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寿綾乃という女 第4部  作者: トモサン


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131/225

寿綾乃という女 第4部 131

 私は、仰天した…


 思わず、カラダが、固まった…


 家の固定電話のスピーカーから、


 「…寿さんですか? ご無沙汰しています…私、長谷川ハルカです…以前、諏訪野伸明さんと、お見合いをしたときに、一度、お会いしました…覚えていらっしゃるでしょうか?…」


 と、流れてきたからだ…


 家の固定電話は、いつも、留守電にしてある…


 昨今は、詐欺等の迷惑電話が、多い…


 だから、常に留守電にしている…


 その方が、良いからだ…


 たとえ、電話があっても、用事がある、電話にだけ、出れば、良いからだ…


 ハルカの電話に、私は、思わず、カラダが、固まった…


 どうして、いいか、わからず、固まった…


 あまりにも、想定外…


 想定外の出来事だったからだ…


 まさか、あのハルカから、私に、電話があるとは、思わなかった…


 まさに、まさか?


 まさか、だった…


 それゆえ、どうして、いいか、わからなかった…


 あまりの突然の事態に、どう対応して、いいか、わからなかった…


 だから、私が、固まっていると、


 「…突然のお電話、申し訳ありません…一度、寿さんと、お会いしたいのですが、いかがでしょうか?…」


 と、続いた…


 もちろん、私は、まだ、電話に出ていない…


 留守電にメッセージが、吹き込まれてゆくだけだ…


 ただ、なぜ?


 なぜ、私に会いたいのか?


 そう、考えていると、ハルカが、続けて、


 「…寿さんも、すでに、ご存じでしょうが、先日、藤原ナオキさんと、私、結婚会見をしました…でも、あの会見には、裏がありまして…それを、直接、寿さんに、お話ししたくて…」


 と、留守電のメッセージに向けて、言う…


 私は、それを、聞いて、


 …それでか!…


 と、思った…


 …それでか!…


 と、納得した…


 たしかに、そう、言われれば、納得する…


 今、どうして、あのハルカが、私に電話をかけてきたのか、納得する…


 あのハルカは、伸明に金を握らされ、ナオキと、ウソの結婚会見をした…


 私の事実上の夫である、藤原ナオキと、ウソの結婚会見をした…


 それゆえ、私に釈明しようと、思ったのだろう…


 だから、電話をかけてきた…


 そう、思った…


 そして、また、私の自宅の固定電話の電話番号は、ナオキに、聞いたに違いない…


 ケータイでも、自宅の固定電話でも、ナオキなら、私の電話番号を知っているからだ…


 そこまで、考えて、初めて、電話に出た…


 留守電のメッセージを入れている最中の電話に出た…


 「…お待たせしました…寿です…」


 と、言って、電話に出た…


 相手は、


 「…えっ?…」


 と、言って、驚いた…


 一瞬だが、言葉に詰まった…


 これは、当然…


 当然の反応だろう…


 当人が、いないと、思って、留守電にメッセージを吹き込んでいるのだ…


 それが、いきなり、本人が出た…


 驚きで、声が、出なくなったのは、わかる…


 わかるのだ…


 ハルカは、すぐに、態勢を立て直した…


 「…いらっしゃったんですか?…」


 と、言って、態勢を、立て直した…


 私は、


 「…ハイ、いました…」


 と、答えた…


 それから、すぐに、続けて、


 「…いつも、家の固定電話は、留守電にして、あるんです…昨今は、色々ありますから…」


 と、説明した…


 私の言葉に、ハルカが、


 「…いろいろと…」


 と、返した…


 が、

 

