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寿綾乃という女 第4部  作者: トモサン


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112/225

寿綾乃という女 第4部 112

 五井北東家当主、団郁馬…


 その存在は、謎だった…


 文字通り、謎だった…


 が、


 私は、まもなく、彼と、邂逅した…


 邂逅=偶然、出会ったという言葉が、ふさわしい…


 実に、ふさわしかった…


 なぜなら、彼、団郁馬との出会いは、私が、外出したときに、偶然、出会った…


 いや、


 偶然では、ないかも、しれない…


 おそらく、必然…


 必然だった…


 以前も、書いたが、私は、今、ウオーキングをしている…


 朝、自宅から出て、近所をウオーキングしている…


 それは、私が、脳梗塞で、倒れたから…


 脳梗塞で、倒れた後、病院に、担ぎ込まれ、そこで、主治医のセンセイから、


 「…寿さん、運動しなさい…」


 と、言われたからだ…


 「…運動…ですか?…」


 私は、キョトンとして、答えた…


 正直、私は、運動が、苦手…


 カラダを動かすのが、得意ではない…


 それゆえ、基本、インドア派…


 家で、ゴロゴロしているのが、好きだ…


 だから、突然、


 「…運動…」


 と、言われて、ビビった…


 カラダを動かすのが、得意では、ない人間から、すれば、当たり前だった…


 老若男女問わず、カラダを動かすのが、苦手な人間に、


 「…運動しろ!…」


 と、言われれば、当然、困惑する…


 私も例外では、なかった…


 私、寿綾乃も、例外ではなかった…


 それゆえ、戸惑っていると、センセイが、


 「…寿さん、そんなに、深刻に、考えないで、下さい…」


 と、笑いながら、言った…


 私の不安を払拭するように、わざと、笑っていった…


 「…運動といっても、たいしたことじゃない…」


 「…たいしたことじゃない?…どういうことですか?…」


 「…ほら、要するに、脳梗塞を予防するには、カラダを動かせばいい…」


 「…カラダを動かす?…」


 「…脳梗塞は、大半が、脳の血管が、詰まることで、引き起こされます…寿さんも、例外では、ありません…」


 「…」


 「…そして、なぜ、脳の血管が詰まるか、これは、やはり、血液が、ドロドロしているからです…」


 「…血液が、ドロドロしているって?…」


 「…要するに、下水道じゃないですけれど、ヘドロを、想像してください…」


 「…ヘドロ…」


 いきなり、言われて、驚いた…


 ヘドロなんて、言葉、あまり、使わないからだ…


 もちろん、意味はわかる…


 が、


 普段、あまり使わない言葉だ…


 それゆえ、私が、絶句していると、センセイが、


 「…寿さんの血液が、そのような状態になってたんです…」


 と、告げた…


 真顔で、告げた…


 私は驚いたが、さすがに、それは、言葉にできない…


 なにしろ、私は、まだ、32歳…


 33歳にも、なっていない…


 脳梗塞という言葉にも、驚いたが、私の年齢で、まるで、七十や、八十のおじいさん、おばあさんのように、言われたのは、もっと、驚いた…


 思わず、


