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寿綾乃という女 第4部  作者: トモサン


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148/225

寿綾乃という女 第4部 148

 「…だから、ナオキ、ハルカさんの電話番号を教えて…」


 私は、ナオキに言った…


 「…ハルカさんに、連絡して、長谷川センセイの電話番号を教えてもらうから…」


 私は、言った…


 ナオキは、渋々、


 「…わかった…」


 と、言って、私の要望に、応じた…


 「…彼女の電話番号は…」


 と、言って、ケータイを探して、それから、教えてくれた…


 私は、それを、聞いて、


「…後で、電話するわ…」


と、答えた…


同時に、気付いた…


仮に、あのハルカという女性に電話せずとも、私が、直接、五井記念病院に出向いて、長谷川センセイに頼んでも、いいことに、気付いた…


今さらながら、気付いた…


我ながら、トロい…


大トロ…


私は、周囲からはしっかりものに、見られているが、中身は、こんなもの…


こんなものだ…


しかしながら、なぜ、しっかりものと見られているのか?


それは、雰囲気…


雰囲気だ…


私が、美人だとかは、関係ない…


雰囲気…


しっかりした雰囲気を持っている…


だから、周囲の人間が、私をしっかりものだと、思っている…


そして、これは、ある程度、歳をとってから、気付いたが、ハンディ…


ハンディキャップ…


女としての致命的なハンディキャップだ(苦笑)…


なぜ、ハンディキャップなのか?


いくら、美人でも、強い女に男は、寄って来ない…


仮に、強い女を口説けば、


「…アンタ程度の男が、私に声をかけないで!…」


と、激怒されるのが、オチだからだ(爆笑)…


これは、女が、美人でも、そう…


だから、真逆に、そんな強い女に、寄って来るのは、弱い男…


頼りがいが、あると、思って、寄って来るのだ(爆笑)…


だが、まあ、それも、わかる…


それも、わかるし、十分、理解できる…


が、


強い女ほど、強い男が、好きなものだ…


強い女ほど、自分より、強い男に、憧れるものだ…


しかしながら、男女共に、強い男も、強い女も大抵は、自分勝手…


何事も、自分優先で、勧める…


周囲の人間は、それを、止められない…


だから、それが、会社では、まだしも、家庭では、ダメ…


夫婦では、ダメ…


ぶつかる…


互いに、気が強いから、相手に譲ることが、できない…


おまけに、自分勝手…


それゆえ、破局する…


そう、思った…


そう、考えた…


そして、そこから、得た教訓…


自分は、思ったより、男に、モテないことに、気付いた…


もちろん、学生時代は、気付かなかった…


気付いたのは、ある程度、歳を取ってから…


要するに、いくら美人でも、気が強い女に周囲の男は、手を出さないという、当たり前のことに、遅まきながら、気付いた…


だったら、このナオキは、どうか?


今、私の目の前にいる、イケメンの藤原ナオキは、どうか?


