↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
寿綾乃という女 第4部  作者: トモサン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
165/225

寿綾乃という女 第4部 165

 が、


 確証は、ない…


 証拠がない…


 ただの推測に過ぎない…


 ただの想像に過ぎない…


 私は、思った…


 私は、考えた…


 いずれにしろ、伸明に会えば、わかる…


 伸明に会えば、謎が、解ける…


 そして、そんなことを、考えたら、ふと、疲れが、襲った…


 全身に、疲れが、蘇った…


 もちろん、錯覚…


 これは、錯覚だ…


 自分の身になにか、起きたわけでは、ない…


 まったく、ない…


 ただ、これは、気持ちの問題…


 単に、自分の気持ちの問題に、過ぎない…


 そして、そんなことを、内心、思いながら、その一方で、


 …ホントに、こんなことって、あるんだ!…


 と、驚いた…


 よく、映画や小説で、なにか、凄いショックなことが、起きると、登場人物が、倒れて、気を失ってしまうシーンがある…


 これを、見た者は、


 …随分、おおげさに、書くな!…


 とか、


 …まあ、映画だから、それぐらい、派手にやらないと、な!…


 とか、思っていた…


 要するに、演出…


 本当のことではないと、思っていた…


 が、


 本当のことだった…


 私が、今、感じた…


 このナオキが、会社を五井に身売りし、五井グループの会社、数社と合併して、その会社の社長になる…


 そんなことが…


 まさか、そんなことが、起きるとは、思わなかった…


 夢にも、思わなかった…


 FK興産が、売り上げが低迷して、五井グループの支援を受けた…


 その時点で、将来の五井グループを危惧したが、なにも、なかった…


 私の思い過ごし…


 私の取り越し苦労に、過ぎなかった…


 いや、


 一度あった…


 一度だけ、あった…


 社長である、ナオキを解任して、他の人物を社長に、据える…


 そんなことが、一度だけ、あった…


 そして、そのときに、私は、ナオキに、味方した…


 ナオキの側に立った…


 FK興産の非常勤の取締役として、藤原ナオキの留任に賛成した…


 私は、それを、思い出した…


 今さらながら、思い出した…


 あのときは、和子も、出席していた…


 五井の女帝も、出席していた…


 FK興産の取締役会に出席していた…


 そして、それを、見て、和子は、私が、伸明と、ナオキを比べれば、ナオキと取ると、知った…


 五井家の当主でなく、昔からの、なじみのある、藤原ナオキを取ることを、知った…


 そして、それは、ショック…


 もしかしたら、伸明も、ショックだったかも、しれない…


 伸明の気持ちは、考えたことはないが、伸明の立場に立てば、物凄い、ショックだったかも、しれない…


 なにしろ、大金持ち…


 生まれながらの大金持ちだ…


 生粋の大金持ちだ…


 おまけに、ルックスもいい…


 それなのに、私は、伸明から見れば、どこの馬の骨とも、わからない、ナオキを選んだ…


 藤原ナオキを選んだ…


 普通に考えれば、これは、ショック…


 大きなショックだ…


 由緒ある、金持ちの御曹司が、どこの馬の骨とも、つかない男に負けたのだ…


 女に、


 「…どっちを選ぶ?…」


 と、聞いたら、自分以外の男を選んだのだ…


 これは、ショック…


 大きなショックだ…


 考えてみれば、この一件が、伸明に禍根を残さないはずがない…


 プライドの高い、伸明が、恨みに、思わないはずはない…


 ただ、伸明は、見せないだけ…


 態度に、見せないだけだ…


 普段から、自分を抑制しているから、態度に出さないだけだ…


 そう、思った…


 そう、考えた…


 そして、そんな伸明が、一度だけ、感情を表したことが、ある…


 むき出しの感情を表したことが、ある…


 それは、なぜ、父の建造が、自分を選んだのか?


 五井家前当主の建造が、なぜ、自分と、血が繋がった、伸明の弟の秀樹ではなく、自分と、血が繋がらない、伸明を選んだのか?


 それを、激白したときだ…


 私は、秀樹は、欲が深く、自分勝手だから、当主に、向かない…


 だから、次の当主は、伸明と、言った、建造の言葉を信じていた…


 疑いもなく、信じていた…


 が、


 伸明は、違った…


 それとは、まったく、違う意見を言った…


 建造が、自分と血が繋がった秀樹を後継者に選ばなかったのは、苦労をさせたくなかったから…


 自分と同じ苦労をさせたくなかったから…


 五井家当主という重責を担わせたくなかったから…


 そう、私に告げたことがある…


 そう、私に激白したことがある…


 建造の急死で、伸明が、いきなり、当主になった…


 準備もなにもなしに、当主の座に就任した…


 建造は、生前、誰にも、後継者は、伸明と告げていた…


 もちろん、五井一族にも、告げていたはずだし、それは、知り合ってまもない、私にも告げていた…


 …秀樹では、無理…


 と、告げていた…


 が、


 伸明は、その裏を読んだ…


 もしかしたら、この重責を、息子の秀樹には、担わせたくない…


 そう、思ったのだ…


 そして、それを、聞いたとき、私は、驚いた…


 文字通り、驚愕した…


 それは、そんなことは、考えたことがなかったからだ…


 一度も考えたことがなかったからだ…


 建造の言葉を、一ミリも、疑ったことが、なかったからだ…


 しかしながら、伸明の言うことが、わからないでもない…


 名門の五井だ…


 その当主に就任するのだ…


 傍からは、わからない重責があるだろう…


 経験したものでなければ、わからないプレッシャーがあるだろう…


 だから、思わず、考えた…


 本当は、建造は、自分と血が繋がった秀樹に、こんな大変な思いをさせたくなかったのでは、ないか?


