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竜好きのオレ、ドラゴンの世界に転生して聖竜になる。  作者: 岩田 巳尾


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『それぞれの報告』 その18

「と……とにかく……! オレは……オレの寝床で寝るから……。同じ部屋なら……母さんだって、寂しくないでしょ……? 『一緒に寝る』っていう約束も守れるし……」


 ショーナは相変わらず顔を真っ赤にしたまま、気まずそうにそう言った。だが、エイラは満面の笑みを向け、その言葉に反論する。


「フフ……。でも、それだと『くっついて寝る』が入ってませんよ?」

「いや……それは……だからさ……」

「いいじゃないですか、くっついて寝たって」

「…………」


 エイラの言葉に、ショーナは気まずそうに目を逸らし、そのまま左向きで丸くなった。すると……


「フフ……。じゃあ、母さんがそっちに行っちゃいますよ?」

「えっ!? あっ! ちょ、ちょっと……!」


 ショーナが伏せたのを見計らい、エイラはすっと立ち上がってショーナの寝床まで行くと、ショーナの外側から同じ様に左向きで丸くなり、体をくっつけた。ショーナは赤い顔を引きつらせ、困惑しながら一言漏らす。


「ちょっと、母さん……!」

「フフ……。だって、ショーナはさっき……『オレの寝床でなら』って、言ってたじゃないですか」

「そ、それは……! それは違う意味だよ!」

「フフ……。細かい事はいいじゃないですか」


 そう言って、エイラは自身の左の翼を広げ、ショーナに被せる。


「フフ……。フィーにこうやってあげたんでしょう?」

「…………」

「……ショーナも、母さんが知らない所で……随分、オトナになっていたんですね」

「…………」


 満面の笑みで言うエイラに対し、ショーナは気まずそうに目を逸らし、鼻で小さくため息を吐き、言葉を返さないでいた。

 エイラはここで視線を前に向け、少し目を細めて微笑みながらショーナに言う。


「それにしても……、こうして寝るのは……ショーナが小さい時以来ですね。……あの時はまだ、ショーナもお出掛けする前でしたか……。

 あの頃は小さくてかわいかったのに、今ではこんなに……たくましくなって……」

「……母さん……」


 感慨にふけるエイラに、ショーナはぽつりと呟いて彼女に目を向けた。すると、エイラは満面の笑みになり続けた。


「……でも、やっぱりかわいいままですけどね。フフ……」

「……母さん……!」


 いつもと変わらないエイラに、ショーナは少しうんざりしながら、苦笑いをしつつ一言口にしていた。ここで一呼吸置いたエイラは、微笑みながら一言呟く。


「でも……」


 そして言葉を切ると、目を閉じてショーナに顔を擦り合わせ、続きを口にする。


「こうして、大きくなったショーナとくっついて寝る事が出来て、母さん……本当に嬉しいですよ」

「……母さん……」

「だってショーナは……母さんの子なんですから」


 そう言うとエイラは顔を離し、微笑みながらショーナを見つめた。当のショーナは少し顔を赤くし、未だに気まずそうな表情で微笑み返している。エイラは再び一呼吸置き、話を続けた。


「でも……、ショーナは本当に優しいですね」

「えっ……? どうして……?」

「だって、母さんは……『約束』はしていませんよ?」

「……何の事……?」


 見当が付かなかったショーナは、ぽかんとしてエイラに聞き返していた。エイラは満面の笑みを浮かべて続ける。


「フフ……。さっきショーナ、『《一緒に寝る》っていう約束』って、言ったじゃないですか」

「あー……まぁ、そうだね……」

「でも……。さっきも言いましたけど、母さん、約束はしていませんよ?」

「え? ……そうだっけ……」

「フフ……。ショーナは、『自分が行かないと母さんが悲しむ』と思って、それを約束だと勘違いしていたんですよ。

 ……だから、母さんは……『ショーナは優しい』って、言っているんですよ」

「…………」


 エイラの説明を聞き、ショーナは目を丸くして口を半開きにし、言葉を返さなかった。エイラは一呼吸置き、微笑んで言う。


「母さんは……ショーナのその優しさ、大好きですよ」

「母さん……」

「覚えていますか? ショーナ。……前にもお話ししましたよね。『あなたの優しさは本物ですから、それを大切にして下さい』って」

「もちろん、覚えてるよ」

「私はその時、こうも言いました。『その優しさは、あなたの強さです』……と。

 ショーナのその優しさがあったからこそ、昨日、ジコウを助ける事が出来たんです。……違いますか?」

「……!」


 突然の話の流れに、ショーナははっとして目を見開いた。


「もしショーナの心に、その優しさが……その強さが無ければ……。ショーナは……ジコウを……」

「……言いにくい事だけど、あいつを……倒していたかもしれない……」


 ショーナは少し表情を曇らせ、視線を下に向けて答えていた。それでも、エイラは優しく微笑んで彼に言う。


「でも、そうはならなかったじゃないですか。ショーナは私との約束を守って、『三頭で』……帰ってきてくれました。きちんとジコウを連れ帰ってくれました。それは、あなたの心の核となる部分に、本物の優しさがあったから出来た事です。

