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寿綾乃という女 第4部  作者: トモサン


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176/225

寿綾乃という女 第4部 176

 同じというのは、愛人関係…


 あるいは、恋人関係なのでは?


 そう、気付いた…


 それならば、おかしくない…


 伸明が、ハルカに、襲われても、おかしくはない…


 なぜなら、愛人関係や、恋人関係なら、身近…


 身近だから、容易に、近付ける…


 ハルカが、容易に、伸明に近付ける…


 そう、思った…


 そう、考えた…


 だから、刃物か、なにかで、襲うのは、難しくない…


 相手が、警戒していないからだ…


 伸明が、ハルカを警戒していないからだ…


 が、


 果たして、それが、本当ならば、いつから、そういう関係になった?


 そう、気付いた…


 まさか、あの見合い前から、そういう関係だったわけではあるまい…


 あのときは、初対面…


 お互い、初対面で、面識は、ないはずだ…


 が、


 それを、信じるわけには、いかない…


 なぜなら、あのハルカは、別人…


 伸明の見合いのときに会ったハルカと、後で会ったハルカは、別人だった…


 だから、演技していた可能性がある…


 あの見合いのときは、演技していた可能性がある…


 と、


 そこまで、考えて、それ以上は考えないことにした…


 これは、妄想…


 私の妄想に、他ならない…


 すべては、ナオキが、帰って来てから…


 いや、


 伸明の見舞いに行ってから…


 警察の捜査が、終わってからだと、思った…


 そう、思ったのだ…


 そう、思いながらも、やはり、考えざるを得なかった…


 なにしろ、あのハルカは、長谷川センセイの妹…


 五井記念病院の私の担当医…


 ジュン君の運転するクルマに轢かれて、入院した当時の、担当医…


 半年以上、お世話になった…


 その長谷川センセイの妹だった…


 だから、この報道を聞いて、長谷川センセイは、どう思ったのか?


 それが、真っ先に、脳裏に浮かんだ…


 そして、その長谷川センセイのことを、考えると、今度は、あのユリコのことを、考えざるを得なくなる…


 伸明の前の妻だった、ユリコのことを、考えざるを得なくなる…


 ジュン君の母親である、ユリコのことを、考えざるを得なくなる…


 それは、なぜか?


 それは、ユリコが、以前、長谷川センセイと、いっしょにいるところを、見たことがあるからだ…


 二人が、スーパーに、いっしょにいるところを、見たことがあるからだ…


 どう、見ても、夫婦…


 夫婦のように、親密な関係に、見えた…


 長谷川センセイは、イケメン…


 長身のイケメンだ…


 ユリコは、イケメン好き…


 病的なまでのイケメン好きだ…


 だから、ユリコにとっては、平常運転というか…


 ユリコにとっては、いつものことだった…


 イケメン好きのユリコにとっては、いつものことだった…


 が、


 なぜ、長谷川センセイが、ユリコと、いっしょにいたのかは、わからない…


 長谷川センセイにしてみれば、ユリコといる、メリットが、なにか、なければ、ならないからだ…


 ユリコのメリットと言えば、頭の良さ…


 ずば抜けた、頭の良さに、他ならない…


 その頭の良さを生かして、投資ファンドの代表を務めていた…


 おそらく、今も、代表を務めているだろう…


 その頭の良さに、長谷川センセイは、惹かれたのだろうか?


