↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
寿綾乃という女 第4部  作者: トモサン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
113/225

寿綾乃という女 第4部 113

 と、言っても、コンビニになにかが、あったわけでも、なんでもない…


 コンビニは、コンビニ…


 別段、変わっているコンビニでも、なんでも、なかった…


 ただ、私にとっては、運命だった…


 私の運命を、変えた、コンビニだった…


 私は、コンビニの中に入ると、真っ先に、飲み物の置かれた冷蔵庫に向かった…


 自分の好みの飲み物を、買うためだ…


 さっきも、書いたように、ポカリスエットやアクエリアスのような飲料を探して、手に取ったが、やはり、止めた…


 なぜなら、砂糖が、入っていて、甘いからだ…


 これならば、砂糖の入っていない、おーいお茶や、麦茶の方が、いい…


 さっぱりしている…


 そう思って、お茶を探した…


 すると、すぐに、見つかった…


 が、


 今度は、普通のおーいお茶と、濃い味のおーいお茶があり、それで、悩んだ…


 本当ならば、今の状況では、さっぱりとした、普通のおーいお茶の方が、いい…


 しかしながら、貧乏性の私は、やはり、買うとなると、濃い味の方を、求めてしまう…


 せっかく、お茶を買うのだから、濃い味の方が、お茶を飲んだ気がするからだ…


 だから、得をした気分になるからだ…


 それゆえ、悩んだ…


 少しばかり、悩んだ…


 が、


 いつまでも、悩んでは、いられない…


私が、冷蔵庫を開けていると、すぐ近くで、私が、飲み物を、買い終えることを、待っているお客さんが、いたからだ…


 私は、慌てて、目当ての飲料を掴んで、冷蔵庫の扉を閉めた…


 そして、


 「…すいません…」


 と、私が、飲料を選び終えるのを、待っていたお客さんに、軽く頭を、下げた…


 私の選んだのは、おーいお茶の濃い味だった…


 それを、見て、私は、相変わらず、自分は、貧乏性だと、笑った…


 心の中で、笑った…


 そして、それから、レジに、向かった…


 レジは、混んでいた…


 数人が、並んでいた…


 混んでいる原因は、子供だった…


 小学校に、上がったか、どうか、微妙なぐらいの少年が、お菓子か、なにかを、買ったが、お金が、足りないらしい…


 必死になって、自分の財布の中の現金を探している…


 その一方で、レジの店員が、もどかしそうに、少年が、お金を払い終えるのを、待っていた…


 今は、コンビニは、自動レジが大半だから、まずは、客が、自分で、お金を、払う…


 つまりは、客が、お金を払い終えなければ、店員は、お客様に、商品を渡せない…


 それゆえ、もどかしそうに、少年を見ていた…


 そして、それは、他の客も、同様だった…


 その少年の後ろに、並ぶ、他のお客さんたちも、同様だった…


 店員は、優しく、


 「…お金が、足りないの?…」


 と、少年に、聞いた…


 少年は、困った顔をしていた…


 すぐには、返事をしなかった…


 あるいは、できなかった…


 「…それじゃ、商品は、買えないよ…家に、戻って、お金を、持ってくれば、いい…」


 店員が、優しく声を、かけた…


 少年は、仕方なく、頷いた…


 が、


 予想外のことが、起きた…


 少年の後ろに、並んだ、オジサンが、


 「…いくら、足りないの?…」


 と、声をかけたからだ…


 どう見ても、他人…


 その少年とは、まるで、無関係の他人だった…


 その他人が、声をかけたものだから、困惑した…


 少なくとも、私には、少年が、困惑して見えた…


 だから、少年は、答えられなかった…


 そのオジサンの質問に、答えられなかった…


 すると、今度は、そのオジサンは、レジで、少年が、お金を、入れ終わるのを、待っている店員に、


 「…いくら、足りないんですか?…」


 と、聞いた…


 店員も、また、少年同様、戸惑った…


 どう、見ても、その少年と、そのオジサンに、なにか、関係があるとは、思えなかったからだ…


 だから、店員も、戸惑って、答えなかった…


 オジサンは、店員の胸中を察して、


 「…たいした、お金じゃないから、ボクが、払うよ…」


 と、言った…


 「…えっ?…」


 と、店員が、漏らした…


 まさに、予想外の言葉だったからだ…


 「…この子供だって、わざわざ、家に戻って、お金を持って、この店に返ってくるのは、面倒だろ? ボクが、払うよ…」


 オジサンが、ポケットから、財布を出した…


 「…いくら、足りないんだい?…」


 「…88円です…」


 店員が、答える…


 その答えを、聞いた、オジサンは、財布の中から、百円玉を取り出して、自動レジに入れた…


 店員は、


 「…いいんですか?…」


 と、オジサンに、聞く…


 オジサンは、


 「…いいも、悪いも、もう払っちゃったよ…」


 と、言って、笑った…


 そして、少年も、また、戸惑っていた…


 どうしていいのか、わからない様子だった…


 店員が、少年に、その少年が、買った商品を手渡したが、受け取らなかった…


 受け取っていいのか、どうか、わからなかったのだろう…


 それを見た、オジサンが、


 「…お金は、払い終えたから、早く、その商品を持って、家に、帰りなさい…」


 と、優しく言った…


 「…でも、ボクが、払ったわけじゃ…」


