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寿綾乃という女 第4部  作者: トモサン


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195/225

寿綾乃という女 第4部 195

 たしかに、言われてみれば、当たり前…


 当たり前のことだった…


 なにより、今日、ここにやって来たのは、伸明を見舞うため…


 あのハルカに、襲われて、傷を負った伸明を見舞うためだった…


 そのために、私は、今日、この五井記念病院にやって来た…


 この五井記念病院にナオキといっしょに、やって来たのだ…


 それが、見舞いにやって来れば、そこにいたのは、伸明ではなく、和子…


 五井の女帝だった…


 この五井の女帝から、これまで、謎だった、これまでのいきさつが、語られて、それは、それで、良かったが、肝心の伸明の行方が、わからない…


 それを、今、ナオキが、言った…


 ナオキが、追及した…


 だから、驚いたが、言われて、みれば、当たり前…


 当たり前だった…


 が、


 誰もが、すぐに、口を開かなかった…


 マミさんも、和子も、昭子も、口を開かなかった…


 その中で、真っ先に、口を開いたのは、マミさんだった…


 「…私は、知らない…」


 と、真っ先に、言った…


 「…和子叔母様が、入院していたのは、知っていたけれども、伸明さんのことは、知らない…」


 マミさんが、言った…


 私を見て、言った…


 後は、和子と昭子だった…


 どっちが、先に口を開くか?


 それとも、口を開かないか、考えた…


 いや、


 見た…


 これは、刑事の尋問でも、なんでもない…


 言いたくなければ、言わなければ、いいし、


 「…知らない…」


 と、とぼけても、いい…


 私が、そう、思っていると、昭子が、


 「…和子は、さっき、刑事さんが、あのハルカさんを連れて来たときに、刑事さんに、伸明が、どこにいるか、教えたの? 私は、あのとき、席を外していたから、わからなかったけれども…なにしろ、同じ顔が、二つ、あれば、刑事さんたちも、驚くだろうから…」


