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竜好きのオレ、ドラゴンの世界に転生して聖竜になる。  作者: 岩田 巳尾


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『それぞれの報告』 その17

 ジャックの相づちの後、部屋はしばらく静寂に包まれた。少し間を空け、全ての話が終わったと認識したエイラは、鼻で小さくため息を吐いてから話を締める。


「……では、他にお話が無ければ……これぐらいにしておきましょう。……ちょっと長くなってしまいましたからね」

「……俺は大丈夫だ」

「私も……特に無いわ」


 それぞれの返答を聞き、エイラは続ける。


「……では『お開き』にしましょう。……ありがとう、ジャック、ジョイ。……久々に昔の様に話せて、楽しかったですよ」

「あぁ、俺もだ」


 ジャックはエイラに言葉を返しながら席を立つ。その隣で、ジョイも同じ様に席を立っていた。皆、その表情は明るい。


「また時間がある時に、こうして集まってお話ししましょうよ。……ゼロ抜きで」

「フッ……。相当煙たがられている様だな、ゼロは」

「フフ……。だって、ゼロが来たら『お固い』じゃないですか」

「……それもそうだな」


 談笑しながら地下室の扉の前まで歩いたジャック。その後ろにはジョイも続いている。


「……では、俺達はこれで失礼する。……またな、エイラ」

「えぇ。……ジョイも、ありがとう」

「……私も、いつでも相談に乗るから。……あまり独りで抱え込まない事よ、エイラ」

「……ありがとう、ジョイ」


 それぞれ最後に言葉を交わすと、ジャックは扉を空けて地下室を後にし、ジョイも続けて部屋を出る。エイラは砦の出入り口まで二頭に続き、そこで二頭を見送った。太陽は少し傾きかけている。


(報告は受けましたが……。特に相違はありませんでしたね、私が見た事と……)


 そんな事を思いながら、二頭を見送り続けたエイラ。ジャックとジョイが小さくなった頃、二頭を見送るエイラの下に一頭の給仕が歩み寄り、彼女に声を掛けた。


「エイラ様」

「……!」


 はっと顔を向けたエイラに、給仕は続け……


「エイラ様が地下室で話し合いをされている時に、友好派の方がいらっしゃいまして、こちらをエイラ様にと……」


 そう言って、エイラに筒状の物を手渡した。


「封書……ですか」

「はい。……随分、慌てられていた様で……」

「そうですか……。ありがとうございます」


 エイラが微笑んでお礼をすると、給仕は一礼してその場を後にした。エイラは受け取った封書を片手に、自室へと戻っていく。


(……わざわざ魔力強化された紙とヒモを使った封書なんて、随分、手が込んでいますね……)


 そう思いながら、彼女は自身の寝床で腰を下ろし、その封書を床に置いた。筒状に丸められた紙をヒモで閉じただけの、シンプルな封書。彼女は右手のツメ一本に魔力を集中させ、そっとヒモを切り、紙を広げて右手に持つと、そこに書かれている文章を目で追い始めた。


(……ライルから……ですね……)


 真剣な顔付きで、静かに文章を目で追っていく。そしてしばらくし、それを読み終えたエイラは手紙を持った右手を下ろした。


(三者会談ですか……。それも……明日の昼ごろなんて……。随分、急ですね……)


 相変わらず真剣な顔付きでそう思いながら、彼女は先程のヒモも手紙と一緒に右手に持った。再びそれらを持ち上げると、その手紙とヒモは一瞬にして白い炎を上げて燃え上がり、まばゆい白光を放った後、跡形も無くなってしまった。


(……魔力強化してあるとはいえ、随分弱いですね……。慌てて準備した物でしたか……)


 エイラは自身の魔法を使って、手紙を燃やしていたのだ。彼女は表情そのままに鼻で小さくため息を吐き、友好派の集落がある方向へと顔を向け、


(……折角の機会ですし、一度……きちんと話さないといけませんね、ライルに……。ですが……私が集落を出る事を、ゼロ達は『良し』とするでしょうか……)


 そんな事を考えていた。ただ、その時だった。彼女の部屋に扉をノックする音が響く。


「……!」


 はっと部屋の入り口へと顔を向けたエイラは、そこに立っているショーナを目にし、すぐに表情を微笑ませた。


「あら、どうしたんですか? ショーナ」

「……母さん、今……大丈夫?」

「えぇ、大丈夫ですよ」


 ショーナはエイラの返事を聞くと、彼女の前まで歩き、そこで腰を下ろした。しかし、彼は腰を下ろすと気まずそうに目を逸らし、右手の指で顔を掻いて何も話さない。不思議に思ったエイラは、自ら彼に問い掛けた。


