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寿綾乃という女 第4部  作者: トモサン


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161/225

寿綾乃という女 第4部 161

 叔母は私そっくりの美人だったが、性格は、真逆…


 まったく、私と似ていなかった…


 一言で言えば、おっとりしていた…


 それゆえ、建造との間に、子供ができても、あっさりと、身を引いたのだろう…


 建造の立場を考えて、身を引いたのだろう…


 叔母は、決して、ひとを押しのけて、前に出る人間では、なかった…


 また、だから、建造は、叔母を愛したのだろう…


 建造に限らず、ひとを押しのけて、自分が、前に出る人間を好きになる人間は、いない…


 一目見て、性格に難がある人間を好きになる人間はいない…


 そういうことだ…


 のんびりと、湯船に浸かりながら、そんなことを、考えた…


 そんなことを、思った…


 これまで、考えたことのないことを、考えた…


 これは、私が、歳を取ったことも、大きい…


 何度も言うが、これまで、考えたことも、なかった…


 亡くなった叔母のことを、考えたことも、なかった…


 それが、今、さっき、脳梗塞で、倒れた…


 それゆえ、叔母が、身近になった…


 これまで、考えたことのないくらい、身近になった…


 私が、晩年の病気の叔母と、同じように、なったからだ…


 同じように、病魔に蝕まれたからだ…


 そう、思った…


 そして、そんなことを、考えながら、一方で、つい、さっき、脳梗塞で、倒れたにも、かかわらず、湯船に浸かって、そんなことを、考える自分自身を振り返って、つくづく、自分は、能天気だと、思った…


 能天気=楽天家だと、思った…


 これを、世間のひとが、知れば、


 「…さっき、脳梗塞で、倒れたのに、よく平気で、お風呂に入っていられるね…」


 とか、


 「…俺なら、すぐに、救急車を呼ぶよ…」


 という声があっても、おかしくはない…


 たしかに、そう、考えれば、この後、救急車を呼んでも、いいかも、しれない…


 お風呂を出た後に、救急車を呼んだ方が、いいのかも、しれない…


 しかしながら、やはり、それは、遠慮したい…


 それは、なにより、今、私は、健康だからだ…


 だから、こうして、今、お風呂に入っていられる…


 が、


 以前、やはり、脳梗塞で倒れ、五井記念病院に救急車で、運ばれたときには、今と違い、もっと、深刻だった…


 それに、今、あのとき、脳梗塞で、倒れたことで、クスリをもらっている…


 医師から、クスリをもらっている…


 そのクスリを、休むことなく、きちんと飲んでいる…


 だから、あのときとは、違う?


 だから、あのときとは、違って、大丈夫ではないか?


 そうも、考えた…


 また、その一方で、あの後、脳梗塞で倒れた後に、脳梗塞について、いろいろ、調べた…


 ネットで、調べた…


 そこには、体調が、おかしければ、すぐに、救急車を呼びなさいと、書いて、あった…


 だから、ホントは、この後、救急車を呼べば、いいのでは、ないか?


 そうも、思った…


 そうも、考えた…


 いや、しかし、そのときに、今の私を救急隊員が見れば、どう思うだろうか?


 今の私は、まったくの健康体…


 誰が見ても、カラダに異常があるとは、思えない…


 それなのに、救急車を呼べば、私を見て、救急隊員は、どう思うだろうか?


 下手をすれば、タクシー代わりに使うとでも、思うのでは、ないか?


 そう、考えると、救急車は、呼びにくい…


 正直、救急車を呼ぶ勇気がない…


 私には、ない…


 私は、湯船に浸かりながら、そんなことを、考えた…


 そんなバカなことを、考え続けた…


 が、


 そんなバカなことを、まるで、メリーゴーランドのように、いつまでも、いつまでも、同じことを考えて、気分が、悪くなった…


 長い間、湯船に浸かりすぎたからだ…


 それゆえ、カラダが、火照って、気分が、悪くなった…


 長湯のせいだ…


 だから、私は、慌てて、浴槽から、出た…


 が、


 出たところで、気分が、悪いことには、変わりはない…


 それゆえ、仕方なく、お風呂場から、出た…


 なにしろ、お風呂場は、熱すぎる…


 だから、お風呂場から、逃げ出すしか、なかった…


 相変わらず、バカな女…


 つくづく、思った…


 しかし、こんなバカな女だから、可愛げがあるのかも、しれない…


 ふと、気付いた…


 誰もが、完璧な人間を嫌うものだ…


 なぜ、嫌うのか?


 それは、自分が、勝てないから…


 男なら、長身で、イケメン…


 おまけに、大学も東大卒…


 女なら、美人で、頭もいい…


 偏差値の高い、有名大学を出ている…


 そんな完璧な人間を前にすると、誰もが、コンプレックスを抱くからだ…


 だから、ほどほどがいい…


 頭も、ほどほどによく、ルックスも、ほどほどに、良いのが、いい…


 また、真逆に、完璧な人間は、頭がいいゆえに、自分の立場を心得ている…


 会社や、学校の中で、自分が、周囲から、どう見られているか、心得ている…


 それゆえ、隙を作る…


 わざと、隙を作る…


 隙=弱点を作る…


 美人であれば、わざと、例えば、料理が、できないとか、アピールする…


 そうすることで、自分が、完璧な人間ではないと、周囲にアピールする…


 完璧な人間だと、周囲からの羨望で、その羨望の裏返しで、イジメのターゲットにでも、されたら、たまらないからだ…


 そして、今、考えれば、私が、イジメのターゲットにならなかったのは、抜けていたから?


