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寿綾乃という女 第4部  作者: トモサン


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144/225

寿綾乃という女 第4部 144

 が、


 なにが、間違っているか、わからない…


 いくら、考えても、わからない…


 なにかが、間違っているかと、しても、それが、なんだか、わからない…


 今の私には、わからない…


 ただ、一つ言えるのは、今回の一件…


 五井の内紛の件…


 これは、すべて、諏訪野和子の入院から、始まった…


 五井の女帝の入院から、始まった…


 事実上、五井を仕切っていた、和子が、入院したから、五井の内紛が、始まった…


 和子という重しが、取れたから、それまで、我慢していた、分家の不満が、爆発した…


 そういうことだ…


 まだ、四十ちょっとの若さの伸明では、対抗できない…


 五井は、十三家…


 つまりは、十三人の当主がいる…


 その十三人の当主は、普通に考えて、伸明より、年上だろう…


 そうなれば、どうしても、年下の伸明を軽く見る…


 会社の社長のように、同じ会社で、縦の関係でいれば、従わざるを得ないが、たまに、会う一族では、違うだろう…


 ハッキリ言えば、利害関係がない…


 率直に言って、五井の持ち株会社、五井ホールディングスの株を持つ割合が、一族で、違うだけ…


 そして、それは、すでに、決められたこと…


 今回のように、五井北東家の団郁馬が、なにを、どうしようと、その割合は、変わらないだろう…


 ただし、五井の利益…


 五井ホールディングスの利益…


 それが、おそらく、関係がある…


 五井の下位の分家では、得られない利益が、五井本家と東西南北の四つの分家では、得られるのだろう…


 そして、それゆえ、あの団郁馬は、勝負に出た…


 あの和子が倒れたことで、その合間を縫って、勝負に出た…


 五井の順列を変える勝負に出た…


 そういうことだろう…


 五井北東家は、メディアを支配している…


 新聞、ラジオ、テレビと、メディアを支配している…


 しかしながら、そのメディアは、昨今、オールドメディアと呼ばれ、その地位が、揺らいでいる…


 インターネットの急速な普及で、その地位が揺らいでいる…


 平たく、言えば、権威がなくなっている…


 権威=力がなくなっている…


 それゆえ、和子の不在の隙をついて、動いた…


 五井家の序列を崩そうとした…


 それは、今しか、それを、するタイミングが、ないからだ…


 時間が、経てば、経つほど、五井北東家は、不利になる…


 不利=力を失うからだ…


 五井北東家の有するオールドメディアの力が、衰えるからだ…


 だから、勝負を仕掛けた…


 勝負を仕掛けるタイミングは、今しかないからだ…


 今、勝負に出なければ、チャンスを逸する…


 五井の序列を変えるチャンスを逸する…


 それは、何度も言うように、五井北東家の有するオールドメディアの力が、日に日に衰えてゆくのは、火を見るより、明らかだからだ…


 だから、仕掛けた…


 今、勝負を仕掛けた…


 そういうことだ…


 しかしながら、その五井北東家の団郁馬に対抗して、すでに、本家は、対抗策を有していた…


 それが、五井グループ内での、情報関連会社を合併させて、一つの大きな、情報関連会社を立ち上げる…


 つまりは、オールドメディアを支配する、五井北東家に対抗して、ネットを中心とした会社を立ち上げる…


 それを、あらかじめ、用意していた…


 伸明ではない、先代の当主、建造が、用意していた…


 五井北東家に対抗するべく、用意していた…


 つまりは、団郁馬の反乱を予見していたわけだ…


 そして、伸明は、その延長線上で、ナオキのFK興産を手に入れようとした…


 それは、亡き建造の用意した、五井北東家に対抗するべく、五井の情報関連企業を作る、かなめとしようとした…


 しかしながら、それは、亡き、建造の用意した、対、五井北東家に対する、仕掛けを延長したに過ぎない…


 その根本のアイデアは、すでに、建造が、考えていたからだ…


 つまりは、伸明は、いつ、団郁馬が、反旗を翻しても、いいように、準備していた…


 いつ、五井北東家が、本家に対して、牙を剥いても、いいように、準備していたとも、言える…


 そして、これは、見方を、返れば、どうか?


 五井北東家の視点で、見れば、どうか?


 本家は、いつでも、臨戦態勢ができている…


 戦争で言えば、いつ、攻撃されても、相手の攻撃に対抗する手段が、できている…


 そういうことだ…


 そして、問題なのは、ここから…


 果たして、今回の件は、どちらが、先に仕掛けたか?


 それが、問題だ…


 これまでは、私は、五井北東家が、本家に仕掛けたと、思っていた…


 第郁馬が、本家の当主の伸明に仕掛けたと、思っていた…


 が、


 それは、本当か?


 真逆の可能性もあるのでは、ないか?


 伸明が、仕掛けた可能性もあるのでは、ないか?


 なぜなら、伸明は、すでに、団郁馬の攻撃に対抗する手段を有している…


 ならば、自分から、先に、攻撃を仕掛けても、おかしくはない…


 本家が、五井北東家に攻撃を仕掛けても、おかしくはない…


 なぜなら、本家は、すでに、先代当主の建造の時代から、分家の北東家に対抗する対策を考えていた…


 だから、本家の側から、この抗争を仕掛けても、おかしくはない…


 それゆえ、抗争を仕掛けられた、団郁馬は、地下に、潜ったまま…


 地下に、潜伏したまま…


 滅多に、姿を現さなかった…


 そうも、考えられる…


 そして、そう、考えれば、辻褄が合う…


 そして、それを、もっと、深く考えれば、それは、伸明の代ではなく、建造の代で、すでに、団郁馬に、抗争を仕掛けていたのでは、ないか?


