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寿綾乃という女 第4部  作者: トモサン


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205/225

寿綾乃という女 第4部 205

 翌朝、朝、早く、起きて、テレビをつけると、ハルカのことを、ニュースで、取り上げていた…


 ハルカの自殺をニュースで、流していた…


 が、


 ハルカの自殺した場所が、違った…


 伸明のいる、北東病院のはずが、警察署に代わっていた…


 さすがに、北東病院で、自殺したと、報じるわけには、いかなかったのだろう…


 正直に、報じれば、なぜ、ハルカを、北東病院に連れて行ったのか、マスコミに、聞かれるからだ…


 私が、そんなことを、考えながら、食い入るように、テレビを見ていると、ナオキが、起きて来た…


 「…おはよう、綾乃さん…」


 と、言って、起きて来た…


 私は、すぐに、


 「…ハルカさんのことを、やっているわよ…」


 と、言って、テレビを指差した…


 それで、ナオキもまた、私同様、食い入るように、テレビを見た…


 が、


 長くは、なかった…


 ハルカのニュースが、すぐに、終わったからだ…


 ハルカは、有名人でも、なんでもない…


 ただのひと…


 今、私の眼前にいる、FK興産社長の藤原ナオキと結婚会見をしたから、少しばかり、有名になったかも、しれないが、ただのひと…


 基本、ただのひとだからだ…


 だから、ニュースも、すぐに、終わった…


 ハルカの死を告げるだけで、淡々と、終わった…


 正直、実感がない…


 まるで、ない…


 しかしながら、ハルカの死は、真実…


 そして、なぜ、ハルカが、伸明と、会った後に、投身自殺をしたのか、謎が、残る…


 昨夜も、考えたが、今朝になって、ハルカの死を、再び、ニュースで、見たから、余計に、考えざるを得なかった…


 そして、私が、そんなことを、考えていると、ナオキが、


 「…変わらないね…昨日、テロップで、流れたニュースと…」


 と、呟いた…


 「…変わったのは、亡くなった場所…綾乃さんが、諏訪野マミさんから、聞いた、北東病院ではなく、それが、警察署に、変わっただけ…」


 と、私が、思ったことと、同じことを、言った…


 私は、それを、聞いて、


 「…たぶん、五井の力で、亡くなった場所を隠したのよ…」


 と、言った…


 「…五井の力?…」


 「…まさか、マミさんが、ウソを言わないでしょ? マミさんは、伸明さんか、あるいは、伸明さんに、近い関係者から、聞いたに、違いないでしょうから…」


 「…」


 「…あの長谷川センセイが、五井に憧れるのは、わかるわ…」


 と、付け加えた…


 すると、それを、聞いた、ナオキが、


 「…あの長谷川センセイ…血は、繋がってないけれど、ハルカさんのお兄さんだったよね…」


 「…ええ、そうよ…」


 「…だったら、長谷川センセイも、ショックだろうね…」


 「…いえ、それは、わからないわ…」


 「…どうして、わからないの?…」


 「…あの長谷川センセイ…あのハルカさんと、いっしょに、暮らしたことも、ないみたい…」


 「…えっ? ない? どうして、ないの?…」


 「…親同士が再婚した関係だから、互いに、親が再婚したときに、年齢が、高かったんだと、思う…長谷川センセイは、あの歳だから、十分、わかるけれども、ハルカさんも、大学生か、なんかじゃ、なかったんじゃないのかな…高校生だったら、親といっしょに、暮らすと思うし…」


 「…なるほどね…」


 ナオキが、私の説明に納得した…


 「…たしかに、それじゃ、愛情は、沸かないかも、しれないね…いっしょに、暮らしたことも、ないんじゃ…」


 「…でしょ…」


 そい、言いながら、私は、それは、あの伸明もいっしょだと、言いたかった…


 あの伸明と、マミさんの関係も、いっしょだと、言いたかった…


 兄妹だけれども、血が繋がっていない…


 いっしょに、暮らしたこともない…


 だから、普通に考えれば、愛情もなにも、ないだろう…


 ハッキリ言えば、赤の他人だ…


 ただ、兄妹であるのは、形だけ…


 形だけに、過ぎない…


 ただ、あの長谷川センセイと、ハルカの兄妹の関係と、違うのは、伸明とマミさんの関係には、五井がある…


 四百年の歴史がある、五井がある…


 五井の金がある…


 そこが、違う…


 伸明とマミさんのバックボーンには、五井がある…


 五井の莫大な金がある…


 その違いだ…


 おそらく、それが、なければ、付き合わない…


 二人は、今のように、付き合わないだろう…


 言葉は、悪いが、二人とも、五井に乗っかっている…


 五井という、お金持ちの家に、乗っかっている…


 私は、思った…


 私は、考えた…


 そして、私が、そんなことを、考えていると、ナオキが、


 「…ハルカさんの葬式は、どうするんだろ?…」


 と、言った…


 私が、思いもかけないことを、言った…


 「…長谷川センセイのご両親が、仕切るんじゃ…」


 「…それは、そうかも、しれないけれども、そのご両親は、地方在住かも、しれないし、その場合は、長谷川センセイが、やるんじゃ…」


 ナオキが、言った…


 たしかに、そう言われれば、わかる…


 地方在住の両親が、都会にやって来ても、右も左も、わからない…


 もちろん、長谷川センセイとて、葬儀を仕切った経験など、ないだろう…


 それでも、都内在住ならば、近くの葬儀場を予約するなり、それなりのことができる…


 少なくとも、長谷川センセイのご両親よりは、有利…


 地の利があるから、有利だ…


 と、そこまで、考えて、気付いた…


 このナオキは、ハルカの葬儀に、行きたいのでは?


