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第5話

私は状況把握のため、今代の大地の聖女へ質問しました。


「このような状況になったのは、いつ頃からでしょう?」


「やはり20年前からかと」


20年。


緩やかに、しかし確実に、国民から生気が抜かれていた。


そんな大規模な魔法なら、必ずどこかに仕掛けがあるはずです。


私は、国の中心に手掛かりがあるのではないかと考え、そこへ向かいました。


そして国の中心には――


王女だった、あの大地の聖女の銅像が建っていました。


その首には、首飾りが掛けられている。


私は直感で、それが怪しいと感じました。


魔力探知をかけると、案の定。


その首飾りが、国民から生命力を吸い上げていたのです。


詳しく調べると、やはりそれは魔道具でした。


この首飾りを起点として、国全体に生命力を奪う魔法が張り巡らされていたのです。


なんと残酷な。


私はすぐ、その魔法を解除しました。


一部始終を見ていた今代の大地の聖女は、悔しさのあまり顔を歪めます。


「一体なぜ、このようなことが・・・・しかも、なぜ今まで気づけなかったのか」


「もっと悔しいのは、あの首飾りが、王女であったあの“大地の聖女様”がとても大切になさっていた品であることです」


「王女様は、騙されていたのでしょうか」


私は、少し迷いましたが、言いました。


「これは私見ですが・・・・まさにその首飾りこそが、命を縮めた原因の魔道具でしょう」


「今この首飾りからは、もう魔力を感じません」


「ですが国全体を覆うほどの魔法が働いていたのは、あなた方“大地の聖女”の生命力と魔力を吸い上げていたからだと思われます」


「先ほどの指輪と首飾りは繋がっていたのでしょう」


「指輪を使う者から生命力を奪い、それを魔力へ変え、この首飾りを通じて国へ魔法をかけていたのです」


「そ、そんな・・・・」


その時です。


明らかに怪しい人物が現れました。


薄汚れたローブに身を包み、得体の知れない雰囲気を放つ男。


「急に魔力が集まらなくなったと思って来てみりゃあ、案の定、邪魔が入っていたか」


「この国もここまでだな。もう少し集めておきたかったが」


男は面倒そうに肩をすくめます。


「やっぱり、国全体に魔法をかけるのはリスクが高いな。高い魔力を持つ一人に絞ったほうが、長く集めやすいかもしれん」


私はその時点で悟りました。


この男が闇ギルドの者であり、今回の元凶の一人だと。


「気づいたようだから教えてやるが、俺たちは闇ギルドの者だ」


「だがなあ、魔力を吸い取る魔法陣を作ったのは、俺たちと、20年前の大地の聖女との契約に基づくものだ」


「俺たちだけが悪いわけじゃない。俺たちは聖属性の魔力を集める。大地の聖女は、一時的に魔力を高める道具を借り受ける」


「互いに利のある契約だったってわけだ」


ですが、私はそんな言葉に騙されません。


闇ギルドは、これまで何度も各国で惨劇を起こしてきたのです。


「あなたたち闇ギルドは、一体何のために大量の魔力を集めているのですか?」


すると男は鼻で笑いました。


「さあな。俺もそこまでは知らねえ。上の命令で動いてるだけだ」


「今回は回収に来ただけだが、それも無理みたいだからな。退散させてもらう」


そう言って、ローブの男は転移の魔道具で去っていきました。


あとには、悔しそうに唇を噛む今代の大地の聖女が残されます。


「もし、あの者の言うことが本当なら・・・・とても公表できません」


「王女であった、あの大地の聖女様の名誉を汚すことになります」


その後。


結局、フクシア神教国は、長年国民の生命力を犠牲にしていた事実を公表しませんでした。


ですが、恥を感じてはいたのでしょう。


国名から“神”の字を外し、フクシア教国と名乗るようになったのです。


そして私は、最後の後始末をつけるため、プラチナ王国のアマランス公爵家へ向かいました。


以前から怪しいとは思っていましたが、今回の調査で、アマランス公爵夫人が闇ギルドに脅されていたことが判明したのです。


これまで教会へ何度もフクシア教国への聖女派遣を強く求めてきたのも、聖女の魔力をあの首飾りへ吸わせるためでした。


ですが、その事実が明らかになるや否や、公爵夫人は自ら命を絶ってしまいました。


遺書には懺悔の言葉が記されていました。


過去の自分の心の弱さから隙を生み、闇ギルドに脅されたこと。


聖女を危険へ晒してしまったことへの謝罪。


そして、公爵家に罪はない。どうか責めないでほしい――そう綴られていたのです。


公爵様は、夫人が母国フクシア教国を想うあまり、聖女派遣を求めていたのだとばかり思っていたようでした。


遺書を読み、公爵様は泣き崩れました。


自分も同罪である、どうか公爵家を取り潰してほしいとまで願われたのです。


ですが、このことを知った大魔導士イオニーア様は、逆にアマランス公爵家と、その夫人の苦悩に気づけなかったことを詫びられました。


そのうえで、今後もアマランス公爵家とは禍根を残さず、手を取り合っていくと約し、この件をそれ以上追及しないことにしたのです。


なお、フクシア教国はその後、プラチナ王国から特別に優遇されるようになりました。


帝国成立後に傘下へ入った際も、序列第一位の国として扱われたのです。


それは、公爵夫人を悼む気持ちだったのか。


あるいは、長く国民を犠牲にしたことへの償いだったのか。


――おそらく、その両方なのでしょう。





あとがき


闇ギルドはこの一件があったので、一人の聖女から魔力を奪うことにしました。


その事件は、シリーズ本編「僕に仕えるメイドは世界最強の英雄です3」に語られています。


また、魔力を集める目的もそこで語られています


興味が沸いていただければ、そちらもお読みください。



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