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第2話

三国の軍がぶつかり合った第二次カルミア平原の戦いの後、三国の国力は大きく傾いた。


犠牲は大きかった。


多くの兵が帰らぬ人となったのである。


国力も兵力も、元に戻るまでには長い年月がかかる。


その間、貴族にも平民にも、大きな負担がのしかかることになる。


――だが、そのことは三者とも分かっていた。


分かったうえで、あえてこの戦争を始めたのだ。


三者とはすなわち、


シルバー王国の大将軍シェーラ


プラチナ帝国の大魔導士イオニーア


神聖ゴールド聖教国の大宰相ホーネント


この三人である。


彼らは、落ちた国力を自らの手で巻き返すよう、王族たちへ仕向けたのだ。


つまりこの戦争は、被害の大きい戦争を起こしたらどうなるのかを、王族へ自分の目で見せるための犠牲でもあった。


なぜなら――近いうちに、彼らが国を離れる日が来るから。


ご主人様のもとへ向かう日が、近づいてきていたから。


この500年、深く関わり続けてきた国を離れ、王族へ舵取りを渡す。


三国の英雄たちは、その準備を始めていたのである。


それから、さらに10年後。


いまだ大戦の後遺症は大きく、三つの大国はいまだかつての国力を取り戻せずにいた。


そのため、どの国も目立った軍事行動を取れなかった。


そんな中、シルバー王国の英雄、大将軍シェーラは、深くため息をついていた。


なぜなら、シルバー王国の初代創始者であるスレート・シルバーナ男爵と交わした契約の期限が、とうに終わっていたからである。


正確に言えば、かれこれ10年ほど前に、すでに過ぎていた。


だが、大将軍シェーラ自身もまだ後始末を終えきっておらず、シルバー王国の国王もまた、そんなことはまったく考えていなかった。


その話をした時など、国王は人目もはばからず大泣きしたほどだ。


「シルバー王国を見捨てないでくれ」


シェーラに、そんなつもりはなかった。


だが、あまりに懸命に頭を下げられたため、結局そのまま保留となり、今に至っていたのである。


そろそろ今の国王も年を取り、王太子へ譲位しようという話が持ち上がっている。


だが、国王と王太子の最大の関心事は、どうすれば大将軍シェーラをこの国へ留めておけるか、ということだとさえ言われていた。


・・・・まあ、そうだろうな。


この国に住みつき、発展を助け続けて500年近く。


もはや、大将軍シェーラがいることが当たり前になっているのだ。


それはシルバー王国だけではない。


プラチナ帝国も、神聖ゴールド聖教国も、おそらく同じだろう。


シェーラは深くため息をつきながら、思索を巡らせた。


やがて彼女は、シルバー王国の軍を再編し、さらに政務、外務、軍務と、内政全体の仕組みも大きく組み直した。


そして、その再編で最も注目されたのは――軍の位置を下げることだった。


さらに驚くべきことに、自分自身である大将軍を、軍務卿の下に置くと言い出したのである。


以前にも一度、そのような体制が取られた時代はあった。


だがその際は、軍務卿が上にいることで大将軍シェーラの軍事行動の妨げになるとして、最終的に軍務卿そのものが廃止されてしまったのだ。


それを今さら、再び復活させるという。


これは、軍を政治の下に置くことを意味していた。


徹底した文民統制を意識した体制である。


しかし、大将軍シェーラを形の上とはいえ下に置くのは、さすがにやりすぎではないか――という声が、国内外から上がった。


だが、シェーラはそうした声を意に介さず、強行した。


当然ながら、その体制のもとで大将軍シェーラを上に見る立場となった軍務卿は、毎日が冷や汗ものだった。


だが、この改革により、シルバー王国はさらに評価を高めることに成功した。


国王に権力を集中させず、優秀な能力を持つ者に国の運営を任せる。


そうした立憲君主制が、まだ粗削りながらも形作られ始めたからである。


そして何より、これは――


大将軍シェーラが大きく揉めることなくシルバー王国を去るための、布石でもあった。


この体制なら、自分の権力を増大させたいと考える者が必ず現れる。


そして一番の政敵となるであろう自分を追い落とすには、大将軍が軍務卿の下にいる形の方が都合がいい。


あと10年もすれば、それが現実になるだろう。


差し当たって、それを最も現実にしてくれそうなのは、現在政務補佐官を務めているエルマール公爵子息あたりだろうか。


大将軍シェーラは、いずれ自分に降りかかるであろう追放劇を夢想し、くすりと微笑んだ。


そしてこの追放劇は、他の二国でも同じように準備が進められていた。


プラチナ帝国では大魔導士イオニーアが。


神聖ゴールド聖教国では大宰相ホーネントが。


三人とも、ご主人様に仕える日を夢見て、静かに動き始めていたのである。



(作者に代わってエクレアからの一言メモ)◇◇◇◇◇◇◇◇◇


このエピソードの続きはシリーズ本編第1作目「僕に仕えるメイドは世界最強の英雄です1」の第1部のおまけ「大将軍の重み」につづきます。


まだ、お読みでない方はぜひご覧くださいませ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 


ここまで読んでいただき感謝です。


いよいよ明日でラストになります。


衝撃の最終回はシリーズ本編第1作目「僕に仕える英雄は世界最強の英雄です1」につながるプロローグとなっております。


是非ご覧ください。

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