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寿綾乃という女 第4部  作者: トモサン


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191/225

寿綾乃という女 第4部 191

 私は、なぜ、マミさんが、そんな表情をしたのか、知りたかったが、まさか、それを聞くわけには、いかない…


 和子の目の前で、聞くわけには、いかない…


 が、


 和子も、当然のことながら、マミさんの表情に、気付いた…


 だから、


 「…マミさん、そんな顔をしないで…」


 と、優しく叱った…


 「…叔母様…」


 「…壁に耳あり…障子に目あり…どこで、誰が、見たり、聞いたりしているか、わかったもんじゃない…」


 「…叔母様…」


 「…それを、証明してくれたのが、伸明…」


 「…伸明さん?…」


 と、私は、つい口を挟んだ…


 もしかしたら、口を挟んでは、いけないのかも、しれないが、口を挟んだ…


 「…そうよ…」


 和子が、不機嫌そうに、言う…


 「…伸明は、私が、倒れると、焦って、先走って、行動して、見ていられなかった…」


 と、和子が、思いもしないことを、言った…


 「…見ていられなかったって、一体?…」


 私が、声を上げると、再び、マミさんが、


 「…叔母様…それは…」


 と、和子を制止しようとした…


 が、


 和子は、止まらなかった…


 「…いいのよ…マミさん…」


 と、言って、マミさんの制止を振り切って、止まらなかった…


 「…伸明は、私が、倒れて、焦った…と、同時に、自分の力を見せつけようと思ったのね…五井西家から、見合いの件を聞き、これ幸いと受けた…自分の権力を、周囲に見せつけようとした…」


 「…叔母様…」


 「…でも、運もなかったのね…」


 「…運が、なかった? どういうことですか?…」


 と、私。


 「…伸明の見合い相手…たまたま、伸明の知り合いだった…それが、運がなかった…」


 「…」


 「…まさか、相手が、知り合いだったなんて、お互い、思わなかった…予想も、しなかった…それが、今回の不幸の始まり…」


 「…不幸…」


 「…まあ、私が、倒れたことで、それを、外部に知られないように、姉を呼び寄せた私も、悪かった…姉が…昭子が、伸明を心配するあまり、これもまた、変な行動を起こして…」


 和子が、言う…


 まるで、誰かに、聞かせるように、言う…


 私や、ナオキではなく、別の誰かに、聞かせるように言う…


 私は、それを、聞いて、


 …もしや?…


 と、思った…


 …もしや、この部屋に、誰か、別のひとが、いるのでは?…


 ここにいる、私たち4人以外に、誰か、いるのでは?