 そう、考えた…

 

 そう、考えても、おかしくはない…


 建造の真意は、わからないが、その可能性もあるからだ…


 その可能性も、あながち否定できないからだ…


 たとえ、秀樹が、当主になれなくても、生活に困るわけでも、なんでもない…


 五井一族として、生きれば、生活に困るわけでも、なんでもないからだ…


 建造は、


…秀樹を五井一族から、追放しろ!…


 とまでは、言わなかった…


 ただ、当主の器ではないと、言っただけだ…


 たとえ、秀樹が、当主になれなくても、五井を追放されるわけでも、なんでもないから、生活に困るわけでもない…


 それゆえ、伸明は、そんなことを、考えたのだろう…


 要するに、優遇した…


 血の繋がった、自分の息子を優遇した…


 あえて、当主にさせないことで、優遇した…


 そう、思ったのだ…


 そして、それだけ…


 そのときだけ…


 伸明は、感情を晒した…


 自分の感情を、私の前で、晒した…


 あのときだけ…


 考えてみれば、あのときだけだ…


 伸明は、いつも紳士的…


 まるで、天皇陛下のように、紳士的だ…


 その対応が、おかしくなることはない…


 その対応が、乱れることはない…


 が、


 だからこそ、わからない…


 本当は、なにを、考えているか、わからない…


 伸明は、素顔を晒さない…


 自分の感情を、他人に見せないからだ…


 だから、なにを、考えているか、わからない…


 おおげさでなく、わからない…


 いつも、おしゃべりで、他人の悪口ばかり言う…


 そんな人間は、わかりやすい…


 実に、わかりやすい…


 このひとは、性格が悪いんだと、誰もが、わかるからだ(爆笑)…


 いつも、数人集まって、他人の悪口ばかり、言う…


 ひとりで、悪口を、言うひとは、いないからだ(苦笑)…


 そして、当然のことながら、悪口を言っているひとたちは、皆、性格が悪いひとたちばかり…


 陰で、


 …アイツら、性格が悪いから…


 と、陰口を、叩かれているひとたちだからだ…


 もっとも、陰で、性格が、悪いと、陰口を叩かれるひとも、皆、自分が、性格が悪いとは、これっぽちも、思っていない…


 自分は、性格は、悪くないと、心の底から、思っているのが、大半だ…


 それが、普通だ…


 が、


 そういう人間の方が、いい…


 わかりやすくて、いい…


 あまり、しゃべらない…


 態度にも、出さない…


 そういう人間ほど、厄介…


 厄介だ…


 なにを、考えているか、わからないからだ…


 そして、それが、伸明に当てはまる…


 五井家の当主に、当てはまるのだ…


 私は、思った…


 私は、考えた…


 そして、このナオキ…


 伸明と、親しい、ナオキ…


 このナオキもまた、似ている…


 伸明と似ている…


 が、


 伸明と、違うのは、ずっと、昔から、知っていること…


 私が、高校生だったときから、知っていることだ…


 私が、女子高生だったときから、知っていることだ…


 そして、もうひとつ…


 ナオキとは、その頃から、男女の関係にあったということだ…


 よく、


 …寝れば、わかる…


 という、世間の声も、あるが、それは、違う…


 一度や二度、寝たところで、互いに、どんな人間か、わかるはずもない…


 相手が、どんな人間か、わかるには、いっしょに、暮らすこと…


 結婚でも、同棲でも、いい…


 いっしょに、暮らすことだ…


 そうすれば、相手が、どんな人間か、わかる…


 実に、わかる…


 それは、なぜか?


 それは、誰もが、外面(そとづら)と、内面(うちづら)があるからだ…


 いわば、学校や会社といった公共の場で、見せる顔と、家庭で、見せる顔が、違うことが、あるからだ…


 大半が、それほど、変わらないが、一部の人間は、まるっきり、別人のようなひとが、いる(爆笑)…


 会社や、学校では、常に、いいひとを、演じているが、家庭では、不機嫌…


 いつも、ひとの悪口ばかり、言っているものも、いる…


 男女問わず、いる…


 つまり、なにを言いたいかと、言えば、ナオキの顔は、表も、裏も、知っているが、伸明の顔は、表の顔しか、知らない…


 そう、言いたいのだ…


 そして、その伸明が、私と会いたいと言う…


 戦いが、終わった伸明が、私と会いたいと言う…


 …一体、なにを言うのか?…


 …一体、なにを話すのか?…


 気になる…


 実に、気になる…


 そう、思った…


 そう、思ったのだ…


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。