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第2話

ぼくです。


クラレット改め、いまは「赤髪の騎士」と呼ばれています。


創造神エクレアーナ様につけていただいた二つ名で、赤い髪をしたぼくにはよく似合っていると、自分でもひそかに気に入っています。


さて、ぼくに与えられた任務は単純です。


イオニア様が設立した、冒険者のための組合――冒険者ギルドに所属し、その評価と地位を高めること。


イオニア様ご自身は、勇者パーティの一員であったプラチアーナ男爵のもとへ向かい、男爵領の発展に協力すると聞いていました。


そして、その領地に冒険者ギルドを設立するとも。


ならば話は早い。


ぼくはさっそく、プラチアーナ男爵領へ向かうことにしました。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


プラチアーナ男爵領へ着いたぼくは、まず冒険者ギルドへ向かいました。


建物はすでに完成していて、受付には日雇いながら職員も入っていました。


まだ始まったばかりの組織にしては、思っていたよりずっと形になっています。


そしてイオニア様にお会いすると、開口一番、こんなことを言われました。


「クラレット。あなたには冒険者ギルドの代表も兼ねてもらいます」


どうやら、イオニア様は男爵領そのものの整備と発展に集中したいらしく、冒険者ギルドの運営まで細かく見ている余裕はないようでした。


そのため、実務面ではぼくが前に立つことになったのです。


とはいえ、まずは冒険者として登録しなければ始まりません。


なので、ぼくはその場で正式に登録を済ませました。


冒険者名は、もちろん「赤髪の騎士」。


創造神様からいただいた二つ名ですし、これ以上ふさわしい名もないでしょう。


ちなみに――


ぼくが、記念すべき登録者第1号でした。


・・・・まだ誰も登録していなかったんですね。


となると、急ぐべきはひとつです。


まずは、冒険者が集まり、登録したくなる仕組みを作ること。


そこから始めなければなりません。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


冒険者ギルドに持ち込まれる依頼は、やはり魔物討伐が中心でした。


魔王は滅びました。


けれど、それで魔物の脅威が消えたわけではありません。


とくに高ランクの魔物による被害は、各地の国や商会にとって依然として深刻でした。


これまでは、冒険者に依頼できるのは、一部の貴族や有力商会だけでした。


個人的なつながりがある者だけが、腕の立つ冒険者に仕事を回せる。そんな状態だったのです。


けれど、これでは不公平ですし、依頼する側にも受ける側にも無駄が多い。


だからぼくたちは、冒険者ギルドを間に挟む仕組みに変えることにしました。


どんな立場の者でも依頼を出せる。


そして、ギルドがその依頼を整理し、適した冒険者へ回す。


そうすれば、冒険者ギルドそのものに明確な存在価値が生まれます。


しかも、この仕組みは冒険者側にも利点がありました。


実力に見合った依頼を受けられるようになるのです。


無茶な依頼を押しつけられる危険が減る。


依頼する側も、力量不足の相手に任せて失敗される危険を減らせる。


依頼する側と受ける側、その双方のリスクを減らすこと。


それこそが、冒険者ギルドの存在意義だとぼくは考えました。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


