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寿綾乃という女 第4部  作者: トモサン


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107/225

寿綾乃という女 第4部 107

 電話を切った後、私は、少しは、気分が、よくなった…


 ナオキが、私のために、ハルカと結婚する…


 そう聞いて、正直、気分が、少しは、よくなった…


 率直に、言って、まだ謎が、残った…


 が、


 それでも、マミさんの電話が来る前に比べると、格段に気分が、良くなった…


 真相は、どうあれ、ナオキが、なぜ、私を裏切ったか、わかったからだ…


 なぜ、ナオキが、私を捨てたのか?


 わかったからだ…


 それゆえ、たとえ、マミさんが、言ったことが、真実でなくとも、慰めには、なった…


 私が、ナオキに、捨てられたわけでは、なかったことが、わかったからだ…


 まあ、考えてみれば、色々あった…


 なにしろ、十五年だ…


 藤原ナオキと知り合って、十五年だ…


 だから、私に飽きたと、言われても、納得する…


 不思議なことだが、すんなり、納得する(爆笑)…


 なにしろ、ナオキと、私の関係…


 常に、私が、上で、ナオキが、下だった…


 会社では、社長と社長秘書だが、私の方が、家庭では、上だった…


 いや、


 家庭だけではない…


 たとえ、会社でも、二人だけのときは、私の方が、上だった…


 もちろん、地位では、ない…


 態度が、上だったのだ(爆笑)…


 いわゆる、鬼嫁ではないが、まあ、似たようなものだ(笑)…


 まあ、五十歩百歩、似たようなものだ…


 だから、私から、逃げ出した…


 鬼嫁から、逃げ出した…


 そういうことかも、しれない…


 が、


 その話は、違う…


 それは、違う…


 なぜ、違うのか?


 それは、ナオキの結婚相手が、あのハルカだからだ…


 だから、違う…


 私が、鬼嫁だから、私から、逃げ出したのなら、きっと、次は、おとなしい女にいくものだ…


 が、


 あのハルカは、大人しくない…


 誰が、見ても、おとなしくない…


 勝気…


 私以上に、勝気だ…


 私以上に、気が強い…


 私より、若いから、気が強い…


 そんな女と結婚するナオキが、私が、勝気だから、私から、逃げ出したとすれば、納得ができない…


 辻褄が、合わない…


 だから、正しい…


 さっき、マミさんが、私に言ったことは、正しい…


 私は、思った…


 私は、考えた…


 ナオキが、私から、逃げ出したわけではないことに、納得した…


 無理やり、納得した(爆笑)…


 が、


 しかし、だ…


 繰り返すが、あのハルカは、私以上に、気が強い…


 それゆえ、果たして、ナオキは、あのハルカと、結婚して、やっていけるのか?


 ハルカは、私とタイプが違う美人だが、美人だから、なんでもいいと、いうわけでは、あるまい(笑)…


 いや、


 もしかしたら、ナオキは、マゾ?


 マゾヒスト…


 女に、叱られるのが、嬉しい…


 私に叱られるのが、快感…


 だから、女が、私から、あのハルカに代わっても、ナオキを叱るのは、同じ…


 だから、嬉しい?


 そんなバカなことを、考えた…


 いや、


 そんなバカなことではないかも、しれない…


 会社の社長など、お偉いさんの中には、自分を叱ってくれる女が、好きな男がいる…


 少なからず、いる…


 それは、誰もが、偉くなれば、誰も、自分を叱ってくれないから…


 それゆえ、叱られるのが、嬉しい…


 そういうことだ…


 そして、歳を取ったお偉いさんの男ほど、若い女に叱られるのが、嬉しいと、聞く…


 ナオキも、そうなのだろうか?


 ふと、考えた…


 私より、若い、あのハルカと、結婚して、私同様に、いや、私以上に、激しく、叱られるのが、嬉しいのだろうか?


