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寿綾乃という女 第4部  作者: トモサン


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130/225

寿綾乃という女 第4部 130

 私は、自分自身のバカさ加減に呆れたが、同時に、いい機会だとも、思った…


 伸明と別れる、いい機会だとも、思った…


 互いに、恋愛感情は、あったかも、しれないが、まだ、肉体関係はない…


 しかしながら、肉体関係があったとしたら、どうなんだろ?


 せいぜい、手切れ金がもらえるか、否かの違いでは、ないのか?


 ただ、今は、友人として、付き合っているだけ…


 それ以上でも、それ以下でもない…


 だから、簡単に別れられるとも、言える…


 単に、会わなければ、いい…


 伸明と距離を置けばいい、とも、思った…


 そうすれば、自然に、付き合いは、解消する…


 いや、


 これは、肉体関係があっても、なくても、同じだ…


 つまりは、別れの常套手段…


 会わなければ、いい…


 単純に会わなければ、関係は、なくなる…


 連絡があっても、無視すれば、いい…


 そうすれば、自然と、関係は、解消する…


 友人関係であっても、恋人関係であっても、解消する…


 もはや、二度と会わないのだ…


 解消するに、決まっている(爆笑)…


 問題は、ナオキが、伸明の友人であることだが、ナオキが、伸明を、自宅に連れて来たことは、一度もない…


 これまで、一度もない…


 あるいは、ナオキの別宅に、伸明を招いたことは、あるかも、しれないが、私の家に、やって来たことは、一度もない…


 これまで、一度もない…


 だから、関係ない…

 

 ナオキが、これまで通り、伸明と付き合おうが、どうしようが、関係ない…


 私が伸明と付き合わなければ、いい…


 それだけだ…


 私が、住む、このマンションは、以前、ナオキと、ジュン君と、3人で、住んでいたマンション…


 ナオキは、出てゆき、ジュン君は、逮捕され、今は、私ひとり…


 そして、ついでに、言えば、このマンションは、私のもの…


 私、寿綾乃のものだ…


 名義が、私になっている…


 寿綾乃に、なっている…


 それは、以前、ナオキが、私名義に代えてくれたから…


 だから、私のものになった…


 要するに、ナオキは、私が、心配だったわけだ…


 FK興産が、五井と提携する前に、私を、FK興産の非常勤の取締役にしたのも、そう…


 私が、生活に、困らないように、毎月、給与を渡す手段として、私を非常勤の取締役にした…


 私が、すでに、FK興産を退職していたからだ…


 それゆえ、私が、無職になったからだ…


 だから、お金が入らない…


 金銭的に、困窮すると、ナオキは、思ったのだろう…


 いや、


 退職は、していないかも、しれない…


 たしか、当初は、休職扱いだと、聞いた覚えがある…


 が、


 私自身が、出社して、人事部に確かめたわけでは、ないから、忘れた…


 すっかり、忘れていた(苦笑)…


 いずれにしろ、私が、二度と、FK興産に出社の意志がないことが、わかっていたから、ナオキは、私を非常勤の取締役にした…


 そうすれば、たとえ、出社せずとも、私にお金を与えることができる…


 正式に、お金を与える名目が、できる…


 たとえ、出社せずとも、毎月、私の口座に、給与を振り込むことが、できる…


 実際は、いずれは、FK興産に、出社しなくては、ならないだろうが、それまでは、出社せずとも、私にお金を与え続けることが、できる…


 ナオキは、そう、思ったに、違いない…

 

 また、私は、癌持ち…


 癌患者だ…


 それゆえ、満足に、働けないと、思ったのだろう…


 だから、非常勤の取締役にした…


 毎日、出社せずとも、お金を与える口実が、できるポジションにつけた…


 そういうことだ…


 私は、今、32歳…


 普通ならば、会社を退職しても、食うに困るようなことはない…


 どこかに、就職できるだろう…


 また、うまく就職先が見つからなければ、スーパーで、パートをやるか、ファミレスで、働くか?


 いずれにしろ、スーパーや飲食業界で、働くだろう…


 なぜ、スーパーや飲食業界なのか?


 その方が、入りやすいからだ…


 その方が、働きやすいからだ…


 あの業界は、ひとの出入りが激しい…


 それゆえ、うまく、入ることが、できる…


 辞める人間が、多いから、入ることも、簡単だ…


 だから、常に、新陳代謝というか…


 一部の人間を除いて、常にひとが、入れ替わっている…


 それゆえ、そこで、働きやすい…


 入社しやすいということだ…


 だから、ホントは、そうすれば、良いのだが、何度も言うように、私は、癌持ちの身…


 うまく、働ける自信がない…


 それを、見越して、ナオキは、私にマンションを与え、さらには、会社の非常勤の取締役にして、私が、食いっぱぐれないようにした…


 だから、恩人…


 ナオキは、私にとって、恩人…


 大恩人だ…


 きっと、ナオキのように、私の身を心配してくれる男は、二度と現れないだろう…


 それは、自信がある…


 それは、断言できる…


 そして、それは、なぜか?


