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大魔導士、“見誤った者たち”の末路を語る~プラチナ公国への道~    第1話

「勇者の聖戦」から98年後



プラチアーナ公爵家も大魔道士イオニーアの指導のもと、ある戦争に大勝したことをきっかけにプラチナ公国として独立した。


しかし戦争に勝ったことだけが理由ではない。


シルバーナ公爵家がシルバー公国へと独立したことも理由の1つである。


いつでも公国へと独立できる準備はしていた。


あとはタイミングだけであったが、シルバー公国が独立したのに合わせてプラチナ公国も独立する予定でいたのだ。


当然、神聖ゴールド聖教国の大宰相ホーネント閣下の内諾を得ている。


これは、いずれゴールド、シルバー、プラチナという3つの大国を作り上げるための布石であった。


その3大国でパワーバランスをとることで周辺国から戦争をなくし、奴隷制度等必要のないものを撤廃させていく。


一連の流れは、いずれ生まれてくるご主人様が安定して穏やかに過ごせるようにするための彼女たちの深謀遠慮の策だった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


これからする話はプラチアーナ公爵領の歴史の中で起きたある1人の青年のお話。


これをどうとるかは皆さんの判断にお任せしましょう。


その青年は平民の親から生まれた生粋の平民でした。


平民のため魔力に乏しかったのですが、15の年にプラチアーナ公爵領が管理しているプラチナ魔法軍学校に入学をすることができたのでした。


本来なら貴族か、もしくは魔力の強いものしか入学を許されていない学校でしたが、プラチアーナ公爵領の方針で平民にも職業の選択の道を広げるべきと言う考えがあったのです。


