第3話
ついに、王女殿下を狙う黒幕を見つけることができた。
公務のたびに、あまりにも都合よく刺客が現れる。
普通なら、王女殿下がいつ城の外に出るかなど、そう簡単にわかるはずがない。
なのに、刺客たちは毎回、実に正確なタイミングで襲ってきた。
つまり、内部に裏切り者がいる。
そう考えるしかなかった。
こうなると、創造神様のお力を借りたほうが早い。
ぼくの使徒としての力は戦闘寄りで、感知や探知は得意ではないのだ。
だから思念波で創造神様に事情を説明し、王女を狙う黒幕について尋ねた。
創造神様は、すぐに答えてくれた。
・・・・むしろ、「遅かったわね」とまで言われてしまった。
黒幕は、王女殿下の婚約者――フリード侯爵子息。
理由も教えてくれた。
現在の国王には子どもが王女しかいない。
もし王女が死ねば、次の継承権は血のつながったフリード侯爵子息へ移る。
この二人、いとこ同士だったのだ。
それを知ったぼくは、すぐにフリード侯爵子息とその侯爵家へ踏み込むことを決めた。
一応、先に国王へ話を持っていった。
侯爵家を捕縛してほしい、と。
だが返ってきたのは、
「戯言を」
の一言だった。
仕方ない。
証拠がないのだ。
創造神様から真実を聞いているぼくにはわかっても、それでは国王も動けない――本来ならそう理解できる。
ただ、この国王の場合は、単に侯爵家のほうを信用していた面も大きいのだろう。
幸い、王女殿下はぼくを信頼していたので、話は聞いてくれた。
けれど、婚約者が自分の命を狙っていたという事実は、さすがに能天気な王女にも衝撃だったらしい。
「まさか・・・・あの人が、私の命を狙っていただなんて・・・・」
あ、能天気なんて失礼だったな。
ぼくは一人で侯爵家へ向かった。
単身だったので警戒はされたが、屋敷の中には入れてもらえた。
当然、王女殺害の黒幕だと告げたところで、一笑に付された。
そりゃそうだろう。
証拠がないと思っているのだから。
だから、ぼくは創造神様から聞かされた、とんでもない秘密を暴露することにした。
フリード侯爵子息には、特殊な嗜好があった。
自分よりずっと年若い少女に強く興奮する、というものだ。
そして王女殿下は、年齢のわりに非常に童顔で、すらりとした少女めいた体型をしている。
つまり彼は、王女を暗殺するというより――殺したように見せかけて拘束し、自分だけの玩具にするつもりだったのだ。
ぼくがそのことを指摘すると、フリードはたちまち顔色を変えた。
そして逆上し、ぼくに襲いかかってきた。
こうして抵抗してくれたおかげで、正当防衛の形で取り押さえることができた。
さらに屋敷を捜索すると、彼の部屋の机の引き出しから、暗殺計画や刺客への依頼文書が出てきた。
これで証拠は揃った。
――はずだった。
だが、侯爵がすぐに手を回し、ぼくの動きを止めてきた。
自分たちの悪事が国王に露見するのを防ぎたいのだろうし、何より息子の人に言えない性癖が表に出るのも避けたいのだろう。
国王の信用は、ぼくより侯爵家のほうが上だった。
その結果、ぼくが持ち込んだ証拠は、まともに取り合ってもらえなかった。
「侯爵より聞いているぞ。証拠を捏造し、侯爵家を潰そうとしているそうだな。この痴れ者が!!余はそんなことには騙されんぞ!!」
逆にぼくは、国の治安を乱したとして護衛任務を解かれ、国外追放処分まで言い渡されてしまった。
「ざまぁみろ」とでも言いたげな侯爵の視線を受けながら、ぼくは城の外へ追い出された。
だが、国外へ出ていくまで見届けるほどの徹底ぶりはなかったらしい。
なのでぼくは、城下町の安宿に泊まり、しばらく様子を見ることにした。
侯爵が焦って、計画を早める可能性がある。
実は創造神様から、侯爵家はコバルト王国転覆の計画まで進めていると聞かされていたからだ。
数日後、その予感は当たった。
朝、目を覚ました瞬間、城の方から魔物の気配を感じたのだ。
おかしい。
城には、人間は通すが魔物は通さない結界が張られているはずだ。
だからこそ刺客ばかりが使われていたのに。
それなのに、確かに魔物の気配がある。
ぼくは宿を飛び出し、城へ向かった。
門へ行って開けるよう求めても反応はない。
だから身体強化魔法で跳躍力を高め、そのまま城壁を飛び越えた。
城内は、悲惨そのものだった。
五体の大型魔物が、城の中で暴れ回っていたのだ。
ぼくは狙いを定め、一気に間合いを詰めた。
刺客相手より、魔物相手のほうがよほどやりやすい。
瞬く間に魔物を斬り伏せていく。
すると背後から声がした。
「ふふふふふ。さすが赤髪の騎士。見事な腕前だ」
「魔物退治は得意でも、これはどうだろう」
振り向くと、強力な炎属性魔法が放たれていた。
だが、この程度の魔法なら、ぼくにとっては大した脅威ではない。
手のひらに簡易結界を展開するだけで、炎はあっさり防がれた。
魔法使いは驚愕し、叫ぶ。
「馬鹿な!!私の渾身の最強魔法を!!だが、これを見ろ!!」
そう言って見せつけてきたのは、拘束された王女殿下だった。
つまり、人質だ。
――でも、残念ながら。
ぼくの視界に入った時点で、勝負はついている。
ぼくはほとんど一瞬で王女殿下のそばへ回り込み、魔法使いを気絶させた。
それで終わりだった。




