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第3話

最後の調査だ。


最後の案件は、神聖ゴールド聖教国内で違法な魔法が行使された形跡があり、その魔法を特定することだった。


その魔法は、どうやら生きた人間――特に人族に反応し、生命力を奪う禁術らしい。


とんでもない話だ。


許せない。


だが、この魔法はどこで行使されているのか、極めて巧妙に隠されており、発見に時間がかかってしまった。


幸い、ナイル様とマホガニー将軍が、龍族としての高度な感知能力を駆使し、なんとか場所を絞り込んでくれた。


「ふふ~ん。どう?あたくし、役に立つでしょう。マホガニーちゃんも感知が上手になったわねぇ」


「・・・・そろそろ“ちゃん”づけはやめてくれないか」


マホガニー将軍は、また小さな声でつぶやいた。


それはさておき、ぼくでもここまで素早く特定はできなかっただろう。


さすが龍族だ。


人族とは潜在能力の桁が違う。


二人が突き止めた場所は、辺境の小さな町にあった。


その町のさらに外れ。


人の手が入っていることは分かるが、廃墟と大差ないような、こぢんまりした家だった。


町の人たちに聞き込みをすると、昔から男とも女ともつかないローブ姿の妙な連中が頻繁に出入りしていたという。


その情報は、酒場の客と店主が教えてくれたものだ。


ナイル様が、ぴんときたように言った。


「もしかして~、これ、闇ギルドの連中が使ってる拠点じゃないかしらん」


闇ギルド。


その名を聞くのは、ずいぶん久しぶりだった。


たしか、双子の弟王子がぼくを狙って禁断の魔道具を使った、あのクラウド王国の事件以来だ。


あの時、王子は心と生命力を削る代わりに、強大な魔力を得ようとした。


その裏にいたのが、闇ギルドだった。


後にぼくがその件を冒険者ギルドへ報告したところ、驚くことに、他国でも闇ギルドが関わっていると思われる危険な魔道具の使用例が見つかっていたらしい。


あんなものをばらまき、使わせようと唆す組織を野放しにはできない。


そして今も、一刻も早く禁術を止めなければ、この国の人々の生命力が奪われ続けてしまう。


本来、どんな仕掛けがあるか分からない闇ギルドの拠点へ踏み込むのは危険だ。


だが幸い、こちらにはナイル様とマホガニー将軍がいる。


戦力面の不安はない。


ぼくたちは、その家へ一気に踏み込むことにした。


扉を蹴破り、中へ入る。


「何者だ!!!」


中には、ローブを着た者が五人いた。


すぐに魔法を撃とうとしたようだが、詠唱が終わる前に気絶させて無力化した。


どうやら五人とも魔法使いタイプらしい。


魔力はそれなりにあるが、肉体的な強さはまるでない。


これでは、ぼくやナイル様、マホガニー将軍の相手にはならない。


ナイル様はすぐに、禁術の中心になっていた魔法陣を見つけ出し、そこへの魔力供給を断った。


これで、生命力を奪う違法魔法は止まったはずだ。


捕まえた五人を神聖ゴールド聖教国へ引き渡せば、今回の任務は終了といっていいだろう。


「ふう、やれやれ。最後に闇ギルドの拠点まで潰すことになるとは」


因縁の深い闇ギルドの拠点を一つ潰せたことに、ぼくは少しだけ安堵していた。


だが、その安堵はマホガニー将軍の一言で吹き飛ぶ。


「うむ?うむむむ・・・・ふむ~。どうやら、ここに隠し階段があるようだ。どうだ? この先へ行ってみぬか?」


「おお~。マホガニーちゃん、すごいすごい」


隠し階段。


もしかしたら、闇ギルドに関する何か重要な情報があるかもしれない。


ぼくたちは、その先へ進むことにした。


階段を降りた先には扉があった。


それを開けて中へ入る。


少し埃っぽい。


ずいぶん長い間、誰も入っていなかったのだろう。


どうやらこの部屋は、闇ギルドの創設者が使っていた部屋らしい。


長年封印され、誰も入れなくなっていたのだが、今回、上の階で禁術が行使された影響で封印が解けたのだという。


そして、その部屋に入ったぼくたちが抱いた感想は――異様、の一言だった。


闇ギルドは、ある女性の居場所を探るために作られた組織ではないか、という噂を以前聞いたことがある。


そんな馬鹿な、とその時は思った。


だが、この部屋を見てしまえば、あれが事実だったのだと認めるしかない。


なぜなら、部屋の壁という壁に、隙間なく一人の女性の絵姿が貼られていたからだ。


横顔。


遠くから見た全身。


仲間と笑い合っている姿。


さまざまな角度、さまざまな場面。


それが、びっしりと。


この黒髪。


黒く輝く瞳。


今とは服装が違うが、それでもわかる。


・・・・どう見ても。


他人の空似かもしれない、と最初は思った。


だが、ここまでくれば違う。


まさか、本当に彼女を探すために闇ギルドが作られたというのか。


こんなふうに、狂うほどに。


だけど――。


ぼくには、少しだけ分かってしまう気がした。


ナイル様は、長く生きている方ではあるが、それでもこの部屋の趣味の悪さに、心底嫌そうな顔をしていた。


その一方で、ぼくの胸には別の感情もあった。


こんなものを見せつけられてなお、どこかで『彼の痛みがわかる』と思ってしまう自分がいたのだ。


ナイル様が低い声で言う。


「ねえ、マホガニーちゃん。この絵姿の女の子って、もしかしなくても・・・・」


マホガニー将軍も、渋い顔でうなずいた。


「うむ。もしかしなくても、先の空の勇者。いまは“黒の治癒士”、そしてエリューシオン教会の頂点に立つ大聖女――ラベンダー殿でしょうな」


そしてナイル様は、吐き捨てるように言った。


「キモい、キモい、キモい。創造神様のおっしゃった通りね。あのサンドベージュのやつ、こんな重度のストーカー行為をしていたなんて」


「あげくに闇ギルドまで作っていたとは。ほんっと気持ち悪いわ」


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