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クラレット編エピソード4  姉妹の絆を錬金したら、錬金術の未来が生まれました   第1話

「勇者の聖戦」から205年後



ある晴れた日のこと。


ぼくは、冒険者たちが採集によく訪れる場所を見回っていた。


採集中、思わぬ事故に遭うこともある。


また、この辺りの魔物はそこまで強くはないが、それでも実力に見合わない冒険者が来て大怪我をすることは珍しくない。


そういった事故や怪我で困っている者がいないか、確認して回っていたのだ。


「赤髪の騎士さま、こちらには冒険者はいないようです。北地区と東地区には一組ずつパーティがいましたが、順調に採集しているみたいでした」


声をかけてきたのは、同じく女冒険者で、前衛を専門とする屈強な戦士。


最近Bランクに昇進したばかりで、やる気に満ちあふれている。


名前はランという。


ぼくが冒険者ギルド本部を訪れた時に捕まり、こうして一緒に見回りへ来ていたのだ。


ちなみに、これもギルドからの正式な依頼である。


「そうか。特に不慮の事故もないみたいだね」


「なら、そろそろ引き揚げようか。いろいろ手伝ってもらったし、食事でも奢るよ」


「え、そんな! お世話になっただなんて。私こそ、憧れの赤髪の騎士さまと同じ依頼にご一緒できただけで幸せですぅ」


「ふふ」


ぼくたちがそろそろ戻ろうとした時だった。


道の先で、二人組が途方に暮れているのが見えた。


「もし。冒険者の方ですか? 何かありましたか? ぼくで力になれることがあれば、お手伝いしますよ」


声をかけると、二人のうち、可愛らしい髪型の女性が振り向いた。


「ほ、本当ですかぁ。助かりますぅ」


話を聞いてみると、この二人は冒険者ではなく、錬金術師だった。


可愛らしい髪型の女性がエリー。


ショートヘアの、顔立ちの幼い少女がアリー。


二人は姉妹だという。


素材を自分たちで集めるためにここまで来たらしいが、予想以上に魔物が強く、帰るにも帰れなくなってしまったそうだ。


「それは無謀ですよ。錬金術師は戦闘職じゃありません」


「この辺の魔物はそこまで強くないとはいえ、錬金術師には荷が重いと思います」


話を聞いていたランが、少し責めるように言った。


「そ、それはそうなんですけどぉ・・・・」


こんな無茶をした理由は、単純に金がなかったから――らしい。


素材集めは普通、冒険者ギルドへ依頼を出す。


だが金がないので、良い素材を手に入れられない。


良い素材がないから、良いものも作れない。


ずっとその繰り返しで困っていたという。


話を聞いたぼくは、すぐに決めた。


「分かりました。では、しばらくの間、ぼくが護衛として一緒に行動しましょう」


「魔物からはぼくが守るので、安心して素材を採集してください」


それを聞いた姉妹は、ぱっと顔を輝かせた。


それからしばらく、ぼくは二人の錬金術師と一緒に各地の採集場を回ることになった。


・・・・ちなみに、ランには外れてもらった。


今回は、ぼく一人だけで同行することにしたのだ。


ランは残念そうにしていたが、彼女にも生活がある。


錬金術師と組んで採集護衛をしても、それほど稼げる仕事ではないだろう。


だから断った。


ぼく?


ぼくは別に、稼げなくても困らないのでね。


半年後。


高価な素材を安全に手に入れられるようになったエリーとアリーは、それらを活かしてさまざまな成果を出すようになった。


高価な素材を扱えるようになれば、それだけギルドの評価も上がる。


それを積み重ねた結果、もともとEランクだった二人は、Cランクにまで昇格していた。


しかも、姉のエリーが長く錬金術に携わってきたにもかかわらず、妹のアリーはすでにBランク目前のCランクだった。


どうやら、アリーには天才の資質があったらしい。


「ふう・・・・少し休憩しようかしら。アリー、私はちょっと休んでくるわね。あなたも無理しないで」


「はーい、お姉様」


仲の良い姉妹だ。


そんな二人のやり取りを、ぼくは微笑ましく聞いていた。


「あ、赤髪の騎士様。いつも本当にありがとうございます」


「おかげで私たちもCランクになれました。妹のアリーは、今度Bランク昇格試験を受けないかって、錬金術師ギルドから声をかけられるほどで・・・・」


姉のエリーは、嬉しそうに報告してくれる。


「ふふ。喜んでもらえて、ぼくも嬉しいよ」


「今度のBランク昇格試験は、少し厄介な魔物が相手だと聞いている。万全の準備が必要だね」


ぼくがそう返した、その時だった。


妹のアリーが、手を止めてこちらへやってきた。


どこか様子がおかしい。


姉のエリーもそれに気づいたようで、不安そうに見つめる。


アリーはおずおずと口を開いた。


「あ、あの・・・・こ、こんなことを言うのは、すごく失礼だって分かってるんですけど・・・・でも、言わせてください!!」


そして、きっぱりと言った。


「もう、素材集めについて来なくていいです」


それに最初に反応したのは、姉のエリーだった。


「な、なんてことを言うの!!」


「あ、赤髪の騎士様、ごめんなさい!妹はこんなことを言う子じゃないんです。謝ります、謝りますから、どうかお許しを!!」


だがアリーは、首を横に振る。


「ううん。前から思ってたの。もう半年前の私たちじゃない」


「それに・・・・お姉ちゃん、私、お姉ちゃんとも離れて、もっと自分を試してみたい」


衝撃的な言葉に、エリーは絶句した。


どうやらアリーは、錬金術師ギルドでも注目されており、有力なパーティから勧誘を受けていたらしい。


そこで、いろいろ吹き込まれてしまったのだろう。


エリーも最初は説得しようとした。


だがアリーの、


「お姉ちゃん、やっぱり私の才能を潰そうとしてるんでしょ」


という言葉を聞いて、もう止められないと悟ったようだった。


後で聞いたところ、Bランク錬金術師のサルナックという男が声をかけ、かなり影響を与えていたらしい。


こうして姉妹は、袂を分かつことになった。


ぼくは胸の痛みを覚えながら、エリーに頭を下げた。


「すみません。まさか、こんなことになるとは」


「将来有望な錬金術師の支援をしたかっただけなのですが・・・・」


するとエリーは、涙を隠そうともせずに首を振った。


「いいえ、謝らないでください。謝るのはこちらです・・・・」


「昔はあんな子じゃなかったんです。お父さんとお母さんから受け継いだ錬金術で、みんなの役に立ちたいって・・・・」


「二人で、そう誓い合ったのに・・・・うう・・・・」


ひとしきり泣いた後、エリーはぼくの協力も断ると言い出した。


「本当は、もっと早くこうすべきだったんです」


「私が、赤髪の騎士様のご厚意に甘えっぱなしだったから・・・・あの子も、あんなふうに考えるようになったのだと思います・・・・」


エリーの話では、Eランク錬金術師の頃は苦しいが、Cランクになるとギルドからの報酬だけでも十分やっていけるようになるという。


そしてCランクからは、ようやく一人前と認められ、自分の専門分野を一つ選んでその道を究めていく段階に入るのだそうだ。


ところがエリーとアリーは、そこへ進まず、ずっと素材集めを続けていた。


そのせいで、ギルドの錬金術師たちからも馬鹿にされていたらしい。


エリーから改めて謝罪を受けたぼくは、半年間の礼を告げ、二人のもとを離れた。


胸には、少しばかり後味の悪さを残したまま。


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