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寿綾乃という女 第4部  作者: トモサン


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106/225

寿綾乃という女 第4部 106

 そして、マミさんは、まずは、雑誌の対談で、ナオキに近付いた…


 マミさんは、会社の社長…


 会社を経営している…


 五井とは、関係なく、会社を経営している…


 それは、なぜか?


 それは、このマミさんが、婚外子だから…


 建造の正妻の和子の娘ではないから…


 だから、仮に、マミさんを、五井グループの企業で、雇えば、どこかから、そのことが、バレる可能性がある…


 人の口には戸が立てられないからだ…


 そして、もし、バレれば、マミさんが、傷付く…


 それを、恐れた建造は、あえて、マミさんを五井グループの企業に、入れなかった…


 金を与え、自分の会社を作らせた…


 その方が、マミさんの気性に合っているからだ…


 それゆえ、マミさんは、まずは、経営者同士の雑誌の対談という形で、ナオキに近付いた…


 が、


 それは、名目…


 本当の狙いは、私…


 私、寿綾乃…


 私が、どんな人物か、探るためだ…


 私は、ナオキのパートナー…


 公私共に、パートナーだ…


 それゆえ、ナオキに近付くことは、私に近付くことになるからだ…


 私は、それを、思い出した…


 思い出したのだ…


 そして、私が、そんなことを、考えていると、マミさんが、


 「…あのとき、雑誌で、藤原さんと、対談したでしょ?…」


 と、言ってきた…


 「…寿さん、覚えている?…」


 「…ハイ…覚えています…」


 「…だったら、話が早い…あの雑誌、東都新聞系列の雑誌だったの…」


 「…えっ?…」


 「…団家所有の東都新聞系列の雑誌だったの…」


 「…」


 「…父は、団家に頼んで、あの対談を実施したの…父が、団家、つまり、北東家になにか、頼むことは、滅多にない…それゆえ、勘のいい、北東家の当主、団郁馬は、私と藤原さんの対談の近くにいた…ホテルのロビーにいた…」


 「…えっ? ホテルのロビーにいた?…」


 「…つまりは、当然、寿さんも、あの場にいた…藤原さんの秘書として、藤原さんに付き添って、雑誌の対談に、やって来た…だから、寿さんも、おそらく、団郁馬と会っている…」


 「…私が、ですか?…」


 「…たぶん、いいえ、間違いなく、会っている…あのとき、団郁馬も、やって来たから…きっと、なにか、あると、思ってやって来たから…」


 私は、その言葉を聞いて、考えた…


 たしかに、あのとき、私もいた…


 ナオキといっしょに、いた…


 私は、社長秘書だから、社長のナオキの近くにいた…


 が、


 記憶がない…


 あの場に、誰がいたか、記憶がない…


 もちろん、あの場にいたのは、私とナオキ、それに、対談相手のマミさんの三人だけでは、ない…


 なにより、主催の雑誌社の記者がいた…


 が、


 それ以外にも、いたような…


 なにしろ、たしか、あの対談場所は、ホテルだった…


 たしか、都内のホテルだった…


 それゆえ、ホテルの目指す部屋まで行くのに、当然、大勢のひとと接する…


 仮に、対談したホテルの部屋にいなくても、ロビーで、私とナオキを見ることができる…


 なにしろ、ナオキは、有名人…


 週一で、テレビで、キャスターをしている…


 だから、顔バレしている…


 世間に顔バレしている…


 それゆえ、ナオキの顔を知っていれば、あのとき、ナオキといっしょにいた、私を見ることができる…


 私、寿綾乃を見ることが、できる…


 私は、気付いた…


 気付いたのだ…


 そして、私が、そう、思っていると、マミさんが、


 「…あのとき、私も、団郁馬が、ロビーにいたのが、気付いた…偶然、気付いた…」


 と、言った…


 次いで、


 「…だから、覚えている…すごく、覚えている…どうして、団さんが…北東家の当主が、ホテルのロビーにいたのか、ずっと謎だったから、覚えてる…」


 と、言った…


 「…きっと、あのとき、団郁馬は、藤原さんを見に、来たのだと思う…なにか、あると、思って身に来たのだと思う…だから、当然、寿さんも、見た…藤原さんと、いっしょにいるから、見た…それに、寿さんは、美人だから、目立つ…だから、余計に、印象が、深かったと、思う…」


 「…」


 「…そして、それが、今回、繋がった…」


 「…繋がった?…」


 「…たぶん、団郁馬は、ユリコさんと会って、色々、わかって来たんだと思う…」


 「…色々って?…」


 「…ユリコさんの元の夫の藤原さんの事実上のパートナーが、寿さんであること…その寿さんを、伸明さんが、好きだということ…さらには、藤原さんと、伸明さんが、仲がいいこと…そんな諸々のことが、手に取るように、わかった…なにしろ、寿さんは、伸明さんの縁談に、身内同様に、私といっしょに、縁談に同席したぐらいだから…」


 私は、それを、聞いて、


 「…」


 と、絶句した…


 たしかに、その通り…


 その通りだった…


 そして、今、聞いた、五井北東家の内情…


 具体的には、五井北東家の当主、団郁馬が、五井家先代当主、建造と対立していたこと…


 それゆえ、今、西家と、結託して、本家を揺さぶろうとしていること…


 当主の伸明を、揺さぶろうとしていることが、わかった…


 なぜ、西家と、結託したのか、わかった…


 そして、それに、ユリコが、絡んでいることが、わかった…


 わかりすぎるほど、よくわかった(苦笑)…


 たしかに、伸明の父である、建造と、因縁があれば、西家と結託して、伸明に嫌がらせしようとしたのは、わかる…


 先代当主の建造と、因縁があれば、息子である、現当主の伸明に、ちょっかいを出そうとするのは、わかる…


 そして、私。


 私、寿綾乃…


 その団郁馬が、私のことを、どこまで、わかっているか?