 それだけで、すべて、通じたようだ…


 いろいろの意味が、通じたようだ(苦笑)…


 そして、私が、電話に出ると、


 「…お久しぶりです…」


 と、ハルカが、言った…


 私も、相槌を打って、


 「…こちらこそ、お久しぶりです…ご無沙汰しています…」


 と、返した…


 ハルカは、私の返事を聞いて、安心したようだ…


 ホッと、したようだ…


 それは、次のセリフに、出た…


 「…安心しました…」


 と、いうセリフで、出た…


 「…寿さんも、おそらく、私が、どうして、藤原さんと、結婚会見を行ったか、すでに、ご承知とは、思いますが、一度、直接会って、寿さんに、説明したくて…」


 ハルカが、続ける…


 「…会う時間が、取れないでしょうか?…」


 ハルカが、提案する…


 当然の提案をする…


 私は、それを聞きながら、ふと、


 …なにか? 違う!…


 と、思った…


 …なにが、違うのか?…


 考えた…


 夢中になって、考えた…


 そして、それは、すぐに、わかった…


 前回、伸明との見合いの席で、会ったときと、なにが、違うのか、わかった…


 低姿勢なのだ…


 あのときは、居丈高…


 上から、目線だった…


 が、


 今、この電話のハルカは、低姿勢…


 ものすごく低姿勢…


 まるで、別人だった…


 だから、一瞬、


 …ホントに、あのハルカか?…


 と、思った…


 心の中で、思った…


 が、


 声は、同じ…


 あの見合いの席で、聞いた声と、同じだ…


 私は、まだ、あのとき、一度しか、このハルカと会ったことは、ないが、それでも、覚えている…


 よく、覚えている…


 それは、なぜか?


 それは、どうしてか?


 それは、やはり、私が今、働いていないからだろう…


 それゆえ、会う人間が、少ない…


 だから、数少ない、会った人間を覚えている…


 よく、覚えている…


 それと、会った、このハルカが、伸明の見合い相手というのも、大きい…


 どうしても、大きい…


 おそらくは、これが、一番の理由…


 理由だ…


 あの伸明が、どんな女性と見合いするか?


 それを、間近で、見たことも、大きい…


 だから、余計、覚えている…


 余計に、記憶に残っている…


 さらに、言えば、美人…


 美人というのも、大きい…


 私と、タイプの違う美人というのも、大きい…


 おまけに、若い…


 私より、数歳若い…


 だから、強敵…


 まごうことなき、強敵だ…


 だから、覚えている…


 よく、覚えているのだ…


 しかし、あの見合い相手のハルカは、高飛車な女…


 嫌な女だった…


 見るからに、気の強い女…


 しかしながら、今、この電話の声の主は、別人…


 あのときとは、まったくの別人だった…


 が、


 声は、同じ…


 同じだ…


 ということは、演じていた?…


 あのときは、高飛車な女を演じていた?…


 それとも、今が、演じている?…


 優しい女を演じている?…


 疑問が、出る…


 どっちが、本当のハルカか、疑問が、出る…


 というのは、伸明の好み…


 五井家の当主の女の好みだ…


 あの伸明は、高飛車な女が好き…


 気が強い女が、好き…


 だから、事前に、それを、知って、あのときは、気が強い女を演じた可能性がある…


 事前に、伸明の女の好みを聞いて、気が強い女を、演じた可能性がある…


 それゆえ、今が、素…


 素の姿の可能性がある…


 あるいは、真逆…


 今、わざと、優しい女を演じているだけ…


 本当は、あのとき、伸明と会ったときの姿が、素…


 気が強いのが、素なのかも、しれない…


 どちらが、本当のハルカの姿だか、わからない…


 さっぱり、わからない…


 ただ、あのときとは、別人…


 別人だ…


 声は、同じだが、別人だ…


 私は、それを、思った…


 私は、それを、考えた…


 そして、それを、考えていると、ハルカが、電話の向こう側から、


 「…寿さん、よろしくお願いします…」


 と、いう声が、聞こえて来た…


 低姿勢な声が、聞こえてきた…


 あのときとは、真逆の低姿勢な声が、聞こえて来た…


 私は、悩んだ…


 もちろん、会うことに、悩んだのでは、ない…


 どっちが、ホントのハルカか、悩んだのだ…

 

 あの見合いの席で、会ったのが、本物のハルカか?


 それとも、今、電話をしているのが、本物のハルカなのか?


 悩んだのだ…


 もちろん、会えば、わかる…


 どっちが、本物のハルカなのか、わかる…


 それゆえ、私は、


 「…いいですよ…」


 と、答えた…


 「…ホントですか?…」


 電話の向こう側から、ハルカが、喜ぶ声が、聞こえて来た…


 「…ハイ…ただし、私は、体調が、良くないので、私の自宅近くで、お願いします…」


 と、条件を出した…


 「…寿さんの自宅近く?…」


 「…そうです…」


 私は、答えた…


 「…自宅近くのファミレスとか、カフェで、お願いします…」


 私が、提案すると、すぐに、


 「…わかりました…」


 という声が、聞こえて来た…


 次いで、


 「…よろしくお願いします…」


 という声が、流れて来た…


 私は、その声に応えて、


 「…いえ、私の方こそ、よろしくお願いします…」


 と、言った…


 「…それでは、後ほど、具体的な日時を提案しますので、またお電話します…」


 と、ハルカが、言って、私は、


 「…わかりました…」


 と、言って、電話を切った…


 物事が、動き出した…


 ようやく、動き出した…


 そう、思った…


 そう、思ったのだ…


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