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寿綾乃という女 第4部  作者: トモサン


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158/225

寿綾乃という女 第4部 158

 しかし、


 まさか?


 まさか、ありえなさすぎる…


 あのハルカが、まったくの他人…


 まったくの他人のハルカを、あの長谷川センセイは、自分の妹として、西家夫妻に、紹介した?


 いくらなんでも、ありえなさすぎる…


 そう、思った…


 そう、思ったのだ…


 そして、私が、そう思っていると、


 「…あの長谷川センセイが、団郁馬と、繋がっていたとしたら、団郁馬の指示で、長谷川センセイは、西家の叔父様に、自分には、妹がいるって、言ったのかも、しれない…」


 と、意味深に言った…


 「…どういうことですか?…」


 「…だって、寿さん、もし、あのハルカさんが、長谷川センセイの妹でも、なんでもないとしたら、それは、いくらなんでも、西家の叔父様に、長谷川センセイも、そんなウソ、言えないでしょ?…」


 「…」


 「…でも、団郁馬の指示なら、あり得る…誰かに、こうしろと、指示されたのなら、ありえる…」


 「…」


 「…私が、こんなことを、言うのも、なんだけれど、あの西家の叔父様は、子供のときから、知っているのよ…」


 「…えっ? 知っている?…」


 「…そう、知っている…でも、団郁馬のことは、知らない…っていうか、詳しくは、ない…」


 「…どうして、ですか?…」


 「…要するに、一族よ…五井一族…」


 「…一族…」


 「…五井は、本家と、東西南北の四つの分家が、主流…なにしろ、株の配分が、違う…本家が、30%、他の四つの分家が、それぞれ、10%…それで、全体の70%…五井グループの持ち株会社、五井ホールディングスの株の70%を所有している…他の分家は、30%…五井十三家といっても、残りの8家は、30%の株を8家で、分け合っているに過ぎない…だから、格差がある…」


 「…」


 「…だから、立場の違いも、あって、東西南北の4家のひとたちとは、昔から、定期的に会う機会が、あったけれど、他の8家との交流は、ほとんどない…あるのは、一族の法事とか…」


 「…法事?…」


 「…もちろん、法事といっても、先祖の法事が、主流…あとは、一族の誰それが、亡くなったとか…結婚したとか…そんなときにしか、会わない…」


 「…」


 「…だから、西家の叔父様は、どんなひとか、知っているけれども、団郁馬のことは、詳しくは、知らない…」


 「…知らない…だったら、マミさんは、どうして、団郁馬さんと、父の建造さんの確執を知っていたんですか?…」


 「…それは、身内よ…」


 「…身内?…」


 「…私にも、仲がいい、一族の身内がいるから…」


 マミさんが、さらりと、言った…


 …そういうことか!…


 あらためて、思った…


 このマミさんは、あの西家夫妻を、子供の頃から、知っている…


 だから、あの夫妻が、伸明を騙すはずはない…


 あのハルカを、西家の血を引く娘でも、なんでもないのに、ウソを言って、伸明と見合いをさせるわけはない…


 そう、信じていると、いうことだ…


 その一方で、団郁馬のことは、油断のならない人物だと、思っている…


 それは、周囲の評価…


 マミさんと親しい、周囲の評価が、そうだからだ…


 私は、そう、見た…


 私は、そう、考えた…


 そして、マミさんが、


 「…いずれにしても、団郁馬は、伸明さんに、白旗を上げた…東都新聞の株の20%を本家に譲った…」


 と、告げた…


 「…だから、もう、戦いは、終わったのかも、しれない…」


 「…」


 「…でも、謎が、残っている…どうして、団郁馬が、伸明さんに、屈したのかも、そうだけれども、ハルカさんのことも、そう…ハルカさんが、ホントに、長谷川センセイの妹なのか? その謎も残っている…」


 マミさんが、まとめた…


 謎をまとめた…


 解き明かされない謎をまとめた…

 

 そして、マミさんが、


 「…そんなことより、アイスコーヒーを飲もう…長話が過ぎて、すっかり、氷が、溶けちゃった…」


 と、笑った…


 たしかに、マミさんの言う通り…


 長話が、過ぎて、すっかり、アイスコーヒーの中の氷が、溶けてしまった…


 私は、それを、見て、


 「…でも、これで、氷が、溶けるのを、待つ必要が、なくなりましたよ…」


 と、笑った…


 「…この方が、手間が省けて、よかったです…」


 と、私が、言うと、マミさんが、


 「…寿さんって、ホント、ポジティブ…」


 と、笑った…


 「…どんなときも、受け入れる…前向きに捉える…」


 私は、どう答えて、いいか、わからなかったので、なにも、言わなかった…


 ただ、ニコニコと、笑って、ごまかした…


 

