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第2話

最初の調査先は、神聖ゴールド聖教国の辺境にある都市だった。


伯爵家が治める都市だという。


そこで、奴隷売買が密かに行われているらしい。


ぼくはまず、酒場や夜の盛り場で情報を集めることにした。


幸いというべきか、ぼくは赤い髪をしていて、女性としてかなり目立つ容姿をしている。


だから、声をかけてくる男は多かった。


関係のなさそうな者は断った。


そして三人目で、ようやく当たりを引いたようだった。


なぜそう思ったかと言えば、突然男たちに囲まれ、「ついて来い」と言われたからだ。


ぼくは殊勝なふりをして、大人しくついていくことにした。


連れて行かれたのは、外から見ればただのぼろい小屋。


だが、中には隠し階段があり、その下には五人ほどの女性が閉じ込められている地下牢があった。


なるほど。


現場は押さえた。


ここにいた女性たちは、これから奴隷として売られる予定だったらしい。


それを確認した時点で、ぼくはすぐ行動に移した。


まず女性たちの拘束を解く。


次に男たちを気絶させる。


そのうえで、黒幕につながる書類がないかを探した。


だが、残念ながら書類はなかった。


仕方がないので、あまり使いたくはないが、催眠魔法を使った。


男たちを操り、自分たちの黒幕のもとまで案内させることにしたのだ。


催眠魔法は魔力の消耗が激しい。


なるべくなら避けたい術だ。


もちろん、その前に捕まっていた女性たちは全員解放した。


そして辿り着いた黒幕は――なんと侯爵位を持つ貴族だった。

 

ぼくは抵抗する侯爵家の私兵団を手際よく鎮圧し、わめき散らす侯爵を拘束して、そのままホーネット様のもとへ突き出した。


一件目から、なかなかひどい。


二つ目は、違法賭博だ。


賭博にのめり込み、身を持ち崩す貴族や平民が増えており、いま王都では大きな問題になりつつあるという。


神聖ゴールド聖教国には、犯罪者だけを専門に取り締まる機関はない。


その役目は、聖教六武威に属する軍人たちが担っているらしい。


今回は、その聖教六武威の第二席という大物――龍族のマホガニー将軍とともに、違法賭博の捜査と、できれば摘発まで行うことになった。


マホガニー将軍とは、もちろん旧知の仲だ。


久しぶりに会った時、ぼくはまず謝った。


「あの時、勝手に王太子の座を捨てて国から姿を消してしまい、申し訳ありませんでした。マホガニー様にも多大なご迷惑を・・・・」


マホガニー将軍は、そういう細かいことにはあまりこだわらない性格らしく、あっさり許してくださった。


ついでに、男のふりをしていたが本来は女性の身体であることも打ち明けた。


するとマホガニー将軍は、してやったりという顔で言った。


「わぬし、あの時ホワイトという者をゴールド王国へ連れてきて、将軍に推したであろう」


「あの時のわぬしは、そのホワイトという者に惚れておって、その者に手柄を立てさせたくてあんなことを言った。そうじゃろう?」


ぼくは顔を赤くしながら、うなずくしかなかった。


あの時というのは、魔族が王国へ攻めてきた際、何の実績もないホワイトを、ぼくが将軍の一人として推挙した時のことだ。


まったくその通りだった。


私情で国の一大事をねじ曲げた。


「それがしだけは分かっておったわい。ぐわっはっはっは」


図星だったと分かり、マホガニー将軍は実に満足そうだった。


怒られなくてよかった。


ついでに、ぼくが神聖ゴールド聖教国の元王太子だったことは、他言無用でお願いしておいた。


「まあ、今は冒険者ギルドの代表として、Sランク冒険者として動いておるのだろう。いろいろあるのじゃろう。そこを詮索する気はない」


「ただ、本来ならこの仕事は、われら聖教六武威がやるべきものだ。それをわぬしに被せておる。それを申し訳なく思っておるのじゃ」


神妙な声でそう言ってくれた。


「もともとこの件はフラグラントの管轄じゃったのだが、今回はそれがしが出張った。ともに協力して、違法賭博を摘発しようぞ!!」


頼もしい言葉だった。


マホガニー将軍は、六武威の中でも最も武に優れる将軍だ。


龍族でもあるため、さまざまな技能も持っている。


ちなみにフラグラントというのは、同じ六武威の将軍で、智将として名高い人物だ。


特に犯罪取り締まりの権限を強く持っているらしい。種族は魔族だとか。


さて、前置きが長くなったが、さっそく捜査に入った。


いくつかの酒場で情報を集めたが、相手の警戒が強く、なかなかしっぽを出さない。


困った。


もう少し六武威の協力を仰ぎたいが、人数が増えれば、今度は賭博を運営する貴族たちに気づかれる可能性がある。


どうしたものかと悩んでいると、助っ人が現れた。


やはり創造神様は、ぼくが困っているのを見ていらっしゃったらしい。


ありがとうございます、創造神様。


その助っ人は、腰まで届く豊かなプラチナブロンドの髪に、大きな目、白い肌を持つ長身の美女だった。


軽装ではあるが、豊かな胸と均整の取れた体つきは隠しきれない。


龍族にして、聖教六武威筆頭。


そして龍族の長でもある、ナイル様である。


「おっはよ~~~~。マホガニーちゃん。それに、はじめまして、かしら? 赤髪の騎士様」


ぼくよりはるかに背が高いのに、その明るい物言いは不思議と警戒心を和らげる。


もちろん戦士としての力量は、ぼくよりはるかに上だろう。


そしてこの方――ナイル様もまた、創造神様の使徒だ。


この世界でも最も早く使徒となった方らしく、ぼくから見ても大先輩といえる。


隣のマホガニー将軍は、ものすごく嫌そうな顔をしていた。


どうやら苦手らしい。


「あら~~。あらあらあら。なあに、その表情。もっと笑いなさいな。せっかくあたくしが来てあげたというのに」


「う、うむ~~。これはこれはナイル殿。お久しぶりで、変わらずお元気そうで、なにより・・・・」


「なんだか、あたくしが元気なのが不満そうな口ぶりね」


「め、滅相もない・・・・」


本当に苦手そうだ。


なので、ぼくのほうから話を進めた。


「あの、さっそくですが、違法賭博の摘発にご協力いただけますか」


「ああ、あれね。ちゃんと調べてきたわよん。ほら、この店。この店が入口らしいわ」


「それと、金持ちに見えないと賭博場まで案内されないらしいの」


「あたくし、はりきって金持ちに見える格好をしてきたのだけど、どうかしら?」


手際が良すぎて助かる。


それに金持ちっぽいかどうかはともかく、長身で派手な顔立ちだからとにかく目立つ。


幸い、ナイル様は普段あまり表に出てこない。


だから貴族の間でも顔を知る者が少なく、賭博を仕切っている連中にも気づかれにくい。


ぼくたちはナイル様の手引きで賭博場へ入り、狙い通り現行犯で賭博に興じていた貴族たちを一斉に捕縛することができた。


「ふふ~ん。あたくしにかかれば、これくらい朝飯前よ~~ん」


「いつもいいところばかり持っていきよる。それがしとて準備さえすればこれくらい・・・・」


ぼやくマホガニー将軍へ、ナイル様は凄みのある笑顔でにっこりと笑う。


「ん? な~にをぶつぶつ言っているの、マホガニーちゃん。何か文句でもあるの?」


マホガニー将軍は、ぷるぷる震えながら黙り込んだ。


・・・・相変わらずだ。


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