それは、やはり、私と男女の関係になったのは、若かったから…


お互い、若かったから…


それに尽きる…


それに、尽きるのだ(笑)…


今だったら、このナオキも、私に手を出すか、どうか、わからない…


だから、まあ、縁…


腐れ縁だ…


 私が、そんなバカなことを、考えていると、ナオキが、言った…


 突然、言った…


 「…綾乃さんにとって、会社って、そんなに大事?…」


 と、言った…


 私は、意味がわからなかった…


 なぜなら、それを、言うなら、ナオキ…


 ナオキだからだ…


 FK興産の社長の藤原ナオキだからだ…


 FK興産の創業社長の藤原ナオキだからだ…


 創業社長だから、FK興産に愛着がある…


 人一倍居愛着があるのが、自然だからだ…


 その社長のナオキが、私に、


 「…綾乃さんにとって、会社って、そんなに大事?…」


 と、聞くのが、おかしい…


 聞くのが、間違っている…


 だから、私は、ナオキに、


 「…それって、私が、ナオキに聞くのが、ホントじゃない…質問が、逆じゃない?…」


 と、言ったら、ナオキが、苦笑した…


 「…その通り…」


 と、言って、苦笑した…


 「…で、そのナオキは、どうなの?…」


 「…どうって?…」


 「…ナオキにとって、会社は、大事?…」


 私の質問に、ナオキは、沈黙した…


 「…」


 と、答えなかった…


 だから、私は、思わず、


 「…会社が、大事じゃないの!…」


 と、逆ギレした…


 思わず、逆ギレした…


 私が、逆ギレしたせいか、


 「…それは、大事だよ…」


 と、ナオキが、小声で、返した…


 「…けど…」


 「…けど…なに?…」


 「…他の生き方も、あると、思って…」


 「…どういうこと?…」


 「…ぶっちゃけ、半年前に、五井から資本提携を、受けて、やりづらくなった…」


 ナオキが、告白する…


 「…まあ、会社が経営危機で、五井に助けて、もらったから、それ以前と違って、自分の思い通りにいかなくなったのは、当たり前なんだが…」


 ナオキが、苦笑する…


 「…だから、別の生き方?…」


 私が、言った…


 「…そう…」


 ナオキが、短く答える…


 それを、聞いて、私は、即座に、


 「…バカね…」


 と、返した…


 「…バカ? どうして、バカなの?…」


 「…それは、食べ物といっしょ…」


 私が、言うと、ナオキが、戸惑った…


 「…食べ物といっしょって…綾乃さん、なにが、言いたいの?…」


 「…ほら、たとえば、いくら、カレーが好きでも、毎日、カレーを食べていれば、飽きるでしょ? たまには、寿司や焼き肉を食べたくなる…それと、いっしょ…」


 「…どう、いっしょなの?…」


 「…ナオキは、今、FK興産の経営に嫌気がさしたかも、しれないけれども、だったら、別のなにかをしても、いずれは、飽きが来るものよ…」


 「…」


 「…例えば、ナオキは、イケメンだから、俳優に転身しても、俳優には、俳優の悩みが、あるものでしょ?…」


 「…それは、そうだけれど…」


 「…要するに、自分の思い通りにならないから、弱気になっているだけ…案外、伸明さんは、それを、見越して、FK興産を、買収しようとしているかも…」


 私が、笑って言うと、ナオキが、


 「…まさか?…」


 と、絶句した…


 それから、一転、


 「…ありうるかも…」


 と、真顔になった…


 「…どうして、そう、思うの?…」


 「…諏訪野さんは、飲み友達…定期的に会って、飲む…だから、最近、ボクが、落ち込んでいたのは、手に取るようにわかる…」


 ナオキが、言った…


 それゆえ、


 「…そう…」


 と、短く返した…


 「…伸明さんを疑いたくないけれども、気をつけること…決して、心を許さないこと…」


 私は、言った…


 私は、忠告した…



 その夜は、なかなか、寝つけなかった…


 最近は、あまり、ないこと…


 ずっと、以前は、あった…


 しかしながら、癌、そして、最近では、軽い脳梗塞を発症してからは、なくなった…


 理由は、簡単…


 体力が、目に見えて、落ちているからだろう…


 だから、簡単に眠れる…


 すぐに、疲れるから、眠れる…


 そういうことだ…


 それが、今夜に限って、眠れないのは、どうしてだろうか?


 それは。やはり、伸明のこと…


 そして、ナオキのこと…


 ふたりのことが、気になるからだ…


 ナオキは、伸明と、仲がいい…

 

 傍から、見ても、気が合うのが、わかる…


 誰でも、わかる…


 では、どうして、仲がいいのか?


 それは、二人が、同じタイプの人間だから…


 それに尽きると、思う…


 誰もが、そうだが、基本的に、仲がよくなるのは、自分と同じタイプの人間…


 これは、男も女もそう…


 男も女も同じだ…


 真面目な人間は、真面目な人間と、付き合う…


 ヤンキーは、ヤンキーと付き合う…


 その方が、気が合うからだ…


 これは、結婚も同じ…


 男も女も、自分と同じタイプの異性と結婚する…


 その方が、気が合うからだ…


 稀に、自分と違うタイプの異性と結婚するものが、いるが、率直に言って、将来が、心配…


 話が、合わないからだ…


 それゆえ、その場合は、離婚する確率が、多いに違いない…


 話が、伸明とナオキの話から、少々、外れたが、いつものことだ(苦笑)…


 要するに二人は、仲がいい…


 二人は、気が合う…


 だから、伸明は、ナオキを裏切らない…


 そう思うのが、盲点…


 盲点だ…


 なまじ、気があって、行動を共にすれば、どんな人間か、余計に、よくわかる…


 それゆえ、それを、逆手にとって、利用される危険もあるからだ…


 ナオキが、伸明と、頻繁に酒を飲めば、どうしても、会社のことだけでなく、プライベートの話もするだろう…


 まして、独身の男同士だ…


 どんな女が、好きか?


 どんな女が、タイプか?


 そんな話もするに決まっている…


 そんなバカな話をしながら、だんだんと親しくなる…


 そして、親しくなることは、相手の個人情報を掴むことと、同じことだ…


 これまでの経歴、どんな学校を出て、両親、家族、恋人など、もろもろの話をする…


 意識は、していなくても、会話の合間にする…


 それを繰り返すことで、丸裸になる…


 相手のことが、丸裸になる(笑)…


 これは、男と女の場合は、もっと、単純…


 男女の関係になり、いっしょに住む…


 それで、相手が、どんな人間か、簡単にわかる…


 いくら、会社や学校で、仲がよくても、会社や学校では、決して、見せない姿を、そこで、見せるからだ…


 つまりは、親しくなることで、相手の素顔が、わかってくる…


 どんな人間か、わかってくる…


 そして、もし、伸明が、それを、狙って、ナオキと、親しくしているとしたら、どうか?


 ナオキと親しくしているのが、ナオキを丸裸にするのが、目的だとしたら、どうか?


 そう、思った…


 そう、思ったのだ…


 そして、そう、思うと、ナオキが、心配になった…


 私のパートナーが心配になった…


 それゆえ、中々、寝つけなかった…


 ちっとも、寝つけなかった…


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