↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
寿綾乃という女 第4部  作者: トモサン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
151/225

寿綾乃という女 第4部 151

 「…タイプの違う美人…」


 私は、言った…


 私は、口にした…


 潜在的なライバルではないが、その言葉に反応した…


 美人という言葉に反応した(苦笑)…


 これには、笑ってしまう…


 自分で、自分に、笑ってしまう…


 私が、長谷川センセイを、狙っているわけでも、なんでもないのに、ただ、長谷川センセイを訪ねる美人がいた…


 それを、聞いただけで、敏感に反応してしまう…


 そんな自分に笑ってしまう…


 そして、私が、そう考えていると、受付の女性が、


 「…寿さんが、正統派の美人とでも言えば、その女性は、可愛いが、入っている…」


 「…可愛いが、入っている?…」


 「…言いづらいけれど、寿さんより、若い…それに、寿さんより、小柄で、可愛らしい…」


 それを、聞いて、その女性が、誰か、すぐに、察しがついた…


 その女は、ハルカだ…


 ハルカに、違いない…


 長谷川センセイの妹のハルカに違いないと、思った…


 それゆえ、私は、


 「…それって、たぶん、妹さんですよ…」


 と、言った…


 「…長谷川センセイの妹さんですよ…」


 と、種明かしをした…


 「…私も会ったことがあります…」


 と、続けた…


 が、


 受付の女性の反応は、意外なものだった…


 「…それは、ないと思うよ…」


 と、すぐさま、否定したからだ…


 私は、驚いた…


 こんなにも、あっさりと、否定されると、思わなかったからだ…


 だから、驚いた…


 そして、聞いた…


 「…どうして、そう、思うんですか?…」


 と、聞いた…


 「…距離感ですよ…」


 と、女性が、即答した…


 「…距離感?…」


 「…今、寿さんが、言ったように、長谷川センセイも、他の医師や、看護師の方たちから、あの女性は、誰と聞かれて、妹と、答えたそうです…」


 「…だったら、妹じゃ…」


 私が言うと、


 「…それ、たぶん、違います…」


 と、すぐに、反論された…


 「…どうして、違うとわかるんですか?…」


 「…それが、今、言った距離感…例えば、寿さんに、お兄さんや、弟さんがいて、いっしょにいるのと、恋人や夫といるのは、違うでしょ?…態度が、違うでしょ?…」


 「…それは、そうでしょうけれど…」


 「…傍から、見れば、わかる…距離感で、わかる…」


 受付の女性が、断言する…


 「…だから、その女性を見て、この病院のセンセイや看護師の方が、大勢、長谷川センセイに、聞いたんです…でも、答えは、妹…」


 「…だったら、それを、信じれば…」


 「…寿さん、男が、自分より、年下の女との関係を聞かれて、妹と、答えるのは、昔からの常套手段ですよ…」


 と、笑った…


 「…誰も、そんなウソ信じちゃいませんよ…」


 受付の女性が、断言する…


 「…だから、もしかしたら、長谷川センセイが、突然、この病院を辞めたのも、同僚たちから、その女性との関係をいじられるのが、嫌だったからとも、噂されているみたいですよ…」


 と、笑って、説明した…


 が、


 しかしながら、私は、笑えなかった…


 全然、笑えなかった…


 そういえば、私は、あの長谷川センセイと、ハルカが、いっしょに、いるところを、見たことがない…


 兄妹が、いっしょに、いるところを、見たことがない…


 なにより、あの伸明とハルカの見合い…


 ハルカの兄にも、かかわらず、あの見合いの席に来なかった…


 普通なら、顔を見せるところだろう…


 しかしながら、それにも、かかわらず、違和感を、感じなかったのは、なぜか?


 それは、あの場は、あくまで、五井西家の血を引く、娘として、ハルカが、あの西家夫妻といっしょに、やって来たから…


 だから、あの場に長谷川センセイが、やって来ても、邪魔といったら、言い過ぎだが、わざと、遠慮して、やって来なかったと、思っていた…


 勝手に、思っていた…


 しかし、もし、本当に、兄妹でなかったとしたら?…


 いや、それは、ないだろう…


 まさか、西家夫妻に、長谷川センセイが、自分の妹でない、赤の他人を妹として、紹介するだろうか?