 結局、マミさんと、食事をして、それだけで、家に、戻った…


 マミさんは、当然のことながら、クルマで、来ていた…


 愛車の真っ赤なフェラーリで、来ていた…


 愛車を直接、見ては、いないが、たぶん、来ていた…


 それは、マミさんが、


 「…帰ろう…」


 と、言って、レストランを出たときに、私を送ると言って、フェラーリのキーを見せたから、わかった…


 「…寿さん、家まで、送るわ…」


 と、マミさんは、提案したが、私は、遠慮した…


 マミさんが、実は、他に用事があるようなことを、さっきの会話で、ほのめかしたからだ…


 だから、


 「…大丈夫です…」


 と、私は、答えた…


 「…歩いて、返ります…電車で、帰ります…」


 「…でも、寿さんの家まで、遠いんじゃ…」


 「…足が、ありますよ…健康のためには、自分の足で、歩いた方が、いいんです…」


 私が、笑いながら、言うと、マミさんが、


 「…そう…」


 と、答えて、それ以上は、言わなかった…


 それゆえ、私とマミさんは、五井記念病院の玄関の出入り口まで、いっしょに、歩いたが、出入り口を出た時点で、別れた…


 マミさんは、


 「…じゃ、寿さん、また…」


 と、言い、私は、


 「…ハイ…今日は、ありがとうございました…」


 と、言って、別れた…


 歩いて帰る私と、駐車場に向かう、マミさんは、行く場所が、違うからだ…


 そして、私は、ふと、考えた…


 なぜ、マミさんは、この病院に来るのに、わざわざ、フェラーリで、来たのか、考えた…


 マミさんは、見栄っ張りでも、なんでもない…


 それが、なぜ、フェラーリで、やって来たのか、考えた…


 それは、たぶん、五井一族であることを、アピールする狙いだろうと、気付いた…


 マミさんは、愛人の子供…


 五井家先代当主の建造が、外に作った娘…


 それゆえ、正式に、五井で、認められていない…


 だから、自分も、五井一族であることを、アピールするため…


 そのために、わざと、病院にフェラーリで、やって来た…


 裏返せば、これは、マミさんのコンプレックス…


 コンプレックスの裏返しに他ならない…


 私は、思った…


 私は、考えた…


 それゆえ、マミさんも、大変だなと、思った…


 知らないひとは、マミさんの乗る、真っ赤なフェラーリを見て、


 「…凄いな…お金持ちだな…」


 と、思うのが、普通だが、そのお金持ちにも、悩みがある…


 あるいは、コンプレックスがある…


 マミさんを、見れば、それが、わかる…


 また、マミさんは、会社を経営しているが、それは、マミさんが、婚外子だったから…


 五井の先代当主、建造が、外で、作った子供だから…


 それゆえ、もし、マミさんを、五井グループで、雇えば、噂になりかねない…


 アレは、五井ホールディングスの社長の隠し子だと、噂になりかねない…


 だから、あえて、五井グループで、面倒を見なかった…


 五井グループに、就職させなかった…


 ひとの口に、戸は立てられない…


 もし、マミさんが、五井グループのどこかの企業に、就職して、マミさんが、建造の隠し子であることが、バレれば、マミさんが、傷付くからだ…


 だから、あえて、五井グループの会社に、就職させなかった…


 そして、マミさん、自身の性格…


 マミさんは、独立独歩というか…


 ひとの下に、ついて、会社に、務めるより、自分で、事業をしたほうが、性格的に、合う…


 それが、わかっているから、建造は、マミさんに、資金を与え、会社を作らせた…


 自分の好きなことを、やれと、言って、会社を作らせた…


 その方が、マミさんに、合うからだ…


 マミさんは、小柄だが、リーダーシップがある…


 それゆえ、会社に勤めるより、自分で、会社を興す方が、性に合う…


 マミさんは、芸能人で、言えば、高橋みなみさんに、近い…


 小柄だが、エネルギッシュ…


 誰よりも、エネルギッシュだ…


 そして、そんなことを、思うと、マミさんの父である、建造を思い出した…


 五井家先代当主の建造を思い出した…


 今、思えば、建造は、マミさんに、似ていた…


 なにが、似ていたのか?


 それは、カラダの大きさ…


 建造も、カラダは、大きくなかった…


 滅茶苦茶、小さくは、ないが、どちらかと言えば、小柄な方だった…


 そして、伸明…


 現五井家当主の伸明…


 伸明は、長身…


 長身のイケメンだった…


 また、伸明の弟の秀樹は、建造と似た小柄な男だった…


 それゆえ、冷静に考えれば、伸明は、建造の子供と、言っても、怪しい…


 傍から、見れば、血が繋がっていないことが、見え見えだ…


 それを、伸明は、気付かなかったのだろうか?


 ふと、思った…


 いや、


 父だけでは、ない…


 母も、いる…


 伸明の母も、いる…


 伸明の母の昭子も、いる…


 昭子は、小柄でも、大柄でも、なかった…


 まったくの平均的な身長…


 たぶん、160㎝ぐらいだろうか?


 私と同じくらい…


 だからだろうか?


 だから、伸明は、自分が、父の建造と血が繋がってないことに、気付かなかったのだろうか?


 父親が、小柄でも、母親が、平均的な身長なら、背は、高くても、おかしくはない…


 なにより、身長も、そうだが、外見は、誰もが、遺伝による…


 両親が、小柄でも、父方や、母方の祖父母が、大きかったり、あるいは、親戚のおじさんや、おばさんが、大きかったりすれば、自分が、父に、似ていなくても、驚かない…


 親戚に、やはり、自分と同じように、背の高い、ひとが、いるからだ…


 そう、考えれば、伸明が、建造と自分が、似ていないことに、疑問を抱かなかったことに、納得がいく…


 実に、納得が、いくのだ…


 今、別れたばかりのマミさんのことから、マミさんの実父の建造を思い出し、それから、さらに、伸明のことを、思った…


 まるで、植物連鎖のように、思った(笑)…


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