 長谷川センセイは、野心家…


 五井西家の血を継ぐ、家系に生まれたが、今は、五井家とは、なんの関係もない…


 それが、長谷川センセイのコンプレックス…


 五井の一族として、復権したいとまでは、いわないが、五井一族の一人として、認められたいと、いうのが、長谷川センセイの夢…


 夢=野心だ…


 そして、すべからく、そういう野心を抱くものは、男でも、女でも、相手に、ルックスではなく、頭の良さや、家柄の良さを求めるものが、多い…


 つまり、ブランド…


 顔=ルックスではなく、学歴や、家柄に惹かれるものが、多い…


 もしかしたら、それゆえ、長谷川センセイは、ユリコと、付き合っているのかも、しれない…


 長谷川センセイは、外科医…


 当然、頭が、いいだろう…


 頭が、いい人間が、頭の良い人間に惹かれるのは。当たり前…


 頭が、良い人間と、悪い人間では、そもそも話が、合わないからだ…


 例えば、地元の偏差値65の高校と出たものと、偏差値40の高校を出たものが、結婚したとしたら、うまくいくはずがない…


 頭が違うから、話が、合わなくなる…


 まだ、若いうちは、いいが、歳を取れば、取るほど、話が、合わなくなる…


 当たり前のことだ…


 だから、話を、長谷川センセイと、ユリコに戻すと、二人は、気が合うのかも、しれない…


 頭がいいから、気が合うのかも、しれない…


 そして、そこまで、考えたときに、あの団郁馬のことを、考えた…


 あの団郁馬も、ユリコと、接点があった…


 二人は、同じ、勉強会に参加していた…


 が、


 すでに、団郁馬は、敗北している…


 五井北東家の団郁馬は、本家に屈している…


 五井本家の諏訪野伸明に屈している…


 それゆえ、ユリコは、すでに、団郁馬に用はないはず…


 そして、それは、長谷川センセイにも、言える…


 長谷川センセイは、すでに、五井記念病院を退職している…


 退職して、北東病院に勤務している…


 おそらくは、団郁馬が、経営している北東病院に勤務している…


 つまりは、負け組…


 二人とも、負け組だ…


 団郁馬が、メインだった…


 五井本家に、反旗を翻した、団郁馬が、ユリコと長谷川センセイの三人のトリオの要(かなめ)だった…


 その要(かなめ)の団郁馬が、伸明に完敗した…


 伸明に、負けた…


 それで、ハルカは、伸明を襲った?


 ふと、気付いた…


 伸明を襲って、一発逆転を狙った?


 仮に、伸明が、死ねば、本家が絶える…


 本家の人間が、絶える…


 誰も、いなくなる…


 いや、


 マミさんがいる…


 先代当主の建造の娘のマミさんがいる…


 仮に、伸明が亡くなれば、マミさんが、五井本家を継ぐかも、しれない…


 本家の人間の血を継ぐものは、マミさんしか、いないからだ…


 しかしながら、マミさんは、愛人の子供…


 正妻の子供ではない…


前五井家当主夫人、諏訪野昭子の子供ではない…


 おまけに、女性…


 どうしても、当主というと、男性を想像する…


 それゆえ、不利ではないか?


 仮に、マミさんが、当主となるには、不利ではないか?


 いや、


 不利では、ないかも、しれない…


 その証拠に、五井の女帝…


 諏訪野和子は、建造亡きあとに、五井を仕切っていた…


 女ながら、仕切っていた…


 が、


 それは、和子が、建造と共に、ずっと以前から、五井を代表して、世に出ていたから…


 双子の姉の昭子が、若き日の異性関係の奔放さから、事実上、世間に顔を出せない状態ゆえに、代わりに、妹の和子が、世間に、顔を出した…


 それゆえ、知らないものは、建造と、和子が、夫婦と、誤解していたものも、いた…


 なにしろ、双子…


 昭子と、和子は、二人とも、同じ顔…


 身長も、同じ…


 だから、仮に、昭子が、世間に顔を出しても、和子と間違えるものも、いるだろう…


 なにしろ、同じルックスなのだ…


 間違えても、おかしくはない…


 と、そこまで、考えると、今度は、和子のことを、考えた…


 今日の昼間、五井記念病院で、昭子にあった…


 和子ではなく、昭子に会った…


 最初、会ったときは、和子だと、思った…


 が、


 違った…


 昭子が、和子になりすましていたのだった…


 そして、それは、自然…


 実に、自然だった…


 まったく違和感なく、和子になりすましていた…


 そして、それを、考えると、すでに、和子は、退院している…


 五井記念病院を退院していると、気付いた…


 なにしろ、和子になりすまして、五井記念病院のロビーで会ったのだ…


 さらに、和子になりすませて、私を、すぐに、脳外科で、診療させてくれた…


 待つことなく、診療させてくれた…


 五井記念病院の名誉理事長の和子になりすませて、私の診療を優先するように、指示したからだ…


 それが、できたのは、和子が、すでに、退院したからに、他ならない…


 和子が、入院していれば、それは、できない…


 あの場で、昭子が、和子になりすますことは、できない…


 なぜなら、五井記念病院では、和子が、入院していれば、あのとき、和子が、指示を出したことが、おかしいと、思うに、決まっている…


 入院している、和子が、ロビーから、名誉理事長の名で、指示を出せるはずがないからだ…


 いや、


 それとも、和子が、入院していることを、職員は、知らない可能性もある…


 その可能性もある…


 なにしろ、和子は、名誉理事長…


 雲上人だ…


 それゆえ、一般の医師や、職員も知らない可能性もある…


 その可能性は、否定できない…


 つまりは、和子は、本当に、今、入院しているか、どうか、わからない…


 それが、正しいのでは、ないか?


 私は、思った…


 私は、考えた…


 とにかく、考えることが、多すぎる…


 ずっと、考えていると、頭が、おかしくなる…


 頭の中が、アレコレ、こんがらがって、頭が、おかしくなる…


 そんな感じが、した…


 実に、そんな感じが、した…


 が、


 考えないわけには、いかない…


 つい、考えてしまう…


 その日の私の午後は、ずっと、そんな感じだった…


 ずっと、そんな感じで、過ぎていった…


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