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寿綾乃という女 第4部  作者: トモサン


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141/225

寿綾乃という女 第4部 141

 しかし、驚いた…


 実に、驚いた…


 まさか、そんな展開になるとは、思わなかった…


 夢にも、思わなかった…


 あの伸明が、団郁馬と、対立した結果、FK興産が、完全に、五井の傘下に、入ることになるとは、思わなかった…


 まさに、真夏の夜の夢…


 今は、真夏ではないが、同じようなものだ(笑)…


 まあ、今、現在、FK興産は、五井と、資本提携して、株式は、半分が、五井に、握られている…


 だから、それを、考えれば、FK興産が、完全に、五井の傘下に入るのは、時間の問題だったのかも、しれない…


 当事者である、私やナオキは、そうは、思って、いなかったが、外野の目は、わからない…


 外野=世間の目は、わからない…


 ただ、私に言わせれば、早過ぎる…


 展開が、早過ぎる…


 五井の傘下に、完全に入るにしても、もう少し、時間があってもいい…


 FK興産が、経営不振に陥り、五井と資本提携して、半年も経っていない…


 だから、早過ぎる


 いくらなんでも、五井の傘下に下るのは、早過ぎると、思った…


 同時に、考えた…


 今、言ったこと…


 このナオキが、言ったことの情報源…


 それは、伸明ではなく、ユリコ…


 ユリコから、聞いた話…


 つまり、決定事項ではない…


 あくまで、ユリコから、聞いた話だからだ…


 が、


 信憑性が、ない話ではない…


 なにしろ、あのユリコは、団郁馬と接している…


 五井北東家の当主と接しているのは、間違いはない…


 それは、ネットで、確認できた…


 ユリコの主催するファンドの会合に、団郁馬の名前を見つけた…


 二人が、知人であることは、間違いはない…


 だから、今、ナオキが、言った話は、決して、荒唐無稽の話では、ない…


 ありえない話でも、なんでもないのだ…


 おそらく、団郁馬が、ユリコに話したのだろう…


 団郁馬は、知っているか、否か、わからないが、ユリコは、かつて、五井の女帝、諏訪野和子に、煮え湯を飲まされた…


 かつて、五井一族の下位の家から、五井の株を買って、和子に高値で、買い戻させようと、仕組んだのだ…


 買った額の、3倍、4倍という高額で、和子に買い取らせようとした…


 五井の株は、基本、五井一族のみ、持つ株…


 五井一族の持ち株会社、五井ホールディングスの株だからだ…


 それが、外部に流出するのは、困る…


 五井一族以外の人間の手に渡るのは、困る…


 その弱みに、ユリコは、つけ込んだ…


 が、


 あえなく、完敗した…


 ユリコは、和子に完敗した…


 それは、なぜか?


 和子は、あらかじめ、ユリコが、五井一族から、株を買う際に、誰から、資金を得ていたのか、知っていた…


 それは、著名な経済ヤクザからだった…


 それを、和子は、突き止めていた…


 そして、その返済期限も、また、突き止めていた…


 和子は、その事実を、突き止め、


 「…2倍で、買い取ります…」


 と、ユリコに、宣言した…


 「…アナタが、買い取った額の二倍で、買い取ります…」


 と、ユリコに、宣言した…


 当然、ユリコは、納得しない…


 そのユリコに、和子は、追い打ちをかけた…


 「…ユリコさんとやら…アナタが、誰から、金を借りて、五井の株を買ったのは、すでに、わかってます…その返済期限も…」


 と、語った…


 「…アナタが、借りたのは、高雄組…著名な経済ヤクザね…私も、高雄さんを存じ上げているけれども、いかに、経済ヤクザといえども、ヤクザは、ヤクザ…期限までに、お金を返さなければ、どうなるかは、火を見るより、明らかなはず…」


 ユリコは、和子の言葉に、


 「…」


 と、無言だった…


 おそらく、事実だったのだろう…


 「…二倍で、我慢しなさい…それ以上、欲をかくんじゃない!…」


 ユリコは、和子に叱責された…


 まさに、完敗…


 ユリコは和子に完敗だった…


 ユリコよりも、和子の方が、一枚も二枚も上手だった…


 そして、それは、情報力の差と、私は、見た…


 いかに、頭が、良くても、ユリコは、一人…

 