 「…誰が、払おうと、同じさ…お金を、払えば、いい…でしょ? 店員さん…」


 オジサンが、店員に話しかけると、店員も、どう返答していいか、わからなかった…


 ただ、困惑して、苦笑いを浮かべていた…


 そして、少年に、


 「…さあ、今度は、オジサンの番だ…キミは、もう終わったから、帰りなさい…オジサンの邪魔だ…」


 そう言われて、少年は、そこから、立ち退いた…


 それから、


 「…ありがとう…」


 と、言って、走って、コンビニを出て行った…


 きっと、恥ずかしかったのだろう…


 が、


 この出来事は、私の胸を熱くした…


 いや、


 私だけではない…


 レジにいる店員を含め、その場にいた全員の心を熱くした…


 しかしながら、当人は、そうではなかったようだ…


 無言で、レジの店員に、自分の買った商品を手渡して、それを、自動レジの会計で、すませた…


 が、


 その顔は、別に、機嫌が、良くも、悪くも、なかった…


 ただ、淡々と、会計をすませたに、過ぎなかった…


 そして、レジの店員から、商品を受け取って、店を出ようとした…


 そのときに、偶然、私に、ぶつかりそうに、なった…


 私が、並んだ列から、少しはずれていたのが、原因だった…


 今回の騒動が、列の後方では、見づらかったので、列から、少し、はみ出したのだ…


 が、


 その列に、まさか、そのオジサンが、来るとは、思わなかった…


 普通は、誰もが、違う、通路から、店を出るのが、普通だからだ…


 あるいは、私の並ぶ列にある棚に、オジサンが、買い忘れた商品があったのかも、しれない…


 が、


 いずれにしても、私の近くに、オジサンが、近付いてきて、私にぶつかりそうになった…


 私は、驚いたが、それは、オジサンも、同じだったようだ…


 さすがに、ぶつかることは、なかったが、互いに、


 「…すいません…」


 と、詫びた…


 しかも、ほぼ、同時に、詫びた…


 声を出すのが、ほぼ、いっしょだった…


 オジサンは、私に頭を下げ、店を出て行った…


 私は、その後ろ姿を見送った後、自分の持った、おーいお茶の濃い味の会計を済ませて、店を出た…


 そして、店の前で、おーいお茶の濃い味のボトルのキャップを開けて、勢いよく、飲んだ…


 …おいしい!…


 …実に、おいしかった!…


 やはり、もっと、早く、なにか、飲み物を飲めば、良かった…


 そうも、思った…


 ずっと、以前、聞いたのだが、脳梗塞の予防では、カラダが、水分を欲する前に、飲むのが、理想だと、聞いたことがある…


 カラダが、水分を欲する前に、先んじて、飲むというのは、どういうことかと、冷静になれば、考えるが、そのときは、考えなかった…


 つまりは、定期的に、飲めということなのかも、しれない…


 カラダが、水分を欲する前に、飲めというのは、そういうことかも、しれない…


 冷静に、考えると、そういうことになる…


 なぜなら、カラダは、まだ、水分を要求していない…


 にもかかわらず、その前に、水分をカラダに、与えなさいということは、そう考えるしか、ないからだ…


 私は、おーいお茶の濃い味を飲みながら、思った…


 そして、ボトルの三分の一ぐらい飲んだ後、キャップを閉めて、店から、歩いて、出ようとした…


 その私の視界に、さっきのオジサンが、目に入った…


 私は、またも、そのオジサンに、ペコリと、軽く頭を下げた…


 私が、頭を下げるものだから、そのオジサンも、私に応じるように、私に頭を下げた…


 私は、そのオジサンの近くに行った…


 ちょうど、私の歩く方向が、オジサンの立つ場所だったからだ…


 オジサンは、私が、近くに、来るのを、見て、


 「…さっき、見たときも、随分、美人の方だなと、思いましたが、近くで、見ると、一層、美人ですね…」


 と、言った…


 私は、驚いた…


 さすがに、普通のオジサンに、そんなことを、言われるとは、おおげさに言えば、夢にも、思っていなかったからだ(苦笑)…


 それに、このオジサンに限らず、私に、正面切って、


 「…お美しい…」


 とか、


 「…美人ですね…」


 と、言われることも、めっきり減った…


 一番の理由は、会社を辞めて、ひとと接する機会が、減ったのが、原因だが、ひょっとしたら、私も、歳を取って、依然に比べ、容姿が、衰えたのも、原因かも、しれない…


 自分では、気付かないが、そうかもしれない…


 認めたくないが、その可能性が高い…


 まあ、もっとも、日本人は、シャイと言えば、いいのか、たとえ、相手が、美人でも、面と向かって、


 「…ずいぶん、おキレですね…」


 とか、


 「…美人ですね…」


 とか、いうひとは、少ない…


 そのせいかも、しれない…


 そして、そう、考えると、このオジサンは、希少…


 希少な部類のひとかも、しれないと、思った…


 そして、私が、そんなことを、考えていると、オジサンが、続けて、


 「…でも、さっきは、良かったな…」


 と、突然、言った…


 …良かった?…


 …なにが、良かったんだろ?…


 私は、考えた…


 すると、オジサンは、まるで、答え合わせをするように、


 「…さっき、あの子供に、お金を、与えたことですよ…たった百円で、美人の前で、いいところを、見せられた…」


 と、言って、笑った…


 実に、楽しそうに、笑った…


 私は、なんて、返答をしていいのか、わからなかった…


 それゆえ、黙って、オジサンの顔を見た…


 ただ、見た…


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。