そんな中で、「赤髪の騎士」であるぼく自身は、ギルドの看板役も兼ねることになりました。


高ランクの魔物討伐を中心に、依頼を引き受ける毎日です。


対象は主にAランクからSランクの魔物。


ですが、ぼくの実力なら、それほど大きな危険なく討伐できます。


そうして難度の高い依頼を次々とこなしていくうちに、少しずつ冒険者ギルドの名声は高まっていきました。


「高位の魔物討伐なら、冒険者ギルドへ」


そう言われるようになるまで、さほど時間はかかりませんでした。


とはいえ、問題もあります。


ギルドに所属する冒険者は、まだまだ少ない。


しかも、貴重なベテラン冒険者はほとんどいません。


そのかわり、集まってきたのは初心者に近い若者たちでした。


けれど、だからこそ、彼らは大事にしなければなりません。


将来の冒険者ギルドを支えるのは、そういう者たちなのですから。


そこで、ギルドでは冒険者の実力を分かりやすく区別するため、ランク制度を導入することにしました。


最高位がAランク。


最下位――というより、初心者枠がFランクです。


一般的な魔物の強さをだいたいCランク相当と考えれば、まずは妥当な分け方でしょう。


力の弱い冒険者でも、Eランク程度になれば森や山に入り、薬草採集などの依頼を受けられるようにするつもりでした。


魔物討伐だけが、冒険者の仕事ではありません。


薬草採集だって、れっきとした大切な仕事です。


とくに薬草は、薬師の手に渡れば回復薬の材料になります。


さらに、錬金術師に渡せば、毒草も含めてさまざまな魔道具や付与石の材料にもなるのだそうです。


イオニア様は、いずれ薬師ギルドを設立し、薬師の技能を活かして回復薬の生産体制も整えたいと考えているそうでした。


そう考えれば、薬草採集は決して地味で価値の低い仕事ではありません。


むしろ、今後の社会を支える重要な仕事です。


・・・・ですが。


どうにも、冒険者たち本人からすると、薬草採集はあまり人気がありませんでした。


そんなものより、すぐに魔物狩りへ行きたがる。


土をいじるより、魔物と戦うほうが格好いい。


たぶん、そう思うのでしょう。


でも、魔物狩りは甘くありません。


実力が伴わなければ怪我をする。


運が悪ければ、命を落とすことだってあります。


だからぼくは、基礎訓練と実戦訓練を、ギルド主催で行うことにしました。


魔物と戦えるだけの力がつくまでは、きちんと鍛える。


その仕組みを整えなければいけないと思ったのです。


実際、この訓練を始めてから、初心者の冒険者が命を落とす確率は目に見えて減りました。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


魔物の被害はまだまだ多く、冒険者ギルドへの期待は大きくなるばかりでした。


そのため、ギルドの設立をきっかけに、さらに多くの若者が冒険者を目指すようになります。


しかも、冒険者になれるのは筋力のある男だけではありません。


魔力さえあれば、年若い少女でも十分に活躍できる可能性がある。


それを可能にしたのが、冒険者ギルドに設置した魔力測定器と、魔法訓練でした。


魔法訓練は、ぼくが担当しています。


そして魔力測定器は、イオニア様に作っていただきました。


もともとぼくは、ウィスタリア聖教国の第三騎士団で団長を務めていました。


そのため、こうした訓練を組み立て、教えるのは得意分野です。


武器を使った実戦訓練も。


魔法使いを育てるための魔法訓練も。


どちらも、これまで何度もやってきました。


まさか、その経験がこんな形で活きるとは思いませんでしたが。


けれど、その成果は確かに出ています。


依頼を出す側は、任務達成率の高さを評価してくれる。


依頼を受ける冒険者たちは、危険を減らす訓練や制度を高く評価してくれる。


そうして冒険者ギルドは、少しずつ、けれど確実に信頼を積み上げていったのです。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


――冒険者ギルド設立から、数年後。


当初はプラチアーナ男爵領にしか存在しなかった冒険者ギルドも、次第に他地域から声がかかるようになっていました。


「うちの地域にも冒険者ギルドを作ってほしい」


そんな要望が、あちこちから届くようになったのです。


その声に応え、男爵領から少し離れた地域に、冒険者ギルド第一支部が設立されることになりました。


もともとのギルドは、本部と位置づけられます。


この頃になると、巷ではこんなふうに言われるようになっていました。


冒険者のランクは、そのまま強さの目安になる。


たとえば王国の正規軍である騎士団なら、冒険者ギルドの基準でいえばBランク程度。


騎士団長クラスで、ようやくAランク相当。


そして、その上がいる。


冒険者ギルド最強の存在。


Aランクの上に位置する、ただ一人のSランク。


――赤髪の騎士。


それが、冒険者ギルドを象徴する、最強の冒険者の名でした。


もっとも、冒険者ギルドには事務方の頂点として「ギルド総代表」という役職があります。


けれど、この役職は政治的な調整を担う立場です。


赤髪の騎士には、ふさわしくない。


赤髪の騎士の役目は別にあります。


それは――物理的な脅威を打ち払うこと。


そもそも冒険者ギルドが必要とされた理由の一つが、貴族たちの横暴に対抗するためなのです。


権力で押さえつけても従わないとなれば、騎士団や私兵を使ってくる者もいるでしょう。


そのとき、正面から立ち向かう者が必要になる。


それが、赤髪の騎士の役目でした。


実際、冒険者ギルドが軌道に乗り始めると、さっそく一人の貴族がギルドに目をつけました。


自分たちを優遇しろ。


他より先に依頼を処理しろ。


そう要求してきたのです。


けれど、ギルド長がその申し出を拒否すると、その貴族は私兵団を使ってギルドへ嫌がらせをしようとしました。


ですが――


そのとき、すぐに赤髪の騎士が飛んできて、貴族の私兵団を蹴散らしたといいます。


その光景を見た平民たちも、冒険者たちも、ますます冒険者ギルドを信頼するようになりました。


この組織は、強い。


そして、守ってくれる。


そう思わせるには、十分すぎる出来事だったのです。



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