 「…この若さで…」


 と、言ってしまった…


 つい、口に出して、しまった…


 センセイは、すぐに、反応した…


 「…若さは、関係ありませんよ…」


 と、即座に、反応した…


 「…二十代でも、三十代でも、脳梗塞を発症するひともいます…ただ、数が、少ないだけです…」


 「…数が、少ないだけ?…」


 「…そうです…」


 その言葉に、唖然とした…


 なにしろ、脳梗塞だ…


 普通なら、おじいちゃん、おばあちゃんが、かかる病気だ…


 それを、まだ32歳の私が、なった…


 これに、ショックを覚えるなと、言うのが、無理…


 無理だった…


 そして、私が唖然としていると、


 「…血液が、ドロドロする一番の理由は、カラダを動かさないからです…」


 と、センセイが、告げた…


 「…カラダを動かさないって?…」


 「…カラダを動かせば、カラダの中の血液が、循環します…要するに、血液の流れが、良くなります…」


 「…血液の流れ…ですか?…」


 「…川を見れば、わかるでしょ? 川の流れが、あまりにも、ゆっくりだと、川が、濁りがちです。流れが、それなりになると、濁りが、少なくなる…それと、一緒です…」


 「…川の流れと一緒?…」


 「…そうです…ですから、川が、うまく流れるように、カラダの中の血管の中の血液が、うまく流れるようにする…それが、運動なんです…」


 「…運動?…」


 「…と言っても、おおげさに、考える必要は、ありません…例えば、椅子に座ったままなら、腕を動かせば、いい…」


 「…腕…ですか?…」


 「…ほら、こうして、腕をグルグル動かすだけでいい…」


 センセイが、腕を、回して、実演して見せた…


 「…それだけで、カラダの中の血液が、循環する…うまく、流れるように、なる…」


 「…」


 「…例えば、家の中にいて、なにも運動しなくても、誰もが、トイレに行くでしょ?…」


 「…ハイ…」


 「…それだけでも、いい…トイレまで、歩きますから…それだけで、カラダを動かしたことになる…」


 「…」


 「…でも、一番、いいのは、散歩です…」


 「…散歩?…」


 いきなり、言われて、意味がわからなかった…


 それゆえ、私が、ポカンとしていると、


 「…今では、ウオーキングと言った方が、いいのかな…」


 と、センセイが、訂正した…


 「…とにかく、歩く…そうすれば、カラダの中の血が、動く…一か所に、とどまらない…」


 「…」


 「…今の時代、若い方でも、ウオーキングをされる方も、結構いらっしゃる…これは、ウオーキングが、一番安上がりで、効果も、大きいからです…」


 センセイが、言った…


 それゆえ、私も、そうすることにした…


 ウオーキングをすることにした…


 そして、それは、当然ながら、午前中…


 ホントは、朝、日が差したと同時に、家を出て、近所を、ウオーキングするのが、いい…


 しかしながら、それでは、しんどい…


 それゆえ、朝、朝食を食べ終えてから、ふらりと、近所を散歩する…


 そういうことにした…


 そして、以前は、その流れで、あの諏訪野昭子とあった…


 五井家から、追放された、伸明の母親とあった…


 私は、今、それを、思い出した…


 思い出したのだ…


 そして、それを、考えると、自然と、あの五井家になにが、起こったのか?