 基本、一人だ…


 対する和子は、五井をバックにしている…


 天下の五井をバックにしている…


 それゆえ、情報力が、違う…


 桁違いに違う…


 それゆえ、ユリコの行動など、お見通し…


 あらかじめ、お見通しだったのだろう…


 誰かが、知らせたのだろう…、


ユリコの行動を、逐一、知らせたのだろう…


それが、和子の耳に入ったのだろう…


 しかしながら、それで、ユリコが、屈辱を感じたのは、たしか…


 たしかだ…


 そして、その屈辱を忘れるユリコではない…


 なんらかのきっかけで、団郁馬と知り合った…


 五井北東家の当主の団郁馬と知り合った…


 そして、お互いの目的が、一致した…


 五井に復讐する目的が、一致した…


 そういうことだろう…


 そして、その内容を、ユリコは、ナオキに告げた…


 ユリコは、かつて、夫婦だったナオキに告げた…


 もちろん、ユリコの狙いは、わからない…


 ただ、五井北東家の団郁馬は、落ち目…


 落ち目だということは、わかる…


 五井北東家は、東都新聞を有し、東都ラジオ、東都テレビを有している…


 しかしながら、それらは、今、皆、オールドメディアと総称されている…


 ネットが、格段に発達した今、明らかに、オールドメディアの地位は、不利…


 時間が経つごとに、不利になる…


 だから、五井本家に、復讐するとすれば、一刻も、早く、しなければならない…


 時間が経つごとに、オールドメディアを有する五井北東家の力が、失われるからだ…


 私は、思った…


 私は、考えた…


 そして、そんなことを、考えていると、ナオキが、


 「…諏訪野さんの立場だったら、そう考えるのが、わかる…」


 と、漏らした…


 「…五井北東家は、落ち目…だが、まだ力は、ある…だから、それに対抗するため、五井グループの情報関連会社を集めて、一つの会社にして、巨大なネットメディアを作る…それで、五井北東家に対抗できる…」


 ナオキが、漏らす…


 たしかに、そう、言われれば、わかる…


 実に、よくわかる…


 しかしながら、それに、巻き込まれるのは、納得できない…


 FK興産が、巻き込まれるのは、納得できない…


 私とナオキが、巻き込まれるのは、納得できない…


 当たり前だった…


 伸明の都合は、わかるが、当たり前だった…


 私や、ナオキは、伸明の道具でも、なんでもない…


 五井の騒動に、巻き込まれるのは、ごめんだった…


 伸明の立場は、わかるが、ごめんだった…


 しかしながら、やはり、ユリコの目的が、わからない…


 それを、ナオキに話した目的が、わからない…


 団郁馬の行動を、ナオキに話した目的が、わからない…


 なぜなら、ナオキが、伸明と、仲がいいのは、ユリコも、知っているはず…


 それなのに、団郁馬の行動をナオキに告げることは、同時に、伸明に告げることになる…


 つまりは、団郁馬の行動が、伸明に筒抜け…


 なにを考えているか、丸見えになるからだ…


 だから、わからない…


 ユリコが、なにを考えているか、わからない…


 それゆえ、私は、ナオキに、


 「…ユリコさん、なにを考えているのかしら?…」


 と、聞いた…


 率直に、聞いた…


 「…なにを考えているって、どういうこと?…」


 「…だって、そんなこと、ナオキに話すなんて…団郁馬氏を裏切ることになるでしょ?…」


 私が、言うと、ナオキが、笑った…


 ナオキが、ニヤッと笑った…


 それから、


 「…ユリコが、大切なのは、ジュンだけだよ…」


 と、笑って言った…


 「…ジュン君だけ?…」


 「…そう…なにしろ、血を分けた自分の息子だ…ユリコのただ一人の子供だ…だから、ユリコは、ジュンのためなら、動く…ジュンのためなら、なんでもする…」


 それは、わかっている…


 なぜなら、かつて、ユリコは、私に頭を下げた…


 天敵の私に頭を下げた…


 それは、ジュン君を助けたいから…


 私をクルマで、引き殺そうとしたジュン君を助けたいから…


 裁判で、私が、ジュン君を宥恕(ゆうじょ)すると、一言言って、もらいたいから…


 宥恕(ゆうじょ)=許すと言ってもらいたいから…


 だから、私に頭を下げた…


 私が、ジュン君を宥恕(ゆうじょ)=許すと、一言言っただけで、ジュン君の刑が軽くなるからだ…


 裁判官の心証が、変わるからだ…


 裁判官の心証が、良くなるからだ…


 それが、わかっているから、ユリコは、私に頭を下げた…


 天敵の私に頭を下げた…


 そういうことだ…


 だから、今、ナオキが、言ったことは、わかる…


 十分にわかる…


 そして、私が、そんなことを、考えていると、ナオキが、


 「…それと、イケメンかな…」


 と、続けた…


 笑って、続けた…


 「…ユリコは、イケメン好き…病的なまでに、イケメン好き…」


 と、笑う…


 「…だから、もしかしたら、ユリコが、団郁馬氏を裏切るとしたら、その団氏は、イケメンじゃないんじゃないかな?…」


 ナオキが、言う…


 笑いながら、言う…


 笑いながら、冗談を言う…


 しかしながら、それは、的を得ていた…


 その冗談は、的を得ていた…


 たしかに、あの団郁馬氏は、イケメンではない…


 だから、ユリコが、団郁馬氏を裏切っても、おかしくはない…


 イケメンではないのだから、裏切っても、おかしくはない…


 だから、当てはまる…


 この冗談が、当てはまるのだ…


 私は、思った…


 私は、考えた…


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