「……どうしました? ショーナ」

「……その……今朝の話なんだけど……」

「……今朝?」


 エイラはきょとんとし、首をかしげて一言だけ口にしていた。その問いに、ショーナは少し顔を赤くしながら答える。


「あの……ほら……、『一緒に寝る』っていう、あれ……」

「……それが、どうかしました?」


 エイラは相変わらずきょとんとしながらショーナに返す。ショーナは顔を逸らした後、横目で気まずそうにエイラを見て続きを口にした。


「いや、だからさ……。オレが来なかったら、母さん……悲しむんじゃないかと思って……。くっついて寝るのは恥ずかしいから……その……、これまでみたいに……一緒の部屋で……オレの寝床でなら……」


 恥ずかしそうに言うショーナを、エイラは目を丸くして口を半開きにしながら見ていた。彼女はすぐに微笑み、彼に言う。


「……ありがとう、ショーナ。……ショーナは本当に、昔から優しいですね」


 そう言ったエイラは、目を閉じて顔を擦り合わせた。しばらくして顔を引っ込めたエイラは、ショーナに満面の笑みを向けて言う。


「フフ……。でも、先に食事にしましょうよ。ショーナは、お腹空いてないんですか?」

「えっ……? まぁ……空いてるけど……」

「じゃあ一緒に食事にしましょうよ。母さん、お腹空いちゃって」

「……母さん……」


 ショーナは苦笑いをしながら一言漏らしていた。エイラはそんなショーナに構わずに、すっと立ち上がって先に歩き出す。


「フフ……。何だか目玉焼きが食べたい気分なんですよ」

「……目玉焼き……?」

「そう、目玉焼き。……魚の目玉を沢山くりぬいて、それを(いた)めた……」

「ええっ!?」

「フフ……。冗談ですよ」

(こわ……)


 部屋の外へと歩きながら話すエイラの言葉に、後から続いていたショーナは驚き、冗談と分かると苦笑いをしていた。そうして二頭は話しを続けながら階段を下りる。


「目玉焼きはタマゴ四つでトロットロが好きなんですよ」

「母さん……四つも食べるの……?」

「フフ……。四つなんて一口ですよ」

「……ウソでしょ……」

「あっ! 忘れてました! 目玉焼きの下に焼いた鶏肉を置かないと! ……四羽分」

「……ウソでしょ……!」


 ショーナは驚いて声を漏らしていたが、エイラは構わずに続ける。


「料理の名前は……『惨状焼き』ですよ」

「……ネーミングが酷すぎる……」

「フフ……。冗談ですよ」


 満面の笑みで言うエイラに対し、ショーナは苦笑いをして呟いていた。そして彼は、ふと気になった事をエイラに問う。


「ねぇ、母さん……」

「何ですか?」

「今の『冗談』って……どれの事? まさか……本当に四羽分の鶏肉食べるの……?」

「フフ……。さぁ、どうでしょうね?」



 そうして二頭は食堂で一緒に食事を取り、再びエイラの部屋へと戻ってきた。後から入ってきたショーナが部屋の扉を閉め、二頭がそれぞれの寝床に腰を下ろした時には、既に空は夕焼けに染まっていた。

 エイラは自身の寝床で左向きに丸く座ると、満面の笑みをショーナに向け……


「フフ……。ショーナ?」


 そう言いながら、自身の寝床を左手でポンポンと叩いた。それを目にしたショーナは、その意味を察して少し顔を赤くし、苦笑いをしながら答える。


「母さん……。母さんの部屋で寝るのはともかく、くっついて寝るのは……ちょっと……」

「あら! いいじゃないですか。……扉を閉めたのはショーナでしょう?」

「…………」

「フフ……。分かってますよ、ショーナ。……くっついて寝ているのを見られない様にする為に、扉……閉めたんですよね?」

「ちょっと母さん……!」

「フフ……。大当たりでしょう?」

「…………」


 エイラの度重なる追求に、ショーナは答えに困ってしまい、気まずそうに目を逸らして右手の指で顔を掻いた。エイラはお構い無しに続ける。


「フフ……。ショーナって、こういう事はウソが下手ですよね」

「……いや、それは……」

「フフ……。それとも……素直じゃないって事です? ショーナって、素直な割りに……そういう事って素直じゃないじゃないですか」

「ど……どういう事……?」

「だって、ショーナはドラゴンの事が大好きなのに……、それを押さえ込んでいるじゃないですか。色々と理由を付けて。……フィーの事になると特に……」

「わ……分かったから、母さん……!」


 図星を指されたショーナは顔を真っ赤にし、慌ててエイラの言葉を遮って話を止めた。

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