 そう、思った…


 なぜなら、さっき、この和子が、


 「…壁に耳あり障子に目あり…」


 と、言ったからだ…


 そのときは、そうは、思わなかったが、まるで、それは、皮肉にも、聞こえなくは、ない…


 誰かが、いれば、その人間に、わざと、言っている…


 そう、取れなくもない…


 まして、この個室は、大きい…


 特別に大きい…


 それゆえ、隠れることが、できる…


 そして、今、気付いたことだが、この病室には、トイレも、風呂も完備している…


 まるで、ホテルのように、完備している…


 だから、そこに隠れることができる…


 隠れようとすれば、隠れることが、できる…


 私は、そのトイレと、お風呂の方向を見た…


 なにげに、見た…


 すると、だ…


 やはりというか…


 扉が、開いた…


 ゆっくりと、開いた…


 そして、その中から、出て来たのは、予想通りというか…


 この和子と瓜二つの顔の持ち主…


 いや、


 顔だけではない…


 カラダも、同じ…


 同じ身長、同じ体形の女…


 和子の姉の昭子だった…


 和子の双子の姉の昭子だった…


 伸明の生母の昭子だった…


 「…和子…黙って聞いていれば、随分なことを、言うわね…」


 昭子が、文句を言いながら、出て来た…


 が、


 その言葉とは、裏腹に、全然、怒っているようには、見えなかった…


 むしろ、笑っていた…


 楽しそうに、笑っていた…


 そして、それを、見た、和子も、また、笑っていた…


 楽しそうに、笑っていた…


 そして、


 「…似た者同士ね…」


 と、和子が、昭子に、言った…


 「…似た者同士? なにが、似た者同士なの?…」


 と、昭子…


 昭子は、ゆっくりと、私たちのいる、場所に、やって来た…


 「…それは、姉さんと、伸明のことよ…」


 と、和子…


 「…まあ、それは、母子だから、似た者同士は、当たり前ね…」


 と、昭子が、笑いながら、言う…


 が、


 和子は、笑わなかった…


 「…私が、似た者同士と言ったのは、伸明に、姉さんの血が、あんなにも、流れているとは、思わなかったってこと…」


 と、和子…


 「…あら、それは、どういう意味?…」


 と、昭子…


 「…私が、倒れたことを、知った、伸明が、五井西家と、見合いをした…それは、いい…でも…」


 「…でも、なに?…」


 「…姉さんは、それを、どこからか、聞いて、伸明の見合い相手の素性を確かめたでしょ? 五井北東家の団郁馬に頼んで…」


 和子が、仰天の事実を言った…


 それまで、聞いたことのない、仰天の事実を言った…


 私は、唖然とした…


 それゆえ、慌てて、傍らのナオキと、マミさんを見た…


 が、


 二人とも、驚いた表情をしていなかった…



 驚いた表情をしているのは、私だけだった…


 もしかして、知っていた?


 マミさんは、ともかく、ナオキも、知っていた?


 だとしたら、驚き以上に、ショック…


 ショックだった…


 が、


 それは、さておき、話は、続いた…


 和子と昭子の話は。続いた…


 昭子は、


 「…私が、団郁馬になにを頼んだと、言うの?…」


 と、和子に、聞いた…


 「…見合い相手の素性…長谷川ハルカの素性…」


 と、和子が、答える…


 「…見合い相手の素性…どうして、そんなことが、団郁馬にわかるの?…」


 「…五井北東家は、メディアを支配している…東都新聞を支配している…東都新聞の記者を使って、探らせたでしょ?…」


 「…」


 「…でも、それで、五井北東家も、調子に乗った…」


 「…どうして、調子に乗ったの?…」


 「…あのハルカの素性を掴んだ…あのハルカには、一滴も、五井の血が、流れていないことを、掴んだ…」


 「…それが、どうしたの?…」


 「…それを、知った、団郁馬は、西家に近付いた…ハルカを、本物の五井一族の末裔と信じていた西家夫妻に近付いて、西家を利用しようとした…」


 「…」


 「…でも、そのきっかけを作ったのは、姉さん…伸明の産みの親である、姉さんよ…」


 和子が、言った…


 和子が、断言した…


 私は、それを、聞いて、思い出した…


 以前、聞いたことを、思い出した…


 それは、この昭子が、団郁馬と親しいと、いうこと…


 この昭子が、唯一、五井一族の中で、団郁馬と親しいということを、思い出した…


 二人とも、規格外というか…


 変わっている…


 この昭子は、若い頃に、男関係に奔放だったと言うし、伸明以外にも、子供がいたが、すべて、父親が、違っていた(苦笑)…


 また、団郁馬は、五井一族の中でも、浮いていた…


 あまり、一族の人間と、関わりを、持たなかった…


 その中で、唯一、親しいのが、この昭子だった…


 私は、それを、聞いたときに、


 …変わり者同士だから、気が合うんだ…


 ぐらいにしか、思わなかった(苦笑)…


 だが、その二人が、手を組み、伸明のために、動いた…


 一方は、真剣に伸明をサポートするために、動いた…


 が、


 もう一方は、真逆だった…


 伸明の見合い相手が、五井の血を引き継いだ娘と言いながら、それが、ウソだと、わかっていた…


 おそらくは、それを、利用して、伸明に、なんらかの、圧力を加えようと、思ったのかも、しれない…


 五井北東家は、メディアを支配している…


 東都新聞、東都ラジオ、東都テレビを支配している…


 にもかかわらず、五井一族の中では、序列が下…


 それゆえ、序列をもっと上げたい…


 それが、団郁馬の悲願だった…


 五井北東家の悲願だった…


 それゆえ、ハルカが、五井の血を引いていないことを、知ると、それを、利用しようとしたのだろう…


 団郁馬の立場に立てば、当たり前だった…


 ひどく、当たり前だった…


 私は、思った…


 私は、考えた…


 そして、そう、考えていると、今度は、昭子が、


 「…そういう和子こそ、私を利用しようとしたでしょ?…」


 と、言った…


 「…姉さんを利用?…」


 「…自分が、倒れたことを、隠して、極秘裏に、私を、呼び寄せて、私を自分の身代わりにした…誰かが、見舞いに来ても、諏訪野和子が、そこにいるように、見せかけた…外部の人間で、私の存在を知っている人間は、少ない…それを、利用した…」


 「…」


 「…まあ、和子が、それを、したのも、わからなくは、ない…病院に入院しているフリをして、外に、飛び回るのは、実に、都合が、いいから…」


 仰天の事実を、昭子が、語った…


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