 普通は、しないだろう…


 普通は、できないだろう…


 まして、長谷川センセイが、そこまで、できる人間とは、思えない…


 私は、患者と主治医として、長谷川センセイと接した…


 半年以上、接した…


 とても、そんなことが、できる人間とは、思えなかった…


 上昇志向が、強いことは、わかったが、そこまで、ウソをついて、自分の妹でもない、赤の他人を、自分の妹として、西家夫妻に紹介するような人間とは、思えなかった…


 これは、買い被り…


 私の買い被りだろうか?


 それとも、長谷川センセイと、親しくなったからだろうか?


 誰もが、そうだが、親しくなると、評価が、甘くなる…


 どうしても、甘くなる…


 真逆に、嫌いな人間には、厳しくなる…


 その人間の評価が、厳しくなる…


 ハッキリ言えば、欠点ばかり探すようになる…


 また、仮に美点があっても、評価が、厳しくなる…


 ハッキリ言えば、過小評価するようになる…


 嫌いだから、評価が、厳しくなる…


 そういうことだ…


 そして、そんなことを、考えながら、


 「…どうも、ありがとうございました…」


 と、言って、その場を去ろうとした…


 その私の背中に、


 「…寿さん、落ち込んじゃ、ダメよ…」


 と、声が、かかった…


 私は、思わず、振り向いた…


 受付の女性が、


 「…世の中には、長谷川センセイ以外にも、いい男が、ごまんといるから…」


 と、続けた…


 私を励ました…


 私は、こんな展開になって、唖然としたが、それでも、とっさに、


 「…ありがとうございます…」


 と、礼を言った…


 礼を言えば、間違いが、ないからだ…


 受付の女性は、満足そうに、笑った…


 私は、それを、見て、軽く腰を折り、会釈した…


 この女性に、なんと思われようが、構わない…


 だが、とにかく、情報を得た…


 貴重な情報を得た…


 そう、思った…


 そう、思ったのだ…


 それゆえ、この女性に感謝した…


 心の底から、感謝した(爆笑)…


 

 私は、受付を去り、


 …さて、これから、どうするか?…


 考えながら、歩き出した…


 まさか、長谷川センセイが、退職しているとは、思わなかった…


 夢にも、思わなかった…


 しかも、退職しても、おそらく、兼業していると、言えば、言葉が、間違っているかも、しれないが、同時に、勤務していたのが、北東病院…


 北東病院だ…


 間違いなく、あの五井北東家と、関係のある病院だろう…


 五井北東家の当主、団郁馬と関係がある、病院だろう…


 私は、考えた…


 つまり、長谷川センセイは、団郁馬と関係があった…


 そういうことだ…


 そして、そう考えると、納得する…


 なにに、納得するのか?


 それは、なぜ、ハルカの見合いの席に、長谷川センセイは、現れなかったのか?


 それは、たぶん、団郁馬の差し金があった?


 団郁馬の入れ知恵があった?


 そう、思った…


 おそらく、自分一人の考えではない…


 長谷川センセイ一人で、ハルカの見合いの席に、欠席したわけではない…


 背後に、あの団郁馬がいた…


 そう、思った…


 そう、気付いたのだ…


 そして、そう考えると、色々見えてくる…


 今回の筋書きが、見えてくる…


 あのハルカと、伸明の見合い…


 あの見合いは、五井西家が、西家の血を引く娘として、ハルカを、本家の当主の伸明と、見合いをさせることで、五井内部で、西家の力を伸ばすために、仕組んだと、思っていた…


