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寿綾乃という女 第4部  作者: トモサン


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111/225

寿綾乃という女 第4部 111

 が、


 気分は、よくなった…


 ナオキから、電話があったから、気分は、良くなった…


 ウソか、ホントか、現時点では、わからないが、ナオキの結婚が、ただのパフォーマンスだと、わかったことで、気分が、よくなった…


 まさか、このまま、ナオキは、あのハルカとは、結婚はしないだろう…


 私は、思った…


 私は、考えた…


 まさか、あのナオキが、本気で、ハルカと、結婚は、しないだろう…


 あの結婚会見は、パフォーマンス…


 パフォーマンスに過ぎない…


 誰に向かってのパフォーマンスなのか、わからなかったが、それでも、パフォーマンスに過ぎない…


 私は、そう、信じることにした…


 固く、そう信じることにした(笑)…


 すると、どうだ?


 病は、気からの言葉通り、私の体調も、若干、良くなった気がした…


 あくまで、私の感覚だが、少しは、良くなった気がした…


 我ながら、現金…


 実に、現金なものだ(笑)…


 こんなことで、体調が、良くなるなんて…


 自分でも、自分に笑ってしまう…


 が、


 そういうものかも、しれない…


 誰もが、そういうものかも、しれない…


 それまで、どん底に、いた気分であっても、今回のように、簡単なことで、気分が、良くなる…


 気分が、一新する…


 そんなことが、ある…


 稀にある…


 一番、わかりやすい例が、やはり、友達や、恋人など、身近な人間…


 身近な友人や、恋人が、


 「…アンタ、大変だったものね…」


 と、一言、言ってくれれば、嬉しくなる…


 そんなときが、ある…


 自分の苦境を間近に、見ていて、気付いてくれたんだなと、知って、嬉しくなるときが、ある…


 だから、今で、言えば、マミさんにでも、


 「…寿さん、良かったね…」


 と、言われれば、嬉しくなる…


 私の苦境をわかってくれたと、思って、嬉しくなる…


 正直、私は、友達が少ない…


 田舎から、都会に出てきた時点で、過去を捨てた…


 過去を捨てたと、言うと、まるで、ドラマの主人公のようで、カッコイイが、それは、要するに、田舎時代の友人や知人と、交流しないだけ…


 ただ、それだけだ…


 そして、FK興産の同僚…


 これも、ナオキと出会ってから、十五年だから、会社歴も、同じくらい…


 にもかかわらず、親しい同僚は、一人も、いない…


 もちろん、会社にいたときは、いた…


 誰もが、同じだが、会社でも、学校でも、親しい同僚や友人は、数人は、いた…


 が、


 それは、会社や学校でのこと…


 会社や学校では、昼休みとか、仕事の休憩中に仲良く話す、同僚や、友人は、いるが、それが、プライベートまでは、及ばない…


 ハッキリ言えば、プライベートでは、交流が、一切ない…


 あくまで、会社や、学校という場所で、仲良く話すだけの間柄だからだ…


 もっとも、これが、十代や、二十代前半の若いコならば、違うだろう…


 会社や、学校だけでなく、プライベートでも、どこかに、いっしょに、遊びに行ったに違いない…


 が、


 私には、それがなかった…


 なぜ、なかったのか?


 それは、ジュン君の面倒を見ていたから…


 会社や、学校を終えれば、家で、幼いジュン君の面倒を見ていたからだ…


 ジュン君の母親のユリコは、突然、失踪した…


 残されたジュン君の面倒を見る人間は、私しか、いなかったからだ…


 父親のナオキは、仕事で、忙しい…


 だから、言わば、私は、家政婦代わりで、忙しかった…


 それゆえ、学校が、終われば、いっしょに、どこかに、行くような友達は、できなかった…


 あくまで、友達でいるのは、学校だけ…


 プライベートでは、一切の交流がない…


 そういうことだった…


 そして、それは、会社でも、同じ…


 同じだった…


 仕事帰りに、いっしょに、居酒屋で、飲んだり、カラオケをする同僚は、いたが、それだけ…


 やはり、学校のときと同様、プライベートで、交流することは、なかった…


 これは、やはり、家にジュン君が、いたことが、大きい…


 ジュン君が、中学生にでもなれば、なにも、私が家に帰ってからも、ジュン君の面倒を見る必要は、なかったのだが、ジュン君は、頼りない…


 おまけに、すぐに、私を頼る(苦笑)…


 だから、基本、いくら、会社で、親しい同僚でも、プライベートで、仲良くなることは、なかった…


 私のプライベートは、常にジュン君を優先していからだ…


 が、


 私は、今、32歳…


 さすがに、この歳になると、かつては、親しかった学校の友人や、会社の同僚と、プライベートで、仲良く、どこかに行く、人間は、いない…


 滅多にいない…


 そして、それは、歳を取れば、取るほど、そう…


 歳を取れば、取るほど、交流がなくなる…


 それが、普通…


 普通だ…


 例えば、同じ会社に勤めていても、二十代の独身同士なら、男同士でも、女同士でも、休みに、どこかに、遊びに行こうか、という話になるが、これが、四十代や、五十代になれば、まずは、ならない…


 例え、独身同士でも、ならない…


 まずは、体力的にキツイ…


 貴重な休みを潰して、どこかに、遊びにいくくらいなら、家で、ダラダラしていた方が、いい…


 その方が、疲れないからだ…


 そして、もう一つは、金銭的な理由…


 誰もが、高給取りでは、決してないので、お金を使いたくない…


 無駄にお金を、使いたくない…

 

