第9話 気絶
「僕のお母さんで、父上の妻・・・・・・妻あああああああああ」
「噓ですわよ」
フィスは間髪入れずに否定してきた。
それもかなり強めで、私のことを成三の妻には認めないという強い意志を感じた。
「噓じゃないよ、あくまで未来の話なんだから」
「えええ、本当に落とせるの、あの常時不機嫌鉄仮面を」
ランスは否定するのではなく、面白がっているように見えた。
ランスもフィスと同じで、成三のことは心底慕っているようだけど、私が成三にアプローチすることについて悪く思ってはいないようだった。
「ランス、師匠は不機嫌でも堅物でもありませんわ、ちょっと口が悪くて、笑顔が硬いだけなのよ」
「そうかなあ、僕達といる時はいつも笑顔で優しいけど」
「まあ、鳴神さん達は師匠にとって特別だからな」
特別かあ、やっぱり息子なのかな、いやでも年齢的にはあり得ないよね。
あれかな、息子みたいに思ってるってことかな。
「てっ、そんなこと話している時間じゃないでしょ、君達はここに何しに来たか分かってるよね」
「家族へのご挨拶でしたよね」
「違うでしょ、もうう、訓練でしょ、訓練」
ああああ可愛いいい、えっ、なにこれ、プクーってしてるうううう。
はっ、落ち着け落ち着け私、さすがにそろそろ真剣にやらないと本当に怒られちゃうよね。
「それで訓練って何をするんですか、鳴神君」
「切り替え速いな、まあいいけどさ、今回の訓練は実践訓練だよ、今までの訓練は基礎的な所の底上げと、最大出力の向上が主な内容で、あまり実践はしてなかったからね」
「実践って魔物との戦闘だよね、何体倒すのが目標なの、10体、20体かな」
「100体、僕の雷撃を避けながらね」
あれ?聞き間違いかなあ、数もだけど、えっ、雷撃?雷撃って言った。
「あの雷撃って、さっきの鳴神を避けろってことなの」
「はははは、まさか、鳴神なんて使ったら斬華程度じゃ塵も残らないし、斬華より圧倒的に強いフィスとランスでも死んじゃうよ」
笑い事じゃねええよ、当たったらマジで死ぬし、そもそもあんなの避けられないし。
てか、口悪くない、いちいち私を下げる発言するし、顔はあんなに可愛いのに・・・・ありだな。
「なんか寒気するんだけど」
おっと、気持ちが溢れ出してしまったようだ。ピーーーーーーーーーーー
鳴神君の事を考えていると、鳴神君が笛を吹いていた。
「その笛はなんですか?」
「ああこれか、魔笛だよ」
あれええ?また聞き間違いかな、魔笛って言ったよね。
「ほら来たよ、魔物の群れが」
そうゆうと、100を越える魔物の群れが押し寄せて来ていた。
「あああもううう、やってやるううう」
私は覚悟を決め、刀を抜き走り出した。
「桜花流 乱れっギャアアアアアアアア」
「忘れてなああい、僕も攻撃するってこと」
魔物の大群に対し、広範囲の技を繰り出そうとした時、鳴神君の雷撃が直撃した。
そのまま痺れて動けなくなった私は、鳴神君に持ち上げられていた。
「死んじゃうよこの威力は、避けられないよこの速さは」
「ふううん、あれ見てごらん」
そう言ってフィス達の方を見ると、雷撃を余裕で躱し、澄ました顔で魔物を蹴散らしていた。
可笑しいなああ、此処の魔物は隊長クラスの騎士じゃないと、かなり苦戦するレベルの魔物のはずなんだけどなあ。
なんでかな、私も同年代の中じゃ強いはずなのに、入学してからも強くなったはずなのに、こんなに壁を感じるんだろう。
「鳴神君、1つ聞いてもいいですか」
「いいよ、まだ動けないだろうしね」
そうして、この1か月間ずっと思っていたことを口にした。
「成三って、英雄病なんですか」
英雄病とは、生まれつき強い力を持つ代わりに、全身麻痺や失明、短命などといった、何かしら障害を持って生まれる病気で、成三のように規格外な強さを持つ存在のほとんどが英雄病に掛かっていた。
「いや、別に英雄病ではないよ、入団時は父上も普通の強さだったらしいからね」
「えっそれって本当ですかっあああ」
持ち上げられていた私は、地面に落とされ尻もちをついてしまった。
「急に離すのは酷くないですか」
「もう麻痺はしてないでしょ、訓練再開だよ」
「可愛い見た目に反してスパルタだね、鳴神君って」
そう文句をいいつつ、再び刀を構えた。
「おぅギャアアアアアアアア」
「あれ?雷撃が来ることは分かってたよね、なんで避けられないの」
「速いん、だっ、て」
そうして、学園にきて3度目の気絶に至ったあああああああああああい。
えっえっえっ、何?すっごい痛いんだけど。
お尻が吹っ飛んだよ、絶対吹っ飛んだよ。
「僕はこう見えて優しいんだよ、そうでしょ、わざわざ君を起こしてあげてるんだからね」
わあお、めっちゃ良い笑顔。
鳴神君は、雷撃を喰らい気絶しそうになった私のお尻を蹴り上げたようだった。
えっ、酷くない。乙女のお尻を蹴り上げるなんて。
しかも、蹴った後の顔があんな良い笑顔なんて。
「あれれ、感謝の言葉が聞こえないよう」
ムカつくう、いくらあんなに可愛い顔しいてもムカつくなあ。
でも気絶している場合じゃなかったし、確かに感謝の言葉を言う道理は少しだけあるかもしれない。
あの人外の成三が英雄病ではなかった、そのことが分かった今、立ち止まっている暇はなかった。
追いつけるんだ、諦めず努力すれば、あの成三に。フフフ。
「えっ、何笑ってるの、怖いんだけど」
「そんな事なんてどうでもいいでしょ、さあ、掛かってっきなさい」
そう新たに覚悟を決め、刀を、「ギャアアアアアアアア」
握ることはなく学園生活3度目の気絶に至った。




