寿綾乃という女 第4部 173
結局、その後、病院の近くの薬局で、薬をもらい、家に帰った…
以前より、効果が強い薬をもらった…
率直に、言って、ホッとした…
脳梗塞で、倒れたものの、重症化しているわけでも、なんでもなかったからだ…
やはり、どこか、カラダが、悪くなると、どうしても、病院に行き、医者に診てもらわないと、不安だ…
素人の判断では、原因が、わからないからだ…
どうして、具合が、悪いのか、原因が、わからないからだ…
その原因が、わかったから、安心した…
一安心した…
ナオキの行く末も心配だが、やはり、それ以上に、自分のカラダが、心配だからだ…
ナオキには、悪いが、心配だからだ…
まあ、こんなことがあって、あらためて、それが、わかった…
自分が、一番、大事だと、わかった(苦笑)…
家に帰ると、私は、ホッとした…
心底、ホッとした…
とりあえず、現時点で、やりたいことは、終わった…
和子の言う通り、人生は、一寸先は闇…
将来のことは、考えても、仕方がないからだ…
ナオキのことは、考えても、仕方がないからだ…
ナオキには、悪いが、なるようにしか、ならない…
FK興産が、完全に五井の傘下に下っても、ナオキが命まで、取られるわけでも、なんでもない…
そう、思えば、いい…
そう、考えれば、いい…
心の底から、そう、思った…
ナオキには、悪いが、そう、思った…
私は、家に帰ると、真っ先に、お風呂に入るのが、定番なのだが、さすがに、この時間に、お風呂に入るのは、早かった…
FK興産に勤めているときは、家に帰ってくるのは、夕方…
冬ならば、すでに、あたりが、暗くなっている…
だから、お風呂に入ったが、さすがに、真っ昼間に、お風呂に入るのは、嫌だった…
が、
やはり、それが、習慣になっていると、この時間でも、お風呂に入ってみるかと、考えを変えた…
本来、キレイ好きな私は、どうしても、外に出かけて帰って来ると、汚れたカラダを、洗わないと、嫌だという強迫観念にとらわれているところがある…
とりあえず、お風呂に入って、家では、パジャマに着替えて、ゆったり過ごす…
それが、私の定番だからだ…
それが、私の一日のルーティンだからだ…
それゆえ、やはり、お風呂に入った…
お風呂に入ると、心底ホッとする…
これは、子供の頃から、同じ…
同じだった…
32歳になった今も、同じ…
子供の頃と同じだった…
変わらない…
人間は、案外、変わらないものだ…
それとも、これは、私だけ?
私だけだろうか?
私以外の人間は、違うのだろうか?
誰かに、聞いて、みたくなる(笑)…
私と同じように、子供の頃から、変わらないものが、あるか、どうか、聞いて、見たくなる…
習慣でも、食べ物でも、飲み物でも、あるか、聞いて、みたくなる…
大げさに、言えば、ヤフーの質問箱に、書き込んで、みたくなる…
そんなことを、思った…
そんなバカなことを、思った…
が、
お風呂に入りながら、そんなバカなことを、真剣に考えているから、私は、結婚できないのかも、しれない…
32歳にも、なって、そんなバカなことを、考えているから、結婚できないのかも、しれない…
母が、生きていたら、間違いなく、そう言うだろう…
なにしろ、母が、私の年齢のときは、すでに、私を産んでいた…
だから、そう、言われるのは、当然…
当然だった…
が、
やはりというか…
自分が、子供を産んだ姿は、想像ができない…
私は、女に生まれたにも、関わらず、想像ができない…
ホントは、これこそ、ヤフーの質問箱で、聞いて、みたくなる…
三十路を過ぎた女で、まだ、子供を産んだことのない女に、私と同じか、どうか、聞いて、みたくなる…
自分が、子供を産んだ姿を、想像できるか、聞いて、みたくなる…
つい、そんなことを、考えた…
そして、もしかたら、これは、男も同じ…
同じだろうか?
やはり、私と同じように、自分の子供の姿を想像できない男も、いっぱい、いるのだろうか?
