寿綾乃という女 第4部 108
ナオキとハルカの結婚会見は、世間の度肝を抜いた…
なんと、言っても、ナオキは、週一で、テレビのコメンテーターをしていて、それなりに、知名度がある…
また、長身で、イケメンであることが、なにより、大きい…
テレビでも、ネットでも、同じだが、イケメンや美人は、強い…
ルックスが、良いものは、強い…
それは、簡単に、相手に、ルックスが良いことが、わかりやすいからだろう…
これが、頭が良かったり、お金持ちだったりしても、一目見ても、普通は、わからない…
例えば、ポルシェやフェラーリに乗ってくれば、お金持ちだと、すぐに、わかるが、それは、例外…
普通に、街中を歩いていて、すぐに、お金持ちだと、わかる人間は、いない…
頭が、良くても、同じ…
歩いているひとを、見て、一目で、誰それが、頭がいいと、見抜くことが、できるものが、世の中に、いるはずがないからだ…
が、
ルックスは、わかる…
誰が、見ても、一目で、わかる…
それと、誠実か、否か…
ユーチューバーを見ていれば、わかるが、人気があるユーチューバーは、一目見て、誠実そうな人間が、多い…
ルックスも、もちろん、良いに限るが、誰もが、ずる賢そうな人間を見て、好きになるひとは、いない…
それと、同じだ…
要するに、なにを、言いたいかと、言えば、藤原ナオキは、ルックスも良く、人間性も、誠実そうで、好感を持てる…
だから、人気がある…
そう、言いたいのだ…
そして、
そして、だ…
ホントなら、今、会社は、どうなっているか?
ナオキが、社長を務めるFK興産の社内は、どうなっているか?
知りたかった…
社長のナオキは、広告塔…
FK興産の一番の広告塔だ…
ハッキリ言えば、長身のイケメンで、しかも、独身の男が、会社を率いているのが、ウリ…
FK興産最大のウリだからだ…
そのナオキが結婚する…
会社では、どういう反応があるのだろうか?
気になる…
ずばり、気になる…
が、
それを、聞くことは、できない…
なぜなら、私は、すでに、FK興産を退社している…
会社を辞めている…
現実には、FK興産の非常勤の取締役に就任しているが、その肩書で、出社したことは、一度もない…
非常勤の取締役という肩書は、ナオキが、私にお金を与えるため…
FK興産が、五井と提携して、もしかしたら、五井に乗っ取られるかも、しれない…
それを、危惧したナオキが、いち早く、私を非常勤の取締役に任命した…
五井と、提携する前に、私を非常勤の取締役にすることで、仮に、五井と提携した後であれば、反対されるかも、しれない…
それを、防ぐために、事前に私を取締役に抜擢したのだ…
そうすれば、私にお金を、与えられるからだ…
給与という名目で、合法的に、お金を与えられるからだ…
そして、私のプライド…
この寿綾乃のプライド…
私は、藤原ナオキの愛人でも、なんでもないのだから、仮に、私にナオキが、生活費を渡すとしても、私が、受け取らない…
そう、判断したと、思うからだ…
会社を辞め、無職の私に、お金を渡す方法…
それが、私を、FK興産の非常勤の取締役にすることだった…
非常勤の取締役だから、出社しなくても良い…
にもかかわらず、私に、非常勤の取締役という名目で、お金を与えられる…
まさに、絶好のアイデアだったと、思う…
考えれば、考えるほど、思う(笑)…
まあ、話が少々脱線したが、要するに、今、社長のナオキの結婚で、社内が、どういう反応を示しているか、知りたいが、私には、今、それを、知る手段がない…
ナオキといっしょに、十五年も、会社を支えてきたんだから、会社に知り合いが、いっぱいいるだろうと、思いがちだが、さにあらず…
会社を辞めてしまえば、どんなに親しい同僚でも、大抵は、一瞬で、縁が切れる…
世の中、そんなものだ(笑)…
そんなわけだから、今さら、私がFK興産に電話をかけたところで、話をする相手も、いなかった…
仮に、私が、電話をしたところで、他人行儀な対応をされるのは、目に見えている…
なにより、私は、会社では、社長のナオキの愛人と、思われていた…
そんなナオキの愛人と思われていた私が、会社に電話をかければ、
「…きっと、社長に捨てられたから、電話をかけてきたのよ…」
と、言われるのが、オチ…
誰もが、わかるオチだ(爆笑)…
それゆえ、さすがに、会社に電話をかける気が、起きない…
当たり前のことだ…
ただ、やはり、気になる…
ナオキと、あのハルカの結婚は、気になる…
果たして、二人は、本当に、結婚するのだろうか?
私は、考えた…
いくらなんでも、早過ぎる…
早過ぎるのだ…
おそらく、出会って、数日で、結婚を決めたに違いない…
いくら、なんでも、早過ぎる…
それでは、結婚を決めるには、早過ぎる…
あのハルカは、いいだろう…
どうして、いいのか?
