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シルバー王国とプラチナ帝国、神聖ゴールド聖教国のその後  第1話

「勇者の聖戦」から470年後


シルバー王国もプラチナ帝国も、その治世はおおむね安定していた。


もちろん混乱期がなかったわけではない。

だが、そのたびに早急に対処し、国民の暮らしへ大きな影響が及ばぬよう抑え込んできたのである。


そもそも、500年前まで遡れば、シルバー王国もプラチナ帝国も、どちらもゴールド王国――現在の神聖ゴールド聖教国の臣下であった。


その事情もあって、この二大国は神聖ゴールド聖教国へ直接関わることを避け、代わりに互いのあいだで競い合うようになっていった。


始まりは、交易だった。


互いに必要な物を融通し合う形で始まった交流だったが、次第に格差が生じ、一方ばかりに負担が偏るようになる。


やがて両国は交流を絶ち、100年以上、互いに関わらぬようになった。


それでも傘下の国々同士では交易が続いていた。


だが、そこでも少しずつ不利益が積み重なっていく。


最初は話し合いで解決しようとしていたものの、どうしても折り合いがつかず、ついには小競り合いに発展した。


そしてその火種は、ついにシルバー王国とプラチナ帝国そのものの争いへと燃え広がっていったのである。


きっかけは、ほんの些細なことだったのかもしれない。


だが、ここまで事が大きくなれば、最初のきっかけなど誰も覚えていない。


そしてこの500年間で初めて、シルバー王国とプラチナ帝国の戦争が始まろうとしていた。


お互い、国力は十分。


シルバー王国軍も、プラチナ帝国魔法騎士団も、士気は高かった。


そしてそれらの軍を率いるのは、中央平原にその名を轟かせる二人。


常勝無敗の大将軍シェーラ。


絶大な魔力を誇る大魔導士イオニーア。


両国の柱とも言える二人が、国境まで兵を率いて顔を合わせたのである。


この報せだけで、中央平原中の国々、町、ギルドは大騒ぎとなった。


両雄の名が知られるようになってから500年弱。


今までにも小競り合いはあった。


だが、この二人が真正面から激突することはなかった。


それが、ついに戦うかもしれないのだ。


不謹慎ではあるが、当事者でない国々はもちろん、シルバー王国とプラチナ帝国の国民までもが、まるで物語を見守るような気持ちで成り行きを見つめていた。


それは実際に率いられている兵士たちですら同じだった。


自分たちが物語の登場人物になったような、そんな感覚を抱いていたのである。


それほどまでに、両雄のどちらが上なのかという話題は、酒場でも夜会でも、あらゆる場所で人々の興味を惹いていた。


両軍が布陣したのは、カルミア平原。


シルバー王国、プラチナ帝国、そして神聖ゴールド聖教国――三国すべての国境に近い、野戦向きの広い草原地帯だった。


だが、布陣してから三日間、どちらの軍も動かなかった。


先に動いた方が被害を受ける。


そのことを、両軍とも分かっていたからである。


しかし末端の兵は、そこまで理解できない。


焦れた一部の兵が勝手に動き出し、小競り合いが起きてしまった。


結果として双方に軽微な被害は出た。


だが、本軍は無傷だった。


そのままにらみ合いは続いたが、布陣してから二週間後、両軍は協定を結んで陣を引き払い、それぞれ帰還した。


このままにらみ合いを続けても、互いに隙を見せない。


これ以上ここにいても益はない――そう判断したのである。


もっとも、周囲は誰も「これで終わりだ」とは思っていなかった。


次に戦争が起きれば、もっと激しくなる。


誰もがそう予感していた。


そして、その機会はそう遠くなかった。


三か月後――。


次の火種を作ったのは、プラチナ帝国傘下の国、ブラウン王国だった。


この国はもともと王族の力が弱く、国王自身にも判断力の面で問題があった。


そのブラウン王国が、シルバー王国傘下のクラウド王国との貿易会議で揉め事を起こしたのである。


なんと勝手に関税を引き上げ、クラウド王国側に喧嘩を売るような態度を取り始めたのだ。


