会社からの連絡
それから三日間、正木に会社からの連絡はなかった。
四日目の朝、郵便受けに会社から封書が届いていた。正木が開封すると、一枚の通知が入っていた。
[診断書は確認しました。ただし、業務への影響も大きいため、可能な範囲での出社をお願いしたい]
「え…これ、来いってこと…?」
そしてその日の夕方、正木の携帯電話に会社から連絡が来た。
「郵便見たか?お前さ、診断書とか出して逃げるつもりか。あり得ねぇよ、この給料泥棒がよ。事と次第によっちゃ、出るとこ出てやるからな」
低い声でジワジワと責め立ててくる。
正木は静かに録音ボタンを押していた。福寿から事前にアドバイスを受けていたことだった。
「こんな診断書だけじゃ信用できねぇ。会社指定の医者へ行ってこい。いいな」
通話は一方的に切られた。受話器を握ったまま、正木はしばらく動けなかった。
正木からの連絡を受け、翌日の午前中、福寿が自宅へ来た。
「会社指定の医者って、行かないと駄目ですか…?」
正木はか細い声で福寿に聞く。福寿は俯いて、何かを考えている。
数秒、間を置いてから静かに口を開く。
「圧力ね。会社に都合のいい診断を出させようとするケース。珍しくはないの」
正木の顔色がさらに悪くなる。
「じゃあ、僕…行かないといけないですか」
「応じる必要はないわ。強制はできないからね。ただし、拒否したことを理由に不利な扱いをしてくる可能性はあるから、記録を残しながら対応しましょう」
福寿は即答した。
「それにこの動きは、会社側も焦っている証拠ね」
正木が福寿の目を見る。福寿は、テーブルの上に置かれた録音機を指した。
「この通話。十分すぎる材料になる」
正木は、はっとしたように録音機を見た。
「動かぬ証拠よ」
福寿の声は落ち着いていたが、その奥にわずかな熱が宿っていた。
正午を過ぎてから福寿はノートパソコンを開きながら言った。




