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寿綾乃という女 第4部  作者: トモサン


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159/225

寿綾乃という女 第4部 159

 思い起こせば、建造が、私に接触したのが、すべての発端だった…


 今は、亡き、建造が、すべての発端だった…


 私は、ナオキの秘書…


 FK興産社長の藤原ナオキの秘書…


 ナオキは、週一で、テレビで、キャスターを、している…


 私は、ナオキの秘書なので、ナオキが、テレビ局に出入りするときも、同行した…


 それで、私を知ったのだろう…


 私は、思った…


 私は、考えた…


 いや、


 違う…


 おそらく、私を知ったのは、マミさん…


 今、別れたばかりのマミさんと、ナオキの対談が、きっかけ…


 同じ経営者同士ということで、ナオキとマミさんが、雑誌で、対談をしたのだ…


 それが、私が、五井と関わるきっかけになった…


 いや、


 そうではない…


 それは、後付け…


 私の存在を知った建造が、マミさんを使って、私に接触しようと、したのだ…


 それは、なぜか?


 それは、私が、叔母に、そっくりだということ…


 私が、建造の愛した叔母に、外見が、そっくりだと、いうこと…

 

 おそらく、それを、知り、 私に接触した…


 自分の娘ではないかと、考え、接触した…


 それが、始まり…


 建造と、亡くなった、建造の弟の義春は、叔母に、メロメロだった…


 叔母に憧れていた…


 叔母が、私そっくりの美人だったからだ…


 目立つ美人だったからだ…


 おまけに、苗字が、寿と変わっている…


 世間に、あまりない、苗字…


 それゆえ、建造は、私を疑った…


 自分の子供ではないかと、疑った…


 それが、すべての始まり…


 私が、五井と関わった、すべての始まりだ…


 しかしながら、私は、叔母の娘ではない…


 当たり前だ…


 叔母は、私の母の妹…


 ただし、私は、母よりも、叔母に似ていた…


 ルックスが、美人の叔母に似ていた…


 そして、叔母に娘はいたが、容姿は、平凡だった…


 美人でも、なんでもなかった…


 それが、綾乃…


 本物の寿綾乃…


 私の従姉だ…


 私の従姉は、建造の子供だった…


 しかし、すでに、私が、中学時代に他界した…


 そして、美人の叔母も、後を追うように、すでに他界していた…


 母は、亡くなる前に、私に、


 「…綾乃になりすませ!…」


 と、命じた…


 従姉の綾乃は、お金持ちの娘…


 それゆえ、綾乃になりすませば、お金を得られると、母は、思ったのだ…


 そして、それは、亡くなった母が、唯一、私に残せる財産だった…


 母は、シングルマザー…


 私と母子ふたりきりで、生きて来た…


 財産などと、いうものは、ない…


 それゆえ、私が、亡くなった従姉の綾乃になりすませば、財産を得られると、思ったのだ…


 しかしながら、母は、叔母が、誰との間で、綾乃を産んだのか、知らなかった…


 綾乃の父親を知らなかった…


 それは、叔母が、母に話さなかったから…


 その綾乃の父親が、建造だった…


 若き日の建造だった…


 建造は、私を知り、私を、自分の娘では、ないかと、疑った…


 途中で、私が、娘ではないと、わかったようだが、私には、優しかった…


 赤の他人の私に、優しかった…


 おそらく、血が繋がってないと、知っても、私に優しかったのは、私が、叔母そっくりだったからだろう…


 若き日の建造の愛した叔母そっくりだったからだろう…


 それゆえ、たとえ、直接、血が繋がっていなくても、私が、叔母と血縁関係があると、考えたのだろう…


 なにより、寿という苗字が、変わっている…


 世間に、あまりない苗字だ…


 だから、私に優しかった…


 最後まで、優しかった…


 私は、それを、思い出した…


 そして、それを、考えると、


 …もしや?…


 もしや、私が、建造の娘かも、しらないと、言ったのは、団郁馬…


 五井北東家の団郁馬かも、しれない…


 ふと、そう、思った…


 そう、気付いた…


 五井北東家は、東都テレビを支配している…


 そして、ナオキの週一で、キャスターとして、レギュラー出演をしているテレビ番組は、東都テレビ…


 五井北東家の支配下にある、東都テレビだ…


 そこで、私を見かけたことが、あるのでは、ないか?


 ナオキに同行して、東都テレビに出入りする、私を見たことが、あるのでは、ないか?


 ふと、気付いた…


 また、あの団郁馬は、叔母と面識があるでは、ないか?


 いや、


 例え、面識は、なくとも、叔母のルックスを知っていたのではないか?


