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第4話

王女殿下は無事に救出された。


国家転覆を企んだ罪で侯爵も捕縛され、近衛騎士団へ引き渡されていった。


城は半壊し、国王は城の奥で震えるばかりだった。


城にいた誰もが、この混乱を収めたのがぼくだと知っていた。


だから、皆がぼくと冒険者ギルドを称賛してくれた。


・・・・ただ一人、国王だけを除いて。


国王は、侯爵とその魔法使いが国家転覆を企み、魔物を城へ放ったことを認めようとしなかった。


騒ぎが収まったと聞きつけて、ようやく近衛騎士団とともに奥から姿を現したかと思えば、白々しくこう宣言したのだ。


「魔物は結界が破れたから侵入しただけで、侯爵は関係ない!」


「大型の魔物どもは近衛騎士団が討伐したのだ!!」


「ゆえに、王女の護衛である赤髪の騎士には、何ら功績はない!! 皆もそう心得よ!!」


つまり、大型魔物を倒したのは近衛騎士団であって、ぼくは何もしていない――そう言いたいらしい。


嫉妬だろう。


ぼくが正しかったと認めたくないのだ。


これまでもこうやって、力ある家臣を嫉妬して追い払ってきたのかもしれない。


そりゃあ、そんなことばかりしていれば、王族の権威は落ちるし、家臣の質も落ちる。


いつ国を乗っ取られてもおかしくない。


もちろん、現実を隠せるはずもなかった。


城が魔物に襲われ、その魔物をぼくが討伐したことは、そこにいた全員が知っている。


国王の言葉に、周囲の者たちは呆れ返り、相手にしなくなった。


その様子に国王が地団駄を踏んで怒っていると、王女殿下が声を上げた。


「お父様!!!何をおっしゃっているのですか!!」


「目の前の惨状をご覧ください!皆、傷つき、死んだ者までいるのです!!」


「城の奥に隠れていたくせに、私の護衛を侮辱することは許しません!!!」


童顔で少女のような見た目の王女だったが、その怒声には確かに王族らしい威厳があった。


国王は、まさか溺愛している娘にそんなことを言われるとは思っていなかったのだろう。


目を大きく見開き、絶句していた。


結局、言い返すこともできず、また近衛騎士団を連れて奥へ引っ込んでしまった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


あの事件のあと、コバルト王国は少しずつ変わっていった。


国王が政治へ余計な口を出さなくなったのだ。


溺愛する王女に叱られたことが、少しは響いたのかもしれない。


代わって、王女が主体となって政治に関わるようになった。


目の前で大型魔物が暴れ、自分も本当に死にかけたことで、ようやく自分がしっかりしなければならないと思ったのだろう。


周囲に支えられながら、少しずつ王族への支持を回復しようと努めているらしい。


長年の婚約者だったフリードが、自分の命を狙っていた。


その事実も、彼女を成長させたのかもしれない。


あの事件の後、王女の命令で侯爵とフリード侯爵子息は捕縛され、尋問ののち処刑された。


魔物を放った魔法使いも同様だ。


どうやらあの魔法使いは、「勇者の聖戦」の時代に魔物討伐で活躍していた人物だったらしい。


だが戦争が終わると、稼ぐ手段を失い、食い詰めて侯爵に雇われた。


そして、あのような悪事に手を染めたのだ。


こういう者は今後も出てくるかもしれない。


「勇者の聖戦」で活躍した者たちが、平時に役割を失い、悪意ある者に利用される。


それを防ぐ手立てとして、冒険者ギルドが彼らを保護し、冒険者としての道を示すのは、きっと良い方法なのだろう。


とにかく、王女殿下には、この先コバルト王国をしっかり発展させてほしいと願うばかりだ。


ちなみに、ぼくはそんな王女殿下から、


「残って、一生私を支えてほしいわ」


と、ほとんどプロポーズみたいなことを言われた。


でも、女性であることと、冒険者ギルドを支えたいという理由でお断りした。


王女殿下は、ぼくが女性だと知った瞬間、とんでもなく驚いた顔をしていた。


そんなにわかりにくいかなあ。


確かに胸はつぶしていたけど。


それでも王女殿下は、最後にきちんと王族らしい顔を見せた。


「赤髪の騎士どの。国の危機を救っていただいたこと、感謝いたします」


小さく頭を下げる。


・・・・かと思ったら、次の瞬間、ぴょこんと顔を上げて言った。


「――で、証拠を見せて!!」


ぼくは一瞬ためらってから、胸当てのひもをほどいた。


王女殿下の瞳孔がきゅっと開く。


「ずるい!!!私にも分けて!!」


さっきまでの威厳は、床の上で見事に転がっていた。


ともあれ――


冒険者ギルド初の、王族護衛依頼は大成功だ。


この件をきっかけに、王女殿下はギルドの「王族護衛枠」を正式に認めた。


冒険者ギルドの名声は、また一段、高く定着したのである。

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