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寿綾乃という女 第4部  作者: トモサン


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145/225

寿綾乃という女 第4部 145

 しかしながら、これは、仮説…


 仮説に、過ぎない…


 証拠は、ない…


 証拠は、なにも、ない…


 だが、ありえない話では、ない…


 ありえない=荒唐無稽の話でも、ない…


 が、


 それを、考えれば、伸明だけでなく、マミさんも、怪しい…


 なぜなら、マミさんも、伸明同様、五井北東家の脅威を、私に伝えていたからだ…


 団郁馬の脅威を私に伝えていたからだ…


 なにしろ、マミさんの実父、建造が、団郁馬を目の敵にしていた…


 五井家先代当主の建造が、団郁馬を目の敵にしていた…


 その建造の娘である、マミさんが、団郁馬を悪く言うのは、当たり前…


 当たり前だった…


 だから、私は、それを、鵜呑みにした…


 伸明の前に立ち塞がる敵だと、認識した…


 が、


 もし、私の仮説が、本当だとしたら、話が、変わる…


 すでに、伸明の先代の建造の時代に、五井北東家に対抗する手段は、できていた…


 今回は、それを、実施しただけ…


 いつでも、実施することは、できた…


 にもかかわらず、今回、実施したのは、条件が、整ったからではないか?


 では、その条件とは、なにか?


 その条件とは、おそらく、五井一族の了解…


 今回の五井北東家に対する処分を、各分家に了承させるためでは、ないのだろうか?


 そのために、あの昭子は、上京した…


 五井の各分家に話をするために、上京した…


 そうも、考えられる…


 そして、そう、考えれば、すべてが、納得が、いく…


 すべての辻褄が合う…


 ただ、わからないのが、マミさん…


 マミさんは、しきりに、私に対して、団郁馬の脅威を告げていた…


 アレは、演技?


 わざと、わかっていて、私を騙した?


 伸明の動きに加担した?


 そうも、思える…


 マミさんとは、仲がいい…


 マミさんとは、気が合う…


 しかしながら、マミさんが、伸明と私のどっちを取るかと言えば、間違いなく、伸明を取るだろう…


 マミさんは、五井一族…


 マミさんの父親は、五井の先代当主の建造だ…


 それゆえ、私と、伸明さんのどっちを取るかと言えば、間違いなく、伸明を取る…


 五井家の当主を取る…


 当たり前だった…


 が、


 それは、置いておいても、仮に、伸明が、私を騙したとしても、それに、マミさんが、加担しているか、どうかは、わからない…


 マミさんが、伸明の動きを知らない可能性もあるからだ…


 が、


 この考えは、マミさん、有利…


 マミさんに甘い…


 私が、マミさんが、好きだから、マミさんに、甘い…


 あるいは、マミさんに、裏切られたと、思いたくないから、マミさんは、別物と考える…


 仮に、今回の一件が、伸明主導であっても、その動きを、マミさんは、知らなかった…


 私は、そう、思いたい…


 そう、思いたいだけかも、しれない…


 が、


 本当のことは、わからない…


 さっぱり、わからない…


 これは、あくまで、私の頭の中…


 私の妄想に過ぎないかも、しれないからだ…


 だから、本当のところは、わからない…


 さっぱり、わからない…


 証拠が、なにもないからだ…


 しかしながら、昨夜のナオキとのセックスをきっかけに、こんなことを、考えるとは、思わなかった…


 まったく、思わなかった(苦笑)…


 これは、怪我の功名?


 いや、


 怪我は、していないから、セックスの巧妙かも、しれない…


 昨夜のセックスの巧妙かも、しれない…


 笑ってしまうが、そうかも、しれない…


 そうかも、しれないのだ(爆笑)…



 そして、夜になって、動きはあった…


 ナオキが、家に戻ってきたのだ…


 ナオキが、自分の家ではなく、私のマンションに、戻ってきたのだ…


 それで、わかった…


 なにが、わかったのか?


 それは、ナオキが、開口一番、


 「…参ったよ…綾乃さん…」


 と、言ったからだ…


 「…なにが、参ったの?…」


 私が、聞くと、ナオキが、


 「…今日、ボクが、会社に出社しただろ?…」


 と、言って、話し出す…


 「…それが、どうしたの? 連絡もなく、いきなり、出社したから、社員が、驚いた?…」


 「…それも、ある…」


 ナオキが、同意する。


 「…でも、それ以上に、驚いたのは、社内では、完全にFK興産の五井グループ入りが、話されていたんだ…」


 「…五井グループ入り? どういうこと?…」


 「…ボクが、諏訪野さんに、頼まれて、ハルカさんと、結婚すると、記者会見しただろ?…」


 「…」


 「…そのときに、ハルカさんは、五井一族の血を引くと、紹介されたんだ…それで…」


 私は、驚いたが、納得した…


 たしかに、そう、言われれば、わかる…


 そう、説明されれば、わかる…


 あのハルカは、何度も、言うように、長谷川センセイの妹…


 五井西家の血を引く長谷川センセイの妹だ…


 今は、なんの関係もないが、長谷川センセイは、五井西家の血を引いている…


 なんの関係もないと、言ったのは、五井一族でも、なんでもないということ…


 長谷川センセイのおじいさまのおじいさまが、五井西家の出身だったに過ぎない…


 あまりにも、遠い祖先なので、今は、まったく、関係ない…


 五井一族と関係ない…


 が、


 それが、狙いだとしたら?