 それゆえ、痕跡がない…


 いくら、ネットで、探しても、痕跡が、ない…


 それは、隠れていたから…


 本家の攻撃に対して、身を隠すために、身を隠していたからとも、考えられる…


 そうも、考えられる…


 つまりは、すでに、団郁馬は、建造の代から、本家に攻撃されていた…


 それゆえ、身を隠していた…


 そうとも、考えられるのだ…


 私は、思った…


 私は、考えた…


 つまりは、これまで、私が、思っていたこととは、真逆の可能性がある…


 攻守が、真逆の可能性がある…


 そういうことだ…


 これまでは、あくまで、伸明の視点で、物事を考えていた…


 伸明の立場で、物事を、考えていた…


 しかしながら、団郁馬の視点で見れば、物事は、変わる…


 物事は、変わって見える…


 そういうことだ…


 そして、もし、団郁馬の視点で、見れば、キーパーソンは、昭子では、ないだろうか?


 伸明の実母の昭子では、ないだろうか?


 昭子は、五井の女帝、和子に追放された…


 双子の妹の和子に追放された…


 が、


 これは、形だけ…


 形だけの可能性がある…


 なぜなら、昭子は、和子の勝るとも劣らない女傑…


 女傑だからだ…


 昭子は、奔放…


 異性関係で、奔放だった…


 父親の違う子供を何人も産んだ…


 それゆえ、それを、世間に知られるのを恐れた両親が、昭子に世間に顔を出すのを禁じた…


 五井の当主夫人にも、かかわらず、禁じた…


 そして、昭子の代わりに、双子の妹の和子が、世間に出た…


 なにしろ、二人は、双子…


 外見は、そっくり…


 いかにも、双子という感じだった…


 だから、昭子の代わりに、和子は。表舞台に出ても、おかしくはない…


 違和感が、ない…


 仮に、昭子を知っているものでも、見かけが、そっくりな和子を見ても、よほど、親しくなければ、違いが、わからないからだ…


 それゆえ、和子は、昭子に代わって、表舞台に出た…


 しかしながら、それは、表向きの言葉…


 昭子は、裏で、暗躍していたのではないか?


 裏と言うのは、五井一族の調停…


 一族間の調停=根回しだ…


 なぜ、そう、思うのか?


 それは、何度も言うように、昭子は、和子に勝るとも劣らない女傑だからだ…


 それゆえ、他人を束ねることが、できる…


 一族を束ねることが、できる…


 その才能が、わからない、昭子の両親では、ないはずだ…


 それゆえ、昭子の才能を生かさないのは、もったいない…


 その才能は、昭子の妹の和子も、持っている…


 他人を束ねる才能を持っている…


 だから、スキャンダルのない和子は、表舞台に立ち、世間で、五井を代表する存在と見られた…


 先代当主の建造と共に、表舞台に立ったからだ…


 真逆に、男関係のスキャンダルにまみれた昭子は、表舞台に立てないゆえに、裏で、活躍する…


 裏で、一族の調停で、暗躍する…


 そういうことだ…


 そして、追放されたはずの昭子が、私の前に姿を見せた…


 それは、もしかしたら、あの時点で、勝負が決していた?…


 団郁馬の敗北が、決まっていた?…


 そういうことかも、しれない…


 だから、終戦処理にやってきた…


 そういうことかも、しれない…


 私は、思った…


 私は、考えた…


 この私の考えは、うがち過ぎか?


 考え過ぎか?


 そうも、思った…


 そうも、考えた…


 が、


 ありえない話では、ない…


 まったくの、想像の産物でもない…


 十分、ありえる話だ…


 が、


 そうだとしたら、あのハルカと、西家夫妻…


 彼らの役割は、なんだ?


 考える…


 利用された?


 伸明に、利用された?


 伸明が、団郁馬を葬るのに、利用された?


 そうも、思える…


 なにより、今度の一件は、すべて、和子の入院から、始まった…


 それまで、五井を仕切っていた、和子の入院から、始まった…


 和子が、入院したことで、本家に、不満がある、分家の動きが、活発になった…


 それが、あの五井西家…


 五井西家の血を引く、長谷川センセイの妹のハルカを、伸明と、見合いをさせた…


 仮に、ハルカが、伸明と結婚するようなことになれば、あの西家夫妻は、ハルカの両親気取りで、伸明にアレコレ、注文をつけるだろう…


 つまりは、五井西家は、本家に入るということだ…


 伸明の後ろ盾になると、いうことだ…


 そして、仮に、そうなれば、東家は、地位を低下させることになる…


 なぜならば、伸明の実母の昭子は、東家出身…


 その双子の妹の和子も、当然、東家出身だからだ…


 それが、当主の伸明が、西家の女と、結婚すれば、どうしても、西家が、表に出て来る…


 東家に代わって、西家が、表に出て来る…


 当たり前のことだ…


 が、


 それが、目的だと、したら、どうだ?


 西家が、東家に代わって、本家に近付こうとしているのを、見つけるのが、目的だとしたら、どうだ?


 つまりは、反乱者を見つけるのが、目的だとしたら、どうだ?


 そして、それを、考えれば、そもそも、和子は、本当に、五井記念病院に入院しているのか?


 和子が、倒れたのは、本当なのか?


 それが、疑問だ…


 まさに、疑問だった…


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