 それは、私とナオキが、家族だから…


 出会って、十五年以上経つ…


 以前は、私とジュン君と、いっしょに、一つ屋根の下で暮らした家族だからだ…


 さらには、貧しい時代を、いっしょに過ごした…


 辛い時代を、いっしょに過ごした…


 それゆえ、絆が、強まる…


 大変な時期をいっしょに過ごしたことで、絆が強まるのだ…


 これは、誰もが、いっしょ…


 いっしょだ…


 成功して、知り合った、友人たちより、いっしょに、苦労した、友人たちの方が、気が置ける…


 あるいは、信頼できる…


 いかに、気が合おうが、以前、いっしょに、苦労した友人、知人の方が、気が置けるし、信頼できるし、信用できる…


 誰もが、そういうものだからだ…


 そして、それを、考えれば、以前にも、言ったことだが、ナオキは、伸明を、全面的には、信用していない…


 二人は、気が合って、仲の良い友人だが、ナオキは、伸明を全面的には、信用していない…


 それは、私をFK興産の非常勤の取締役に任命したときに、わかった…


 なぜ、あのタイミングで、私をFK興産の非常勤の取締役にしたか?


 それは、FK興産が、五井と提携する前だったから…


 それゆえ、五井と提携後だったら、いかに、ナオキが、社長でも、そんな提案が、通らないと危惧したから…


 あるいは、五井と提携前に、私を非常勤の取締役にすることで、少しでも、私に、お金をあげたかった…


 五井と提携後だったら、私を非常勤の取締役から、解任する可能性があったから…


 それを、危惧したナオキが、先手を打った…


 FK興産と、提携した五井が、なにか、言うかも、しれないから、先手を打った…


 そういうことだ…


 そして、それを、きっかけに、ナオキは、伸明を、それほど、信用していないことが、わかった…


 伸明を、それほど、信頼していないことが、わかった…


 二人は、仲がいい…


 傍から見ても、仲がいい…


 でも、こんなことを、きっかけに、実は、ナオキが、本音では、伸明を、どう思っているのか、わかった…


 些細なことだが、こんなことを、きっかけに、相手をどう思っているのか、わかるものだ…


 これが、若い女なら、よくある例は、自分の付き合っている彼氏を両親に紹介するか、否か?


 あるいは、自分の付き合っている、彼氏を、自分の自宅に、招くか、どうか、だ…


 まあ、これは、男も同じか?


 やはり、自分の家に招く以上、両親に、今、自分は、このひとと、付き合っているよと、アピールすることになるからだ…


 それゆえ、仮に付き合っていても、男女ともに、軽い付き合いの相手は、自宅には、呼ばない…


 一人暮らしをしている場合は、その限りではないが、両親に紹介するとなると、軽い付き合いの異性は、普通は、呼ばないものだ…


 仮に、男女の関係になっても、呼ばないのは、遊びと割り切っているから…


 いや、遊びとまでは、いかなくても、結婚は、考えてないから…


 大抵は、そうだ…


 話が、若干、長くなったが、つまりは、そんな些細なことで、相手が、自分をどう、思っているか、わかるものだ…


 最初の話に、戻ると、ナオキは、伸明を信用していない…


 おそらく、まるっきり、信用していないとは、思わないが、そこまで、信用していないと、言うのが、正しいのだろう…


 やはり、本当に、大切なことは、譲れないと、言うのが、正しいだろう…


 あるいは、伸明には、任せらないということか?


 それが、おそらく、ナオキの伸明に対する本音だろう…


 それが、おそらく、ナオキの伸明に対する評価だろう…


 そして、その大切なものというのは、私…


 私、寿綾乃だった…


 私、矢代綾子だった…


 それゆえ、ナオキには、感謝しかない…


 もはや、後何年、生きようが、ナオキほど、私を大切に思ってくれる人間は、二度と現れないだろう…


 そして、それは、現実的な問題もある…


 加齢の問題も、ある…


 若さの問題も、ある…


 私、寿綾乃は、美人で通っているが、それでも、歳には、勝てない…


 若い女のコには、勝てない(涙)…


 生きていれば、歳を取るのは、当たり前だが、歳を取れば、取るほど、女は、商品価値が、失われてゆく…


 そんな恐怖がある…


 それゆえ、年々、商品価値が、低下してゆく、自分に、これから、王子様が、現れるとは、思えない…


 ナオキ以上の王子様が、現れるとは、思えないのだ…


 それゆえ、私は、ナオキを大事にしなければ、ならない…


 これまで、以上に、大切にしなければ、ならない…


 あらためて、そう、思った…


 そう、思ったのだ…



 そして、そう、思って、数日過ぎた日だった…


 朝に、電話が、あった…


 私の家の固定電話に、電話があった…


 電話の主はというと、思いがけない人物…


 まさに、思いがけない人物だった…


 電話の主は、あのハルカからだった…


 伸明の見合い相手のハルカからだった…


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