 そう、ずっと、思っていた…


 が、


 それは、間違い…


 あの見合いの本当の目的は、別にあった…


 おそらくは、あの見合いは、伸明と、団郁馬の戦いだった…


 五井本家と、五井北東家の戦いだった…


 そして、それに、あの伸明は、気付いていた…


 あの席で、伸明が、見ていたのは、ハルカと同席していた、あの西家夫妻ではない…


 敵は、五井北東家…


 敵は、団郁馬だった…


 それを、誰よりも、意識していたに、違いない…


 今、振り返ると、だから、伸明は、あの西家夫妻を、ぞんざいに扱った…


 あの西家夫妻を相手に、していなかったとも、考えられる…


 つまりは、伸明は、あの時点で、ハルカの背後に、団郁馬を見ていた…


 ハルカの背後に、五井北東家を見ていた…


 五井北東家を叩き潰す機会を窺っていた…


 なにしろ、本家と、北東家の確執は、先代の建造の代から、続いていると、言っていた…


 これもまた、当たり前…


 北東家が、新聞、ラジオ、テレビを支配しているがゆえに、本家に対抗しようとするのは、当たり前…


 要するに、北東家は、五井の末端の分家に過ぎないのが、気に入らない…


 メディアを支配しているにも、かかわらず、そんな扱いなのが、気に入らない…


 そういうことだ…


 それで、五井家の本家の当主が、建造から、伸明に代替わりしたのを契機に、団郁馬が、勝負を仕掛けて来た…


 ハルカを使って、勝負を仕掛けてきた…


 それが、真相だろう…


 そして、それを、見抜いていた、伸明は、ハルカに、興味を抱いたフリをした…


 私や、マミさん、そして、西家夫妻の前で、ハルカに、興味があるフリをした…


 それで、団郁馬を騙そうとしていたんだろう…


 そして、その影で、伸明は、着々と、団郁馬に対抗する術を進めていた…


 いや、伸明ではない…


 先代当主の建造が、進めていた…


 五井内部の情報関連企業を集めて、合併して、北東家の持つ、メディアに対抗する…


 北東家の持つ、メディアは、オールドメディア…


 新聞、ラジオ、テレビは、そう、呼ばれている…


 ネットの勢いに、完全に圧倒されているからだ…


 建造は、それを、見越して、五井グループの傘下の情報関連企業を、いくつか、合併して、ひとつにしようとした…


 その核が、FK興産だった…


 FK興産の社員だった…


 FK興産の優秀な社員だった…


 FK興産のオタクの社員だった…


 それが、わかった…


 巨大なネット関連企業を作り、団郁馬の支配するオールドメディアに対抗する…


 そして、また、団郁馬も、おそらく、それを、見抜いていた…


 自分の支配するメディアの力が、衰えていることに、気付いていた…


 だから、勝負をかけた…


 あのハルカを使って、勝負をかけた…


 そういうことだろう…


 しかし、疑問がある…


 あの伸明の見合いの席に、私同様、出席した、マミさん…


 伸明の妹のマミさんは、どこまで、その事実に、気付いていたんだろうか?


 伸明の思惑を、どこまで、知っていたんだろうか?


 マミさんは、伸明の妹とは、言っても。血が繋がっていない…


 マミさんは、先代当主、建造が、外に作った子供…


 建造の愛人の子供だ…


 一方、伸明は、建造の子供ではない…


 名目上は、建造の子供であるが、血が繋がっていない…


 それは、伸明の母が、建造と結婚する前に、伸明を身籠っていたから…


 要するに、建造とは、別の男の子供を身籠っていたにも、かかわらず、それを隠して、建造と結婚したからだ…


 それゆえ、伸明とマミさんは、おそらく、いっしょに、暮らしたことも、ないだろう…


 だから、血が繋がっていると、言っても。形だけ…


 兄妹といっても、関係は、薄いに決まっている…


 それゆえ、マミさんが、今回の伸明の思惑に、どこまで、気付いていたのか、わからない…


 かなりの部分を知っていたのか?


 それとも、まるっきり知らなかったのか?


 それが、わからない…


 そして、それが、どうしても、気になる…


 なぜ、気になるのか?


 それが、わかっていたか、否かで、私の中で、マミさんの立ち位置が、変わってくる…


 マミさんが、信頼できるか?


 マミさんが、信用できるか?


 それが、変わるのだ…


 そして、そんなことを、考えていると、そのマミさんが、目の前から、歩いてきた…


 あろうことか、マミさん本人が、目の前から、歩いてきた…


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。