クラウド王国の外交官は、自分たちの態度次第で、シルバー王国とプラチナ帝国が再び戦争へ突入するかもしれないことを理解していた。


だから、ろくに反論せず耐えていた。


だが、その態度を勘違いしたブラウン王国の国王は、周囲の文官や宰相が止めるのも聞かず、悪口を言い始めた。


そのうえ、あろうことか、クラウド王国の女性文官へ手を出そうとまでしたのである。


これに顔色を変えたのは、むしろブラウン王国側だった。


当然である。


被害者はクラウド王国側なのだ。


クラウド王国の外交官は、引き上げ際にこう言い残したという。


「お忘れなさるな。不埒な態度を取ったのはそちらだということを。大義名分は我らにあり!!」


ブラウン王国側は何も言い返せなかった。


国王はその後、強引に退位させられ、隠居させられた。


ちなみに、この隠居させられた前国王は、この後闇ギルドと通じ、魔石の研究へ乗り出すことになる。


一方、宣戦布告されたも同然だと怒ったシルバー王国は、再び兵を動かした。


それに呼応するかのように、プラチナ帝国も魔法騎士団を動かし、再び両軍はカルミア平原へ向かったのである。


だが今回は、前回と違うことが起きた。


なんと、神聖ゴールド聖教国の軍もまた、カルミア平原に向けて進軍を始めたのだ。


率いるは、伝説に謳われる聖教六武威の一人――マホガニー将軍。


この将軍は500年以上前から六武威の一角として名高く、しかも好戦的と評される猛将である。


神聖ゴールド聖教国も、本気だったのだ。


プラチナ帝国が掴んだ情報によれば、これもまたブラウン王国が原因だった。


ブラウン王国は神聖ゴールド聖教国と距離が近く、交流もあった。


だが、人族以外の種族と接する場で、相手種族に対して失礼な振る舞いをしてしまったらしい。


事態を重く見た神聖ゴールド聖教国は、抗議のため軍を派遣したのである。


この戦いは、同時にプラチナ帝国への警告でもあった。


そしてブラウン王国は、その非を咎められ、後に大きく序列を落とすこととなった。


この戦いは、後に第二次カルミア平原の戦いと呼ばれることになる。


最初に動いたのは、シルバー王国軍だった。


その攻撃を、プラチナ帝国側は余裕を持って迎え撃った。


防御結界で押しとどめ、負傷した魔法騎士団を聖女が即座に癒す――その戦術が見事に機能していたのだ。


両軍が膠着したところへ、神聖ゴールド聖教国のマホガニー将軍率いる軍が突撃した。


その猛攻によって、魔法騎士団は一気に総崩れとなる。


だが、その敗走を救ったのは、大魔導士イオニーアと、優秀な冒険者の一団だった。


イオニーアが支援魔法で能力を底上げし、その状態で冒険者たちがマホガニー軍を食い止める。


その隙に、魔法騎士団は態勢を立て直した。


そこから、魔法騎士団は反撃へ転じ、マホガニー軍を後退させたのである。


次に、魔法騎士団は罠を仕掛け、大将軍シェーラをおびき寄せようとした。


大将軍シェーラは、罠と知りつつ突撃した。


すると罠の魔法陣が発動し、強制転移によってシェーラは単騎となり、そのうえ拘束までされた。


魔法騎士団の部隊長は、これで先ほどの失態を帳消しにできると喜んだ。


だが、それも束の間だった。


大将軍シェーラは、信じられないほどの膂力と魔力によって、魔法陣の拘束を力ずくで振りほどいたのである。


その光景は、目の当たりにしても信じがたいものだった。


本来なら、一人の力で破れるはずがない拘束魔法。


しかも膨大な魔力を要する。


大将軍シェーラは、策で敵を嵌める将だとばかり思われていた。


だがその時、誰もが知ったのだ。


彼女は、個人の武だけでも数千、数万の兵に匹敵する将軍だったのだと。


その力は、今まで隠されていたのだ。


それを悟った時には、部隊長の首はすでに飛んでいた。


こうして第二次カルミア平原の戦いは、三者とも大きな傷を負いながら、痛み分けで終わったのである。


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