なにしろ、男は、子供は、産まない…
だから、子供を産む女とは、違う…
それゆえ、わからない…
私と同じように、考えるのか、わからない…
そして、私が、そんなふうに、考えるのは、もしかして、
…逃げている?…
私が、子供を産むことから、潜在的に、逃げているのかも、しれない…
そう、気付いた…
自分自身の心のありように、気付いた…
それは、おそらく、ジュン君…
ナオキの子供と、思われたジュン君…
ユリコが、ナオキ以外の男との間で、できたジュン君を、私は、子供の頃から、育てた…
手塩にかけて、育てた…
その自負が、ある…
その自信がある…
それゆえ、自分が、子供を産まなくても、すでに、子育ては、終了…
自分の中では、終了と、無意識に考えているのかも、しれない…
自分では、気付かずとも、そう、思っているのかも、しれない…
正直に、言って、以前は、子供が、欲しいと、思うことがあった…
まだ、32歳…
十分に、子供が、産める年齢だからだ…
だが、今は、違う…
今は、それほど、欲しいとは、思わない…
以前とは、違う…
が、
これも、わからない…
また、どうなるか、わからない…
再び、子供が、欲しくなるか、どうか、わからない…
子供が、欲しいか、否かは、究極のところ、自分の遺伝子を残したいか、否か?
それだと、思う…
そう、考えると、私は、迷う…
例えば、女が、生まれれば、私のように、美人に生まれて、欲しいが、美人が、産まれるか、どうかは、わからない…
なぜ、自分の子供が、美人であれば、よいと、考えるのか?
それは、おそらく、その方が、有利だからだ…
生きるのに、有利だからだ…
一部の人間からは、反感を買うが、その方が、生きやすい…
生きるのが、楽だと、思うからだ…
それは、自分の体験…
生まれてからの体験で、わかるからだ…
が、
その一方で、頭脳は、平凡…
平凡だ…
私は、平凡だ…
それゆえ、ナオキと、結婚して、子供が、産めば、いいのかも、しれない…
ナオキは、有名大学を出ている…
私と違って、頭脳明晰だからだ…
そんな下心があって、ナオキと、結婚して、できた子供が、ルックスも、平凡、頭も平凡だと、したら、どうだろう?
私は、自分の産んだ子供に、幻滅してしまうのだろうか?
それとも、そんなことはなく、自分の産んだ子供だから、かわいいのだろうか?
わからない…
こればかりは、産んでみなくては、わからない…
ただ、私の母娘関係は、基本、母と、私の関係だった…
この関係は、良好…
実に、良好だった…
この世の中には、血が繋がった親子にも、関わらず、気が合わない親子も、多い…
しかしながら、私には、それが、なかった…
私には、それが、当てはまらなかった…
だから、もし、私が、産んだ、子供が、私と気が合わなければ、当惑する…
自分と、母の関係と、まったく、違うからだ…
だから、どうしていいか、わからないから、当惑する…
しかし、その一方で、そんな関係の子供も、見てみたい…
授かってみたい、気持ちがある…
これは、怖いものみたさ?
もしかしたら、怖いものみたさかも、しれない…
が、
本当のところは、わからない…
産んでみなければ、わからない…
自分が、子供を産んで、みなければ、わからないからだ…
そして、そんなことを、考え続けていると、自分が、長湯をしかねないと、気付いた…
つい、先日も、長湯をし過ぎて、気分が、悪くなった…
さすがに、あの再現は、できない…
あんな馬鹿な真似の再現は、できない…
私は、急いで、浴槽から、出て、カラダを洗って、再び、軽く、浴槽に浸かって、お風呂から、出た…
さすがに、この前の再現は、できないからだ…
さすがに、長風呂で、気分が、悪くなった、この前の再現は、できないからだ(爆笑)…
私は、急いで、お風呂から、出ると、まっすぐに、キッチンに、行き、冷蔵庫から、缶ビールを取り出して、飲んだ…
火照ったカラダには、ビールが、うまい…
冷たいビールが、うまい…
私は、つくづく、思った…
思ったのだ…
そして、暇つぶしに、テレビをかけた…
ホントは、テレビを、かけなくても、良かったが、テレビをかけないで、いると、つい、考え込んでしまう…
つい、妄想してしまうからだ(苦笑)…
つい、アレコレ、考えてしまう…
ナオキのこと、伸明のこと、昭子のこと、その他、もろもろを考えてしまう…
それが、嫌だったので、テレビをかけた…
そして、缶ビールを飲みながら、なんとなく、テレビを、見た…
そこには、伸明の顔があった…
見慣れた伸明の顔が、あった…
若き五井の当主の顔があった…




