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ラベンダー編エピソード4  黒髪の聖女、国つくっちゃいました。不景気の原因はだいたい恋  第1話

「勇者の聖戦」から328年後



私はあれからも、ずっとエリューシオン教会で聖女の育成を続けています。


最近では、聖女だけでなく男手も必要だと感じるようになり、孤児院から男の子を連れてきて育てることも始めました。


いずれは司教という役職を与えようと考えて、読み書きも教えています。


懐かしいですね。


かつては私自身も孤児で、孤児院で育てられたのですから。


エリューシオン教会を運営していて分かったことがあります。


それは、運営資金というものは、いくらあっても足りないということです。


もちろん、教会はプラチナ帝国――あ、昔の癖で王国と言いそうになりました――から多くの支援金を受けていますので、困ることはありません。


ですが、運営費とは別に、自由に使えるお金も必要なのです。


そういうお金を確保するため、私もときどき冒険者ギルドで依頼を受けています。


もちろん、二つ名は「黒の治癒士」で。


特にお金になるのは素材収集などですが、あまりに依頼を取りすぎると、本業の冒険者さんたちの稼ぎを奪ってしまって申し訳ないです。


ですので私は、報酬は良いけれど、冒険者さんたちがあまり受けたがらない種類の依頼を選ぶようにしています。


その代表が、商会からの護衛依頼です。


町から町への移動にはそれなりに時間がかかりますし、そのあいだ拘束されますから、冒険者さんたちには少し敬遠されがちなのです。


ですから私は、商会からの護衛依頼があれば積極的に受けるようにしていました。


「こんにちは。何かいい依頼はありますか?」


冒険者ギルドの受付へそう声をかけると、顔なじみの受付嬢がすぐに応じてくれました。


「おや、お久しぶりですね、黒の治癒士さん。たしか商会からの護衛依頼があれば、優先して教えてほしいということでしたよね」


「あ、そうだそうだ。ちょうど良かったです。最近できたばかりで信用が足りなくて、誰も受けてくれない商会さんがあるんですよ」


「どういうことですか?」


「報酬はちゃんと用意しているんです。でも、最近発足したばかりの商会で、まだ信用がなくて・・・・。良かったら受けてもらえませんか?」


そう言って、受付嬢はとびきりの笑顔で勧めてきました。


その商会の名は――ピオニー商会。


私はその依頼を受け、さっそく商会の者たちに会いに行きました。


ピオニー商会は、代表者のピオニーさんも、その幹部たちも、とにかく若かったです。


聞けば、もともと大手のエルダー商会にいたそうです。


しかもピオニーさんは、商才を見込まれた幹部候補だったとか。


ところが、エルダー商会の跡取り息子と恋愛絡みで揉めたらしく、商会にいられなくなったのだそうです。


表向きは独立。


ですが、実際は痴情のもつれで飛び出してきた、というのが真相でした。


しかも、エルダー商会の跡取り息子の婚約者である女性も、ピオニーさんに思わせぶりな態度を取っていたらしいのです。


もしかするとその女性は、「二人から想われる私」を演じていたのかもしれません。


ですが、そうした騒動をきっかけにエルダー商会を見限ったピオニーさんは、友人たちを誘って独立し、商会を立ち上げたのでした。


将来有望と言われただけあって、資金もあり、商会としての展望もしっかり持っていたようです。


ただ、エルダー商会に喧嘩を売るような形で出てきたのは失敗でした。


当然ながら、あちらから様々な嫌がらせを受けているらしいのです。


今回の依頼は、隣町への荷運びの護衛でした。


距離は半日ほど。


ですが途中に、魔物か夜盗が出る危険な場所があるらしいのです。


護衛を雇いたくても、誰も名乗り出てくれなくて困っていたところ、私が来てくれて助かった――そう感謝されました。


私は一応、Aランク冒険者です。


ですので、「一人ではありますが、同行する商会員と馬車一台くらいなら守れます」と伝えました。


これ以上待っても護衛は増えそうにないとのことで、私たちはすぐに出発することになりました。


道中の馬車では、これからの商会の展望や、独立までの失敗談を聞かせてもらいました。


「女にうつつを抜かしたせいだ」と仲間から詰られている話などもあって、なかなか楽しかったです。


やがて、危険地帯へ差しかかりました。


すぐさま魔物が数匹、襲ってきます。


私はまず商会員たちを守るため、防御結界を展開しました。


そのうえで前へ出て、魔物を一匹残らず討伐します。


その手際を見て、商会員たちは目を丸くしていました。


「Aランクとは聞いていましたけど、本当にお強いんですね」


「しかも回復魔法が得意だとおっしゃっていたのに、今のは剣だけで倒していませんでしたか!?」


そう、褒めていただきました。


そうなのです。


一応、魔法使いとして紹介はしていましたが、襲ってきた魔物が弱かったので、剣だけで片づけたのです。


「こんなに可愛くてきれいなのに」


とも言われてしまいました。


というのも、今回は顔を隠す認識阻害の魔法をかけていません。


かけなくても、Aランク冒険者という肩書きが、ある程度は私を守ってくれるようになったからです。


ですので、こうして男性から容姿を褒められることも増えましたが、もう特に気にはなりません。


「さあ、魔物は片づけましたし、先を急ぎましょうか」


そう言って馬車を進めたところ、今度は盗賊らしき集団が現れました。


その頭目が、いきなりこう言ってきたのです。


「全員やっちまえ!!おお、女がいるじゃねえか。女だけは殺すなよ!!」


私はそのまま剣を抜き、まず頭目に傷を負わせました。


続けて拘束魔法を放ち、盗賊団全員をまとめて縛り上げます。


その様子を見たピオニー商会の人たちは、もはや驚きすぎて言葉も出ない様子でした。


盗賊団を近くの街の騎士団へ引き渡し、私たちはようやく旅を続けます。


無事に荷物を届け終えた時には、代表のピオニーさんはホクホク顔でした。


私も依頼は終わったので、そのまま立ち去ろうとしたのですが、ピオニーさんが呼び止めたのです。


「一緒に旅をして思ったんだ。どうだろう。しばらく僕たちの専属護衛として同行してもらえないかな」


正直、私にとって大きな利点がある話ではありませんでした。


ですが、勢いのある若い商会を守り育てることも、この中央平原にとって必要なことかもしれない。


そう思って、引き受けることにしました。


ただし、私は大聖女として聖女たちの育成もしております。


ですので、時間が空いた時だけという条件付きで。


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