↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
寿綾乃という女 第4部  作者: トモサン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
133/225

寿綾乃という女 第4部 133

 すでに言ったように、ハルカから、電話があり、ハルカと、会う日が決まった…


 もちろん、私は、緊張した…


 あのハルカには、謎がある…


 そんなマミさんの言葉が、私の脳裏に、強く、残っているから、緊張した…


 が、


 実際に、私の自宅近くのカフェで会ったハルカは、実に、謙虚だった…


 先日の、電話同様、謙虚だった…


 「…この度は、わざわざ、お呼びだてして、申し訳ありません…」


 と、すでに、私より先に店について、席に座っていたハルカが、私の姿を見るなり、わざわざ、席から、立ち上がって、言った…


 それを、見て、私は、悪い気持ちになるわけはなかった…


 これは、誰もが、同じ…


 同じだ…


 自分が、丁寧に扱われているというか…


 相手が、自分を持ち上げているのが、わかる…


 となれば、誰しも、悪い気分ではない…


 当たり前だった…


 なにより、今日のハルカは、柔和というか…


 あの伸明の見合いのときと、会ったときとは、別人だった…


 まさに、別人だった…


 まさか、双子の姉妹や、歳が近い、そっくりの姉妹がいて、入れ替わったわけでは、あるまい…


 一瞬、そんなバカなことを、本気で、考えるほど、別人だった…


 前回、このハルカと、会ったときと、別人だった…



 それゆえ、私は、


 「…ハルカさん、まずは、座って下さい…」


 と、言った…


 そう、言って、私も、また席に着いた…


 それを、見て、ハルカも、また、座った…


 私が、椅子に座ったのを見て、自分も、座っていいと、思ったのだろう…


 どこまでも、私を立てる…


 私を優先する…


 つくづく、別人…


 あの見合いの席で、会ったハルカと、別人だった…


 が、


 私は、それには、触れなかった…


 触れても、仕方がないからだ…


 あの日のハルカが、素の姿のハルカなのか?