 と、説明する…


 要するに、


 …自分は、知らない…


 と、言いたいのだろう…


 だから、わざと、言った…


 そういうことだろう…


 和子は、そう、思ったか、どうか、わからないが、私は、そう、見た…


 私は、そう、睨んだ…


 昭子の発言を受けて、和子は、今、発言した、昭子を見た…


 そして、言った…


 「…姉さんは、伸明が、今、どこにいるか、知っているでしょ?…」


 と、言った…


 笑いながら、言った…


 「…和子…どうして、私が、知っているの?…」


 と、昭子。


 「…だって、伸明は、今、北東病院に入院しているでしょ?…」


 和子が、言うと、昭子は、驚いた表情に、なった…


 明らかに、ビックリした表情で、和子を見た…


 自分の双子の妹を見た…


 「…よく、わかったわね…和子…」


 と、言って、和子を見た…


 「…その程度の情報は、入るのよ…」


 と、和子が、笑った…


 ベッドの上の和子が、笑った…


 「…姉さん、私が、五井を仕切っていることを、忘れたの?…」


 和子が、笑って言う…


 「…五井の女帝の名は、伊達じゃないの…」


 和子が、断言する…


 私は、それを、見て、やはり、五井は、この和子が、仕切っている…


 あらためて、それを、感じた…


 ひしひしと感じた…


 それを、聞いた昭子は、


 「…だったら、和子は、それを、さっき、やって来た、刑事さんたちに、告げたわけ…」


 「…ええ、教えたわ…」


 そう、言ってから、


 「…伸明の方も、その方が、都合が、いいでしょうから…」


 と、付け加えた…


 「…都合が、いい? どう、都合が、いいの?…」


 と、昭子。


 「…直接、伸明が、団郁馬と、会った方が、都合がいいでしょ?…」


 「…」


 「…それに、北東病院には、長谷川センセイもいる…」


 「…なにを、言いたいの? 和子? さっき、言ったように、団と伸明の争いは、団が、伸明に詫びを入れて、終わったはずだよ…」


 昭子が、怒鳴る…


 「…姉さん、知らないの?…」


 と、和子。


 「…私が、なにを、知らないって言うの? 和子…」


 と、昭子。


 「…今回の黒幕…」


 「…黒幕? なに、それ?…」


 和子は、それには、答えず、ナオキを見た…


 ベッドの上から、和子を囲むように、周りに立ち続ける、私たち4人から、ナオキを選んで見た…


 それから、言った…


 「…FK興産の株…半分は、五井が、持っている…でも、残りの半分を藤原さんが、全部、持っているかと、言えば、違うでしょ?…」


 和子が、意味深に言った…


 実に、意味深に言った…


 そして、その答えは、すぐに、わかった…


 私には、すぐに、わかった…


 同時に、ナオキにも、わかった…


 私とナオキは、思わず、顔を見合わせた…


 驚いて、顔を見合わせた…


 そして、言った…


 「…ユリコ…」


 と、ナオキが言った…


 ナオキの前の妻の名前を言った…


 FK興産を、創業した当時は、ナオキは、ユリコと結婚していた…


 それゆえ、ユリコも、FK興産の株を持っている…


 何%か、忘れたが、株を持っている…


 FK興産の名前の由来は、FK興産のFは、藤原ナオキのF…


 FK興産のKは、寿綾乃のK…


 誰にも、言っていないが、それが、FK興産の名前の由来…


 しかしながら、会社が、その名前にする前から、会社は、あったし、会社の名前をFK興産に、改名したときも、まだ、ナオキは、ユリコと、結婚していた…


 その後、ユリコは、失踪したが、FK興産の株を持ち続けていることは、今も、変わらない…


 私と、ナオキは、それを、思い出した…


 「…長谷川センセイと、団郁馬を焚きつけたのが、あのユリコさん…」


 と、和子が、言った…


 和子が、断言した…


 そして、私は、この和子と、あのユリコの因縁を思い出した…


 あのユリコは、以前、この五井一族の株を買い占めた…


 具体的には、五井十三家の下位の八家の中から、株を買い取った…


 五井一族のみが保有する、五井グループの持ち株会社、五井ホールディングスの株を買い取った…


 それを、この和子に、高値で、買い戻させようとした…


 たしか、買ったときの4倍の価格で、買い戻させようとした…


 が、


 和子は、それを、拒否…


 2倍で、買い取った…


 和子は、事前に、ユリコが、誰から、金を借りたか、掴んでいたのだ…


 ユリコが、金を借りた人間は、あろうことか、暴力団だった…


 高尾組という、経済ヤクザだった…


 経済ヤクザと言っても、ヤクザであることに、変わりはない…


 和子は、事前に、ユリコが借りた金の返済期限を調べていた…


 つまりは、その返済期限まで、ユリコは、借りた金を返さなければ、ならない…


 それが、ユリコの弱点…


 和子は、外部に流出した五井ホールディングスの株を是が非でも、買い戻さなければ、ならないが、急いではない…


 それに比べて、ユリコは、急いでいる…


 返済期限が、近付いて、急いでいる…


 勝負の結果は、火を見るよりも明らかだった…


 ユリコは、和子の言い値で、株を売るしか、なかった…


 そして、それは、ユリコにとっては、屈辱の経験だった…


 プライドの高いユリコにとっては、忘れることのできない、屈辱の体験だったに違いない…


 それゆえ、復讐の機会を、窺っていたに、違いない…


 今か今かと、窺っていたに、違いなかった…


 なぜなら、ユリコは、そういう人間だからだ…


 あの藤原ユリコは、そういう女だからだ…


 それゆえ、あのユリコは、私を、敵視している…


 かつて、この藤原ナオキと、夫婦だった、ユリコは、結果的に、私に、ナオキを盗られた…


 寝取られたと言っても、いい…


 その屈辱を、あのユリコは、忘れない…


 決して、忘れない…


 本音を言えば、ただ、このナオキは、あのユリコより、私の方が、気が合うだけ…


 あのユリコといるより、私、寿綾乃といる方が、気が合うだけ…


 それだけだ…


 そして、それは、単に、順番…


 出会った順番に過ぎない…


 私より、早く、ユリコが、ナオキに、出会ったに過ぎない…


 ただ、それだけに、過ぎない…

 

 私の方が、早く、ナオキと出会っていれば、ナオキは、ユリコに、振り向きも、しないだろう…


 もっとも、私は、ナオキより、年下…


 十歳近く、年下だ…


 だから、もし、ナオキが、ユリコと出会ったときに、私と出会ったとしても、その当時は、私は、小学生…


 小学生の子供だ…

 

 小学生のガキンチョだ…


 ナオキが、私を選ぶわけはない…


 ナオキが、ロリコンでない限り、私を選ぶわけはない(爆笑)…


 なにより、ナオキは、ロリコンでも、なんでもない…


 よって、 私を選ぶわけはない…


 当時、子供の私を選ぶわけはない…


 私は、そんなことを、考えた…


 そんなバカなことを、考えた…


 もっとも、私の場合は、子供だったが、これが、大人であれば、よくあること…


 世間に、ありふれていることだ…


 要するに、出会った順番…


 普通に、男女が、出会って、結婚する…


 結婚して、子供を作っても、作らなくてもいい…


 家庭を持つ…


 でも、男女どちらでも、その後、自分のパートナーよりも、気が合う異性に出会った経験は、誰にも、あるからだ…


 仮に、その出会った時期が、すでに、結婚してしまった時期と、たいして、変わらない場合は、悩む…


 あっちの方が、良かったと、悩む…


 そんな経験は、誰にも、ある…


 男女ともに、ある…


 ただ、その後、どうするか?


 気の合った、ひとと、男女の関係になるか?


 それとも、例えば、相手が職場の同僚ならば、職場の同僚のままでいるか?


 それだけの違いだ…


 私は、思った…


 私は、考えた…


 つい、話が、脱線して、そんなバカなことを、考えた…


 そんな余計なことを、考えた…


 そして、私が、そんなバカなことを、考えていると、和子が、


 「…あのユリコさんが、今回の黒幕…」


 と、言った…


 断言した…


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