 そんなバカなことを、考えた…


 そんなバカなことを、真剣に考えた…


 が、


 当然、そんなバカなことを、いつまでも、考えているわけはない…


 私は、考えることを、止めにした…


 しかしながら、気分が、よくなったことは、たしか…


 たしかだった…


 以前とは、違い、気分が、よくなったことは、確かだった…


 それゆえ、お腹が、空いてきた…


 ナオキのことで、落ち込んだときは、食べる気も、起きなかった…


 当然、お腹は、空いている…


 が、


 食べる気が、起きなかった…


 ナオキの結婚のショックで、食べる気が、まったく、起きなかった…


 しかしながら、あのマミさんの電話で、ナオキの結婚のショックが、和らいだ…


 それゆえ、お腹が、空いてきた…


 食べる気が、起きて来た…


 我ながら、現金…


 実に、現金なものだ…


 冷蔵庫の前に行き、冷蔵庫の扉を開けて、中を見た…


 なにか、食べるものを探したのだ…


 やはりというか、


 食べるものは、あるにはあるが、冷食だった…


 チャーハン、ハンバーグ、焼きそば、ラーメンなど、売るほど、ある(笑)…


 カラダの調子が、悪いから、なるべく、外出しないように、買いだめしているからだ…


 別の場所には、サトーのごはんが、山済みである…


 それゆえ、冷凍ハンバーグでも、解凍して、サトーのごはんを食べようかと考えたが、止めた…


 腹は、減っているが、量は、あまり食べられそうに、ないからだ…


 それゆえ、ラーメンにした…


 冷凍ラーメンを冷蔵庫から、取り出し、コンロの上に乗せ、ガスの火をつけて、解凍することにした…


 ラーメンの方が、食べられる気がした…


 ごはんより、麺の方が、食べられる気がした…


 それゆえ、冷凍ラーメンをコンロに、乗せ、バーナーの火を点けた…


 弱火で、バーナーの火をつける…


 そして、立っていたら、疲れるので、近くで、テーブルの付属の椅子に、座り、ちゃんと、解凍できるのか、どうか、見た…


 その場から、離れて、火事にでも、なったら、大変だからだ…


 近くで、ちゃんと、ラーメンが、解凍されるのか、見ながら、考えた…


 ぼんやりと、考えた…


 ナオキのことを、考えた…


 当たり前だが、ナオキは、ここ数日、戻ってきていない…


 このマンションに、戻って来ていない…


 なにしろ、あのハルカと、突然、テレビで、結婚会見をするぐらいだ…


 さすがに、このマンションに、戻ってくることは、できないのだろう…


 私がいる、このマンションに、戻って来ることは、できないのだろう…


 まあ、ナオキは、このマンション以外に、マンションを持っている…


 このマンション以外に、自宅がある…


 だから、そちらに、戻ったのだろう…


 ここ最近、ナオキが、このマンションに戻って来たのは、私のため…


 体調を崩した私のため…


 体調を崩した私が、心配になり、このマンションに、戻って来た…


 が、


 数日、様子を見て、私が、大丈夫のようだから、もはや、このマンションに、戻ってきても、仕方がない…


 そう、思ったのだろう…


 なにしろ、十五年だ…


 ナオキと知り合って、十五年だ…


 いっしょに暮らし出して、ウン年…


 最初の数年は、いっしょに暮らしたが、まもなく、自宅から、出て行った…


 女と、遊ぶためだ…


 自宅に、私やジュン君がいては、女は、呼べない…


 だから、出て行った…


 が、


 会社では、いっしょ…


 十五年間、ずっといっしょだった…


 それゆえ、私は、ナオキを知っている…


 どんな人間か、知っている…


 藤原ナオキという男の裏も、表も、全部、知っている…


 だから、大丈夫…


 もはや、私は、ひとりでいても、大丈夫…


 そう、判断したのだろう…


 そう、考えた…


 そう、強引に考え続けた…


 そして、そんな、自分勝手なことを、考えていると、ジューと、音が、聞こえた…


 コンロの火で、解凍したラーメンの汁が、コンロに落ちたのだ…


 私は、慌てて、コンロに駆け寄り、急いで、火を止めた…


 幸い、大事には、ならなかった…


 私は、ホッとしたのも、束の間、ラーメンの状態を見た…


 急いで、見た…


 確かに、スープの量は、減ったが、問題は、ない…


 十分、食べられる…


 食べるのには、問題ない…


 それを、見届けると、再び、コンロに火をつけた…


 さっきより、弱火で、火を点けた…


 そして、大丈夫か、どうか、見届けることにした…


 コンロの前に立って、見届けることにした…


 さすがに、考え事は、しなかった…


 コンロに集中した…


 ラーメンの解凍に集中した…


 そして、まもなく、ラーメンが、出来上がった…


 無事、出来上がった…


 苦労のかいがあった…


 私は、そのラーメンをテーブルに運んで、一口食べた…


 「…熱い!…」


 思わず、叫んだ…


 さすがに、すぐに、食べるのは、早かった…


 いや、


 早過ぎた…


 「…綾乃さん、せっかちだから…」


 ナオキが、指摘する声が、聞こえてきた…


 私の頭の中に、聞こえて来た…


 「…おまけに、料理下手…」


 ナオキが、笑う…


 楽しそうに、笑う…


 「…ひとの失敗を、喜ぶんじゃない!…」


 私は叫んだ…


 心の中で、叫んだ…


 大声で、叫んだ…


 もちろん、ここにナオキは、いない…


 いるのは、私の中…


 私の頭の中に、過ぎない…


 いわる、妄想…


 妄想に、過ぎない…


 私は、思った…


 私は、考えた…


 そして、そんなバカな妄想を強引に頭の中から、追い出すことにした…


 妄想を無理やり、頭の中から、追い出して、ラーメンを食べることに、集中した…


 恐る恐る、一口食べると、まだ、熱い…


 私は、待った…


 ラーメンが、冷めるのを、待った…


 が、


 さすがに、ナオキのことは、考えなかった…


 ナオキのことを、考えるのを、極力、止めようとしたからだ…


 それよりも、あのハルカのことを、考えた…


 さっき、マミさんから、電話があったときに、


 「…あのハルカという女には、謎がある…」


 と、マミさんが、言ったからだ…


 謎?


 謎って、一体、なんだろ?


 私は、思った…


 ハルカの謎って、一体、なんだろ?


 考えた…


 当然、答えは、出ない…


 それよりも、ラーメンも、少しは、冷めただろう…


 恐る恐る、食べることにした…


 食べてみると、少しは、冷めていた…


 これなら、食べられる…


 安心して、食べられる…


 私は思った…


 私は、考えた…


 そして、考えた…


 今さらながら、考えた…


 これが、私の日常…


 美人秘書と言われた女の日常だった…


 果たして、この姿を、あの伸明が、見れば、どうだろうか?


 どう、思うだろうか?


 考えた…


 そんなバカなことを、考えた…


 考え続けた…


 当然、答えは、出ない…


 代わりに出たのは、早くラーメンを食べなければ、ラーメンが、冷めてしまうこと…


 それに、気付くと、急いで、ラーメンを食べた…


 すでに、ラーメンは、冷めて、普通に食べられる…


 まさに、食べ時…


 そして、考えた…


 この寿綾乃もまだ、32歳…


 十分、食べどきのはずだ!…


 そんなバカなことを、考えた…


 相変わらず、バカな女…


 おバカな女だった(爆笑)…


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