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寿綾乃という女 第4部  作者: トモサン


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164/225

寿綾乃という女 第4部 164

 私は、そう、見た…


 私は、そう、睨んだ…


 が、


 しかしながら、ナオキの意見は、違った…


 私の意見とは、違った…


 「…たぶん、ボクを伊豆に幽閉したのは、諏訪野さんと、団さんの権力闘争が、最終局面を、迎えた頃だと、思う…」


 「…どうして、そう、思うの?…」


 「…団さんは、その頃に、諏訪野さんの目論見に、気付いたんだと、思う…」


 「…目論見? なんの目論見?…」


 「…さっきも言った、FK興産を、五井の情報関連企業数社と、合併させようとしたこと…それに、気付いたんだと、思う…」


 「…だから、ナオキを幽閉した…」


 「…そう、ボクがいては、その合併の話を進められたら、困ると、思ったんだろう…だから、手っ取り早く、ボクを幽閉した…ボクを伊豆の別荘に招き、そこから、出られないようにした…たぶん、それが、真実…」


 「…」


 「…そして、それを、考えれば、五井の女帝…諏訪野和子さんの入院…アレも、怪しい…」


 「…怪しいって、どういうこと?…」


 「…ホントに、入院したのかも、怪しい…」


 「…えっ?…」


 「…だって、ボクも綾乃さんも、諏訪野和子さんが、入院した姿を見ていないんだから…」


 言われてみれば、その通り…


 その通りだった…


 私も、ナオキも、諏訪野和子が、入院した姿を見ていない…


 そして、今日の昼間、あのマミさんも、私と、五井記念病院で、出会って、すでに、和子は、退院したと、言っていた…


 つまり、誰も、和子が、入院した姿を、見ていない…


 ただ、聞いただけだ…


 ただ、聞いただけで、誰も、見ていない…


 だから、そう、考えれば、疑われる…


 和子が、ホントに、五井記念病院に入院していたのか、疑われる…


 そして、私が、そんなことを、思っていると、ナオキが、


 「…最初の話に、戻るけれど、そもそも、諏訪野さんが、見合いをした話も、疑わしい…」


 「…どうして、疑わしいの?…」


 「…だって、綾乃さんから、聞いた、諏訪野さんの縁談、出席者が、少な過ぎでしょ? …あらかじめ、一族の中で、仲の良いひとに、頼んで、お芝居をして、もらったのかも…」


 「…どうして、お芝居を?…」


 「…団さんを、欺くためさ…」


 「…欺くため?…」


 「…一族の重しの五井の女帝は、いなくなった…そのタイミングで、諏訪野さんが、一族の女性と見合いをする…なにか、できすぎていると、思わないかな…」


 「…そんな…」


 「…もっとも、これは、ボクの推測…確証は、ない…証拠もない…でも、疑えば、疑える…諏訪野さんの行動を疑えば、疑える…切りがないほど、疑える…」


 ナオキが、力説する…


 そして、そんなナオキの姿を見るにつけ、このナオキにとって、会社が、大事…


 つくづく、大事なんだと、思った…


 自分が創業したFK興産が、つくづく、大事なんだと、思った…


 普段は、気付かない…


 自分が、そんなに大事に思っていたことに、気付かない…


 自分のことなのに、気付かない…


 でも、今回のように、ホントに、自分の手元を離れるかも、しれないと、考えると、気付く…


 いかに、自分にとって、大切なんだと、気付く…


 これは、誰でも、同じ…


 同じだ…


 典型的なのは、家族や恋人…


 亡くなったり、別れたりして、気付く…


 いかに、自分にとって、大切な存在だったと、気付く…


 それと、同じだ…


 私は、ナオキの姿を見て、そう、思った…


 そう、思ったのだ…


 そして、私が、そう、思っていると、ナオキが、


 「…ボクにとっては、会社と同じく、綾乃さんも、大事だ…」


 と、漏らした…


 力を込めて、漏らした…


 そして、言った…


 「…以前、あのハルカさんと、諏訪野さんが、見合いをしたときに、あのハルカさんは、強い女に、見えたと言ったね…」


 と、言った…


 「…ええ、言ったわ…」


 「…でも、ボクも、偽の結婚会見をするのに、彼女とあったけれど、全然、強くなかった…普通だった…」


 「…えっ?…」


 「…綾乃さんも、言ってたよね…見合いのときに会った彼女と、次に会った彼女は、別人だったと…」


 「…」


 「…つまり、彼女は、誰かに頼まれて、見合いの席では、強い女を演じたと、思うのが、普通だろう…」


 「…誰に頼まれたの?…」


 「…それは、わからない…諏訪野さんかも、しれないし、団さんかも、しれないし、その見合いに出席した、五井西家のひとかも、しれないし、または、別の誰かかも、しれない…」


 「…別の誰かって?…」


 「…だって、あのハルカさん、綾乃さんの、五井記念病院の担当医の妹さんだろ? そのお兄さんに、頼まれた可能性もある…」


 たしかに、言われてみれば、その通り…


 その通り…


 その可能性が高い…


 そして、その長谷川センセイ…


 五井記念病院を退職した…


 このタイミングで、退職した…


 普通に、考えれば、なにか、ある…


 このタイミングで、五井記念病院を退職した理由がある…


 しかも、退職していったのは、北東病院…


 おそらくは、五井北東家の支配下にある、北東病院だ…


 いや、


 長谷川センセイは、退職以前に、北東病院に勤務していた…


 五井記念病院と並行して、勤務していた…


 だから、繋がっていた…


 おそらく、団郁馬と繋がっていた…


 そして、団郁馬と、伸明の勝負は、ついた…


 伸明の圧勝だった…


 それゆえ、退職した…


 長谷川センセイは、退職した…


 それは、長谷川センセイの意志?


