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寿綾乃という女 第4部  作者: トモサン


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153/225

寿綾乃という女 第4部 153

 労せずして、話が、伸明に、及んだ…


 実に、私の望む展開になった(笑)…


 が、


 しかしながら、こうなるのは、わかっていた…


 こういう展開になるのは、わかっていた…


 私とマミさんでは、共通の話題は、少ない…


 共通の知人は、少ない…


 だから、どうしても、数少ない、共通の知人の話になる…


 だから、どうしても、話が、伸明に及ぶ…


 そういうことだ(笑)…


 私は、すかさず、


 「…伸明さんも、仕事とプライベートは、分けるタイプなんですか?…」


 と、聞いた…


 すぐに、マミさんの話に食いついた…


 当然、マミさんも、それを、知ってか、知らずか、わからない…


 私の思惑に気付いているか、どうか、わからない…


 ただ、


 「…分けるタイプ…」


 と、即答した…


 「…もちろん、私も伸明さんと、いっしょに、仕事をしたことは、ないから、わからない…でも、伸明さんは、そう、私に言ったことが、ある…」


 「…」


 「…まあ、伸明さんは、五井家の当主なんだから、当たり前よね…当主が、私情に溺れては、困る…私情に、流されては、困る…」


 そう、言われると、なにも、言えなかった…


 文字通り、なにも、言えなかった…


 マミさんの言葉には、共感しか、なかったからだ…


 だから、なにも、言えなかった…


 そして、考えた…


 伸明が、私を好きな理由を考えた…


 率直に言って、私は、伸明の仕事とは、無関係…


 関係がない…


 だから、私を好きなんだと、気付いた…


 あらためて、気付いた…


 仕事での、付き合いではない…


 仕事での延長ではない…


 まったくのプライベート…


 だから、私を好きなんだと、考えた…


 仕事で知り合い、その延長線で、付き合い、結婚する…


 それは、この世の中に、ごまんとあるが、本人のメリット、デメリットまで、意識して、結婚するものは、案外少ない…


 それは、大抵の人間が、平凡だから…


 凄いお金持ちだとかでは、ないからだろう…


 伸明のように、お金を持てば、どうしても、受け身になる…


 自分の財産を守るために、結婚に受け身になる…


 変な女と結婚して、財産を失うようなことがあったら、困るからだ…


 それゆえ、おのずから、結婚に慎重になる…


 相手選びに慎重になる…


 私が、伸明の結婚相手として、認知されたのは、一言で、言えば、私には、なにもないから…


 名門でも、名家の生まれでも、ない…


 金持ちでもない…


 いわゆる、持たざる者…


 なにも、持っていない者だからだ…


 その持っていないことには、名誉欲や物欲も、含まれる…


 私には、それがない…


 貧乏な家庭に生まれたからだろうか?


 シングルマザーの家庭に生まれ、母ひとり、子ひとりの家庭で、育ったせいだろうか?