 天然だったせいかも、しれない(笑)…


 今、お風呂で、湯船に長時間、浸かって、気分が、悪くなったのが、その最たる例…


 やはり、どこかで、そんな行動は、出る…


 そんなおバカな行動が出る…


 そういうことかも、しれない…


 あるいは、ただ、周囲の人間に、恵まれただけかも、しれない…


 周囲に、陰湿なイジメをする人間が、いなかっただけかも、しれない…


 そう、思った…


 そう、気付いた…


 今さらながら、気付いた…


 私が育った地域は、田舎…


 なにもない地方の田舎だ…


 それゆえ、ひとも少ない…


 昔から、見知った者同士…


 そういう田舎では、イジメが、起きにくい…


 イジメが、起きるのは、やはり、都会が、多い…


 ひとが、多いところが、多いからだ…


 だから、さまざまな人間が集まる…


 性格のいい人間も、悪い人間も、集まる…


 それに、比べ、田舎は、ひとの数が、少ない…


 だから、人間関係も、濃密…


 子供だけでなく、親兄弟も、顔見知りの場合が、大半…


 つまり、すべて、見知っている…


 子供の頃から、見知っている…


 そういう場所では、イジメが、起きにくい…


 そういうことだ…


 もちろん、例外はある…


 私の場合は、たまたまだったのかも、しれない…


 たまたま、周囲にイジメをする人間が、いなかっただけかも、しれない…


 本当のことは、わからない…


 誰もが、自分が、体験したこと…


 誰もが、自分が、見たり、聞いたりしたことしか、わからないからだ…


 私が、お風呂場から、出て、そんなバカなことを、考えていると、ようやく、火照ったカラダが、冷めてくるのが、わかった…


 それに、連れて、気分も、よくなった…


 だから、お風呂場に、戻ることにした…


 戻って、カラダを洗うことにした…


 さっきは、湯船に浸かったまま、アレコレ、考え事をし過ぎた…


 それゆえ、長湯をし過ぎて、気分が、悪くなった…


 それを、教訓に、お風呂場に、戻ると、今度は、テキパキと、カラダを洗って、すぐに、お風呂場を出た…


 さすがに、長湯をするつもりは、起きなかった…


 さすがに、もう一度、気分が、悪くなるような真似をするつもりは、なかった…


 それゆえ、ただ、カラダを洗うことに、専念して、お風呂場から、出た…


 今度は、気分が、悪くなる前に、出た(爆笑)…


 

 お風呂場から、出ると、私は、着替えてから、早速、冷蔵庫から、冷えた缶ビールを一本取り出して、すぐに、飲み出した…


 気持ちがいい…


 実に、気持ちがいい…


 気分爽快…


 ビールを飲みながら、思った…


 そして、これでは、やはり、救急車を呼ぶことは、できないと、悟った…


 仮に今、救急車を呼んで、私の姿を見たとする…


 これから、救急車で、運ばれる人間が、おいしそうに、ビールを飲んでいるなんて、ありえないからだ…


 当たり前だった…


 だから、救急車を呼ぶことなど、できない…


 今さら、ながら、気付いた…


 そして、もうひとつ、気付いたこと…


 それは、やはり、脳梗塞の直後に、お風呂に入っては、いけなかったと、思った…


 脳梗塞は、基本、頭の中の血管が、詰まる病気…


 頭の中の血管の中を流れる血が、固まる病気だからだ…


 だから、やはり、お風呂は、マズい…


 熱いお風呂に入って、脳の中の血管が、詰まりでも、したら、大変だからだ…


 そんな初歩的なことに、今、気付いた…


 お風呂場から出て、ビールを飲みながら、今さら、気付いた…


 バカ…


 大バカ…


 自分でも、大バカだと、気付いた…


 よく、これで、大丈夫だったと、今さらながら、気付いた…


 これでは、さすがに、天然を超える…


 天然を超える大バカだ…


 同時に、冷や汗が出た…


 内心、冷や汗が出た…


 もし、お風呂場で、倒れたから、目も当てられなかったからだ…



 それを、考えると、冷や汗が出た…


 今さらながら、冷や汗が出た…


 それゆえ、缶ビールを一本飲み干すと、ベッドに横になった…


 今さらながら、自分のした行動が、怖くなった…


 自分で、自分のした行動に、怖くなった…


 自分の浅はかな行動が、怖くなった…


 自分で、自分が、怖くなった…


 同時に、疲れが、どっと来た…


 さっき、五井記念病院に行った、疲れたが、どっと出た…


 なにしろ、普段は、いつも家に閉じ籠っている…


 基本、家に閉じ籠って、外出もしない…


 そんな私が、五井記念病院に行ったのだ…


 電車を乗り継いで、五井記念病院に行ったのだ…


 疲れないわけはない…


 疲れが、たまらないわけはない…


 それゆえ、ベッドに横になると、いつのまにか、ウトウトしてしまった…


 自分でも、気付かない間に、ウトウトしてしまった…


 そして、そのまま、眠りに落ちてしまった…


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