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第2話

それからも私は、聖女たちに聖属性魔法を教え、神官候補者たちの教育も続けていきました。


やってみて分かったのですが、神官候補者は女性よりも男性の方が向いているみたいですね。


まあ、考えてみれば当然です。


女性はたいてい聖女候補になりますし、神官候補は自然と男性が多くなるわけです。


そんなこんなで、日々は激務ではありましたが、穏やかに過ぎていきました。


・・・・ですが。


遺憾なことに、最近では聖女も神官候補者たちも、私の顔を見るだけで震え上がるようになってしまったのです。


おかしいですね。


私は優しくしているつもりなのですが。


やっぱり、あれかしら。


疲れて倒れても、すぐに疲労回復魔法をかけて、


「これで続けられるわよね?」


とにっこり微笑むのがいけないのでしょうか。


その時の皆の顔といったら、もう悲鳴も出ないほど恐ろしいものを見た顔をしているのです。


最初は気のせいかと思っていましたけれど・・・・。


ふう。


育てるって、難しいですね。


グレーの時のほうが、ずっと育てやすかったなあ。


ところで私は、時間の許す限り、かつてウィスタリア聖教国だった土地へ足を運ぶようにしています。


創造神様の怒りに触れ、「創造神がつくりし七つの邪悪な災厄」の一つが放たれたことで、人族が容易には住めない土地となってしまった場所です。


私は、そこに住む人たちをどうしても見捨てることができませんでした。


だから長年、土地に祝福を与え、地力を回復させ、周辺から襲ってくる魔物を討伐し続けてきたのです。


その結果、いつの間にか私は、その地の人々から「黒髪の聖女」として崇められるようになっていました。


ですが・・・・。


何かに縋らなければ、前を向けない時もあります。


皆が私を「黒髪の聖女」として敬うことで、少しでも心が救われるのなら、それでいいのかもしれません。


私がその土地に行くと、人々はこんなふうに噂します。


「ほら、今日も黒髪の聖女様が、わたしたちの土地に祝福を与えてくださってるよ」


「言うことを聞かないと、黒髪の聖女様が来なくなるよ!!」


「ああ、ありがたや・・・・今日も黒髪の聖女様はお美しいのお」


・・・・これではますます、私への信仰が深まりそうですね。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


かつて、ウィスタリア聖教国があった地。


昔、ここはまさしく不毛の地でした。


ですが、そこへ一人の聖女が現れ、人々を救って回ったといいます。


人々は聖女に感謝し、敬い、そして崇めました。


その恩恵は、親から子へ、子から孫へと語り継がれていきます。


そうして黒髪の聖女への信仰は、少しずつ土地に根づいていきました。


そんなある日、一人の女の子が生まれました。


生まれつき銀髪を持ち、親とは似つかぬほど整った顔立ちをしていた少女。


しかも彼女は、回復魔法まで使えたのです。


その少女は、黒髪の聖女に強く憧れました。


その背を追い、少しでも近づけるように努力したそうです。


そのかいあってか、10歳になった年、少女は聖処女神エリューシオン様から神託を受け、正式に聖女へ認定されました。


少女は喜び、親も喜び、集落の人々も皆喜んだといいます。


その後、少女はエリューシオン教会へ迎えられ、憧れの黒髪の聖女様から直接教えを受けることになりました。


そして数年後には、立派な中級聖女へと成長したのです。


その中級聖女は、もともと黒髪の聖女に憧れていただけあって、人に親切で、決して驕らず、常に相手の気持ちに寄り添える人柄でした。


そんな彼女が、ある時、貴族に見初められてしまいます。


エリューシオン教会が庇護を受けるプラチナ公国で、公国貴族である侯爵家の子息と、その中級聖女が出会ったのです。


二人は恋に落ちました。


本来、プラチナ公国では教会と貴族の距離を保つため、聖女と貴族の婚姻は禁止されていました。


ですが障害があるぶん、二人の想いはますます燃え上がったようです。


しかも二人は、少女が10歳で聖女として教会へ連れて来られた頃からの顔見知りでした。


その時から、互いに一目惚れだったのだとか。


だからこそ、その願いは中途半端なものではありませんでした。


どうしても結婚を認めてほしい。


そう、プラチナ公国とエリューシオン教会の大聖女へ願い出たのです。


両者は、その結婚を認めさせるため、一つの条件を出しました。


――生涯、聖女として助けを求める者すべてに癒しを与えること。


中級聖女は、自分が憧れの黒髪の聖女――大聖女様に迷惑をかけていることを気に病んでいました。


ですが、結婚を認めてもらえるならと、その条件を迷いなく受け入れたそうです。


侯爵家には世継ぎが必要ですから、子供は一人まで。


その後の生涯は、エリューシオン教会に捧げる。


厳しい条件でした。


けれど、結婚を認められた時、その中級聖女は涙を流して喜んだといいます。


プラチナ公国もまた、その結婚と、生涯を教会へ捧げる誓いを功績として認めました。


のちにプラチナ公国はプラチナ帝国への道を歩みますが、帝政を敷いて最初に出した宣言は、この侯爵家を公爵へ陞爵することでした。


それほどまでに、プラチナ公国はエリューシオン教会との関係を重視していたのです。


これが後に、プラチナ帝国とエリューシオン教会の友好の象徴となるアマランス公爵家の誕生でした。


“紫”の公爵です。


“紫”の公爵家は、防御の要であるエリューシオン教会と太いパイプを持ち、帝国内でも大きな影響力を持つことになります。


しかし叙爵から数百年、一度も権力を笠に着て横暴を働くことはなかったそうです。


歴代当主は、常に夫婦仲も良かったとか。


・・・・もっとも、それはまだ後の世の話ですけれど。


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