 名誉もお金も、私とは、無縁…


 それゆえ、それに執着することもない…


 それを、目指すこともないからだ…


 いや、


 世の中には、貧乏な家庭に生まれたが、ゆえに、真逆に、お金や名声に執着するものも、いる…


 その代表例が、豊臣秀吉…


 太閤秀吉だ…


 農民出身で、天下を取った秀吉だ…


 農民出身ゆえに、コンプレックスが、強く、そのコンプレックスをバネにして、天下を取った…


 この秀吉が、コンプレックスをバネにして、成功した、実例…


 しかしながら、秀吉のような立場に生まれても、コンプレックスを持つか、どうかは、人それぞれ…


 人それぞれ、千差万別だ…


 私は、貧乏だったが、コンプレックスはない…


 それは、もしかしたら、私が、美人に生まれたせいかも、しれない(苦笑)…


 家にお金はないが、美人に生まれた…


 ひとが、羨む美人に生まれた…


 それが、私の誇りになる…


 それが、私の自慢になるからだ…


 だから、正直、なにも、ないのは、厳しいかも、しれない…


 お金もない…


 ルックスも平凡…


 頭も平凡…


では、厳しいかも、しれない…


 それでも、他人を羨むか、否かは、ひとそれぞれ…


 ひとそれぞれだ…


 どんな状況に陥っていても、性格が、良かったり、悪かったりするものがいる…


 それを、突き詰めれば、持って生まれた差だと、思う…


 自分が、なにもなくても、他人を羨まない人間もいるし、その真逆もいる…


 それは、究極のところ、その人間が、生まれたときに、持って生まれた差だと、思う…


 話が、それたが、いつものことだ(笑)…


 つまり、私が、言いたいのは、伸明が私を好きなのは、私には、なにもないから…


 美人というルックス以外、なにもないからだ…


 それを、伸明は、見抜いている…


 伸明だけではない…


 伸明の後見人の和子も見抜いている…


 だから、安心できる…


 仮に、伸明と結婚して、離婚するようなことがあっても、私が、伸明に莫大な慰謝料を請求するようなことは、ないと、見抜いている…


 だから、安心できる…


 そして、私には、なんのしがらみもないのが、大きい…


 しがらみというのは、私が、名家や名門、出身だったり、金持ち出身だったりすること…


 そんなひとたちと、結婚すると、一見いいように見えるが、その関係が、こじれたら、困る…


 あるいは、相手の実家が、なにかと、口を出してくるのも、困る…


 そのいい例が、今回、伸明が、見合いした五井西家夫妻…


 どう見ても、エネルギッシュ…


 昭和のエネルギッシュなオヤジだ(爆笑)…


 あんな夫妻の紹介する娘と結婚すれば、すぐに、口を出してくるに、違いない…


 だから、断る…


 伸明が、縁談を断るのは、目に見えてる…


 冷静に考えれば、目に見えてる…


 それゆえ、真逆に、あのとき、伸明が、ハルカに興味を示す態度を、見せたのは、演技…


 まぎれもない、演技に違いない…


 今になって、考えれば、わかる…


 今になって、冷静に考えれば、わかる…


 おのずと、わかるのだ…


 私が、そんなことを、考えていると、


 「…寿さん、なにを考えているの?…」


 と、マミさんが、聞いてきた…


 私は、どう言おうか、悩んだが、ずばりと、


 「…伸明さんの、見合いです…」


 と、答えた…


 「…伸明さんの見合い…」


 マミさんが、私の言葉を繰り返す…


 それから、マミさんが、予想外の言葉を言った…


 まっすぐに、私を見て、


 「…寿さん、心配?…」


 と、聞いた…


 真剣な表情で、聞いた…


 これは、予想外…


 まったくの予想外の言葉だった…


 それゆえ、どう答えていいか、わからなかった…


 どう返答していいいか、わからなかった…


 すぐに、答えが、見つからなかった…


 そんな私を見て、マミさんが、


 「…そりゃ、寿さんの立場からしたら、心配よね…」


 と、言った…


 私の心情に寄せた言葉を言った…


 そう、マミさんは、思ったはずだ…


 が、


 そうではない…


 全然、そうではない(苦笑)…


 しかしながら、マミさんが、勝手に誤解してくれた…


 そう、思った…


 そう、思ったのだ…


 そして、そう、思っていると、


 「…でも、寿さん、安心して…」


 と、マミさんが、言った…


 「…安心…ですか?…」


 「…そうよ…安心…」


 「…どうして、安心なんですか?…」


 「…だって、伸明さんは、さっき、寿さんに、言ったように、仕事とプライベートは、分けるタイプだから…」


 「…それは、どういうことですか?…」


 「…なにより、伸明さんは、自分の立場を心得ている…」


 「…自分の立場?…」


 「…五井家当主としての立場…仮に、伸明さんが、あのハルカさんと結婚すれば、あの西家のおじさまや、おばさまが、ハルカさんの後見人として、伸明さんに、色々口を出してくる…それが、わからない伸明さんじゃ、ないわ…」


 「…」


 「…だから、寿さんは、心配しなくていい…」


 マミさんが、断言した…


 私を安心すべく、断言した…


 正直、その言葉を聞いて、少々、居心地が悪くなった…


 それは、なぜか?


 それは、私が、マミさんを利用しているからだ…


 今も、利用しているからだ…


 マミさんは、気付いているか、否かは、わからない…


 しかし、結果として、私は、マミさんから、情報を得ている…


 このマミさんから、伸明のこと、和子のこと、要するに、五井家のひとたちの情報を得ている…


 要するに、マミさんを利用しているわけだ…


 これでは、ビジネス友達…


 ビジネスだから、付き合っている…


 ビジネス=メリットがあるから、付き合っているのと、同じ…


 同じだ…


 マミさんが、仕事とプライベートは、分けるタイプだと断言していて、それは、私も同じ…


 私、寿綾乃も同じだ…


 にもかかわらず、マミさんは、私にとって、ビジネス友達になっている…


 五井家に関する情報を知らせてくれる、貴重な存在になっている…


 五井家に関するビジネス友達になっている…


 五井家に対する貴重な情報源になっている…


 そう、考えると、辛かった…


 私が、意図しようが、しまいが、このマミさんは、私にとって、もはやビジネス友達になっている…


 その現実が、辛かった…


 実に、辛かった(涙)…


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