 それとも、伸明の意志?


 伸明の指示で、五井記念病院をクビになった?


 それとも、団郁馬の指示?


 伸明に負けた団郁馬の指示?


 もはや、長谷川センセイは、五井記念病院を去らねばならなかった…


 団郁馬の指示で、動いて、伸明と敵対した…


 団郁馬の指示で、妹のハルカを、伸明と、見合いをさせた…


 それが、不発に、終わったから、用無しになった?


 いや、だったら、なぜ、ハルカとこのナオキを結婚させようとする?


 もしや、寝返った?


 ハルカが、寝返った?


 最初は、兄の長谷川センセイの指示で、動いて、途中から、伸明の指示で、動くようになった?


 そうも、考えられる…


 あるいは、そうすることで、長谷川センセイを救おうとした…


 敗北した団郁馬の側についた、兄の長谷川センセイを救おうとした?


 そうも、考えられる…


 そして、あのユリコ…


 この、目の前にいる、ナオキの前妻であり、私の宿敵のユリコ…


 あのユリコは、以前、長谷川センセイといっしょにいるところを、見た…


 スーパーで、二人で、買い物をしている、姿を見た…


 仲睦まじく、二人で、いる姿を見た…


 そして、さらに言えば、あのユリコは、団郁馬とも、接点がある…


 ユリコの開く、講習で、団郁馬の名前があった…


 これは、一体、どういうことか?


 ただ、わかっていることは、ある…


 共通していることは、ある…


 それは、あのユリコが、接した人物は、皆、北東家と関係がある…


 団郁馬の北東家と関係がある…


 それゆえ、皆、共通するのは、敗者…


 皆、負け組だということだ…


 皆、伸明に負けたということだ…


 勝ち組は、伸明…


 そして、私や、ナオキ…


 伸明と親しい、私や、ナオキ…


 伸明の側にいる、私やナオキだ…


 が、


 その勝ち組のナオキは、会社を売り、五井に身売りを迫られている…


 勝ち組の伸明の側にいるにも、かかわらず、だ?


 これは、一体、どういうこと?


 わからない…


 さっぱり、わからない…


 が、


 いずれにしても、伸明に会えば、わかる…


 このナオキが、言ったように、伸明は、私に会いたがっている…


 なぜ、会いたがっているのかは、わからない…


 もしかして、私を利用したから?


 団郁馬との対決で、私を利用したから?


 そうも、考えられる…


 そして、もし、そう考えれば、納得する…


 なにに、納得するのか?


 それは、団郁馬が、偶然を装って、私に会ったこと…


 コンビニで、私に会ったことだ…


 私は、それまで、団郁馬と面識が、なかった…


 あのとき、初めて、会った…


 しかも、そのときは、団郁馬だとは、気付かなかった…


 団郁馬の顔を知らなかったからだ…


 この後、マミさんに、教えてもらって、初めて知った…


 いずれにしろ、あのとき、団郁馬と、会ったのが、初めて…


 初めてだった…


 そして、なぜ、会ったのか、考えた…


 団郁馬の気持ちになって、考えた…


 それは、おそらく、自身の敗北が、決まったから…


 伸明に敗北したのが、決定的になったからでは、ないだろうか?


 違うだろうか?


 私は、考えた…


 まあ、いずれに、しても、答えは出る…


 伸明に会えば、答えが出る…


 そう、思った…


 そして、私が、そう思っていると、ナオキが、


 「…そう言えば、綾乃さん、今日は、昼間から、寝ていたけれど、なにか、あったの?…」


 と、聞いた…


 私が、忘れていたことを、聞いた…


 私は、ビックリしたが、すぐに、


 「…昼間、倒れたのよ…」


 と、正直に、言った…


 「…倒れた? どこで?…」


 「…自宅で…今日、昼間、五井記念病院に行って、マミさんと、会ったの…それで、自宅に帰って来たら、突然、カラダが、動かなくなって…」


 「…どうして、綾乃さん、五井記念病院に行ったの?…」


 「…諏訪野和子さん、彼女が、本当に、五井記念病院に入院しているか、どうか、知りたかったの? 連絡したって、外部の人間には、教えてくれないでしょ? だから、長谷川センセイに会って、長谷川センセイに、本当に、和子さんが、五井記念病院に入院しているか、確かめたかったのよ…長谷川センセイは、関係者だから、調べられると、思って…」


 「…なるほど…」


 「…それで、行ったら、長谷川センセイは、退職していて、私と同じく、和子さんをお見舞いにきた、マミさんと会ったわけ…」


 「…そうなんだ…」


 「…そうよ…」


 言いながら、違和感を感じた…


 もしかして、私が、和子さんの見合いに行ったから、マミさんは、私に会った?


 ホントは、あの五井の女帝が、入院していないのを、知っていた?


 だから、私に会いに行かれたら、困る?


 それゆえ、偶然を装って、私に会った?


 あるいは、ホントは、今も入院していて、私に和子さんと、合わせたくなかった?


 さまざまな、思いが、私に中に浮かんだ…


 心の中を駆け巡った…


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