 伸明は、ハルカと見合いをした…


 五井西家夫妻の立ち合いの元、見合いをした…


 今、現在、五井一族に、伸明と釣り合う年齢の女性は、いない…


 四十歳の伸明と結婚できる年齢の女性は、いない…


 五井は、原則、一族内で、結婚することが、決まり…


 それは、五井の歴史が、四百年もあり、その間、一族とはいえ、他人なみに、血が薄れたからだ…


 それゆえ、一族間での結婚を奨励する…


 そうでなければ、今でも、薄くなった血がさらに、薄まるからだ…


 その結果、一族の結束が、損なわれるからだ…


 それを、理由に、あの西家夫妻は、伸明に、長谷川センセイの妹を紹介した…


 西家の血を引く娘を紹介した…


 そして、西家は、あの団郁馬の北東家と、結託している…


 それゆえ、いち早く、伸明と、ハルカの結婚を、東都テレビで、流した…


 東都テレビは、五井北東家が、有している…


 だから、いち早く、流した…


 同時に、ナオキもまた、五井一族の娘と結婚したと、報道が流れた…


 東都テレビで、だ…


 しかしながら、流れたのは、一度だけ…


 裏が取れないからと、一度だけ、流して、お蔵入り…


 二度と流さなかった…


 それを、団郁馬の仕業と、断言した伸明は、それを逆手にとって、ナオキに、ハルカとの結婚会見を開かせた…


 ハルカは、五井一族の血を引いている…


 だから、ハルカが、ナオキと結婚することは、最初、東都テレビで、流れた通りだ…


 東都テレビでは、FK興産の社長の藤原ナオキは、五井一族の娘と結婚したと、報道された…


 だから、間違っていない…


 最初の報道と間違っていない…


 が、


 それゆえ、今度は、FK興産が、正式に五井グループすると、社内で、噂になったわけだ…


 FK興産は、半年近く前に、経営不振で、五井から、資本提携を受けた…


 FK興産の株式の半分を握った…


 だから、今は、五井グループ入りこそ、していないが、ほぼ五井グループ入りしている…


 それが、社長のナオキが、五井の血を引く娘と、結婚すれば、当然、FK興産は、正式に五井グループ入りすると、世間は、見るだろう…


 ナオキとしては、伸明に頼まれただけ…


 あの団郁馬を牽制するために、頼まれただけ…


 ナオキが、五井一族の娘と結婚すると、いう報道を逆手にとって、ハルカとの結婚会見をしただけ…


 本当は、結婚するつもりなど、微塵もない…


 伸明から、頼まれたから、結婚会見をしただけだからだ…


 しかし、それが、伸明の狙いだとしたら?…


 あの会見で、世間に、ナオキは、ハルカと結婚すると、知らせて、その結果、ナオキのFK興産が、五井入りを果たす…


 それが、目的だとしたら、どうか?


 考えられない話でも、なんでもない…


 なんのことはない…


 団郁馬を騙すつもりが、私やナオキが、伸明に騙されていた…


 その可能性がある…


 伸明を疑うわけではないが、その可能性がある…


 誰が、考えても、ナオキが、五井一族の血を引く娘と結婚すると、なると、当然、FK興産は、完全に五井の支配下に入ると考える…


 なにしろ、すでに、半分、株は、握られているわけだ…


 当然、次は、完全に五井に株を握られ、名目ともに、五井の支配下に入る…


 それが、伸明の目的だとしたら?


 団郁馬の脅威をしきりに、訴えていたが、すでに、勝負は、決していたとしたら?


 それを、隠して、団郁馬の脅威を盛んに訴えて、私とナオキを騙していたとしたら?


 ありえなくもない…


 なにしろ、伸明は、五井家当主…


 天下に名の知れた五井家の当主だ…


 当主が、ぼんくらのわけはない…


 十分にしたたか…


 したたかのはずだ…


 だから、それぐらいの芸当が、できるはずだ…


 つまりは、私もナオキも、伸明に騙された?


 もしかしたら、伸明に騙された?


 そう、思った…


 そう、思ったのだ…


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