 それを、考えた…


 五井を仕切っていた、女帝の諏訪野和子が、倒れ、おそらく、それゆえ、和子の双子の姉の昭子が、戻ってきた…


 一度は、五井家を追放された昭子が、戻ってきた…


 そして、伸明の縁談…


 五井の女帝、諏訪野和子が倒れたことで、その庇護の元にあった当主の伸明に、縁談が、持ち込まれた…


 五井西家から、持ち込まれた…


 五井西家の当主は、西家の血を引く、あのハルカと、伸明を結婚させることで、本家と、繋がろうとしている…


 今、五井本家を支えるのは、東家…


 和子の出身の東家だ…


 それは、和子の双子の姉である、伸明の母である、昭子が、五井前当主、建造と結婚したから…


 その流れで、現在も、五井本家は、実質、分家の東家が、牛耳っている…


 が、


 当然、他家は、それを、見て、面白くは、ないだろう…


 すでに、何度も説明したように、五井家は、本家を頂点として、東西南北の四つの分家が、その下にある…


 しかしながら、何度も説明するように、今は、事実上、東家が、本家を牛耳っている…


 当然、五井の東西南北の四つの分家の中で、東家を除いた、他の三家は、面白いはずはない…


 なぜなら、東西南北の四つの分家は、対等…


 五井家の家格では、対等なのだから…


 しかしながら、今は、東家の力が、突出している…


 事実上、本家を乗っ取っている…


 これを、見て、他の三家が、面白いはずがない…


 それゆえ、東家出身の和子が、倒れたことを、これ幸いと、西家が、伸明の縁談を仕掛けた…


 自分と、同じ、西家の血を引く、五井記念病院の私の主治医の長谷川センセイの妹のハルカを連れてきて、強引に伸明に、見合いをセッティングした…


 和子という後ろ盾を、失った、伸明は、縁談を断れない…


 それを、見越して、伸明に縁談を仕掛けた…


 もし、伸明が、ハルカと、結婚すれば、西家は、本家と繋がれる…


 それは、ハッキリ言えば、今の東家と同じ…


 東家に代わって、本家を、牛耳れると、判断したからだ…


 なにより、あのハルカが、伸明と結婚して、子供が、生まれれば、その子供が、次の当主となる…


 女の場合は、どうかわからないが、男の場合は、間違いなく、次の当主に、なるだろう…


 そうなれば、あの西家夫妻は、その当主の祖父母の位置に、匹敵することになる…


 いわば、日本の歴史で、言えば、平安時代の藤原氏と、いっしょ…


 自分の娘たちを、天皇の后に送り込んで、その妃の産んだ、子供を、次の天皇にする…


 そうなれば、自分は、天皇の祖父…


 天皇の祖父だから、巨大な権力を握れるからだ…


 それを、同じことを、あの西家夫妻は、狙ったのだろう…


 が、


 西家夫妻の立場に立てば、これも、当たり前のこと…


 伸明とハルカが、結婚して、子供を、産めば、自分が、その後ろ盾となり、権力を得る…


 これは、当たり前のことだった…


 現に、東家は、それを、実践している…


 東家は、当時、昭子と和子の双子の姉妹を、本家の建造、義春兄弟と結婚させた…


 それゆえ、東家は、現在の地位を得た…


 事実上、本家を乗っ取ることが、できた…


 が、


 他家が、それを、しなかったのは、単純に、子供が、いなかったから…


 まだ独身で、若かった建造、義春兄弟と、結婚するのに、ふさわしい、適齢期の女性が、いなかったから…


 それに、尽きると、以前、聞いた…


 たしか、マミさんが、誰かに、聞いた…


 が、


 正直、誰に聞いたのかは、思い出せない…


 なぜなら、私にとっては、ハッキリ言って、どうでもいいこと…


 私には、なんの関係もないことだからだ(笑)…


 だから、忘れた…


 誰に、聞いたか、忘れた…


 私は、今、ウオーキングをしている…


 自宅近くを、ゆっくりと、ウオーキング=散歩をしている…


 にもかかわらず、心の中では、つい、五井家のことを、考えてしまう…


 自宅に閉じ籠っているときと、同じく、五井家のことを、考えてしまう…


 そして、そこまで、考えて、あらためて、あの西家夫妻の野望は、失敗したと、思った…


 あの西家夫妻の野望は。潰えたと思った…


 なぜなら、西家夫妻が、伸明に紹介した、あのハルカは、ナオキと、結婚すると、発表したからだ…


 もちろん、私は、このまま、ナオキと、ハルカが、結婚するとは、考えてない…


 これっぽっちも、考えてない…


 が、


 少なくとも、これで、あのハルカが、伸明と結婚することは、なくなっただろう…


 そう、見るのが、普通だ…


 そう、考えるが、普通だ…


 と、そこまで、考えたときに、ふと、喉が、渇いたことに、気付いた…


 喉の渇きは、脳梗塞には、大敵…


 脳梗塞は、血液が、脳の中の血管を詰まらせることで、起きる病気…


 脳の中の血管を詰まらせないことの一つは、何度も言うように、運動することだ…


 運動して、極力、カラダを動かすことだ…


 カラダを動かすことで、カラダの中の血液の巡りが良くなるからだ…


 そして、もう一つ、大切なこと…


 それは、まめに、水分を摂ること…


 血液の流れをよくするには、まめに水分を摂って、血液を薄めることが、必要だからだ…


 私は、今、それを、思い出した…


 そして、それを、思い出して、慌てて、私は、近くのコンビニを見つけると、入った…


 なにか、飲み物を、買うためだ…


 ポカリスエットでも、アクエリアスでも、いい…


 おーいお茶でも、麦茶でも、なんでもいい…


 渇いた喉を潤す飲み物が、欲しかった…


 それゆえ、私は、ふと、目に留まったコンビニに入った…


 後に、私の運命を、変えることになった、コンビニに、入った…


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