しかし青年は魔法軍学校に入学できたとはいえ、平民でさらに魔力に乏しいとあって周りの生徒から落ちこぼれとして馬鹿にされていました。


平民で、魔力に乏しい生徒は青年のほかにも数人存在し、その者たちで集まって慰めあうことしかできなかった。


しかし、その青年は剣の腕前が飛びぬけていたのです。


身分も低く、魔法も使えないが剣だけは自信があり、これを武器にしていこうと青年は考え、日夜、剣の修行に明け暮れていました。


ですが、そこは魔法軍学校です。


魔法の授業や、魔力を高める訓練はあっても剣を使う授業は無かったのでした。


そのため青年の成績は低く、いつも最低のところに位置付けられていました。


青年はそれでも腐らず、持ち前の明るさと親切さで過ごしており、徐々に友人も増えていきました。


嫌味を言う者や見下す者もいましたが、そうでない者もいたのです。


青年は自分を受け入れてくれるものを見つけて友人になっていき、気づけば、魔力はないが明るくて気のいいやつという認識を生徒から受けていたのです。


青年の友人の中には高位貴族の子息もいました。


その高位貴族の子息は魔力も強く、成績もトップクラスというエリート中のエリートでしたが、青年と仲良くしてくれたのです。


青年はそのエリート貴族の子息とよく遊ぶようになりました。


魔力の使い方も教わり、少しずつですが魔法を使えるようにもなりました。


しかし、青年はお返しできるものがありません。


剣の腕はあるがそれだけです。


エリート貴族の子息にそのことを伝えると、


「ははは、ばかだな。見返りを求めて魔力の使い方を教えたわけじゃないよ。僕が君と仲良くしたいと思って教えたんだ」


青年は感激して、このエリート貴族の子息の友情を信じ、この者のためならこの命を投げ出しても惜しくないとまで考えるようになりました。


魔法が少しずつ使えるようになり、楽しい学園生活を送るようになると青年には恋人ができました。


相手は軍学校の同級生であり、平民でしたがとても美しい女性でした。


青年は優秀で友情にあふれた友人と、美しい恋人に囲まれとても充実した学校生活を送ったのです。


魔法軍学校に入学して数年がたち、卒業の年を迎えました。


最後の卒業試験の結果で将来の進路が決まり、プラチアーナ公爵領での配属先も決まります。


その卒業試験ではエリート貴族の子息が1位をとり、2位は青年でした。


魔力を使ったテストでは最低点でしたが、ある講座で青年は他の生徒を大きく引き離して高得点をとったのです。


その講座とは、戦術学。


青年は軍学校にいる間にもう一つの才能である戦術能力を開花させていたのです。


青年は、100年に1人といえるほどの戦術の天才だった。


本当は青年が総合点で1位だったのですが、教師陣は平民に1位をとらせるわけにはいかないと、2位に留めたほど。


卒業後、エリート貴族の子息はプラチアーナ公爵魔法軍の正規の士官に配属になりました。


これは出世コースと言われており本来なら卒業したての者が配属されることは無いはずでした。


ですが、高位貴族であり魔力もずば抜けているのでこのような配属になったのです。


そして青年は魔法軍学校を2位という好成績で卒業したにもかかわらず平民であるという理由から正規の士官ではなく、士官の下につく護兵団の一員に配属されました。


さらには、青年の恋人は青年を振り、エリート貴族の子息と婚約をして結婚をしてしまいました。


実は裏では、エリート貴族の子息と青年の恋人は付き合っており、2人で青年を馬鹿にしていたのです。


エリート貴族の子息は、自分は身分にこだわらないというアピールのために平民であった青年を利用していただけだったのです。


その事実をあとから知らされた青年は、じっと唇をかんで耐えていました。


その後。


青年は護兵団の一員として常に最前線に立たされました。


まるで早く死ねと言わんばかりの配属です。


護兵団は、後方で魔法兵が魔法を撃つための詠唱の時間を稼ぐための壁、としての役目が主です。


護兵団に配属されるのはみな魔力が乏しいものばかりで下に見られていたのでした。


そのうえ護兵団の数は少なく物資も最小限でありながら、魔物は強く周りの護兵団の仲間たちは次々と倒れていきました。


青年は生きるために、生き延びるために、護兵団を指揮し被害を最小限におさえ魔物討伐を見事成功させました。


戦術能力に長けていたおかげと言えるでしょう。



それからは、青年は周りから何と言われようと魔力頼みではない戦術を編み出し護兵団を指揮しながら功績を立てていきました。


プラチアーナ公爵魔法軍の戦術は基本的に魔力と魔法頼みで壁となる護兵団がいれば強いが、護兵団が退却して壁の役目が果たせなくなると途端に弱くなるという評判があったのです。


護兵団に配属された青年の編み出した戦術はそれを覆すものであり、青年の指揮する護兵団は捨て石にもかかわらず次々と功績をあげていったのでした。


こうして馬鹿にされながらも功績をつみあげ、10年後にはプラチアーナ公爵領の将軍にまで上り詰めたのです。


将軍にまで上り詰めたとはいえその上には上司がいました。


その上司の1人は、あの青年を馬鹿にしていたエリート貴族の子息、いまでは貴族の当主となっていた者がいました。


その者が青年に、


「あのときは騙されているお前をみて笑うのに我慢したよ。今後も俺たちの壁になってくれよな。はっはっは」


「あと、俺の妻もお前がまだ独り身なのが心配だと言っていたよ。まだ自分に気があるのか心配だとね」


そう言って馬鹿にしました。


しかし、それを聞いても青年はただじっと唇をかんで我慢をしていたのです。


のち、プラチアーナ公爵領を狙って周辺の国が同盟をむすびプラチアーナ公爵領に攻めてきました。


それは、大規模な戦いとなりました。


その戦争でエリート貴族の子息、いまでは貴族の当主だった将軍は戦死し、逆に、青年が統率する護兵団が活躍し撃退することができました。


その結果を知った、かつての恋人は青年とよりをもどそうと


「あ、あのね、元気だった。本当はね。私もいやだったのよ。あんなやつと結婚だなんて。でも、貴族だったしどうしても断れなくて。本当はいまでもあなたのことが好、」


「断る。一度裏切った相手は信じられない」


そう言ってバッサリと切り捨てたそうです。


その恋人は日ごろの言動が傲慢であったようですぐに落ちぶれていき、最後は使用人からも見捨てられ下町の安宿で血を吐いて死んでいたとか。



「・・・以上。少し長い話になってしまったが、諸君たちが学ぶ戦術は当時青年だった者が作ったもの。魔力に驕り、身分に胡坐をかくことの無いよう、この話をしました」


「以上で、訓示を終えます」


その言葉を合図に、号令係が、


「以上で、大魔導士イオニーア様による訓示をおわる!!一同、礼!」


全員が号令とともに一礼をし、イオニアはその場を離れた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


ここは、魔法軍学校の講堂。


軍学校の新入生の入学式の最中。



先ほどは、大魔導士イオニーア様直々による訓示を聞いていた。


おそらく、貴族として平民に驕ることなく、また、人としての道を踏み外さないように先ほどの話をされたのであろう。


さきほどの「青年」とは、前年亡くなったプラチナ公国魔法軍の筆頭将軍のことだろう。


イオニーア様に次いで英雄として讃えられていた方だったが、そんな過去を持っていたなんて。


お年を召した割にご子息が随分幼いと聞いていたが結婚が遅かったのはそれが理由だったのか。



僕はエメラルド子爵家の嫡子で、今年魔法軍学校に入学した。


身分も高く、魔力もそれなりにある僕だがこの話は決して忘れないように戒めようと思う。


なお、プラチナ公国はさきほど話に出た戦いに勝ったことにより、周辺諸国に対して絶大な影響力を与えることができた。


これを好機とし、プラチナ公爵家は神聖ゴールド聖教国から独立して名をプラチナ公国と改めることになったのだ。


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