 だから……あなたの優しさは偽りの無い優しさで、自然と他者を気に掛ける事が出来る。……それが、ジコウを助けられた……あなたの『強さ』なんですよ、ショーナ」

「……母さん……」

「ショーナ? 『強さ』というのは、ただ単に力が強いとか、魔法が強いとか……、戦闘技術に優れている事だけではありません。『強さ』というのは、色々な面で構成されているんですよ。

 あなたの、その『本物の優しさ』は……『強さ』になります。他者に優しくなければ……出来ない事も、気付けない事もあるでしょう? ……だから、あなたには……それが出来ます。

 母さんは……ショーナの事、誇りに思っていますよ」

「母さん……」


 エイラの言葉に、思わず微笑みが漏れたショーナ。


「ショーナ? ……ジコウを助けてくれて、ありがとう……」

「……オレだけの力じゃないよ。……フィーがいてくれなかったら、もしかしたら……出来なかったかもしれないし……」

「フフ……。やっぱり、ショーナは優しいですね。……でも、ショーナらしいですよ、そういう所」

「…………」


 ショーナは思わず照れ笑いをしたが、ここでエイラは満面の笑みを浮かべて違う話題を振った。


「ところで……。どうですか? くっついてみて」

「えっ……!?」


 突然の話に、ショーナは顔を赤くして驚きの声を上げたが、尚もエイラは続ける。


「だって、ショーナはドラゴンの事が大好きなんですから、くっついたらどう思うのか……気になるじゃないですか」

「そ……それは……」

「フフ……。自分の気持ちは正直に出せばいいじゃないですか。……もう知ってますけど」

「…………」


 ショーナは気まずそうに目を逸らし、鼻で小さくため息を吐く。


「フフ……。どうしてショーナは、自分の気持ちを押し殺しちゃうんですか?」

「だ、だって……」

「言うだけじゃないですか。……フィーに対してもそうですけど」

「それは……その……」

「フフ……。聞きますよ? ショーナ。……折角の『親子見ず知らず』なんですから」


 満面の笑みで続けるエイラだったが、ショーナは先程から変わらない表情で、今のエイラの言い間違いに突っ込む事無く話し始めた。


「だってさ……。オレが『ドラゴンの事が好き』とか、『フィーの事が好き』とか、それは……オレの独りよがりだしさ……」

「その気持ちで、誰かに迷惑を掛けました?」

「…………」


 エイラはショーナの言葉を聞き、優しく微笑んで彼に問う。しかしショーナは鼻で小さくため息を吐いただけだった。それを見たエイラは話を続ける。


「好きな事は、悪い事じゃありませんよ、ショーナ」

「…………」

「フィーや母さんとくっついて寝る事だって、悪い事じゃありませんよ」

「それは……恥ずかしい……」

「フフ……。ショーナ? 『恥ずかしい』って事は、それだけ『本気』って事ですよ。……相手や周りの事を思って、考えて……。それで、相手に迷惑が掛からない様に、相手に不快に思われない様に、誰にも波風を立てない様に、自分の気持ちを押さえ込んで……。それがショーナの『恥ずかしさ』の正体ですよ。

 いいじゃないですか、思いっきり甘えたって。思いっきりべったりしたって。……誰かに見られている訳じゃないんですし。……好きなんでしょう? ドラゴンの事」

「それは……そうだけど……」

「母さん、ショーナから甘えられたって迷惑じゃありませんよ?」

「…………」


 ショーナは相変わらずの表情で、再び鼻で小さくため息を吐いた。エイラは微笑んで見守っていたが、ついに見かねたのか、


「フフ……。じゃあ、母さんがくっついちゃいますからね!」

「……!」


 満面の笑みでそう言い、ショーナに顔をくっつけた。ショーナは驚いて顔を赤くし、そのままの状態でエイラに言う。


「ちょ……ちょっと、母さん……!」

「フフ……。迷惑ですか? ショーナ」

「……め、迷惑じゃ……ないけど……」

「じゃあ、いいじゃないですか。……ほら、もう寝ましょうよ」

「えっ……!? こ、このまま……!?」

「フフ……。『迷惑』ですか?」

「わ……分かったよ……」


 エイラに押し切られたショーナは、最後に苦笑いをして答えていた。一呼吸置き、二頭は挨拶を交わす。


「フフ……。おやすみなさい、ショーナ」

「……おやすみ、母さん」


 エイラは部屋の明かりを消し、二頭は久々に同じ部屋で一夜を共にした。

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