 それとも、今、この場で会っているハルカが、素のハルカなのかは、わからない…


 ただ、それは、どうでも、いいこと…


 私にとっては、どうでも、いいことだからだ…


 私にとっては、このハルカが、ナオキと結婚会見をして、それが、ウソであると、わかったことが、良かった…


 なにしろ、ナオキは、私の事実上の夫…


 すでに、いっしょに住んでいないが、事実上の夫だった…


 もちろん、ナオキも、そう、思っているだろう…


 それゆえ、ナオキから、電話が来た…


 このハルカとの、結婚は、裏があると、私に告げた…


 さすがに、ナオキも、伸明から、頼まれたとは、言えなかったのだろう…


 私が、そう、思っていると、


 「…寿さん、すいませんでした…」


 と、ハルカが、詫びた…


 真っ先に、詫びた…


 私は、それを、受け入れた…


 「…そんなことは、どうでも、いいのよ…」


 と、言って、受け入れた…


 「…どうでも、いい?…」


 ハルカが、驚いた顔で、聞いた…


 「…どうして、どうでも、いいんですか?…」


 「…だって、もう、終わったことでしょ?…」


 「…終わったこと?…」


 「…そう…」


 「…どうして、終わったこと、なんですか?…」


 「…アナタは、伸明さんに、頼まれ、ナオキと結婚すると、言う会見をした…それが、事実でしょ?…」


 「…それは…」


 「…でも、結婚は、しない…あくまで、会見だけ…違う?…」


 「…」


 「…アナタが、伸明さんに、頼まれたのは、伸明さんから、聞いたわ…」


 私が、言うと、ハルカは、ホッとした顔をした…


 「…聞いた?…」


 「…そう、聞いた…」


 「…」


 「…アナタも大変ね…色々なひとから、頼まれる…」


 「…色々なひと?…」


 「…だって、伸明さんと、見合いしたんだって、お兄様の長谷川センセイから、頼まれたことでしょ?…」


 「…ハイ…」


 「…で、そのときは、強気な女を演じろとでも、長谷川センセイから、言われたの?…」


 私は、聞いた…


 直球で、聞いた…


 が、


 当然、ハルカは、答えない…


 これは、ある意味、予想通り…


 予想通りだった…



 会話は、終始、私の先導だった…


 私が、主導した…


 それで、私は、安心した…


 会話を一方的に主導したことで、安心した私は、まだ、なにも、頼んでいないことに、気付いた…


 それゆえ、慌てて、


 「…なにか、頼みましょう…」


 と、ハルカに提案した…


 「…いつまでも、なにも、注文しないと、店のひとに、怪しまれる…」


 「…怪しまれる?…」


 「…このまま、なにも、注文せずに、居続けていては、無銭飲食じゃないけれども、怪しまれるわ…」


 私は、笑いながら、言った…


 もちろん、冗談だ…


 しかしながら、その冗談は、このハルカに、通じてないようだった…


 それゆえ、わざわざ、


 「…冗談よ…」


 と、付け加えた…


 「…冗談?…」


 「…場を和ませようとしたのよ…」


 私が、笑って言うと、ハルカも、肩の力が、抜けたようだ…


 「…そうだったんですか?…」


 と、言って、笑った…


 私は、それを、見て、


 「…なにか、頼みましょう…」


 と、告げた…


 「…なにに、する?…」


 そう、言いながら、二人で、タッチパネルを見た…


 正直、やりづらい…


 私は、以前のように、テーブルのブザーを鳴らして、店員が来て、注文を取る方が、好きだった…


 ハルカは、そんな私とは、違い、タッチパネルで、簡単に、メニューを選んだ…


 そして、


 「…寿さん、なにに、しますか?…」


 と、聞いた…


 私は、少し悩んだが、


 「…コーヒーと、ケーキをお願いするわ…」


 と、頼んだ…


 「…コーヒーは、ホットですか? アイスですか? ケーキは、どんな?…」


 「…コーヒーは、ホットで…ケーキは、イチゴが載ったショートケーキで、いいわ…」


 「…わかりました…」


 ハルカが、タッチパネルで、注文した…


 また、ハルカは、自分の分も、注文したが、なにを、注文したのかは、私は、見ていなかった…


 どうせ、テーブルに運ばれてくれば、わかることだからだ…


 もっと、言えば、関心がなかった…


 これは、デートではない…


 若い男女のデートではない…


 私も、まだ、32歳と若いつもりだが、もっと、若い男女…


 例えば、高校生の男女が、初めて、デートしたとき…


 互いに相手が、どんなものを注文したのか、気になる…


 実に、気になる(笑)…


 それは、相手の一挙手一投足が、気になるから…


 それが、若さ…


 若さだからだ…


 さすがに、32歳の私に、そんな若さは、ない…


 微塵もない(爆笑)…


 それゆえ、このハルカではなく、相手が、どんなイケメンでも、きっと、動揺しない…


 動揺=ドキドキしない…


 すでに、やさぐれていると言って、しまえば、それまでだが、歳を取って、そんなに、純な感情は、持てない…


 若さが、なくなったからだ…


 若さ=純、あるいは、ナイーブというところか…


 いずれにしろ、私の中に、そんな感情は、残っていない…


 残念ながら、残っていない(苦笑)…


 私が、そんなバカなことを、考えていると、注文したメニューが、運ばれてきた…


 それまで、お互い、無言だった…


 正直、話すことが、なかった…


 このハルカは、私に詫びるために、私を呼び出した…


 私に謝罪するために、呼び出した…


 そして、その謝罪は、会って、早々に、した…


 それゆえ、会話がなくなった…


 なにを、話して、いいのか、わからなかった…


 互いに、相手が、どんな人間だか、わからないからだ…


 だから、困った…


 なにを、話して、いいのか、困った…


 が、


 届いたメニューを、見て、気付いた…


 同じもの…


 私と、このハルカが、頼んだものが、まったく、同じものだった…


 それゆえ、私は、


 「…ハルカさん、私に合わせたの?…」


 と、聞いた…


 ハルカは、私の質問に、笑いながら、


 「…いえ、そういうわけでは…」


 と、言った後、


 「…でも、考えるのが、嫌だから…」


 と、続けた…


 「…考えるのが、嫌って、どういうこと?…」


 「…だって、なにを、食べたって、いいじゃないですか? どうせ、まずいものは、ない…私も、今、それほど、お腹は、空いていないし、それなら、寿さんと、同じものを注文しようかなと…」


 ハルカが、告白する…


 意味は、わかるが、仰天した…


 そんなことを、言うひとは、初めて…


 初めてだったからだ…


 そして、同時に、興味が湧いた…


 そんなことを、言う、このハルカに、興味が湧いた…


 一体、どんな人間なんだろうと、興味が、沸いた…


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。