 と、気付いた…


 だから、それを、聞いた…


 「…ナオキ…もしかして、ハルカさんの葬式に、出たいわけ?…」


 と、直球で聞いた…


 「…それは、結婚相手だったから…」


 と、真顔で、即徒した…


 「…世間の目もあるしね…」


 「…世間の目?…」


 「…決婚会見までした、ボクが、ハルカさんの葬式に行かなかったら、なにを言われるか、わからない…」


 「…」


 「…それに、世間の目だけでなく、ハルカさんの死を悼む気持ちも、もちろん、ある…形だけとは、いえ、結婚の約束をしたのだから…」


 そう、言われると、なにも、言えなかった…


 なにも、言い返せなかった…


 ただ、


 「…だったら、伸明さんは、その葬儀にやって来るのかしら?…」


 と、言った…


 つい、思ったからだ…


 たしかに、自分を傷付けた相手でも、自分と関係があった女だ…


 伸明も、少しは、相手の死を悼む気持ちがあるはずだ…


 が、


 私が、そんなことを、考えていると、ナオキが、


 「…それは、難しいだろう…」


 と、即答した…


 「…どうして、難しいの?…」


 「…諏訪野さんの立場がある…」


 「…立場?…」


 「…まさか、自分を、傷付けた相手の葬式に、堂々と、顔を、出すわけには、いかないだろ? たとえ、過去に、男女の関係があったとしても…」


 「…」


 「…それに、諏訪野さんは、今、入院している…病状は、どんなだかは、わからない…ただ、ハルカさんと、会いたいと言って、会ったぐらいだから、たぶん、病状は、それほど、深刻じゃ、ないんだろう…でも、葬式は、すぐ…延期することは、普通は、できない…たぶん、明後日か、その次あたりだろう…それもあるから、諏訪野さんは、ハルカさんの葬儀に出席できないんじゃ…」


 ナオキの説明に、言葉もなかった…


 たしかに、その通り…


 その通りかも、しれない…


 普通、葬儀は、延期できない…


 だから、葬儀の日は、目の前…


 ナオキの言う通り、明後日か、その翌日か…


 そのあたりだろう…


 それでは、伸明も、出席するのが、難しいだろう…


 仮に、葬儀に出席したくても、難しいだろう…


 伸明の体調のことが、ある…


 だから、難しいだろう…


 そこまで、考えて、ハタと、気付いた…


 だったら、このナオキ…


 目の前の藤原ナオキは、葬儀に出席するのだろうか?


 いや、


 葬儀に、出席したいと、さっきは、言ったが、仕事の関係もある…


 果たして、出席できるのか?


 それが、気になった…


 だから、


 「…ナオキ…アナタ…ハルカさんの葬儀に出席すると、言っていたけれど、仕事は、どうするの?…」


 と、聞いた…


 「…仕事?…」


 「…そう、仕事…」


 「…忘れたの? 綾乃さん?…」


 「…なにを、忘れたの?…」


 「…ほら、ボクは、今日は、仕事は、休みだよ…ハルカさんの死で、マスコミに、追い回されるかも、しれないから、会社に、出社しない…昨日、言ったでしょ?…」


 そう、言えば、昨日、言った…


 ナオキは、言った…


 すっかり、忘れていた…


 私としたことが…


 やはり、ハルカの死が、ショックなのだろうか?


 そして、そんな私をナオキは、見て、


 「…なんて、顔をしているの? 綾乃さん…会社が、休みだから…こうして、朝っぱらから、寝起きで、綾乃さんと、長話をしているんでしょ…」


 そうだ…


 すっかり、忘れていた…


 相変わらず、トロい…


 大トロ…


 自分自身を呪いたくなるほど、大トロ…


 大トロだ…


 「…とにかく、この後、マミさんや、長谷川センセイに電話して、ハルカさんの葬儀について、綾乃さん、聞いてくれ…まだ、なにも、決まってないかも、しれないけれど、葬儀場所が、決まったら、ボクも出席するから…」


 そこまで、言って、


 「…それが、綾乃さんの仕事だよ…社長秘書の仕事だよ…」


 と、ナオキに、言われた…


 ナオキに、念を押された…


 まったく、情けない…


 自宅で、ナオキに、叱られるなんて…


 思っても、見なかった…


 考えても、見なかった…


 ここは、職場では、ない…


 仕事場でも、ないのに、ナオキに、叱られた…


 不覚…


 実に、不覚だった…


 それ以上に、自分の感覚が、不思議だった…


 いつもなら、ありえない失態を晒した…


 そんな自分の失敗に、首をひねった…


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