 私のことを、どこまで、知っているか?


 それは、わからない…


 おそらく、ユリコから、私のことは、聞いているだろう…


 が、


 しかし、私が、建造の愛した女の姪であることまでは、知らないはずだ…


 そこまでは、知らないはずだ…


 と、そこまで、考えて、ふと、ナオキのことを、思い出した…


 あのナオキが、ハルカと、結婚会見を開いたことを、思い出した…


 あれは、なぜ、ハルカと結婚したのか?


 それが、謎だった…


 それが、謎ゆえ、私は、悩んだ…


 悩み抜いた…


 が、


 そんなことは、すっかり忘れていた…


 マミさんからの電話で、忘れていた…


 今、ユリコと、団郁馬のことを、マミさんから、聞いたゆえに、忘れていた…


 すっかり、忘れていた…


 きれい、さっぱり、忘れていた(爆笑)…


 しかしながら、思い出した以上、聞かなければ、ならない…


 なぜ、ナオキが、あのハルカと結婚したのか?


 聞かなければ、ならない…


 マミさんは、なぜ、ナオキが、あのハルカと結婚したのか?


 知っているか、どうかは、わからないが、聞かなければ、ならない…


 私は、思った…


 私は、考えた…


 「…あの…マミさん…」


 と、私は、恐る恐る言った…


 これまでの話を遮らないか、心配だったからだ…


 「…なに? 寿さん?…」


 「…ナオキのことですけれど…」


 私が、聞くと、マミさんが、


 「…」


 と、絶句した…


 「…マミさんは、なぜ、ナオキが、ハルカさんと結婚したのか、わかりますか?…」


 と、私は、聞いた…


 直球で、聞いた…


 そして、沈黙があった…


 「…」


 と、沈黙があった…


 私は、躊躇いがちに、


 「…なにか、ご存じならば、教えて頂きたいんですが?…」


 と、聞いた…


 すると、だ…


 今度は、マミさんも、また、躊躇いがちに、


 「…たぶん、寿さんのためだと、思う…」


 と、言った…


 「…私のため?…」


 思わず、素っ頓狂な声を上げた…


 なぜ、ナオキが、あのハルカと、結婚するのが、私のためなのか?


 さっぱり、わからなかった…


 それゆえ、


 「…どうして、ナオキが、ハルカと結婚するのが、私のためなんですか?…」


 と、大声を出した…


 自分でも、ビックリするぐらい、大声を出した…


 すると、私のあまりの迫力に恐れをなしたか、どうかは、わからないが、


 「…落ち着いて、寿さん!…」


 と、電話の向こう側から、私をなだめるように、言ってきた…


 「…これが、落ち着いていられますか!…」


 と、大声で、返すところだが、それでは、さすがに、大人げない…


 だから、我慢して、言わなかった…


 すると、電話の向こう側から、遠慮がちに、


 「…たぶん、寿さんを守るためだと、思う…」


 と、言ってきた…


 これには、私もカチンときた…


 なぜ、ナオキが、あのハルカと、結婚することが、私を守ることなのか?


 意味が、わからなかった…


 それゆえ、今度こそ、


 「…どうして、ナオキが、ハルカと結婚することが、私を守ることなんですか!…」


 と、怒鳴ろうとしたが、その前に、マミさんが、


 「…藤原さんは、寿さんが、伸明さんと、結婚してもらいたいんだと、思う…」


 と、言った…


 「…自分が、ハルカと結婚することで、寿さんは、伸明さんと、結婚できる…たぶん、それが、狙いだと、思う…」


 「…そんな…」


 「…確信は、ない…だから、推測…推測に、過ぎない…でも、たぶん、そう…間違っていないと、思う…」


 「…」


 「…それと、もう一つ…」


 「…もう一つ、なんですか?…」


 「…あのハルカには、謎がある…」


 「…謎? どんな謎ですか?…」


 「…それは、まだ、確証がないから、言えないけれども、藤原さんは、寿さんが、嫌いになったから、あのハルカと、結婚するわけでも、なんでもないと、思う…」


 「…」


 「…それは、わかってもらいたい…」


 「…」


 「…ホントは、今日の電話…藤原さんの結婚が、メインだったんだけれども、つい、五井北東家のことが、メインになって、しまって、ゴメン…」


 「…」


 「…そんなわけだから、寿さん、心配しないで…」


 「…心配しないでって、言われても…」


 「…そうよね…寿さんの立場なら、そう言うのが、当たり前よね…でも、今は、言えないことも、あるのよ…わかって…」


 マミさんが、すまなそうに、言う…


 そう言われると、私としても、なにも、言えなかった…


 これ以上、なにも、言えなかった…


 そして、その言葉を最後に、電話を切った…


 これ以上、会話が続かなかった…


 話が、続かなかった…


 が、


 電話が、切ってから、私は、少しは、気分がよくなった…


 それが、効能…


 この電話の効能だった(爆笑)…


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