↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
66/87

<14> 5班に分かれての出陣! ブルゴス地方へ

「ブルゴス地方ですか。そりゃまた遠いっすね」


 いつものソファーの上にあぐらをかいて座り、ハックが言う。


「名前は聞いたことがありますけど、どれくらい遠いんですか?」


 メイドのエリスがダイニングテーブルに夕食を並べながらそう訊ねる。


「馬で20日ほどの距離だ」


「えっ、それはすごく遠いですね」


 エリスが驚いて言う。ポルティガから一度も出たことがないエリスにとって、馬で20日もかかる場所なんて世界の果てのように遠い。


「……あ、でも確か、ブルゴス地方は牛肉が美味しいって肉屋さんに聞いたことがあります」


 エリスは何とかいいところを探そうと、そんなふうに言う。


「旅行ってわけじゃないからな……でも、せっかくの出張だ。地方の美味しいものでも食べられたらいいんだけどな」


 ウィンは王都を守る騎士団としてずっとポルティガにいたので、遠い地方への出張などしたことがなかった。


 そういった面では楽しみなところもあった。


「でもまた随分と急な話っすね。今日言われて、明後日出発だなんてさ」


「そうだな。ヤン副隊長は、馬車や道具の手配やら、猫の手も借りたいって嘆いてたぞ」


「想像できるっすね」


 第15隊の面々のこともよく知っているハックが言う。


 今日の午後に全員が集められ、第15隊全員での明後日の出発が宣言された。全員と言っても50人を10人ずつの隊に分け、ブルゴス地方のそれぞれの町や村を目指す。


 各地で凶暴化している魔物を退治しながら進み、ブルゴス地方最大の都市であるジェイドで合流する計画だった。


「何日くらいの出張になるんですか?」


 エリスが不安気に訊ねる。


「それが正確にはまだ分からないんだ。魔物の発生がどの程度かによるしな」


「魔物なら、ウィン様の得意分野じゃないですか。意外と早いんじゃないっすか」


 ハックが呑気に言う。


「だといいんだがな……」


 ウィンはそんな簡単にはいかないのだろうなと思う。







 翌日、ウィンは騎士館に出勤し、他の隊員たちと荷物の整理に勤しんでいた。ヤンの手配で様々な店から数多くの品物が運び込まれてくるのを、騎士隊総出で整理や仕分けをしていく。


 騎士館の庭には、馬車につける荷台などが等間隔に並べられていた。


「すごい量ね」


 エヴァが言う。


「感想はいいから、手を動かせ」


 ウィンにそう言われ、エヴァは「はいはい」と言って作業に戻る。アンナは真面目に汗を拭きながら荷物を整理し、アレンとフィオナの新人二人は、下っ端としてあちこち走り回っている。


「ブルゴス地方にいる美女との出会い……そそるねえ」


 ルカがにやにやしながら言う。


「俺たちが相手にするのは美女ではなく、魔物だよ。しかも凶暴化している」


 ウィンが言うと、「魔物に襲われる絶望を、颯爽と現れたポルト騎士団が救うなんて、最高のシチュエーションだね」とルカは悦に入っている。


「ニアは?」


 ウィンが聞くと、ルカが「会議室にいる」と答える。





 ウィンが会議室の扉を開けると、部屋の中では、ニアがブルゴス地方を含むポルト王国北東部の地図を見て嬉々として何かを書き込んでいた。


「……何をしているんだ?」


 ウィンが尋ねると、ニアはしばらくしてから手を止める。まるでスピードを出しすぎた馬が、すぐには止まれないようである。


「5つの班のジェイドまでの進行ルートを作ってる。ヤンに頼まれた」


 <地図狂い>のニアは、普段からそう口数が多い方ではないが、地図を見ているときにはなおさら口数が少なくなり、説明が短くなる。


 ウィンはすでに慣れたが、そうではない人にとっては相当な変人に見えることだろう。


「これがブルゴス地方か……結構広いな」


「ブルゴス地方は広いし遠い。ちなみに、ブルゴス地方最大の都市ジェイドは、ウェスカ砦まで馬車で5日ほどの距離。つまり、国境近く」


 ニアはそう言うと、地図の一番右上にある砦をペンで指す。


「これが<平原砦>ウェスカ砦」


「大きいな」


「帝国に対しての、実質的な最後の壁がこのウェスカ砦だから大きい。ポルト王国が誇る巨大な砦」


 ニアは淡々と説明する。


 ウィンは地図を見おろす。机の上に広げられた北東部の地図には、帝国との国境にあるヴァレンス砦とウェスカ砦まで入っていた。


 第2隊が守る帝国との国境近くの二つの砦。


「ウェスカ砦の左右は山になっているから、帝国に対しての大きな壁になっている」


 ニアはそう言って、ウェスカ砦をペンでなぞる。かなりの幅がある。


「ウェスカ砦の前は、山に囲まれた盆地でもあるウェスカ平原。もし帝国との会戦が行われるとしたらここ」


 ニアはペンで平原をなぞる。


「そこからは激しい山々に囲まれた峠になっていて、その峠を上りきったところにあるのが<山砦>のヴァレンス砦。その砦から山を反対側に降りると同じように峠道があって、その先には帝国側の砦がある」


 ニアはウェスカ砦とヴァレンス砦両方を丸で囲む。


「どっちも第2隊が守っている砦だな。〈ヴァレンス砦〉なんかに飛ばされた日には、俺は一日で逃げ出すってよく言ってたぞ」


 ポルト王国が誇る<鉄壁>の第2隊。


「うん、そう。でもまあ、今回のブルゴス地方の魔物退治とは関係ない」


 ニアはそう言うと、砦に興味を失ったように地図にペンを走らせる。


 そのとき、会議室のドアが激しい音を立てて開かれる。


「お、おい、ウィンっ!」


 ドアの前には隊員の1人が立っていて、ウィンの姿を確認すると駆け寄ってくる。


「どうした? そんなに慌てて?」


「せ、せ、聖女様が来てるっ……ウィン、お前に会いに来てるぞっ!」


 隊員は慌てた口調で、そう叫ぶのだった。






【いつまき】は、より多くの皆様に届くよう『カクヨム』様でも同時投稿しています。

お好みのプラットフォームでお楽しみください。


読んでいただきありがとうございます!

少しでも「面白い」「続きが気になる」「ウィンや第15隊を応援したい」と思っていただけましたら、画面下部の【ブックマーク登録】や【ポイント評価】、【感想】、【リアクション】などをいただけますと、執筆の大きな励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。