 そして、偶然、私を見て、驚愕した…


 叔母そっくりの私を見て、驚愕した…


 そして、それを、建造に伝えた可能性が、高い…


 なにしろ、建造は、当主の息子…


 将来的に、五井家の当主を継ぐことは、規定路線…


 それゆえ、若き日の建造が、誰と、付き合っているか、噂になる…


 五井一族の間で、噂になるからだ…


 そして、もしかしたら、建造と、付き合っていた女が、将来、建造と、結婚すれば、当主夫人となる…


 五井一族の頂点に立つ…


 そう考えれば、気にならないはずはない…


 建造が、どんな女と付き合っているか、気にならないはずはない…


 そして、建造と付き合っていた叔母の写真を、どこからか、手に入れた…


 若き日の叔母の写真を手に入れた…


 私そっくりの叔母の写真を手に入れた…


 それを、団郁馬が、建造に伝えた可能性が、高い…


 建造と敵対する、団郁馬が、建造に伝えた可能性が、高い…


 そう、気付いた…


 今、気付いた…


 そして、それならば、辻褄が合う…


 さまざまな辻褄が合う…


 私は、電車に揺られ、自宅まで、帰る最中に、そんなことを、考えた…


 考え続けた…



 自宅に戻ったのは、三時を回っていた…


 随分、遅くなった…


 我ながら、そう、思った…


 そう、思いながら、自宅の扉を開けた…


 いつのまにか、一人暮らしが、馴染んだ気がした…


 ひとりで、生きるのが、馴染んだ気がした…


 母が、亡くなり、蜘蛛の糸より、細い、関係の遠い親戚を頼り、失敗…


すぐに、親戚の家を出て、一人暮らしを始めた…


 が、


 その一人暮らしの期間は、短かった…


 なぜ、短かったのか?


 それは、ナオキと、出会ったから…


 偶然、ナオキの会社に、バイトで、入り、まもなく、ナオキの妻のユリコが、失踪…


 幼いジュン君を残して、失踪した…


 私が、ナオキと男女の関係になったことに、気付いたからだ…


 そして、残されたジュン君の面倒を見るのは、誰か?


 それが、問題だった…


 幼いジュン君は、当然のことながら、誰かが、面倒を見なければ、ならない…


 その誰かが、私だった…


 私、寿綾乃だった…


 矢代綾子だった…


 結局、私は、ユリコの代わりに、ナオキの家庭に入った…


 ジュン君の面倒を見るために、入った…


 同時に、私のひとり暮らしは、終わった…


 私の短いひとり暮らしは、終わった…


 そして、今のひとり暮らし…


 ジュン君の、運転するクルマで、轢かれて、五井記念病院に搬送された…


 そのときの主治医が、あの長谷川センセイ…


 そして、無事退院…


 しかしながら、カラダに巣くう、もう一方の病…


 癌は、治らなかった…


 それゆえ、癌治療の最新医療をする、オーストラリアに向かった…


 日本では、まだ認可されていない治療が、オーストラリアでは、可能だったからだ…


 期待して、オーストラリアに、向かったが、ダメだった…


 私の癌は、完治しなかった…


 が、


 だいぶ、よくなったのは、確か…


 それゆえ、帰国して、ひとり暮らしを始めた…


 今の生活を、始めた…


 これが、私の人生で、初めての、本格的なひとり暮らしだった…


 33歳にして、初めての、本格的なひとり暮らしだった…


 が、


 といっても、ときおり、私の家に泊まりに、やって来るものがいる…


 ただ、ひとりいる…


 それが、ナオキ…


 藤原ナオキ…


 私の事実上のパートナーだ…


 私の住む、この億ションは、元はと言えば、ナオキとジュン君の三人で、住んでいたマンション…


 二人が、いなくなり、私ひとりになった…


 ジュン君は、私を轢き殺そうとした罪で、今、刑務所にいる…


 ナオキは、私といっしょにいると、他の女性と遊べないと、考え、ずっと前に家を出て行った…


 それ以来、ずっと、ジュン君と二人暮らしだった…


 今は、ひとり…


 ひとりだ…


 そのひとり暮らしにも、慣れてきた…


 ひとりで、生きてゆくのに、慣れて来た…


 そう、思う…


 実に、そう、思う…


 玄関のドアを、開け、中に、入りながら、そんなことを、思った…


 そんなバカなことを、思った…


 もう、何度、思ったかも、しれないことを、思った…


 家の中に、入り、真っ先に、窓を開けた…


 やはり、外の風がいい…


 外の風が、心地良い…


 私は、今、外から帰ってきたばかりだが、家に帰ると、窓を開けることで、大げさに言えば、家も生き返ったように、思う…


 窓を開けて、外の空気を入れることで、家も、活性化する…


 おおげさに、言えば、そう、思う…


 よく、ひとの住まない家は、早く、朽ちると、言われている…


 原因の一つは、家の中に、風を入れないから…


 外の空気を入れないからだと、言われている…


 今の時代は、さすがに、ないと、思うが、以前は、サラリーマンが、家を買うと、真っ先に、転勤の辞令が出ると、言われたものだ…


 理由は、簡単…


 家を、買ったことで、会社を辞められないと、人事部は、思ったからだ…


 だから、家を買えば、当たり前のように、転勤の辞令を出す…


 そして、家を買った人間は、仕方なく、転勤して、数か月に一回ぐらいの割合で、ときどき、家に戻って来る…


 家の様子を、見るために、戻って来る…


 そのときに、真っ先に、やったのが、窓を開けること…


 窓を開けて、外の空気を家に、入れることだ…


 そして、私も、今、同じことをした…


 マンションの窓を開けた…


 そうすることで、気分が、よくなった…


 同時に、家も気分が、良くなった気がした…


 あくまで、自分の想像だが、そう、思った…


 そう、思ったのだ…


 そして、そう、思っていると、ふと、気分が、悪くなった…


 クラクラと、めまいが、して、その場に立っていられなくなった…


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