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第2話

シルバー王国――大将軍シェーラ直下兵団。


それは、王国最強とうたわれる精鋭部隊である。


激戦区へ投入されながらも、死傷者は極端に少ない。


その理由はただ一つ。


大将軍シェーラが率いているから。


その直下兵団へ、二人の若く実力ある騎士が入団した。


アルとベラ。


ともに15歳。


ともに孤児。


戦場で功績を挙げ、大将軍シェーラに見出された。


そして、シェーラ自らの指名によって直下兵団入りを許されたのである。


アルは剣を振るうことに長けていた。


身体強化魔法を駆使し、誰よりも早く前線へ踏み込み、敵を打ち倒す。


無骨で無口だが、仲間を見捨てない男だった。


一方、ベラは戦術を練ることに長けていた。


冷静に状況を見極め、的確な判断で小隊の損害を最小限に抑える。


頭脳明晰で合理的。


そして、自分の判断に絶対の自信を持っていた。


二人は、すぐに注目を集めた。


平民出身でありながら、直下兵団。


それだけで特別だった。


やがて、貴族令嬢たちすら近づくようになる。


「あなた、本当に素敵だわ」


その言葉は、ベラの胸に深く残った。


ある戦い。


敵は強く、戦線は崩れかけていた。


ベラは即座に判断し、部隊長へ進言する。


「部隊長!!後方の第三隊を前へ出すべきです!」


「時間を稼がせ、その間に全体を立て直しましょう」


部隊長は顔をしかめた。


「それでは第三隊が――!」


「犠牲は最小限です」


しばし逡巡したのち、部隊長はうなずいた。


「・・・・わかった」


ベラの心の中には、ただ一つ。


(これが最善だ)


結果として、戦線は立て直された。


だが――第三隊は壊滅した。


同じ戦場で、アルもまた戦っていた。


彼は命令を受けていた。


前に出るな、持ちこたえろと。


だが、目の前で仲間が押されている。


「・・・・ちっ」


アルは飛び出した。


命令違反だった。


だが、その突撃によって仲間は救われた。


戦いは勝利で終わる。


その後、大将軍シェーラは二人を呼び出した。


静かな天幕の中。


まず、彼女はベラを見た。


「あなたの判断と進言は、正しかったわ」


ベラは、わずかに安堵した。


だが、シェーラはそのまま続ける。


「でもね。私は、兵士を犠牲にする戦術を一度も取ったことがないの」


「シルバー王国は弱者を守る国。兵士も同じよ」


その場の空気が凍りついた。


「戦場では、命をただの数として扱う者も多い」


「あなたは“正しい”戦術家だわ」


「でも、それだけ」


シェーラは静かに告げた。


「あなたの進言を受け入れ、犠牲を出す決断をした部隊長は更迭しました」


「あなたは進言しただけ。だから罪には問わない」


ベラは、言葉を失った。


次に、シェーラはアルを見た。


「命令違反ね」


「・・・・はい」


「でも、あなたは誰も見捨てなかった」


そして、淡く微笑む。


「それでいいわ」


アルは小さく笑った。


その横で、ベラの握りしめた手は震えていた。


その後。


ベラは直下兵団から外され、アルはそのまま残った。


やがて二人とも功績を認められ、領地を与えられる。


貴族として、領主として。


ベラは成功した。


領地経営は合理的で、無駄がない。


利益は伸び、評価も高い。


「さすがだ」


「やはり才能が違う」


周囲はそう称賛した。


ベラ自身も確信していた。


(やはり、私は正しい)


だが――領地から静かに人が去っていくことに、その時の彼はまだ気づいていなかった。


一方、アルは苦戦した。


領地経営など分からない。


判断は遅い。


効率も悪い。


「無能な領主だ」


そう言われることもあった。


だが、それでもアルはやめなかった。


一つ一つ。


地道に。


人の話を聞き、信じ、支え、少しずつ積み上げていった。


「あの領主は頼れる」


いつの間にか、そう言う者が増えていた。


時は流れる。


ベラの領地は傾いていた。


合理を優先しすぎた結果、人は離れ、支えは失われた。


最後に残ったのは数字だけ。


だがその数字すら、やがて崩れた。


「なぜだ・・・・私は間違っていないはず・・・・」


そう呟いても、もう遅かった。


使用人も家族も離れ、家は崩壊した。


アルの領地は、静かに栄えていた。


目立たない。


だが、人が強い。


領主への信頼が根づいていた。


そして――子の代で花開いた。


「この領地は穏やかで、領民はみんな良い人ばかりだ」


「領主だった父上の人柄だね」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


その顛末は、やがてシェーラのもとへ届いた。


彼女は静かに目を閉じ、そして言った。


「合理だけで、人は動かない」


「人は――人に従うのよ」


「最後に残るのは、いつだって“思いやり”」


「ベラ、あの子は最後までそれに気づけなかった」


そう言って、シェーラは再び静かに目を閉じた。


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