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第2話

あれは、Cランク相当の魔物討伐を終えて、ギルドへ報告しに行った帰りだった。


「やあ、君がグレーかい。少し話があるんだけど、いいかな?」


そう声をかけてきたのは、「虹色の双剣」のリーダーだった。


そして彼は、単刀直入に言った。


「端的に言わせてもらうよ。グレー。君を、ぼくの『虹色の双剣』へ引き抜きに来た」


「いまの仲間は、君の実力に合っていない。それは君たち自身も、気づいているだろう?」


憧れのパーティから声がかかった。


嬉しかった。


でも、そのぶん申し訳なさも強かった。


けれど、彼の指摘に反論はできなかった。


最初のうちは違和感はなかった。


でも活動を続けるうちに、僕は仲間との実力差に気づいていた。


今のパーティの功績は、かなりの部分が僕の力によるものだったと思う。


僕は剣も使える。


魔法も使える。


回復魔法だって使える。


だけど、最初に組んだ仲間だからというだけで、なんとなく一緒にいたのも事実だった。


そこを、真正面から突かれたのだ。


僕も、キッドも、リリアも、カリンも。


誰も顔を上げることができなかった。


そして気づけば、僕の足は自然と「虹色の双剣」のほうへ向かっていた。


キッドたちは、僕を止めなかった。


・・・・止められなかったのかもしれない。


こうして僕は、「虹色の双剣」の一員になった。


その後の僕は、水を得た魚のようだった。


欲しいタイミングで攻撃魔法が飛んでくる。


回復も支援も途切れない。


前に出れば、それに合わせて仲間が動いてくれる。


「ヒュー、やるじゃん。グレーってば。もう馴染んでるね」


そう言われて、僕もそう思った。


そしてついに、Aランク昇格のための依頼を受けることになった。


Aランク冒険者。


それは冒険者にとって、限りなく憧れに近い存在だ。


もちろん、僕も憧れていた。


目標にもしていた。


そのAランクが、もう少しで手が届くところにある。


昇格条件は、指定されたAランク相当の魔物を討伐することだった。


けれど――


僕たち「虹色の双剣」は、その依頼に失敗した。


まるで歯が立たなかったのだ。


しかも、逃げる時。


僕は囮にされた。


幸い、怪我は軽く、なんとか逃げ延びることができた。


けれど、身体の傷より、心の傷のほうがずっと深かった。


信じていた仲間に、見捨てられたのだ。


死んだような目で冒険者ギルドへ戻った時、「虹色の双剣」の連中は本気で驚いていた。


僕が死んだと思っていたのだろう。


僕はその場でパーティを抜けた。


仲間を囮にするような連中と、もう一緒にはやれない。


その後、「虹色の双剣」はギルドから厳しい制裁を受けたらしい。


僕への謝罪金を支払ったうえで、二度と冒険者として活動できないほどの処分を受けたとも聞いた。


だけど、僕も無事ではなかった。


怪我は軽いのに、冒険やパーティのことを考えると手足が震える。


もう続けるのは無理だと、自分でもわかってしまった。


これが罰なのかもしれない。


かつてキッドたちを捨てた、あの時の。


僕は、そう思っていた。


そんな時だった。


目の前に、黒い髪と黒い瞳をした一人の女性が立っていた。


母さんだ。


「久しぶりね」


そう言って、母さんは僕を抱きしめてくれた。


僕はもう一人前のつもりでいた。


だけど、その瞬間、人目も気にせず声を上げて泣いてしまった。


ひとしきり泣いたあと、母さんは一言だけ言った。


「グレー。良いことも悪いことも、自分に返ってくるのよ。創造神様が、この世界をそう作ったの」


「私が何を言いたいか、わかるわね?」


それはきっと、僕がキッドたちを裏切った報いを受けたのだ、ということだった。


その後、僕は数年間、母さんと一緒に過ごした。


その間に心の傷は少しずつ癒えていき、冒険のことを考えても手足が震えなくなった。


ある日、母さんは言った。


「あなたが大きな怪我をしなかったのは、お守りのペンダントのおかげよ」


「これは攻撃力も防御力も飛躍的に高めるの。あなたのお父さんも、このペンダントで命を救われたのよ」


そういえば、昔もそんなことを言っていた気がする。


でも僕は、もう冒険者には戻らないと決めていた。


別の道を探そうと思ったのだ。


すると母さんは、こんな提案をしてきた。


「ねえ、グレー。よかったら、お貴族様に仕えてみないかしら。私の昔の友人なんだけど」


その貴族というのが、なんとプラチアーナ公爵様だった。


母さんの昔の友人が、公爵様。


やっぱり母さんは、ただ者じゃない。


僕はその話を受けた。


再びプラチアーナ公爵領へ赴き、紹介状を見せて、公爵家に仕えることになった。


家令は、キース・マリーゴールド子爵という人だった。


この人も母さんの友人らしい。


けれど僕は、今度こそ失敗しないと決めていた。


母さんの縁に甘えたら、また同じことを繰り返す気がした。


だからひたすら働き、功績を立てることだけを考えた。


その甲斐あって、数年後には公爵領の警備隊長を任されるまでになった。


そんなある日、公爵領の見回り中に、見覚えのある女冒険者が倒れていた。


助け起こしてみると、それはかつて僕が置いていった仲間の一人――魔法使いのカリンだった。


カリンは、組んでいたパーティが全滅し、命からがら逃げてきたのだという。


そして、もう冒険者は辞めるつもりだとも言った。


久しぶりに話してわかったこともある。


キッドも、リリアも、もう死んでいた。


僕はカリンを保護し、しばらく一緒に暮らすことになった。


そして――僕たちは結婚した。


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