 私は、思った…


 私は、今さらながら、思った…


 

 家に着き、買ったスーパーの袋を、玄関の中に、置くと、さすがに、グッタリした…


 それは、マミさんも、同じだった…


 が、


 これで、寝室に行き、バタンキューと、ベッドで、寝ているわけには、いかない(苦笑)…


 マミさんの相手をしなければ、ならない…


 買い物を手伝ってくれた、マミさんの接待をしなければ、ならない…


 そして、それ以上に、大事なこと…


 マミさんに、五井家の内情を聞かなければ、ならない…


 五井家当主、諏訪野伸明の結婚相手を聞かなければ、ならない…


 伸明の結婚相手である、五井西家のお嬢様が、どんな女性か、聞かなければ、ならない…


 そして、なにより、ナオキの結婚相手…


 ナオキの結婚報道が、誤報か、どうかは、わからないが、ナオキの結婚相手とされる女性が、五井家の誰か、知りたい…


 これは、切実な願い…


 この寿綾乃の切実な願いだった…


 そして、それは、おそらく、マミさんも、わかっているはず…


 いや、


 マミさんが、わからないわけはない…


 間違いなく、わかっている…


 いや、


 わかっているどころか、もしかしたら、それを告げに、今日、私の元に、やって来たかも、しれないのだ…


 そして、それを、思えば、余計に、マミさんをこのまま、帰らせるわけには、いかなかった…


 いくら、自分が、体力的に、きつくても、このまま、マミさんを、帰らせるわけには、いかなかった…


 いかなかったのだ…


 それゆえ、私は、マミさんに、


 「…なにか、飲みものでも…」


 と、言った…


 いくら、疲れているからと、言って、マミさんを、このまま、帰すわけには、いかなかったからだ…


 マミさんは、すぐに、


 「…お気遣いなく…」


 と、返した…


 いかにも、マミさんらしい…


 明らかに、私に気を使っている…


 それゆえ、私は、


 「…別に、そんなに、気を遣ってませんよ…」


 と、言って、笑った…


 マミさんは、それを、聞いて、苦笑した…


 「…だったら、なにか、冷たいものを…」


 と、言った。


 それから、


 「…冷蔵庫の中にあるもで、いいわ…」


 と、続けた…


 私は、それを、聞き、


 …やはり、私に気を遣っている…


 と、内心、思った…


 なぜ、思ったのか?


 冷蔵庫の中にあるものと、言えば、缶や、ペットボトルに入った飲み物を、すぐ、思いつく…


 まさか、真っ昼間から、ビールやチューハイは、連想しない…


 まして、私は、昨日、五井記念病院を退院したばかり…


 いくら、飲みたくても、ビールやチューハイは飲めない…


 なにより、缶や、ペットボトルの飲料を用意するのは、楽…


 楽だ…


 冷蔵庫から、取り出して、マミさんに、渡すだけ…


 それゆえ、マミさんは、私に、


 「…冷蔵庫の中にあるもので、いいわ…」


 と、頼んだのだろう…


 私は、そう、見た…


 私は、そう、睨んだ…


 私は、それゆえ、


 「…だったら、コーヒーにしますか? それとも、お茶にしますか?…」


 と、聞いた…


 真っ昼間のペットボトルで、休憩するには、お茶か、コーヒーのどちらかが、普通だからだ…


 「…だったら、お茶がいい…今、疲れて、喉が渇いているから、そんなときは、やっぱり、お茶…コーヒーだと、甘すぎて…」


 マミさんが、言う…


 …たしかに、その通り…


 単純に、喉が渇いたときは、甘いものより、すっきりとしたものが、いい…


 私も、マミさんと、同じ意見だった…


 だから、冷蔵庫から、2本、お茶のペットボトルを取り出した…


 もちろん、私とマミさんの分だ…


 私は、1本を、マミさんに、渡した…


 そして、もう、一本を自分の手で持った…


 そして、手で持ったまま、マミさんより、先に、私が、飲み始めるべきか、悩んだ…


 私が、先に、飲み始めた方が、マミさんが、私に遠慮せずに、飲みやすいと、考えたからだ…


 が、


 その心配は、杞憂だった…


 私が、マミさんに、ペットボトルのお茶を手渡すと、すぐに、マミさんが、ペットボトルの蓋を開けて、ゴクゴクと、飲み始めたからだ…


 やはり、マミさんは、遠慮しない…


 それが、嬉しかった…


 このマミさんは、私に遠慮しない…


 それが、嬉しかった…


 遠慮しないのは、親しさの証でも、あるからだ…


 だから、嬉しかった…


 私は、ソファに座って、マミさんが、ゴクゴク、ペットボトルのお茶を飲む姿を見ていた…


 マミさんは、小柄…


 身長が、150㎝ちょっと…


 それゆえ、マミさんが、ペットボトルのお茶を飲む姿は、失礼ながら、子供が、飲む姿を思わせる…


 私は、それを見ながら、私のペットボトルの蓋を開けて、お茶を飲んだ…


 実に、おいしかった…


 やはり、こんなふうに、疲れたときは、冷たい飲み物が合う…


 つくづく、思った…


 それから、二人して、真っ昼間で、私の家で、ペットボトルのお茶を飲むことを、思うと、つくづく、自分は、平和だなと、思った…


 自分は、恵まれているとも、思った…


 騒動とは、無縁…


 平凡そのものの人生の一場面とも、思った…


 おおげさに、言えば、思った…


 が、


 その思いが、すぐに、打ち消された…


 マミさんが、目の前のテーブルに、自分の飲んだペットボトルのお茶を置いて、真顔で、


 「…今日、私が、ここへ来た目的は、寿さんも、わかっていると思うけれど…」


 と、いきなり、切り出したからだ…


 その一言で、今、感じた平和の思いが、拭き飛んだ…


 木っ端みじんに拭き飛んだ…


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。