ハルカから、見れば、ナオキは、オジサン…
なにしろ、ハルカは、二十代後半…
三十歳にも、なっていない…
かたや、ナオキは、四十歳…
だから、歳が、一回り上だ…
が、
ナオキは、お金持ち…
お金持ちだ…
一代で、会社を、立ち上げたお金持ちだ…
それは、五井家当主である、伸明から、見れば、吹けば飛ぶようなチンケなお金持ちだが、世間の基準から、すれば、お金持ち…
十分に、お金持ちだ…
そのお金持ちのナオキと結婚することは、一般の基準で言えば、シンデレラ…
まさに、現代のシンデレラだ…
ナオキの資産は、百億を超える…
私も正式には、知らないが、創業者利益というか…
個人が、会社を立ち上げて、その会社が、それなりに、成長したから、上場する…
すると、公開した株に、値がつく…
一株いくらと、値段がつく…
当然、創業者である、藤原ナオキは、会社の株の大半を持っている…
だから、その株のおかげで、百億を超える資産を持っていることになる…
株の価値が、莫大だからだ…
いわば、マジック…
マジック=手品だ…
現代の錬金マジックだ…
だから、ナオキは、百億を超える資産を持っているが、それは、数字の上だけ…
なぜ、数字の上だけなのか?
それは、その百億を超える現金を、手にするには、株をすべて、売らなければ、ならないからだ…
そして、もし、株を全部手放したなら、ナオキは、FK興産の社長では、いられなくなる…
創業社長だから、社長の地位でいられる…
オーナー企業だから、株を持っているから、社長でいられる…
いわゆる、サラリーマン企業ではない…
株を持っているから、社長でいられる…
これが、株を持たなければ、すぐにナオキは、社長の座を追われるだろう…
話が、長くなったが、要するに、ナオキは、お金持ち…
お金持ちだ…
そのナオキと結婚できるのだから、あのハルカは、おおげさに言えば、シンデレラ…
まさに、現代のシンデレラだ…
が、
それは、ハルカの立場から、すれば、のこと…
ナオキの立場から、すれば、どうだろう?
全然、別の光景が、見える…
今も、言ったように、ナオキは、お金持ち…
お金持ちだ…
いくら、若くて、キレイでも、ハルカと同じくらい、あるいは、ハルカ以上に、若くて、キレイな女と結婚できるはずだ…
そして、出会いのチャンスもあるはずだ…
が、
なのに、なぜ、ハルカなのだろう?
なぜ、こんなにも、短期間で、ハルカと結婚を決めたのだろう…
疑問がある…
いや、
だから、マミさんは、ナオキの結婚の理由を、
…寿さんを、守るため…
と、一言で、言った…
一言で、断言した…
ナオキが、ハルカと結婚することで、私は、フリーになる…
私は、フリー…
誰と、付き合ってもいい…
誰と、結婚してもいい…
当然、伸明と結婚してもいい…
それゆえ、ナオキは、ハルカと結婚した…
出会って、数日で、結婚した…
そう、考えれば、納得する…
そう、考えれば、辻褄が合う…
なぜ、ナオキが、こんなにも、短時間で、あのハルカと結婚したのか?
その理由に納得する…
が、
本当に、そうだろうか?
正直、イマイチ、納得ができない…
そんなに、短期間で、ナオキは、結婚を決めるものだろうか?
考える…
考えるのだ…
まして、ナオキは、お金持ち…
歳も取っている…
四十歳と歳を取っている…
もはや、若くもない…
それゆえ、普通は、結婚に慎重になる…
なぜなら、結婚に失敗して、離婚すれば、ハルカから、慰謝料を請求されるからだ…
お金持ちだから、莫大な慰謝料を請求されるからだ…
それが、わかっているから、結婚に慎重になる…
お金持ちは、皆、結婚に慎重になるのだ…
私は、考えた…
私は、思った…
そして、そんなことを、考えているときに、電話が、鳴った…
珍しく、家の電話が鳴った…
イマドキ、家の固定電話が、鳴るのは、珍しい…
いや、
固定電話だけでは、ない…
スマホを、含め、電話が鳴るのは、珍しい…
なにしろ、私は、今、無職…
無職だ…
働いていない…
だから、電話が鳴るのは、珍しい…
無職ゆえに、ひとと、交流していないからだ…
だから、交流しているのは、極少数…
極めて、少数の人間だけだからだ…
そして、もしかしたら、迷惑電話…
迷惑電話かも、しれないと、思った…
イマドキは、迷惑電話が、多い…
私が、家にいて、固定電話の音が鳴れば、大抵は、迷惑電話だ…
だから、留守電にする…
電話に出なくても、よいように、留守電にする…
その方が、安全だから…
まして、私は、一人暮らし…
一人暮らしだ…
若い女の一人暮らしだ(苦笑)…
それゆえ、用心をするに、越したことは、ない…
ないのだ…
それゆえ、私は、電話に出なかった…
電話に出ないで、留守電にメッセージが、吹き込まれるのを、黙って聞いていた…
留守電にすると、電話を切るものが、大半…
基本、たいした用事がないからだ…
大抵は、商品の売り込みや、買い取り…
それも、電話番号をネットで調べれば、皆、悪徳業者…
ほぼほぼ、例外はないからだ…
それゆえ、私は、黙って聞いていた…
なんと、メッセージが、拭き決まれるのか、聞いていた…
そしたら、メッセージが、振り込まれた…
意外な人物から、メッセージが、振り込まれた…
メッセージを吹き込んだのは、ナオキ…
藤原ナオキだった…
数日前まで、私の事実上の夫と、思っていた人物からだった…