 それゆえ、誰もが、歳を取れば、取るほど、付き合いが、悪くなる…


 遊んで使ったお金を貯金するか、結婚していれば、子供たちのために、使った方が、有意義だからだ…


 まあ、そんな理由で、歳を取れば、取るほど、友人や、知人の数は、誰もが、少なくなる…


 会社なんて、辞めてしまえば、一瞬で、それまでの同僚とは、縁が、切れる…


 仮に、会社を辞めた後は、何度か、いっしょに飲んでも、それが、続かないのが、大半…


 一年も経たないで、なんの関係もなくなる(爆笑)…


 長々と書いたが、つまりは、誰もが、歳を取れば、取るほど、プライベートで、仲良くする友人、知人は、いないということだ…


 もちろん、この寿綾乃も、例外ではない…


 当然、当てはまる…


 そして、私の気性…


 それは、群れるのが、嫌だということだ…


 女は、学校でも、会社でも、群れるのが、好きだが、私は、苦手…


 基本、相手に会わせるのが、苦手だからだ…


 独立独歩というか…


 基本、ひとりで、動く…


 そして、それは、あのマミさんも、同じ…


 同じだ…


 二人とも、群れるのが、嫌い…


 無理に相手に合わせてまで、付き合うのが、苦手だからだ…


 それゆえ、私とマミさんは、気が合う…


 が、


 それは、裏を返せば、我がまま…


 単なる我がままなのかも、しれない…


 しかし、そう考えると、少し、おかしい…


 なにが、おかしいか?


 それは、マミさんが、我がままなのは、いい…


 マミさんが、我がままなのは、わかる…


 それは、マミさんが、愛人の子では、あるが、五井家前当主、建造の娘だからだ…


 それゆえ、お金には、困っていなかっただろう…


 人並み以上に、裕福だったろう…


 だから、基本、性格が、我がままになる…


 どうしても、お金があれば、自分勝手になる確率が、高いからだ…


 だから、我がままになる…


 が、


 私に、これは、当てはまらない…


 なぜなら、私の子供時代は、裕福とは、真逆…


 真逆に、お金に、縁がなかった(苦笑)…


 母子家庭だから、当たり前だった…


 にもかかわらず、私は、我がまま…


 わざわざ、他人と合わせるのが、嫌い…


 これは、一体、どういうことだろう…


 これは、私が、美人だから…


 美人に生まれたから、調子に乗っている?


 それも、あるかも、しれない…


 が、


 その可能性を除けば、やはり、それは、血…


 生まれついての、血=性格なのかも、しれない…


 私も、マミさんも、ただ、生まれつき、他人と、無理に、合わせて生きるのが、嫌なのかも、しれない…


 そして、幸いなことに、私も、マミさんも、無理に、他人に、合わせて生きる生き方を、しないで、生きて来た…


 これは、幸運…


 まさに、幸運だった…

 

 誰もが、他人に合わせなければ、生きていけない…


 この世の中に、いるのは、自分だけでは、ないからだ…


 だから、当然、私も、マミさんも、他人に合わせて生きてきた部分もある…


 が、


 無理に他人に合わせてまで、生きてきた部分が、少ない…


 それが、真実だろう…

 

 だから、幸運…


 これまで、幸運だったのだ…


 私は、思った…


 私は、考えた…


 が、


 その幸運が、いつまで、続くか、わからない…


 私もマミさんも、わからない…


 まあ、もっとも、私は、癌患者…


 だから、もう少しは、この幸運が、続くかも、しれない…


 ふと、そう、思った…


 なぜ、そう、思ったのか?


 それは、ひとが、ひとりで、一生、持てる幸運の量は、決まっている…


 誰かが、そう、言ったからだ…


 そして、それを、私に当てはめれば、美人に生まれたのは、プラスだが、癌で、苦しんでいるのは、マイナス…


 ゆえに、トータルで、それほど、幸運では、ないと、いうこと…


 だったら、今の幸運が、まだ、続くのでは、ないか?


 そう、考えた…


 そう、自分勝手に、考えた…


 が、


 果たして、そうだろうか?


 これは、もう少し、生きてみなければ、わからない…


 少なくとも、もう数年は、生きてみなければ、わからない…


 また、それとは、真逆…


 相反する思いだが、私は、正直、自分が、長生きできるなんて、これっぽっちも思ったことがない…


 なにしろ、今、32歳で、癌に苦しんでいる…


 症状は、軽いが、苦しんでいる…


 そんな女が、七十や、八十まで、生きて、孫の顔を見れるかと、問われれば、大きな疑問…


 疑問だ…


 後、何年、生きるか、わからないのが、正直な気持ち…


 偽らざる正直な、気持ちだ…


 その一方で、伸明との結婚を、夢見ている…


 自分でも、無理だと、思っていても、どこかで、夢見ている…


 そして、相手が伸明ではなくても、子供を産みたい…


 女に生まれたのだから、子供を、産みたい…


 そんな思いが、ある…


 実に、矛盾している…


 しかしながら、矛盾極まりないが、事実…


 正直な、気持ちだ…


 そして、これは、誰もが、同じ…


 同じなのかも、しれない…


 一方では、無理と、考え、もう一方では、もしかして、と、考える…


 それは、ちょうど、宝くじを、買うのと、同じ…


 一千万円や、一億円は、当たることは、ないと、思っていても、もしかしたら、当たるかも、しれない…


 そう、思うから、誰もが、宝くじを買う…


 それと、似ている…


 無理と、思ったことも、もう一方では、もしかしたら、できるかも、しれないと、考える…


 そんな感じだ…


 相変わらず、バカバカしい…


 実に、バカバカしいことを、考える女…


 そう、思った…


 自分自身を、そう、思った…


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